やじうまゲームニュース
 
【全文掲載】新情報も!? すぎやまこういち氏「視聴会」のトークをお届け

2010.02.09

『ドラゴンクエスト』公式サイト「天空の大神殿」
 

 『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がける音楽家・すぎやまこういち氏の新譜「交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』」が2010年2月10日(水)に発売を迎える。

 リリースを間近に控えた本日2月9日(火)、東京・六本木の「ルイーダの酒場」が開催されているファンにはおなじみ「カラオケ パセラ六本木店」において、すぎやま氏をゲストに迎えた新譜の視聴会が開催された。

▲今回の視聴会のゲストであり、言わずと知れた『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がける音楽家・すぎやまこういち氏。すぎやま氏が手にしているのが新譜「交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』」

 会場に招かれたのは、抽選で選ばれたファン20名。アルバム収録曲をすぎやま氏自身の解説と共に聴くことができ、さらにはすぎやま氏が事前に募集された質問に答えるという、ファンには堪らないイベントとなった。
 今回は、前半を各曲に対してすぎやま氏が語った解説、後半をファンおよび報道陣からの質問に対するすぎやま氏の回答というかたちでお届けしていこう。

クラシックだけではない、『DQ』ミュージックの世界

 「毎回のことですが新譜の発売が近づくと、楽しみにしている反面、ドキドキします。今回の「交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』」も、発売直後にバッ! と売れてほしいですね。みなさん、ここにいるみなさんは大丈夫かと思いますが(笑)、よろしくお願いします」

 『ドラゴンクエストIX』のタイトルコールである「序曲IX」が流れる中、会場に姿を現したすぎやま氏は以上のように挨拶し、いよいよ視聴会がスタートした。1曲目は「酒場のポルカ」。

「酒場のポルカ」 (交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』5曲目)

★すぎやま氏
 ここが「ルイーダの酒場」ということもありますから、まず1曲目は「酒場のポルカ」からです。それにしても、この「ルイーダの酒場」はすごいですね。堀井さん(ゲームデザイナー・堀井雄二氏)がメニューの監修をしているんですよね。僕は「ギガンテスのこんぼう」が食べてみたいなぁ(笑)。

 「酒場のポルカ」は、ヨーロッパのパブの風景をイメージして書いています。店の中にバンドがいて、バンドマスターがいて、アコーディオンもいて。男の子がクラリネットで、もちろん、ドラムスとベースも。ゲーム音源ではアコーディオンが特徴でしたが、オーケストラではクラリネットが強調されています。
 手拍子はパーカッションや、手の空いている人が担当しています。竹の“ささら”のような打楽器を使っている箇所もありますね。とにかくオーケストラ全員がノリノリで、コンサートのステージでも手拍子が起こります。

「天の祈り」(交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』2曲目)

★すぎやま氏
 『ドラゴンクエストIX』全体を象徴するテーマ曲ですね。天使界で流れます。この曲は、音の入っていないテストROMをプレイしている時に、フッとイメージが浮かびました。このシーンの音楽ができれば、あるいはこのゲームのテーマが完成すれば「これは勝負あった」という瞬間がありますが、この曲はまさしくそれでした。「天の祈り」が完成した時、『ドラゴンクエストIX』は「勝負あった」と思いました。

 曲のイメージとしては、天使の世界らしい清らかな感じです。フルートではじまって弦楽器が加わるころに熱く盛り上がっていく様子がいいですね。よし、『ドラゴンクエストIX』はこれでいけると、確信させてくれた曲です。ただし、「いける」と思えるまで時間がかかる(笑)。ゲームによって、調子しだいで、1週間から1ヶ月かかりますね。その「いける」という瞬間には達成感があります。

「サンディのテーマ」(交響組曲『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』11曲目)

★すぎやま氏
 『ドラゴンクエスト』の音楽は、基本はクラシックです。でも、たまにクラシックではない曲もありまして、たとえば「カジノ」のテーマなどはジャズ系ですよね。『ドラゴンクエスト』に登場する女の子は、品のいい子が多いですが、中には「サンディ」のようにキャピキャピした子も登場します。この曲は、そんな子のためにポップス色の強い曲としてつくりました。

