やじうまゲームニュース
 
すっげiPhoneゲーを作ったヒト『エスプガルーダII』編:密かなるSTG革命

2010.05.26

ケイブ
 

 “敵の攻撃が画面を覆い尽くす”いわゆる「弾幕シューティング」と呼ばれるゲームジャンル。ケイブの『怒首領蜂』や『虫姫さま』、アルファ・システムの『式神の城』シリーズなどでゲーム性は成熟を迎え、同人作品「東方Project」ではキャラクタ性に焦点をあてた展開も行われている。

 すっかりひとつのジャンルとして落ち着いた感のある「弾幕シューティング」だが、ここにきて全く新しい、というよりは“突然変異”といって良い新作がリリースされた。タイトルは、『エスプガルーダII ~覚聖せよ。生まれし第三の輝石~』(以下、『エスプガルーダII』)。
 冒頭の、シューティングゲームの雄であるケイブ開発の本作は、iPhone/iPod touch向けゲームアプリとして開発されたことで、今までの同ジャンルが獲得し得なかったゲーム性を手にしている。

▲弾幕系シューティングゲーム『エスプガルーダ』の続編『エスプガルーダII』のiPhone/iPod touch向け移植版。ゲームアプリながらAC版を限りなく再現、しかも新要素も加味したとてつもない作品に仕上がっている

 果たして、iPhone/iPod touch向け『エスプガルーダII』の“突然変異”したゲーム性は意図的なものなのか、あるいは、その真意はどこにあるのだろうか――? 今回、同社開発スタッフのみなさんに直撃した。

▲左から、ケイブ モバイルコンテンツ部開発グループ ゲーム開発チーム アプリプログラマーの松田勇磨氏、同マネージャー兼サウンド開発ディレクターの真崎之宏氏、同アプリプログラマーの保泉臣悟氏

※各写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます。

iPhone参入までの道 : 実はトライアル版が存在した

――iPhone/iPod touch向けに『エスプガルーダII』を開発するという、企画の発端を教えてください。

★真崎之宏氏(以下、真崎氏)
 私たちはモバイルコンテンツの展開を手がける部署ですので、今まで国内のキャリア向けにゲームアプリなどの配信を手がけてきました。しかし、最近のソーシャルゲームの台頭やiPhoneなど新しいモバイル端末も登場するようになり、従来のキャリアだけの対応ではビジネスとして厳しい状況になりつつあるのも事実です。
 そのような状況下、弊社でもiPhone/iPod touch向けにコンテンツを展開していく必要があると判断し、昨年冬に行ったリアルイベント「ケイブ祭り」で試験的な作品『虫姫さま バグパニック』を出展させていただきました。

――『虫姫さま バグパニック』。これは、『虫姫さま』シリーズのスピンオフ的な作品でしょうか?

★松田勇磨氏(以下、松田氏)
 『虫姫さま』シリーズの主人公「レコ」を操作して遊ぶアクションシューティングですね。「レコ」は360度移動できて、「サクレツの実」を、スクリーンをスライドして投げることで敵をやっつけていくという内容です。連続して敵を撃破することで、コンボもつながるようになっています。

――(『虫姫さま バグパニック』をプレイしながら)おお、なかなか遊べるようになっていますね。ちょっと難易度高めですが(笑)。

★真崎氏
 ありがとうございます。「ケイブ祭り」で遊んでいただいたユーザーの方にも好評で、あくまで試験的な出展ではあったのですが、これならばiPhone/iPod touch向けアプリの開発に本腰を入れても良いだろうという結論になりました。

――iPhone/iPod touchへの参入は、御社で以前より温めていたプランなのですか? それとも時流にのるかたちでの参戦ということでしょうか?

★真崎氏
 両方ですね。弊社の持つシューティング作品を、新たなプラットフォームに広めていきたいという案は、以前から懸案としてあがっていたものです。たとえばですが、『虫姫さま』や『怒首領蜂』をPSPやDSでやるという提案も開発側からは出ていました。
 また、将来的な展開を見据えて、松田はiPhone、保泉にはAndroid端末の研究してもらっていたこともあり、開発のスタートは割合スムーズだったと思います。もちろん、ここ最近の盛り上がりが、iPhone/iPod touchへの参入を後押ししたことは言うまでもありませんが。

――参入第1弾に、『エスプガルーダII』を起用した理由は何ですか?

