「やじうまゲームニュース」連載第2回目にして、ちょっと脱線します。
恐縮です!
今回は2009年3月末に収録した、Wii向けアクションRPG『朧村正(おぼろむらまさ)』のプロデューサー“はしもとよしふみ”氏へのインタビューをお届け。
何故、そろそろ1年過ぎようというタイミングでの掲載になったかといえば、今までインタビュー時の音声データが
“どこいったかわかんない”状態だったためだ。三十路手前の男の説明として、
“どこいったかわかんない”が落第点なのは百も承知しているが、事実なのさ。
2時間以上におよんだインタビューでは、2年半にわたった開発のエピソードや、独特の世界観を形成した要素、そしてWii向けに“じっくりと”遊べる作品を送り出した意図などを、はしもと氏に伺った。
すでに『朧村正』を遊んでいるユーザーの皆さんには、より深く作品世界を楽しむ一助として、未体験の方には2月25日(木)発売の「みんなのおすすめセレクション」にて本作を手に取るきっかけにして頂ければ幸いだ。
前置きの最後に、はしもとプロデューサー、広報Mさん、申し訳ありませんでしたー!
※各写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます |
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| ▲『朧村正(おぼろむらまさ)』のプロデューサー“はしもとよしふみ”氏 |
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★『朧村正(おぼろむらまさ)』とは?
江戸・元禄時代を舞台に、美濃国鳴神藩の姫君「百姫」と抜け忍の少年「鬼助」が、それぞれの目的のために「妖刀」を求めて全国を旅するアクションRPG。“和”の色彩を取り入れた美しい手描きのステージを背景に、魑魅魍魎を相手とした爽快な剣劇アクションが楽しめる。 |
※以下のインタビュー内容は、2009年3月末当時のものです。
――「そもそも」のお話から伺っていこうかと思います。『朧村正』で元禄時代を舞台に、「忍者もの」を題材とした理由を聞かせてください。
◆はしもとよしふみ氏(以下、はしもと氏)
出発点としては、今回開発を担当していただいたヴァニラウェアさんと打ち合わせした際に「和風のファンタジーものに挑戦してみたい」という意見をいただいたことでしょうか。
また、弊社としてもそういったジャンルをしばらく作っていなかったので、是非やってみたかったんです。ということで、ちょうど両社のタイミングが合致したと。もちろん、私自身がやりたかったというのもあります。
――マーベラスさんとしては、かなりひさしぶりのジャンルになるわけですね?
◆はしもと氏
そうですね。最近はこういったテイストの物を制作していませんでしたし、あとは、時期がよかったですね。
――『朧村正』の動きだしたタイミングがよかったと?
◆はしもと氏
それもありますが、世の中で「流行っているもの」の中に「和風ファンタジーもの」という“くくり”がちょうどなかったので、被らなくて済むなということです。巷に「和風ファンタジーもの」が溢れていたら、やはりちょっと仕掛けづらいですからね。
――「和風もの」という“くくり”の中で、たとえば「侍」などではなく、「忍者」にスポットライトを当てた理由はなんですか?
◆はしもと氏
歴史に忠実な「実録もの」ではなく、「ファンタジーもの」をつくるとなると、「お侍さん」よりも「忍者」の方が向いているんですよ。「忍者」ということばが持つ、現実とファンタジーのはざ間のテイスト、たとえば「分身の術」のような忍術だったりとか、がファンタジーとして伝わりやすいんです。海外の方にも理解しやすいでしょうし。
――失礼な言い方になるかもしれませんが、『朧村正』はいかにも海外でウケそうな世界観ですよね。
◆はしもと氏
それってある意味、私たち日本人が「西洋ファンタジーもの」に触れる場合と同じだと思うんです。楽しんではいるけど、深いところまではよく分かっていないかも知れないと。『朧村正』を東京ゲームショウ2008に出展した時、海外からの来場者が興味津津といった感じで見てくれていたんですが、中には「妖怪とか、日本のことよくわからないんですけど、『朧村正』は楽しめますか?」と聞かれたりして。もちろん「大丈夫です」答えたりしました。
つまり、東洋・西洋を問わず、「ファンタジーもの」には神秘的な部分があって、逆にそれが魅力になると。まあ、海外の濃いプレイヤーに「『朧村正』には“ぬえ”は登場しますか?」なんて聞かれて驚いたりもしましたけど(笑)。
――昨年の東京ゲームショウ(2008)で、海外プレスの反響がスゴかったという話は聞きました。もともと『朧村正』は世界展開も視野に入れて制作していた作品なのでしょうか?