 「サンディ」の初登場シーンをサンプルROMで見て、面白可笑しくて、これは明るい曲にしなければと思いました。実際、音が入ってからこのシーンを見直して、僕自身も笑ってしまいました。交響組曲ではこの楽しげなテーマから、主人公と「サンディ」がお別れをする悲しいシーンの曲へとつながる構成になっています。組曲ならではです。ゲーム音楽を並び替えて組曲にすると、考えるのが大変ですけれど、とても楽しい作業です。

 演奏をしてくれている東京都交響楽団は世界トップクラス。非常に上手い演奏を披露してくれますが、「サンディのテーマ」のようなポップな曲も上手なんです。毎年12月には、オーボエ奏者がアルトサックスを持ち出して、彼らはジャズコンサートをやったりもしているんですね。ノリノリの演奏を聴いてみてください。


「大事なのは、相対音感です」
  ここからは、会場に集まったファンから事前に募った質問に、すぎやま氏が一問一答でかえしていくという方式で、トークショウが進行した。『ドラゴンクエスト』シリーズの楽曲に対する意見や、音楽家としてアドバイスを求めるなど、質問はいずれも興味深いものが並んでいる。

――『ドラゴンクエスト』のラスボスの曲は、恐ろしさが前面に出た曲が多いように思えます。『III』『VIII』『IX』のようなもっと激しい曲はつくらないのですか?

★すぎやま氏
 僕自身ゲーマーなので、ラスボスに会うのは楽しみな反面、行くのが怖いという気持ちはありますね。
 僕はラスボスの曲調は2つあると考えていて、まず“ガーッと戦う場面を盛り上げる激しい曲”、もう一方は“ボスの威厳をたたえるような恐ろしい曲”です。ゲームによって、どちらでいくか毎回考えます。『ドラゴンクエストIX』は前者の激しい曲、『V』はホルンが利いた後者の恐ろしい曲ですね。
 『ドラクエIX』のラスボスは「非常に神経質なキャラクタ」という話を堀井さんから聞いたので、『V』系の“ボスの威厳をたたえるような恐ろしい曲”を、最初はつくりました。ところが、堀井さんからその後「いきなりガーッと戦う感じになります」と変更を聞かされ、曲のコンセプトがガラッと変わりました(笑)。『ドラクエIX』は、これまでのシリーズのボスと対戦できるという楽しみ方もあるので、やり込み派の人は各ボスの曲を比較検討してみるのも良いかと思います。

――昨今のゲーム全般、登場人物の感情が顕著で、音楽も楽しい、悲しいといったコントラストの激しいものが多いです。そのようなステレオタイプの曲が多いことを少しさみしく感じます。懐古主義なのでしょうか?

★すぎやま氏
 ファミコン時代は3トラック、『ドラクエI』は2トラックで音色も1つという環境で曲を作っていました。今でもメモリーの制限はありますが、当時に比べれば、音節も使い放題といっても過言ではない環境になりました。でも、ハードのスペックによって、僕の曲が影響を受けることはありません。ハードのスペックに関わらず、良いメロディ、良いハーモニーは生み出せるものです。
 今の質問は、僕がハードスペックの影響を受けている、といった前提のもとでの質問と考えましたので、このように答えさせてもらいます。繰り返しになりますけれど、僕自身はハードスペックによって曲の発想が制限されるということ、あるいは影響を受けるということはありません。

――『ドラゴンクエストIX』の「序曲」は、どのようなイメージで作曲されましたか?

★すぎやま氏
 『ドラゴンクエスト』は、堀井雄二さんが大監督。映画でいえば、黒澤明のような存在です。グラフィックはもちろんですが、音楽も最終的には堀井さんの監督のもとで作られる。
 『I』から『III』を作り終えた後、堀井さんから「新しいシリーズを作る」ということを聞いて、それまでの「序曲」に新たなイントロを加えました。そして、『IX』の制作が決まった際、僕は「『IV』から『VIII』までとはまた違う、新しいシリーズを生み出そうとしている」と感じました。なので、新たな「序曲」をつくることになったわけです。制作にあたっては5バージョンほど作っています。
 曲のイメージとしては「壮大な世界がはじまる」という感じです。舞台が天使界、いわば宇宙からはじまるわけですから、壮大な世界というコンセプトでいこうと決めました。遊んだ方からも、今回の「“序曲”は壮大ですね」という感想をもらいましたから、成功したと思います。

――私も音楽を作っているのですが、どんな時に曲が思い浮かびますか?

