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最新作に至る道は――『龍が如く』シリーズ総合監督・名越稔洋氏に訊く(1)

2010.03.24

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』公式サイト
 
 キャスト、アーティスト陣の豪華な顔ぶれが出そろった完成披露会発売当日のゲリラライブなど発売直前のイベントも終え、いよいよ待ちわびるユーザーの手元に届くこととなった、プレイステーション3向けソフト『龍が如く4 伝説を継ぐもの』(以下、『龍が如く4』)。


 本作は、伝説の極道・桐生一馬を主役とする『龍が如く』シリーズの最新作。桐生に加えて、秋山駿、冴島大河、谷村正義といった新たな主人公が登場し、歓楽街「神室町」を舞台に過去と現在が結びつく濃密なドラマが4人の視点で語られていく。

 さらに、シリーズの醍醐味のひとつでもある「プレイスポット」もこれまで以上に充実。カラオケ、パチンコなどは実際の店舗をモチーフとした施設で楽しめるほか、ゴルフや釣りといったスポーツ系の遊びも登場。「キャバクラ」にいたってはオーディションで選ばれた実在の女の子がキャバ嬢として登場し、オーナーとしてキャバ嬢を育成することさえ可能だ。

『龍が如く』シリーズ総合監督・名越稔洋氏

 今回、『龍が如く4』をリリースしたばかりの、シリーズ総合監督・名越稔洋氏にインタビューを実施。集大成として制作された本作の開発におけるエピソードや、シリーズのあり方・今後についてなどをうかがった。

※各写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます。

1作目の後、すぐにでもマルチシナリオをやろうと考えた

――これまで「『龍が如く4』は壊して、積み上げ直した」という発言がありましたが、本作で「壊した部分」とは何か教えてください。

★名越稔洋氏(以下、名越氏)
 『龍が如く』におけるドラマは、ドラマ性の部分とゲーム性が綿密にからんだものになっています。桐生一馬の物語を続けていく上では、前作『3』のシステムで良かったんです。でも、複数の主人公による「立体的なドラマ」にユーザーを感情移入させたいという場合、ドラマに見合うゲームシステムを構築するため、今までのシステムを一度壊す必要がありました。

――それでは、『龍が如く4』で「積み上げ直した」部分とは何にあたるのでしょうか。

★名越氏
 思い切ってゲームシステムを変更したこと、それによって生まれた「立体的なドラマ」です。『4』に、桐生一馬はもちろん主役として登場しますが、彼以外の人間の理屈や理念も伝えたいという部分があって、今回は新たに3人の主人公を加えました。
 一人のキャラクタにメッセージを一元化して語らせるという手法も興味深いものではあります。ただ、これまで作りながら「別の見方も本来あるはず」と思うことがあって、「別の見方」を何とか語らせることはできないかと、ずっと考えてはいたんですよ。たくさんの人間を通して、たとえば桐生の語る理屈には共感できないけど、別の主人公の理屈なら理解できるといった捉え方の幅が、今回は実現できたと思います。
 また、ひとつの街という舞台で、その場所に重なる数多くのドラマをプレイするゲームって、今までありそうでなかったものですから、新鮮で熱い体験を楽しんでもらえるはずです。

――そうすると、シリーズで初めて複数の主人公を据えた理由は、複数のドラマを見せたかったから、ということでしょうか。

★名越氏
 シリーズを重ねていく上で仕方ないことではありますけど、僕らが伝えたいメッセージであっても、「これは桐生という人間、主人公には言わせられない」という場合が出てきます。だからこそ、ひとつのシナリオをブラッシュアップする面白みがあるんですが、シリーズも5作を数えるようになって、加えて脚本家にしても、「別の物語を見せたい」という欲求が確かにあります。だから、僕らが今までドラマづくりに対して不満としていたもの全てを、『4』でぶちかましたいな、と考えていました。
 そもそも、複数の主人公で遊ぶというアイデアは、1作目の『龍が如く』が売れて、世の中に現代劇を描くゲームが受け入れられると実感した時から、やりたいことだったんですね。でも、ずっと出来なかった。短期間に作品をリリースしていく必要がありましたし、ハードが変わったり、何かしら障壁となるものが存在していましたから。
 でも、ここに至って『龍が如く』チームが作品を制作することに慣れて、マルチシナリオでもいけると確信したので、『4』は複数の主人公を据えることができたんです。


――うがった見方かもしれませんが、それならば、1作目の後の『龍が如く2』でマルチシナリオを採用するという手もあったのではないでしょうか?