★真崎氏
 2月にXbox 360向けソフト『エスプガルーダII ブラックレーベル』が発売になったことで、弊社のタイトルの中でも特に盛り上がりを見せている本作を、iPhone/iPod touch参入第1弾作品と決めました。

――開発担当のおふたりとしては、たとえばiPhone/iPod touchに参入するにあたって、「このタイトルでも、アリでは?」と思われた作品はありますか?

★松田氏
 『エスプガルーダII』と同じシューティングになりますが、『ぐわんげ』ですね。シューティングゲームにおけるいわゆる「オプション」的な役割を持つ「式神」の動きを、タッチスクリーンで再現できれば面白いかなと考えていました。

★保泉臣悟氏(以下、保泉氏)
 トライアルとして『バグパニック』を開発したこともあり、『虫姫さまふたり』のようなオーソドックスなシューティングをまずは出したいという思いではありました。

――なるほど。おふたりとも、やはりシューティングという思いではあったと。では、iPhone/iPod touch向け『エスプガルーダII』で、おふたりが担当されたお仕事を教えていただけませんか?

★松田氏
 私は、ざっくり言うと“見えない部分”を担当しています。iPhone/iPod touch版はXbox 360版とおなじくアーケード版のライブラリを利用しているのですが、それらをiPhone/iPod touch向けに最適化することが主な仕事です。ソースコードのつじつまを合わせる、といっても良いかもしれません。

★保泉氏
 私の方は逆に、自機や移動のグラフィックといった“見える部分”が担当です。また、アーケード版のライブラリを利用していますが、やはりそのままだとスペック的に厳しいですから、敵の数を減らしたり、ゲーム中のアニメーション部分を調整したりもしています。

――アニメーションが調整されているんですか? プレイした印象では、さほどアーケード版やXbox 360版と違いはないように感じましたが……。

★保泉氏
 ほぼ全ての敵キャラクタの挙動に関して、アニメーションを減らしてはいますが、10コマの動きを5コマの動きに差し替えるなど、ユーザーさんもなかなか気づきにくい部分で調整をかけています。

★松田氏
 ゲーム画面上でみるかぎり、ほぼそのままという印象を持たれるかと思いますね。

★保泉氏
 ちなみに、「弾幕」に関してはいっさい手を加えていません。

――おお! やはり、そこはこだわりなんですね。

▲アーケード版よりいっさい手が加えられていない「弾幕」。本作が「弾幕シューティング」といわれる所以であり、ファンも期待する“変えてはいけない部分”。ただし、新システムにより初心者でもこの「弾幕」は突破できる。詳しくは、後述

「アレンジ」と「絶対に変えてはいけないもの」

――iPhone/iPod touch参入第1弾になりましたが、開発で苦労された点はどこでしょうか?

★松田氏
 開発がスタートした当初は、とにかく挙動が重たかったので、高速化することが必要でした。

★保泉氏
 苦労したのは、ゲームバランスをどう設定するかですね。今回はiPhone/iPod touch向けにアレンジを加えていますが、正直なところ、そもそもアレンジしたことが正解なのかと悩みました。アーケード版と比べると自機の移動速度が変わっていますし、レイピア(レーザー)などもiPhone/iPod touch版では再現されていないんです。これは、原作ファンにしてみれば非常に重大な変更だと思います。
 ただ、アレンジを加えた結果として遊びやすくなったのは確かで、初心者の方に対して敷居を下げることになったのなら、今回とったアレンジという選択も正解かもしれないと今は考えています。ただ、先ほどお話したように、「弾幕」に代表される決して変えてはいけない部分だけは、手を加えないことを強く意識して開発に臨みました。

――おふたりの苦労の甲斐もあり、iPhone/iPod touch版は世に出ることとなりました。開発を終えてみて、iPhoneというモバイル端末にどういう印象を持たれましたか?