◆はしもと氏
ワールドワイドな作品にはなっていますが、日本人だと史実と合っているかどうかなどファンタジーの部分が分かる“味付け”、といったところです。ただ、すべてを理解できなくても楽しめる内容にはなっていますから、海外の方が遊んでも問題ありませんよ。絵巻物風のステージ背景が何なのか分からなくても、きれいだなと感じてもらえたり。
――ステージ中の背景に、絵巻物風といいますか、日本画風のグラフィックを採用した理由は何ですか?
◆はしもと氏
背景に関しては、ヴァニラウェアさんのこだわりが強いですね。今回の『朧村正』ですと、背景に北斎の浮世絵風のテイストを取り入れたり、キャラクタのセリフを江戸の講談風に喋らせたりしています。
ものすごい濃いところでいえば、アイテムの中に「トロ」があるんですが、当時の日本は魚の脂身を全く重宝していなかったという史実に基づいて、ゲーム内でも安めの価格で登場します。そんなディティールへのこだわりにも注目してほしいですね。設定づくりにあたっては、史実とフィクションを織り交ぜていますから、「あ、ここは教科書で習った記憶があるな…」という発見もあるかも知れません。
――「トロ」で思い出しましたが、『朧村正』では食べ物の描写にかなり力を入れているそうですね。
◆はしもと氏
もう、限界に達していますね(笑)。基本的に茶屋や料亭で出てくる食べ物は食べる工程までアニメーションで制作しています。実際の旅でも、訪れた土地で美味しいものを頂くのって楽しみじゃないですか。『朧村正』もアクションRPGで「旅をしていく」という内容なので、行く先々での「食べる楽しみ」を感じて貰えればと思います。
――公式サイトでもムービーが公開されていますが、お団子を食べる場合では「プルン」とした食感まで再現されていて、おどろきでした。グラフィックは専属の方が担当しているのですか?
◆はしもと氏
ええ。途中から参加してくれた素敵なスタッフがそれはもう、文字通り精魂こめて描いてくれました…。食べ物は、お店で出されるメニュー以外にも、道中で料理を覚えて作れるようになるものまでありますから、多彩なラインナップになっています。
――グラフィックは手描きということですから、かなり手がかかっていますよね。
◆はしもと氏
食べ物に限らず、ゲーム中のグラフィックは手描きで制作しています。海外からも、グラフィックに関して反響が大きかったので驚かされましたね。
当初、私たち制作スタッフの間では『朧村正』のグラフィックを「2Dグラフィック」と呼んでいましたが、海外の方からは「ドット画」と表現されるようになったんです。厳密にいえば「ドット画」というよりは絵画に近い手法で画を制作していますが、拡大して細密に描いていく意味では「ドット画」と言ってもいいのかも知れません。若い人には、どっちも一緒じゃないかと言われそうですが。
――多分、海外のそういった反応というのは、「手描きでグラフィックを制作している」ということに対する、ある種のリスペクトが含まれているように思えます。
◆はしもと氏
そんな感じでグラフィックを制作していましたから、なかなか開発が終わりませんでした。自分達がしんどい思いをしながら物作りをしているという部分は当たり前の事なので、お客さんに伝わらなくて良いと思いますが、ストレートに「感動した」とか言って貰えた時は、制作して良かったと心から思いました。
――ちなみに、『朧村正』の制作期間はどれくらいですか?