★名越氏
 正直にいえば、1作目の後すぐにでもマルチシナリオはやろうと考えましたし、実際『2』を何人かの主人公の視点で語るという案もありました。でも、今思えばそれはやらなくて正解なんです。『龍が如く』という作品が世の中に浸透して、愛されて、桐生一馬がどんな人間か語られた上で、「立体的なドラマ」をやるのがベストだとすれば、今のタイミングをおいて他にないんです。だから、今までの作品で僕個人はもちろん、開発チームが不満を抱いていた時期が存在したということは、むしろ正解だったと感じています。

――なるほど。名越監督としても、開発チームとしても、マルチシナリオはずっと温めてきたアイデアだったと。

★名越氏
 いや、僕らだけでなく、ユーザーからの反響にもありましたよ。『龍が如く』を遊んでいただいた方からの声に「刑事編をやりたい」「水商売にスポットライトをあてた物語が見たい」という内容のものがあったんです。「神室町」という舞台はそのままで、違った物語が見たいんだという声が。そういう声を聞くたびに、僕も面白そうだと思いましたし、いつかやりたいと考えてはいましたが、実現には4年という期間が必要だったということです。

――1作目で印象に残る「刑事」といえば、個人的には伊達刑事だと思うのですが、たとえば彼の立場で物語を体験するような形をユーザーさんが望んでいた、ということですね。

★名越氏
 『龍が如く』が裏社会を主体としたシナリオを描いていましたから、カウンターとして「刑事もの」は面白いですよね。伊達のような、キャラクタに愛着が湧いたからこそやりたいということもありましたし、桐生とは違う理屈で語る物語を見せたかった。何より、具体的な要望がユーザーからあがってくるということは、『龍が如く』というコンテンツの魅力を見抜いてくれているということですから、うれしいです。

――『龍が如く4』最終部まで遊ばせていただきました。主人公4人の過去と現在、組織同士の利害関係などが、複雑に絡むシナリオとなっています。話を組み上げるうえでの苦労はありましたか?

★名越氏
 苦労する部分はいつも同じで、それまでのシリーズを遊んでいないユーザーがプレイしても楽しめるシナリオになっているか、という一点です。『龍が如く4』も『3』までのシナリオとつながりはあるんですが、知らなくても楽しめるようにできています。…と、言うのは簡単なんですけど、達成させるには色々な外堀を埋めていかなければならないので、やっぱり苦労はしますよ。複雑に絡むシナリオを綺麗に見せるより、何も背景を知らない初心者にシナリオを面白いと感じさせる方が難しいです。
 あと、シリーズをプレイしていても、背景は忘れますからね。ユーザーは他のゲームも遊ぶわけですし。だから、僕らが「ここは覚えているだろう」という前提で作ってはいけないと、現場にはいつも言っています。逆に、過去作を知らないと楽しめないシナリオは、必ず外すか変えるかしているんです。

――今回もそうですが、毎回それまでのシリーズを振り返るダイジェスト映像を収録している部分にも、初心者への配慮を感じます。

★名越氏
 知らなくても大丈夫だよ、といっても知りたくなるのが人間なので、過去作の大まかなストーリーを把握できるダイジェスト映像は、必ず収録するようにしています。振り返られると安心感もありますし。まぁ、容量の都合で毎回外そうかと思うんですが、僕らのちょっとした心づかいと思っていただければ。

『龍が如く』をハイペースで開発できる、2つの“理由”

――前作の発売から半年経たないうちに『龍が如く4』(当時は次回作)の開発がアナウンスされ、業界が騒然となりました。なぜ、ここまでハイペースな開発が可能なのでしょうか。

★名越氏
 『2』から1年前後で作品をリリースしていますけど、1年で次の作品を発売する場合、開発期間としては大体10ヶ月になるんですよ。つまり、開発に1年もかけられない。よく「開発チームが2つあって、先行チームが次回作をあらかじめ作っているんでしょう」と言われるんですが、実際はそんな余裕すらないわけです。同じチームが継続して開発を行っています。
 そういう状況でなぜ開発できるのかといえば、秘密の一つはワークフローが確立されているからです。まずはこう作り、続く部分はどう作って、いかにそれらを検証するか、といったワークフローがしっかりしている。その流れが、シリーズを重ねることで精査されていって、高度なクオリティとスピードによる開発を実現できた、というのが本音です。