★松田氏
 携帯電話の延長ではありますが、グラフィック、ネット接続、タッチスクリーンといった点がこれまでの端末と比べて全く新しいものになっていると思います。開発第1弾でしたので不慣れな部分があることを踏まえても、まだ底の見えないプラットフォームですね。

★保泉氏
 実は、今回の企画が出されるまで、iPhoneはほとんど触ったことがなかったんです(笑)。なのでまずは、社内でオススメのアプリを教えてもらって研究することが第一印象、というか第一歩でした。とにかく画面がこれまでの端末とくらべて大きく、アプリにさける容量の制限が今までほどタイトではなくなったという印象です。

――今回のリリースで、iPhone/iPod touchのプラットフォームとしてのスペックをどれだけ引き出せたと感じますか?

★松田氏
 今回の『エスプガルーダII』でいえば、弾幕や巨大なボスキャラクタ、エフェクト表現といった2Dグラフィックの描画については、アーケード版とそん色のないレベルを再現できたんじゃないかと。

★保泉氏
 当初、3Gへの対応も検討していましたが、とにかく現状最新バーションである3GSとiPod touchで限界まで作り込もうと決まってからは、時間と容量の両面でギリギリまで開発を行いました。

★真崎氏
 サウンドに関しては、iPhone/iPod touch版の方がアーケード版よりも音質が向上しています。iPhoneやiPod touchですと、ヘッドフォンで聴かれる方もいますからね。
 たまたまiPhone/iPod touch版のPV動画を、作曲をお願いしたベイシスケイプの並木学さんがご覧になっていて、「AC版よりも音が良くなってますね」とメールでご連絡いただいたので、お墨付きです(笑)。

――『エスプガルーダ』はFOMA向けにもリリースされていたと思いますが、モバイル端末向けでも、今回とは開発の過程は異なるのでしょうか?

★保泉氏
 今までの携帯端末だと、アーケード版をそのまま移植するのは無理ですね。エッセンスだけ残して、一から新しいものを作りあげることになると思います。とはいっても、FOMA版『エスプガルーダII』もアーケード版の開発チームに監修をしてもらっていますから、そのプラットフォームでの面白さは再現できていると思います。

「タッチ」が生んだ、シューティングしていないゲーム性

――操作に「バーチャルパッド」ではなく、「スクリーンタッチ」による操作を取り入れたことが、本作の革新的な部分と感じます。後者を採用した理由、経緯を教えてください。

★松田氏
 「スクリーンタッチ」を採用したのは、実際に色々なiPhone/iPod touch向けのゲームを触ってみて、移動に関しては「スクリーンタッチ」の方が優れていると実感したからです。従来のコントローラ風に配置する「バーチャルパッド」も検討はしましたが、手元に目がいってしまうのと、押した感覚がないため調整が効かないことから、見送りました。逆に「スクリーンタッチ」は、自機の移動速度が調整しやすく、独自のゲーム性に発展させられる見込みがありましたので。

★保泉氏
 私も松田と同じく、いくつかのゲームを触らせてもらって検討した結果、「スクリーンタッチ」という結論になりました。単純に、「スクリーンタッチ」での操作が「バーチャルパッド」による操作よりも遊びやすいと感じたからです。
 ほかにも、加速度センサーによる傾き検知で自機を移動させようと思いつきましたが、傾きを利用すると移動に慣性力が発生してしまって、狙ったところで停止できないという欠点がありましたから、ダメでしたね。

★松田氏
 本体をかたむけると、弾幕が流れていっちゃうとか、そんな仕様も考えてはいたのですが…(笑)。

――「スクリーンタッチ」による操作は、シューティングゲームを苦手とするライトな層にも訴求し得る“手軽さ”を実現するものだと思います。こちらも意図されたものですか?