◆はしもと氏
立上げから数えると、2年半でしょうか? 思い起こしてもずっと、ヴァニラウェアさんでグラフィックを制作していたスタッフを見ていた気がします。
――マーベラスさんと、ヴァニラウェアさん、制作におけるそれぞれの分担はどうなっていたのでしょうか。
◆はしもと氏
制作にあたって、私のプロジェクトでは原作や設定、企画書にあたるものを起し、それらを開発会社さんに渡して制作してもらうことが多いのですが、『朧村正』に関しては、ヴァニラウェアさんの提案です。ヴァニラさん、そして、その会社の神谷さんという存在に惚れ込んだので、作る事にした部分が大きかった。そこで今回は、私の役回りも監修的な色合いが強かったですね。
ただ、私も昔は開発職だったので、現場の気持ちもわかりますから、あまり提案してもらったものにダメ出しをしたくないという気持ちはありました。なので基本的には、ヴァニラウェアさんが提案してくれたアイデアを、より良くするにはどうしたらいいか、というスタンスで臨んでいます。
――企画の立上げ当初から、原作と設定は、ヴァニラウェアさん側である程度固まっていたという感じでしょうか。
◆はしもと氏
はい。決まっていた部分も多かったのですが、お互い話し合ったり、長い開発期間の間でゲームシステムなども二転三転しつつ、今の『朧村正』に落ち着きました。
仕様書も何回か変遷を経て、できあがったゲーム画面は初回近いイメージだったので、あれ、なんかコレ見たことあるな」と(笑)。当初の仕様から最も変わった部分でいえば、「Wiiリモコン」の扱いくらいだと思います。
――それはたとえば操作方法が今とは違って、より直感的に「Wiiリモコン」を振って操作するものだった、ということですか?
◆はしもと氏
はじめは「忍者ゲーム」ということで、色々と夢が広がるわけです。手裏剣を「Wiiリモコン」振って投げさせようとか、畳返しは「Wiiリモコン」で再現できないか――など。でも、RPGなので「Wiiリモコン」を毎回ハデ振るような操作にすると、プレイヤーがすぐ疲れてプレイ出来なくなってしまう。
結果、たどりついた操作方法は、リモコンとヌンチャクを利用して、片手でも、それこそ横になりながらでも同じテンションでプレイできるものになりました。いってみれば、クラシックコントローラやゲームキューブコントローラよりも「楽にゲームする方法はないのか」を突きつめた格好ですね。
――先日の秋葉原での体験会では、クラシックコントローラが出展されていましたが、おすすめの操作方法はどれですか?
◆はしもと氏
正直なところ、開発中はゲームキューブコントローラが一番だと思っていました。コアにやり込みたい場合って、ゲームキューブコントローラは操作感はもちろん、その軽さもちょうどプレイしやすいんです。
ただ、今おすすめするとしたら、リモコン+ヌンチャクです。ゲームキューブコントローラはパッドとして非常に完成されていますが、反面、操作を「両手で」やらなければならないわけです。一方、リモコン+ヌンチャクの場合、「ヌンチャクで移動、リモコンでアクションを行う」といった具合に、移動とアクションを分離させることができます。先ほど言った「楽にゲームする方法はないのか」を考えると、やはりリモコン+ヌンチャクが一番だという結論になりますね。
――たしかに、戦闘に突入しないかぎりは、ヌンチャクだけで移動できますから、片手でラクチンですよね。
◆はしもと氏
ええ。それこそ移動の時なんかは、横になって片手のヌンチャクだけで遊んでもらうのもいいと思いますよ。
――しかし、意外な感じがします。「Wiiで、2Dで、横スクロールのアクション」だと聞いていましたから、操作はリモコンを(横にして)両手持ちで、もっといえばゲームキューブコントローラでの操作を想定したゲームデザインだと、個人的には予想していました。
◆はしもと氏