 2つ目は、『龍が如く』シリーズが認知されていくことで、開発チームに情熱が生まれたこと。1年という期間で次回作を期待されるようになって、僕も「1年という開発期間は、今回で最後だから」と言って、正直だましだまし作ってもらっている状況に、最初のうちはなっていましたよ。でもね、次第に僕が何か言わなくても、現場から「1年で、次回作を作りたい」という使命感を持ってくれるようになったんです。
 特別なことは、何もやっていないんです。「何で、こんなに早くリリースできるの?」と聞かれた時、「ワークフローと情熱」と答えるんですけど、なかなか信じてもらえなくて(笑)。

――ワークフローの確立と、作品への情熱。開発においてはとても基本的なことではありますが、その2つをチームが高いレベルで維持できたからこそ、『龍が如く』は1年ごとに作品を送り出せるわけですか。

★名越氏
 ゲーム開発はもちろん、ビジネスにおいて最良なのは「最速で最高のものを生み出すこと」で、最悪は「時間をかけて最低なものをつくること」。大抵は、その中間「時間がかかるけど正確」か「時間はかからないけど雑」という選択肢をとりますけど、『龍が如く』では「最速で最高」を求めています。
 無茶苦茶なスピード、無茶苦茶なボリュームが要求される中で、5作も送り出せているのは、確かに普通は考えられませんし、無茶苦茶を実現してくれるチームが存在することは、幸せですよね。
 優れたシナリオがあって、優れたメインプログラムやコアエンジンを生み出せる中核が存在しても、手足となって実現してくれる末端にまでポリシーが浸透していなければ、意味がありません。だから、チームには一体感が大事で、その一体感を生むのは情熱という極めて基本的なファクターなんです。『龍が如く』チームは、僕の独断に依るところがある種、強いかもしれませんけれど、奇跡的に上手く回せる情熱を持ったチームだと思います。

――外部の人間からすると、情熱という基本的なファクターが生み出すスピードとボリュームが、やっぱり不思議ではあります…。

★名越氏
 毎回、インタビューでも今話したように説明していますし、パーティとかでも毎回聞かれるので、ちゃんと答えているんですけど信じてくれないんですよ(笑)。

『龍が如く』の究極

――『龍が如く』のように、和製ゲームでここまでPS3向けにシリーズを重ねている例は他にありません。いわば先駆者として、PS3における開発にはどの程度手ごたえを感じますか?

★名越氏
 たとえば、どういう角度からですか? PS3そのものということで?

――はい、PS3というプラットフォームの可能性をどれほど引き出せているか、といった意味合いです。

★名越氏
 ハイエンドなゲームになると、据置きはPS3かXbox 360のどちらかという話になりますが、どちらもハイエンドであり、さほど差異はない。そういった受け取られ方をしているからこそ、海外でXbox 360は好調なわけです。一方で和製ゲームとなると、日本のマーケットに合わせる必要があって、『龍が如く』はPS3が適しているという判断が前提としてあります。それは本音ですし、皆さん分かっていることだと思うんです。
 ただ、社内の『龍が如く』とは違うプロジェクトで、Xbox 360向けタイトルの開発現場を責任者として見ていると、マーケティングの違い以外、正直それほど差があるとは思えないんですよね。作り込んだら、作り込んだ分の手ごたえを返す仕組みを持ったハードですし、奥が深いハードです。Xbox 360は。
 『龍が如く』シリーズかどうかは別にして、これから先僕らがPS3というプラットフォームへ向けた作品をつくることに関しては、まだまだ進化させる自信もあります。「これは、もっといじりたい」という部分も毎回感じていることですし。

――手ごたえはありつつも、PS3というプラットフォームにはまだまだ可能性を感じる、と。

★名越氏
 ええ。今は、業界全体が大型のプロジェクトに投資しづらい状況になっていることは寂しいですけれどね。“リリース数が多い=開発に多く携わっているから、先駆者なのだ”という図式で語るなら、まだPS3をいじり切ったという気は全くしていないです。もっと新しく、ハイブリットな提案をしていく余地があると思います。

