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| 『THE KING OF FIGHTERS EX ~NEO BLOOD~』 主人公チームプロローグ |
| 鈍色に曇った空が、雑多で不健康そうな――薄汚れた町を圧している。少しがたついた窓枠に腰かけ、草薙京はぼんやりとその町並みを見つめていた。 と、そこへ大股で階段を駆け上がってくる元気のいい足音が聞こえてきた。 「――おーい、生きてるー?」 大きな紙袋を抱えて部屋に入ってきたのは、京と同様、この町には今ひとつ馴染まない純日本風の顔立ちをした少女だった。ただ、その表情に大和撫子にはない快活さがあるのは、脱色して金色に仕上げた髪のせいだろうか。京は少女を一瞥をくれて小さく舌打ちした。 「ヒトのウチに入ってくる時にはまずノックするのが常識じゃねえのか、おい?」 「あ、ナニよ、そのいい方? せっかく食べるもの持ってきてあげたのに……そもそもこの部屋を捜してあげたのは誰だっけ?」 少女がそう切り返すと、京は不貞腐れたように鼻を鳴らして口を閉ざした。 「相変わらず愛想ないわねー」 溜息混じりに肩をすくめた少女は、紙袋を置いたテーブルの上に真っ白な封筒があるのに気づき、何気なくそれを手に取った。 「何なの、これ?」 「あっ……待て、こら、おまえ!」 少女が勝手に封筒を開けようとしているのに気づいた京は、慌ててそれを止めようとしたが、彼女が中身を引きずり出して一読するほうが早い。ほどなくして顔を上げた少女は、少しく興奮したようにいった。 「!……これってもしかして、キング・オブ・ファイターズの招待状じゃないの!?」 「……まあな」 少女から目をそらし、京は苦々しげにうなずいた。 「――ったく、いったいどうやって俺の居場所を突き止めて、毎度毎度そんなモン送ってきやがるんだか……」 「そんなことどうだっていいじゃない。これがあれば出場できるんでしょ? やった、ラッキー!」 浮かない顔をしている京をよそに、少女は無邪気にはしゃいでいる。京は大袈裟に嘆息して前髪をかき上げた。 「おまえ……前もそんなようなこといってたけど、本気で出るつもりなのか?」 「当たり前でしょ? 異種格闘技大会の最高峰、キング・オブ・ファイターズ! 前々から出てみたいと思ってたのよ。その招待状がこうして京くんのトコに届いたんだもん、このチャンスを逃す手はないじゃない?」 「おまえが考えてるほど甘いトーナメントじゃねえんだぞ、アレは?」 「別に甘く見てなんかいないわよ。――だいたい、わたしの実力には京くんだって一目置いてるでしょ?」 「置いてねえよ。……ま、女にしてはわりとやるほうだけどな」 「素直じゃないわねー。とにかく、出場するにはメンバーを揃えなきゃいけないんだし、だからわたしが一緒に出てあげるってば」 「ナニ勝手に決めてんだよ」 京は溜息混じりに苦笑したが、しかし、彼女を強く突っぱねることはできなかった。ストリートファイトで食うや食わずのその日暮らしをしていた京のためにこの安アパートを捜し、何くれとなく世話をしてくれたのはこの少女――葉花萌である。お嬢さまの気まぐれだと判っていても、そういう恩がある以上、京のほうが立場は弱い。 「――何かねー、放っておけないのよ、京くんて」 「何だよ、それ? 俺に惚れたか? いっとくがな、俺には日本に――」 「バカ、違うわよ」 京の顔面に、萌が買ってきたホットドッグが飛んでくる。それを受け止めてもそもそとかじりながら、京は、いつになく神妙な萌の顔を見て首をかしげた。 「何かこう……初めて京くんを見た時にね、ぴぴっと来るものがあったのよ。初めて会った気がしなくて……」 「初めて会った気がしない、か……」 それは京も感じていたことだった。だが、それはただ単に、異邦の地で同じ日本語を喋る人間と知り合ったことから来る錯覚だと考えていた。もし以前どこかで萌と会っていたなら、いささか自己中心的なこの快活な少女のことを忘れることなどまずありえないだろう。 と、ふたりが揃って口を閉ざした束の間の沈黙に割り込むようにして、戸口のほうから若い男の声が飛んできた。 「おやおや、ひょっとして邪魔しちゃったかな?」 「紅丸……!」 「よう、元気そうだな、京」 開けっ放しのドアに寄りかかり、京に向かって陽気にウインクしていたのは、かつて同じチームで京とともにKOFを闘ってきた天才シューター、二階堂紅丸だった。 「よく来たな、紅丸!」 「よく来たなじゃないっての。人を呼びつけるのはいいが、それならそれで駅まで迎えにくるぐらいしろよ。おかげでエラく態度の悪いタクシーに乗るハメになっちまったぜ」 「そりゃ当然だ。このへんにゃお上品なタクシーなんざそもそもいねえからな」 お互いの実力を確かめ合うかのように、京と紅丸は握手の代わりに拳を軽く叩き合わせた。そんなふたりをじっと横目に見つめていた萌が、わざとらしい咳払いをひとつして、男たちの目を自分に向けさせる。 「京くん、紹介くらいしてくれてもいいんじゃないの? 同じチームの仲間として」 「同じチーム?」 それを聞いた紅丸は、久しぶりに再会したはずの京を無造作に押しのけ、いかにもといったハンサムスマイルを浮かべて萌に歩み寄った。 「三人目はまだ決まってないって聞いてたんだが……きみが俺たちとチームを組むって? 本当に?」 「あら、もしかしてわたしの実力を疑ってるわけ?」 「とんでもない、女性だから弱いだなんて決めつけるのは頭の悪い男のすることだよ。美しい女性は歓迎する。その上強くて頼りになるなら大歓迎さ。――俺は二階堂紅丸。よろしくお嬢さん」 「わたしの名前は葉花萌、一応日本人よ。こちらこそよろしくね、紅丸さん」 「萌ちゃんか。……いいねえ、今年の大会は華やかになりそうだ」 「ホント変わってねえな、おまえ……」 相変わらず女性にはマメな紅丸を見やり、京は呆れたように溜息をもらした。だが、そんな紅丸がかたわらにいると、いよいよKOFが始まるのだという実感が湧いてくる。本格的な闘いから長く遠ざかっていた京にとって、それは、軽い緊張と、それをはるかに上回る心地よい昂揚感をもたらしてくれた。 そして同時に、今度の大会でもあの男との邂逅が待っているに違いないと、さしたる根拠もなしに京はそう直感していた。 「俺が生きてここにいるってことは、あの野郎もそう簡単にくたばっちゃいねえはずだが……ああ、そういや――」 それもある意味では紅丸の才能のひとつなのかもしれないが、すでに紅丸と萌は昔からの知り合いのように打ち解けて他愛ないお喋りをしている。ほがらかによく笑う萌をぼんやりと見つめ、京はぽつりとひとりごちた。 「――あいつと初めて会った時も、やっぱそう感じたっけ。 ……こいつとは何かある、初めて会った気がしないって……」 |
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