そうですか? …まあ、作り始めの頃はもちろん「クラシックコントローラだけの対応にしようか」という話もありましたよ。コア志向だった頃ですね。ただ、ゲームデザインを進めていくうち、みんなが楽しめる「無双」モードと、シビアにやり込む「修羅」の2種類を入れようとなった段階で、「みんなが楽しめるモード」を入れるなら、「みんなが楽しめる操作=リモコン+ヌンチャク」でなければ駄目だろうと気づいたんです。
また、「修羅」を遊ぶにしても、最終的にはリモコン+ヌンチャクが一番プレイしやすいと感じるはずです。
――「修羅」のキビしい戦いでも、リモコン+ヌンチャクの操作が向いているということですか? クラシックコントローラや、ゲームキューブコントローラの操作よりも。
◆はしもと氏
リモコン+ヌンチャクは、楽な姿勢でプレイできるじゃないですか。つまり、長い戦いに向いているんですよ。「修羅」は敵の強さが増すので必然的に戦闘が長引きますし、RPGというジャンル上、プレイ時間もある程度は長くなりますからね。楽な操作こそ、「修羅」に向いているんです。
――実際にプレイさせてもらいましたが、操作感がこれまた意外に感じました。「忍者、アクション」というキーワードから、軽快なジャンプで攻撃やトラップを避けつつ、敵を小太刀で走りながら斬っていくゲーム、などと勝手に想像していたんです(笑)。
◆はしもと氏
あー、なるほど。
――プレイ後の感想としては、爽快なプレイ感ではあるんですが、各アクションを反射神経で入力するというよりは、ひとつひとつの操作を重ねていくことで、爽快なアクションが成立するという印象です。なんとなく感じるんですが、『朧村正』って格闘ゲームっぽくないですか?
◆はしもと氏
そうですね。「修羅」はより格闘ゲームに近いかもしれないです。ザコ戦も一戦一戦がじっくりとした真剣勝負ですし。『朧村正』はアクションRPGですけど、戦う箇所に関してはユルくない内容にしたかったということもあって。
――あと、『朧村正』のキャラクタは2Dの横スクロールアクションのデザインとしては、頭身が高めに描かれていると思うんです。それもあって、より格闘ゲームっぽいなぁと。
◆はしもと氏
開発スタッフ間にも、結構「世代の格差」的なものがあるんです。それこそゲームセンターで対戦格闘を遊んだり、家のテレビで2Dのアクションゲームをやり込んだ世代と、そこから大きな隔たりがあって若い世代のスタッフがいる。
で、私も含めた前者が当時やりこんだゲームは、今ほとんど皆無なんですね。やりたくても、対戦格闘や2Dのアクションゲームはあまり見なくなってしまっているので、あんまり遊ぶものがない。そういった現状に対するフラストレーションが爆発した結果が『朧村正』! …と、いえなくもないですね。
――敵を斬り上げて、敵が空中にいる間にジャンプで追いついて、地面に着地さないまま追撃するというアクションなどは、某『VS.』シリーズのエリアル攻撃の匂いを感じるんですが(笑)。
◆はしもと氏
私も以前いた所では、格闘ゲームをを作っていましたし、スタッフの中にもそういう経緯の者が少なくないんです。今回はそういった世代と新しい世代の合わさったスタッフだからこそ、爽快と言って頂ける物になったのではないかと思います。
――ヴァニラウェアさんとしても、格闘ゲームよりのアクションパートを作りたかったということですか。
◆はしもと氏
というよりは、「じっくり遊べるものを作る」というヴァニラウェアさんの制作スタンスが理由だと思います。ヴァニラウェアさんのゲームって、ステージ一つとってもサッと過ぎ去ってお終いというものではなく、何度も訪れることで「おお、背景まで動いてる!」といった驚きがあったりするじゃないですか。
つまり、じっくりと遊べるステージをつくる、じっくり聴ける音楽をつくる、じっくり楽しめる物語をつくる、といった先に「じっくりプレイできるアクション」をつくろう、という結論に達したということです。
――冒頭の世界観の話をもう少しじっくり伺います。月並みではありますが、世界観をつくる際に参考とした映画や小説、あるいは資料などはありますか?