★松田氏
 そうですね。アーケード版はレバーに加えて4つのボタンで操作していましたから、初心者には複雑だったと思います。iPhone/iPod touch版は、誰でもすぐ馴染める操作方法を目指しました。

★保泉氏
 「スクリーンタッチ」での移動は、それ自体が遊びの要素になりますし、端末を持っている方なら日常的に行っている操作ですから、ライトユーザーにも十分通じますからね。

――また、敵弾を無効化する新覚聖システム「覚聖翔撃波」が実現したことで、いわゆる「弾幕シューティング」でありながら、「積極的に攻める」プレイスタイルが成立しています。これも意図されたものですか?

★松田氏
 アーケード版に忠実とは言いつつも単純な移殖にしたくない、やはりiPhone/iPod touch“ならでは”を加えたいと思うわけです。それなら、本体機能の中でも最大級の目玉である「タッチスクリーン」を利用しない手はないですから。

★保泉氏
 「シューティングだけど、シューティングしていないシューティング」が、「覚聖翔撃波」で実現したと思います。言い換えると、初心者でも楽しいと思えるゲーム性を生み出せました。初心者は「覚聖翔撃波」でこまめに敵弾を消して安全に進めますし、一方で、上級者も画面上に敵弾をためてから一気に消すことでアイテムを獲得するチャンスが生まれるんです。

▲敵弾を防ぐ手段としては初心者向け、敵弾を一挙に片付けてアイテムを狙うなら上級者向けと、「覚聖翔撃波」はプレイヤーの腕前に合わせて使い方を変化させられる、奥深いシステムだ

iPhone/iPod touch向け「新プロジェクト」はすでに…

――ユーザーさんの反応をAppStoreで直に見られた感想を教えてください。印象的なものはありましたか?

★松田氏
 おおむねご好評いただいているようで嬉しいですが、まだまだ改善出来る部分もありますので、そこは今後に活かしていきたいです。アーケード版のファンの方にも触っていただけていることは嬉しく思っています。

★保泉氏
 やっぱり僕ら開発が「良いものができた」と満足するよりも、遊んだユーザーさんが満足しないと駄目なんだという、当り前のことを教えてもらいました。「面白かった」と言ってくださったのは嬉しかったです。
 弾幕STGは、ゲームセンターでも初心者が近づきづらいジャンルだと思います。ですが、今回のiPhone/iPod touch版『エスプガルーダII』をプレイしていただいて「これなら出来そう」と知っていただく、あるいは初めてケイブの作品に触れていただくきっかけになれば良いなと思っています。

――では、次回作の用意、もしくは、『怒首領蜂』『虫姫さま』『デススマイルズ』などが、iPhone/iPod touch向けに移殖される可能性を期待してもいいのでしょうか?

★真崎氏
 新プロジェクトは、すでに走っています。松田と保泉をはじめスタッフ一同頑張っていますので、そう遠くない時期にお届けできると思います。ご期待いただければ…。

――なるほど。期待して待ちます! では、最後にファンへのメッセージをお願いいたします。

★松田氏
 タッチスクリーンでも弾幕STGが再現できるということを証明できたかと思います。初心者の方、シューターの方、間口は広くとりましたから、どちらの方にも楽しんでいただけるはずです。プレイしていない方は、無料のLITE版をぜひ触ってみてください。

★保泉氏
 どんどん新しい技術が出てくる中でも、「ケイブのシューティングは面白いんだ」ということを伝えていきたいと思っています。アーケード版/Xbox 360版を遊んだ方も、新感覚のケイブシューティングを試してみてください。

★真崎氏
 今後も、沢山の方に楽しんでいただけるタイトルを送り出していきたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします。

――本日は、ありがとうございました。

(ジーパラドットコム編集部/広田貴久)

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『エスプガルーダII
~覚聖せよ。生まれし第三の輝石~』
対応機種: iPhone 3GS/iPod touch (Late 2009,End 2009 32GB 及び64GB)
ジャンル: 弾幕系シューティングゲーム
メーカー: ケイブ
発売日: 2010年4月10日(土)
価格: 1,000円(税込)/8.99 ドル/5.49 ポンド/6.99 ユーロ

(C)2005 2010 CAVE CO.,LTD.

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