――濃密な本編に加えて、豊富なプレイスポットやコラボレーションが『龍が如く』シリーズには収録されています。一見して、両者はゲーム要素としては対極に位置するものだと感じるのですが、どのようにバランスをとって、制作指揮をとるのか教えてください。

★名越氏
 プロデュースする人間が預かるのは人・物・金ですから、バランスをとって「物」の部分にゲーム内容を詰め込んでいくという感じです。許される範囲の中で、僕は入れられるだけ「物」に内容を詰めたい。特に、プレイスポットやコラボレーションに関しては「前回を下回ることは許さん」とだけは言っていますが「今回は何本」とチームに指示したことはないんですよ。でも、「また増えたね」と僕に言わせるまで彼らはやってくれる。
 『龍が如く』における究極形のひとつが、“世の中に実在しない看板を全くゲーム内に登場させない”ことだとすると、現状ではまだまだなんですよ。“すべての部屋に入れる、すべてのことができる”ことも究極だとすれば、まだまだのところが多いと思います。

――看板は、「神室町」のディテールを構成する大切な要素でもあります。

★名越氏
 看板はグラフィカルな部分も含めた話で、この企業の看板は色合いとして、あるいは画的に、「欲しいね」という話はします。で、そこと組んだらコラボレーションや2次的な展開ができるだろうかということも考えて、コラボレーションする相手を検討しています。数については…それこそいくらでも、メモリーの限界まで入れたいです。今回もBlu-ray Disc、パンパンですよ。

――体験版をダウンロードしたユーザーさんが、「体験版だけで1.8GBもあるので驚いた」という話も囁かれていました。

★名越氏
 大変です…。僕はできれば、ゲームセンターの筐体なんかも、全部プレイしてもらいたいですから、特定のものだけではなくて。ただ、そこまでやってしまうと色々怒られそうな気はします(笑)。
 でもね、そういう時代だと思うんですよ。ひとつのゲームの中に押し込められるコンテンツなら、全て押し込むべきというか。逆に全部入らないとしても、“触り”の部分だけ『龍が如く』で体験してもらって、後は実際に遊んでもらうというプロモーションもあり得ると思いますし。
 だから、都市型シミュレーションとしての魅力の引き出し方も、『龍が如く』はさらに進化させることが可能ですし、他のゲームにはできないことですから、喜んで挑戦していきたいですね。だから「もっと、もっと」という姿勢でいるし、「また増えたね」と僕に言わせるまでは作ってもらいたいわけです。

――プレイスポットの中でも、「格闘家をつくろう!」、「キャバ嬢をつくろう」など、育成系に特に力が入っているように感じますが、なぜでしょうか?

★名越氏
 育成系は喜ばれますから。前作の「キャバ嬢をつくろう」も評判が良かった。今回も、最初に開発チームが見せてくれたバージョンではパーツとアイテム数が足りなかったから、「これじゃ、僕の好みの女の子は作れないよ!」と伝えて、かなりボリュームを増やしてもらっています。
 一方で、「男も育てたい」という話がチームから出てきて、「格闘家をつくろう!」を開発することになったんです。男キャラたちの本編で見せられなかった部分を見せていこう、という方向で。あとは、「つくろう!」という体裁はとっていませんけど、サブストーリーの中にも“カッコいい男”を作る話があったりしますし。


――秋山のサブストーリーで、オタク系の男をキャバ嬢の気を引くイケてる男に改造する、という話ですね。

★名越氏
 ええ。たとえばそういったサブストーリーでも「育成」を主題としていたり…。そうそう、「キャバ嬢をつくろう」は、『ラブ and ベリー』と発想が同じなんですよね。

――御社の、業務用カードゲームの『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』ですか!? …確かに、着せかえて楽しむという根底は同じですが…。

★名越氏
 『龍が如く』における「つくろう!」は、自社ブランドから発想を貰っている部分が大きいんです。特に『つくろう!』は、その名前を聞いただけでゲーム内容が想像できる確固たるブランドですから、中途半端なことはできない。『つくろう!』ブランドを名乗っていいのは、僕らだけだと思っていますし。今後も作品には積極的に取り入れたい要素です。


★後半は、「キャバクラ」「神室町」の進化など、ゲームの詳細に迫る!

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(C)SEGA

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