◆はしもと氏
どちらかというと映画や小説よりは、史実を調べるための文献に多くあたりました。講談風のしゃべり方もそうですが、能の舞台も参考にしていますよ。
――登場するキャラクタは、町に登場する端役であっても、いわゆる「町人ことば」というよりは、舞台のセリフ回しのような話し方をしますよね。みんな、粋な感じです。
◆はしもと氏
そうですね、まさに舞台。道端で出会うお姉さんなんかも「~やぁ」なんて口調ですし。町人のしゃべり方は、古典的な江戸講談を参考にしています。そのあたりが粋な感じに聞こえるんじゃないでしょうか。
イベントシーンでいえば、ボス戦に突入する直前でキャラクタが横から出てきますが、あれは能の舞台なんですよね。舞台があって、演者であるキャラクタがいて、彼らに話しかけていくことで物語が進んでいくという。
――となるとプレイヤーは、舞台を観ているお客さんといったところですね。
◆はしもと氏
舞台から引いて、客席から観劇しているような感覚になってもらえたら、嬉しいです。
――史実をもとにした舞台を観ているような……。
◆はしもと氏
ええ。史実にファンタジーや伝承を加えた舞台、といったところでしょうか。
――ファンタジーといえば、敵キャラクタを人間ではなく、妖怪や魑魅魍魎の類にした理由も「和風“ファンタジー”もの」だからですか?
◆はしもと氏
ワールドワイドな展開を考えた時に、日本の「飢鬼」を海外ではどう訳すのか、「ゴブリン」でいいのか? というような迷いは多少ありましたが、結局敵は「妖怪」でいくことになりました。先ほどもいいましたが、分からないなら分からないなりに楽しめるのがファンタジーなので。「龍神」をゲーム中に登場させても、欧米の方に「ああ、ドラゴンのことだね」と大まかには理解してもらえるんですよ。むしろ、異なる解釈を楽しんでほしいです。
「海坊主」なんかは、喜ばれる国は少ないでしょうね。タコとかべたりしませんし、不吉ってイメージが日本より強いですから、いい意味でかなり嫌がられると思います(笑)。
――『朧村正』には、「百姫」と「鬼助」2人の主人公がいます。「鬼助」の方は仲間を裏切ったために追われる「抜け忍」ということですが、そのあたりは昔の、たとえば忍者マンガを参考に?
◆はしもと氏
セリフはもちろん、イラストも含めてなんですが、『朧村正』のキャラクタは、子どもにはちょっと理解しづらい、怖いと感じるテイストかと思うんです。でも、少しだけ背伸びして遊んでもらいたい。
たとえばですけど、ファミコン時代のゲームキャラクタのイラストって、ちょっと怖かったじゃないですか。ゲーム内では単なるドット画なんですが、パッケージでは劇画マンガばりにおっかなく描いてある。でもそのギャップも面白さの内というか、魅力だと思うんです。最近ではなかなか味わえないレアな体験だと思いますし。
もちろん、大人のユーザーには、懐かしいテイストとして楽しんでもらえるはずです。「鬼助」に、昔の作品にも通ずるテイストを感じたり、最近アクションゲームをやっていないという方にも手に取ってもらいたいです。
――低年齢層をあえて突き放しているとのことですが、『朧村正』で想定されたプレイヤー像を教えてください。
◆はしもと氏
Wiiでゲームを作るとなると、カジュアルでライトで、「幅広いユーザーに訴求したい」ってなると思うんですが、私たちの考えるユーザーはそこにはいないというか、コアな人にコアな作品を届けたいと思っていました。
Wiiを持っているけど、手ごたえのあるゲームがないからゲームをやっていない、もしくはそいういったゲームを求めている人。あとは、バーチャルコンソールで昔の作品をプレイするくらいで、今のゲームはやらないような人にも遊んでもらいたいと。