★すぎやま氏
 作曲家によって違います。毎日、ピアノの前で何小節かを書くという作曲家もいます。團 伊玖磨(だん いくま)氏という作曲家は、八丈島の別荘で毎日、サラリーマンが働く時間と同じだけピアノに向かっていたそうです。僕の場合は、曲想が浮かぶまでブラブラしています。團氏が「鳴かせてみせようホトトギス」だとすると、僕は「鳴くまで待とうホトトギス」といったところでしょうか。
 「鳴くまで待とうホトトギス」は幸せな仕事の仕方だと思います。僕も昔、CM曲をバンバン作っていた時は、とにかく「鳴かせる」ことを第一に仕事をしていましたから。スケジュールが詰まると、「鳴かせてみせようホトトギス」になりますね。
 どんな時に曲が思い浮かぶのかですが、具体的にいえば「酒場のポルカ」は食事をしている時でしたし、「天の祈り」はベッドで眠ろうとした時に曲想が固まったので、書斎のメモ帳に書きとめました。

――絶対音感は、作曲家に必要な才能でしょうか?

★すぎやま氏
 彼女(隣の担当ディレクター)は、小さい頃から知っているんですが、幼い時分から音楽に触れていて音大まで進みました。そして、今は音楽の仕事に携わっています。だから、彼女には絶対音感があるのでしょう。絶対音感は晩学で身に着くものではなく、3、4歳といった幼児期から“音楽とどう関わってきたのか”という歴史が関わってきます。
 どういった曲を作ったかは、絶対音感とは関係がなく、才能とも関係ありません。作曲家や演奏家の中にも、絶対音感のあるなしに関わらず成功している場合は多いですから。絶対音感があると便利だとは思います。オーケストラでのチューニングの時などに。

 ただ、絶対音感にも不便なこともあるようで昔、CM音楽の収録の際、バンドは譜面を見て移調(曲の途中から演奏の調を変えること)できるのですが、絶対音感を持つコーラスの女の子たちは移調した譜面に書き変えないと付いてこれない、ということがありました。絶対音感も便利なだけではないんだなと、思わず笑ってしまいました。ちなみに、僕は絶対音感はありません。大事なのは、相対音感です。

『DQモンスターズ ジョーカー2』の新情報もポロリ!?
 ファンからの質問に引き続き、報道関係者からの質問に対して、すぎやま氏が回答した。

――ゲームとオーケストラ収録でアレンジが異なる、聴きどころといえる曲を教えてください。

★すぎやま氏
 ゲームとオーケストラでは音源がちがうんです。具体的に参加している楽器がちがって、ゲームでアコーディオンだったものは、オーケストラではバイオリンになっていたりします。
 「天の祈り」では女性の声のような音をゲームで収録していましたが、オーケストラではオーボエに変更されています。オーボエはメロディを生み出すのが得意な楽器で、オーケストラにはまりました。その後フルートが1オクターブあげて加わり、弦楽器が続くという構成で、オーケストラでも壮大さを感じてもらえると思います。

――楽曲は、どういったジャンルの曲から手掛けますか?

★すぎやま氏
 やはり、ゲームの“へそ”になる曲、『IX』だと「天の祈り」ですね。それが完成するとホッとして、後は「鳴くまで待とうホトトギス」で。どの順番からというのは基本、意識していません。やっぱり「鳴くまで待とう」。フッと浮かんだものをまずどんどん作っていくということですが、『IX』は「天の祈り」がスタートになりましたね。

――『ドラゴンクエストIX』はどれくらいプレイされていますか?

