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| ――最初に、ワークジャムによる『探偵
神宮寺三郎』の権利取得(※1)から新作が決定するまでの経緯についてお聞かせください。 |
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神長:
データイースト(DECO)さんがゲーム事業から撤退する時に、いろんなタイトルの権利を売りに出しておられて、その情報をたまたまWEBで知った弊社(ワークジャム)のスタッフが僕に教えてくれたのがきっかけです。
元々、神宮寺は1作目からの大ファンでして、同時に『クロス探偵物語』と同じ探偵ものということで随分意識もしていました(※2)。
それほど好きな作品だったので、権利取得するしない以前に、自分の中で構想が膨らむわけですよ。それで、「ああ、これはいいかもなぁ」なんて一人で勝手に納得してみたりして(笑)。
そこで弊社の社長と相談して、僕と二人でDECOさんにお願いをしに行きました。お話をしたところDECOさんには弊社の開発力を高く評価していただいており、「ワークジャムなら神宮寺をお譲りします」と仰っていただけた。弊社以外の何社ものオファーを全てお断りされているという状況だったそうなのですが、弊社を選んでいただけた事は本当に嬉しく思います。
ただ、DECOさんはひとつ条件をお付けになりまして、それは「もしワークジャムが神宮寺をやめるときは、他の会社には権利を売らず、またデータイーストに買い戻させて欲しい」というものでした。DECOさんは神宮寺にとても愛着がおありなのでしょうね。
そこから制作が始まるのですが、過去の作風を変えたくなかったので、まず寺田克也さんにお願いしに行きました。それから、以前面識のあった西山さん(※3)にプロデュースをお願いして、散り散りになっていたオリジナルのスタッフ集めに奔走していただきました。本格始動はそこからですね。
※脚注1
ワークジャムは過去作を含む全ての『探偵 神宮寺三郎』の権利を取得。
なお、現在販売されている「Early Collection」、『未完のルポ』、『夢の終わりに』、『灯火が消えぬ間に』はメディアリング社が販売元。同社はこの4作品における『PlayStation廉価版』の販売権を所有している。
※脚注2
『クロス探偵物語』の第1章で、主人公・黒須剣が『理想の探偵像』を妄想するシーンがあるが、ここで使われているのが神宮寺にソックリのシルエットである。 |
※脚注3
元データイースト社で数々の作品に携わったプロデューサー。神宮寺シリーズでは『夢の終わりに』と『灯火が消えぬ間に』を手掛けている。神長氏とは'97年頃、某ゲーム誌の対談企画で初めて顔を合わせている。西山氏はDECO社を退社後、既にフリーで幅広い活躍をしていたが、今回神長氏からのラブコールに応え、再び『神宮寺』の制作に参加となった。 |
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| ――シナリオの構想はすぐに出来上がったのでしょうか。 |
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神長:
『クロス探偵物語』の重点はトリックとキャラクターなのですが、『神宮寺』ではストーリーそのものというか、人間ドラマの部分にあると思います。推理やトリックよりも、神宮寺がどうカッコよく事件を解決するか、その過程を面白くするのが神宮寺らしいと思いますね。
僕には僕なりの神宮寺像というのがあって、それはこれまでDECOさんが作ってきた神宮寺像と少し違うものでした。
これまでの神宮寺というと、常に冷静沈着なスーパーマンだったと思うんですよ。しかし僕の神宮寺はそうではなくて、弱さや脆さを持った一人の人間として描いてみたかったんです。 |
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| ――これまでの神長作品はライトなノリの作風でしたが、神宮寺は初のハードボイルドということで、執筆の苦労はありましたか? |
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神長:
黒須剣(『クロス探偵物語』の主人公)というキャラは自分で一から創作したキャラなので、頭の中で彼に質問を投げかけるとすぐ答えが返ってくるのですが、神宮寺の場合はわからないんですよ。なかなかキャラになりきれない。
例えば、神宮寺は女性の胸をポインタでクリックしたら何ていうのか、とかね(笑)。これまでは「いまはそんなことをしてる場合じゃない」とか「素敵なブローチだ」とか上辺のことを言っていた。どうも過去作においては、神宮寺が返事に困るような質問は最初から盛り込まないという約束事があったように思えるんです。
僕の場合は、あらゆる状況でその人物がどういう言動をするかを完全に理解しないと書けないので、執筆の上でこの「約束事」が大きな障害となりました。神宮寺を自分の中で落とし込んでいくのにすごく時間がかかって、困ったときは西山さんに詰め寄ったりしてました。そこが一番苦労したところです。 |
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| ――映画の脚本家などの間では「原作物はオリジナルより書きやすい」と考える方も多いようですが? |
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神長:
映画は決められたストーリーに沿ってキャラを動かすだけなので、ある意味ラクなのですが、ゲームはキャラの行動をユーザーを選んでしまうので、好き勝手に動かされた際のセリフをいちいち用意しなくてはいけない。その分だけ
大変とも言えます。
そういう細かいセリフを書くには、やはりキャラの人間性を隅々まで理解できないと難しいんです。時折見かけるのですが、ストーリーを進行させるために、途中で都合のいいようにキャラの性格が変わる作品があって、
僕はそれが凄く嫌なんですね。だから最初に自分の中でしっかりキャラを理解して、彼らの自然の行動に任せないと、なかなか書くことができない。そこが最も時間のかかる部分で、シナリオを完成までの時間が10だとしたら、実際の執筆時間は最後の2くらいなものです。
そして今回、そのようにして神宮寺と洋子の性格を作っていくと、これまでの二人の関係に矛盾と言うか、不自然な部分が見えてきちゃったんです。それで散々悩んだ挙句、西山さんに「今回はこう変えたいんだけどいい?」って聞いてみるんですが、大抵は「その問題には触れないで置こう」(※4)という答えが返ってきて、非常に困ってました(笑)。神宮寺は全く厄介なキャラで、シナリオを書き終えたいまでも全貌が掴みきれてないような気がします。
※脚注4
そうは言いつつも『Innocent Black』では、「過去作の制作者が敢えて誰も触れなかった部分」に鋭くメスが入れられた。
それが一体何であるかは、次回のインタビューで明かされるであろう。 |
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| ――『クロス』、『神宮寺』と探偵ものが続きましたが、
元々ミステリー分野に深い造詣がおありだったのでしょうか? |
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神長:
実は探偵物のフィクションってほとんど読んだことがないんですよ。「あなたは名探偵」のような推理パズルを解くのは好きだったんですけど(笑)。『クロス』の企画を立ててから初めて「シャーロックホームズ」を読んだかなぁってくらいです。
ただ、映画の「羊たちの沈黙」を観て、初めてミステリーは奥が深い、と感心しました。その後トマス・ハリス(※5)の小説は全て読みまして、本当に凄い作家だと思っています。
※脚注5
米国のミステリー作家。寡作な作家として知られ、'75年の文壇デビュー以来これまで4作品しか発表していない。著者の圧倒的知識量が反映された緻密なストーリーと巧みな文章によって4作品全て圧巻の完成度を保ち、天才作家の名を欲しいままにしている。
代表作:「羊たちの沈黙」('88) 「ハンニバル」('99) |
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| ――最後に神宮寺ファンへメッセージをお願いします |
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神長:
ヒーローではない、生身の神宮寺を描いたことで、これまでで最も毛色の変わった作品になったと思います。
過去作のファンからは賛否両論あるかもしれませんが、ぜひプレイしてみてください。僕なりの神宮寺像を気に入ってもらえたら嬉しいですね。 |
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