――プラットホームをWiiにした理由もそのあたりにあるのでしょうか。
◆はしもと氏
濃いユーザーに向けた濃い作品がWiiにあまりなかったというのもありますし、あとはロード時間がほぼなく、操作性も気持ち良くプレイしてもらえる環境が構築できると考えたからですね。
――では、企画のあり方として「Wiiありき」ではなかったと。
◆はしもと氏
さっきお話した、ヴァニラウェアさんの企画があってのことですから「企画ありき」ではあります。その上で、企画を実現するにはどのハードが良いか考えてプラットホームをWiiに決定した、という流れですね。それに、ヴァニラウェアさんも私たちも、今まであまり関わらなかったハードに挑戦したかったいうこともあると思います。
――プレイさせていただいた限り、ほとんどのキャラクタに音声が付いているようでしたが、フルボイスにしたのもこだわりが? 正直、端役までしゃべるので驚かされました。
◆はしもと氏
「和モノ」って、言い回しが独特じゃないですか。音声がないと「この狼藉者がぁ、なんとかでぇ~」なんて、理解しづらいと思うんですよ。「~なぁ」みたいな言い回しにしても、耳から入った方が届くはずですし。声優さんは大変だったと思うんですけど。
――それは確かに。声優さん方、収録時には苦労されたんじゃないですか?
◆はしもと氏
そこは上手く、サウンドのベイシスケイプさんが言いまわしの出来るキャストを揃えてくれたので、本当によりゲームの“格”みたいなものを上げてくれたと思います。
――個人的な話で恐縮なんですが、僕は体験会で百姫をプレイしているユーザーさんの後ろで「あれ、この声は沢城みゆきさんじゃなかろうか」と気になって仕方ありませんでした。
◆はしもと氏
あの時はキャストを公開していなかったんですが、よくわかりましたね。沢城さんは別のゲームでお世話になった時もそうだったんですが、本当に役作りの努力家というか、物凄く演じるキャラクタの事を考えてくれるので、これ以上ない百姫を演じていただけましたね。
――はしもとさんは、声優陣のキャスティングにも関わっていらっしゃるんですか?
◆はしもと氏
今回はプロデュースなので、私の方でリスト化やオーディションまでは行っていませんが、ヴァニラウェアさんとベイシスケイプさんでやり取りしていたキャストの確定前にはこういった感じにして欲しいとか意見は伝えています。
キャスティングの決め手になったのは、やっぱり言い回しです。とにかく、「和モノ」独特な言い回しをキチンと台詞として言える方。
――声優陣を見てみると、本当に上手い方が出ていらっしゃいますよね。
◆はしもと氏
やっぱり上手い人でないと、講談の口調とか厳しいですからね。メインキャラクタ以外のキャスティングでも、お経とか専門職でやられてる方とか、かなり聞き応えはあると思います。
――そういえば、百姫の口調っていわゆる「お姫さま言葉」じゃないですよね、舞台っぽいというか、講談風というか。
◆はしもと氏
舞台にあがってきて、台詞を「まわす」感じですね。それに、百姫はゲームが進むと人格が剣豪の「陣九朗」と入れ替わるので、沢城さんのファンには堪らないかもしれないです。オッサンっぽく話す沢城さんの声が聴けるという。沢城さんの声で、お酒呑んで「ガッハッハ!」みたいな(笑)。「陣九朗」の声は中田譲治さんなので「譲治さんみたいにお願いします」という風に演じてもらっています。
――百姫と陣九朗って、その、「中では」どうなっているんですか?