★すぎやま氏
 170時間くらいだと思います。全員レベル99で、メンバーはバトルマスターと賢者…のような構成です。まだ、レベル99のボスキャラには勝てないですね。堀井さんに聞いた話では「レベル99の竜王なんかは絶対に誰も勝てないという想定で作った」そうなんですが、ユーザーさんの中には倒している人もいて、驚きました。そういえば、「すれちがい通信」をしていて、プレイ時間が3,500時間という人を見かけたこともあります。どうやっているのか、きっと発売日からほぼ電源は入れっぱなしなんでしょうか。
 ちなみに僕は「竜王の地図 LV.99」を「すれちがい通信」でもらいましたから、多分レベル99の竜王を倒したユーザーさんもいるんですよね。確か、囲み(取材)でゲームメディアの人からもらった記憶があります。さすが商売柄、すごいやり込みをしていますね(笑)。

――では、先月発売になったばかりの、ニンテンドーDS版『ドラゴンクエストVI』も遊んでいますか?

★すぎやま氏
 やってますとも、当然です(笑)。発売されてからすぐプレイしています。オリジナル版から結構時間が経って忘れていますから、新しいゲームのような気分で遊べました。「ああそうだ、こういうこともあった」と。自分でプレイして感じたのは、結構大きいゲームですね『ドラゴンクエストVI』という作品は。非常にやりごたえがありますね。『IX』の場合は上がるまではスーッといって、上がった後は無限に遊べるという感じですけど、『ドラゴンクエストVI』は上がるまでの道のりが結構なもので、これがまた面白くて楽しいですね。
 ひさしぶりにやってみると、『ドラゴンクエストVI』は3つの世界を行き来するわけじゃないですか。現在の世界、過去の世界、海の中とか、それをまた思い出して。あっちの世界、こっちの世界と巡って楽しかったですね。今も『ドラゴンクエストVI』、プレイ中です。大いに楽しんでいます。

――Wii向けに発表されている『ドラゴンクエストX』ですが、すでに作られているのでしょうか?

★すぎやま氏
 『X』は、僕自身はまだスタートしていません。多分、スクウェア・エニックスと堀井さんがプランニングしているところだと思います。そもそも『X』については、委嘱を受けていない状態なので、分からないですね。声がかからない可能性もありますし(笑)。委嘱があってから取りかかりたいと思います。今度はどういう世界になるか分かりませんが、世界が決定してからですね。

――来る4月に発売される『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』ですが、すでに曲は作られていますか?

★すぎやま氏
 次の『ドラゴンクエストモンスターズ』は、「飛行船」から始まるという……。

★広報
 先生、それ言っちゃだめでーす!

★すぎやま氏
 あ、ダメなの!? ……えー、どういう世界かまだ未発表ですが、わからない。変わるかも知れないからね(笑)。「飛行船」なんて書いて大恥かかないでくださいよ!
 というわけで、ある程度何曲かは作ったり、打ち合せしたりしています。僕も『モンスターズ』が大好きで、前作も相当やり込んだ方ですから、楽しみにしています。『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』は、僕もまだゲームを終りまで見ていませんから分からないんですが、最初のテストROMでちょっと見た感じでは、面白そうですね。楽しみにしています。

――では、最後に本日のイベントの感想をお願いいたします。

★すぎやま氏
 「ルイーダ」の酒場という場所は面白いね。この後は、「ギガンテスのこんぼう」を食べてみようと思います。その後は、九州交響楽団でがんばらないと。今後も、僕の生活は『ドラゴンクエスト』の音楽を中心にまわっていきそうです。ぜひ、応援お願いします。

――ありがとうございました。


◆「交響組曲「ドラゴンクエストIX」星空の守り人」
発売日:2010年2月10日(水)
価格:3,000円(税込)
発売:キングレコード
作曲:すぎやまこういち
演奏:東京都交響楽団
指揮:すぎやまこういち
2009年10月7日・9日 大田区民ホールアプリコにて録音

収録内容:
01.序曲IX
02.天の祈り
03.宿命~悲壮なるプロローグ
04.王宮のオーボエ
05.来たれわが街へ~夢見るわが街~酒場のポルカ~来たれわが街へ
06.野を越え山を越え~仲間とともに~箱舟に乗って~野を越え山を越え
07.陽だまりの村~村の夕べ
08.負けるものか~渦巻く欲望
09.暗闇の魔窟~洞窟のワルツ~そびえ立つ死の気配
10.集え、者たち~祈りの詩~せつなき思い
11.サンディのテーマ~サンディの泪~サンディのテーマ
12.運命に導かれ~主なき神殿
13.決戦の時
14.星空へ~星空の守り人



(ジーパラドットコム編集部/広田貴久)

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