◆はしもと氏
ふたりの人格が押し合いしていて、代わる代わる表に出てくるような感じです。
――そんな百姫のエピソードはというと、ちょっと唐突で分かりにくいですよね。人格の入れ替わりに関しても、特に説明がなくゲームが始まるじゃないですか。
◆はしもと氏
アクションをメインにしたいというのがあったので、全部のエピソードを1から10まで丁寧に語るというよりは、4幕、5幕と遊んでもらう内に話の全貌がわかってくる、という展開にしました。なので、割と最初のデモシーンなんかは、なんで? と疑問を持たれると思いますけど、敢えてそうした作りにしたんです。
マルチエンディングでもありますし、何度かプレイしてもらうとゲーム中の謎や複線が解決していきます。繰り返し遊ぶことで手に入るアイテムや、異なった展開にも出会えるので、じっくり楽しんでもらえると思います。
――エンディングはいくつかありますけど、それぞれ語られる結末がかなり異なるので、驚きました。
◆はしもと氏
そうですね。あっちではこうだけど、こっちではこうだったの?みたいな。ちなみにエンディングもフルボイスなので、声優さんの演技も楽しんでもらえると嬉しいです。
――あまり百姫の話ばかりしていると、もう一人の主役・鬼助のファンに申し訳ないので……鬼助の収録はどうでしたか?
◆はしもと氏
百姫は一人二役が特徴でしたが、吉野裕行さん演じる鬼助は見栄をきる演技が特徴ですね。「オレは記憶を失くしているけど、でも、~でぇ!」みたいに、カッコよく見栄をきる場面が印象深いです。あとは記憶がなかろうが、騙されていると気づいていようが、無視して突き進んでいく男っぽいキャラクタなので、男性陣からは大変好評でした。
――鬼助って、一昔前のヒーローですよね。今はもうあんまり見られない、「あしたの●ョー」の矢吹●ョーみたいに、ヤセ我慢の美学みたいなものを感じます。
◆はしもと氏
もうちょっと前ですね。「うおぉぉ、オレはやるぜ!」という熱血タイプの主役が出てくる前のヒーローで、淡々と進んでいく、寡黙で強いタイプです。ちょっとシニカルな部分もあったりして。鬼助がカッコ良く見えるのって、今いないタイプだからというのもあるかもしれないですね。でかいことを言うんだけど、ちゃんと実行するという。
――では、百姫はどういったキャラクタなのでしょうか?
◆はしもと氏
陣九朗が入ってくるまでは、好きな食べものを前にすると喜んじゃうような、普通の女の子です。陣九朗と出会ってから戦うことによって、だんだんと強く成長していくという、RPGなので心の部分でも成長が描かれていきます。
――あの、メインイラストが公開された時からちょっと気になっていたんですが、『朧村正』は百姫がメインのお話なんでしょうか? イラストの立ち位置とか、紹介の順番とか、百姫の方が鬼助より前に来ていますよね?
◆はしもと氏
いえ、別にそういうわけじゃないですよ。どうしても、ユーザーさん的にも女の子の方が喜ばれることが多いので、百姫メインで紹介されることは多いみたいですけど。鬼助、百姫の二人とも主役です。また、百姫のストーリーは今まで知らなかったことを知っていく、という物語の描かれ方なので入りやすいということも、メインに捉えらえる理由かもしれませんね。
――まあ、後は単純にカワイイですしね、百姫。
◆はしもと氏
ゲーム中ほぼ、オッサンですけどね(笑)。
――冒頭の話に少し戻っちゃいますが、タイトルの『朧村正』というのは、刀の名前なのでしょうか?
◆はしもと氏
難しいですね。ネタばれになっちゃうので(笑)。本来、「村正」というのは刀の名前ですよね、それがこの作品では……といった感じです。
――ゲーム中、かなりの数の刀が登場するようですが。
◆はしもと氏
108本です。煩悩の数というか、除夜の鐘というか、日本人にとってキリのいい数ですね。ゲーム中は3本の刀を持っていけるので、強いけど壊れやすい刀をボスに持っていくなど、戦略面でも楽しめると思います。
――では、最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
◆はしもと氏
ずっとゲームショウなどで注目していただいた方には、お待たせしました。ついに発売です。「和風ファンタジーもの」ということで、アクションはもちろん、歩いているだけでも楽しめる世界観になっています。作品のテイストに懐かしさを感じる方はもちろん、普段アクションゲームをやらない方にも手にとってもらえればと思います。
――本日は、ありがとうございました。
(ジーパラドットコム編集部/広田貴久)