ゲームレビュー  
6年半ぶりの『ヴァルキリー』。
その完成度は!?
2006.07.12
『ヴァルキリープロファイル2 -シルメリア-』公式サイト
 
 

   『ヴァルキリープロファイル(以下、VP)』と言えば、『スターオーシャン』シリーズなどで知られるトライエースが手がけたプレイステーション(以下、PS)後期の名作RPG。「神」レベルと言われた美しいドット絵や、北欧神話を元にした独特の世界観、奥深いキャラクター育成などで、PSユーザーたちの度肝を抜きまくった作品だ。
  そんな『VP』の続編となる『ヴァルキリープロファイル2 -シルメリア-(以下、VP2)』が、前作から6年半もの時を経て登場した。前作といい今作といい、ハードが後期にさしかかってくると舞い降りるのが『ヴァルキリー』の宿命なのか……。ともかく、「待ってました!」と手を叩いたファンもきっと多かったはず。ハードもPSからPS2へと進化し、あの名作がどのように生まれ変わったのか? 気になる出来映えをレポートしてみたい。


■深みと神秘性をたたえた、独特の神話世界

  舞台は前作よりも数百年前にさかのぼる。前作では滅びてしまっていた都市・ディパンがまだ栄えていたころの時代――ディパンの第一王女・アリーシャを主人公として、本作の物語は描かれていく。
アリーシャの肉体には、かつてオーディンに反抗したために、不完全な状態で転生させられてしまったヴァルキリー・シルメリア(前作の主人公レナスの妹)が、二重人格のような形で宿っていた。シルメリアを危険視するオーディンは、シルメリアの覚醒を知り追っ手を差し向けるが……。

 タイトルにもある「ヴァルキリー」とは、北欧神話に登場する戦乙女のこと。いきなり「北欧神話」と言われてもピンとこないかもしれないが、『ファイナルファンタジー』シリーズの召喚獣としてお馴染みのオーディン、フェンリルなどをはじめ、グングニルの槍や世界樹ユグドラシルなど、北欧神話がモチーフとなっているゲーム用語(?)はけっこう多い。ゲームファンにとっては、意外と馴染み深い世界観だったりするのだ。
『VP2』の大きな魅力として挙げられるのが、この「北欧神話」の世界を描いている点だろう。ゲームファンにとっては比較的身近であるにもかかわらず、あまりストレートに描かれることがなかったこの神話世界は、よくある「剣と魔法」の中世ファンタジーとはまた違ったはかなさ、美しさを持っている。「エインフェリア」や「ラグナロク」といった独特の概念にちょっと戸惑うかもしれないが、物語はあくまで「人間」としてのアリーシャを主体として描かれていくので、入り込むのはそう難しくない。シルメリアの「器」になってしまったために、神々との壮絶な戦いへと巻き込まれていく彼女の数奇な運命もまた、プレイヤーを強烈に惹きつける。

 グラフィックはドット絵からポリゴンへと変更されており、ドット絵好きな筆者としては、あの神業的ドット絵が見られなくなってしまったのは少々残念なところ。が、その「残念感」を補ってなお余るほど、本作のグラフィックはすばらしい。全体に霧がかかったような「深み」をたたえた映像は、荘厳な神話世界にさらなる説得力を持たせている。キャラクタの頭身も、3頭身から8頭身へと変更されているが、前作のイメージと比較しても違和感はまったくなかった。前作に登場した街やキャラクタも出てきたりするので、前作と比べてグラフィックがどのように進化したのか、見比べてみるのも楽しいだろう。


■戦略性、緊張感、爽快感すべてが詰まった戦闘システム

  また、世界観と並ぶ本作のもう一つの魅力が、爽快感抜群の戦闘システムと、やり込み上等! なキャラクタ育成システムだ。
『VP』の戦闘と言えば、仲間4人の攻撃を○×△□の4ボタンにそれぞれ割り当てた操作が特徴。4つのボタンをポンポン押していくだけで、軽戦士(△)が敵を打ち上げ→魔術士(○)と弓闘士(×)が追い打ち→最後は重戦士(□)が特大の一撃でフィニッシュ! ――と、格闘ゲーム顔負けの連続攻撃がドカドカ決まっていく気持ちよさは、とてもRPGとは思えないほどだった。
  もちろん『VP2』でもこのシステムは健在。加えて今回は、ただ殴るだけでなく、「移動」の概念が加わったことで、ちょっとしたシミュレーションRPG風になっているのが面白い。

 このへんは少々ややこしいので、順を追って説明しよう。前作の戦闘は、横視点・固定画面でいきなり敵と殴り合っていたが、今回はバトルが始まるとまず、専用の箱庭マップへと飛ばされることになる。マップ内の移動は、プレイヤーが動くと敵も同じだけ動く『不思議のダンジョン』風。パーティを操作し、うまく敵に近づくことができれば前作のような横視点の「戦闘モード」に切り替わり、晴れてコンボを叩き込むことができるというわけだ。
  当然、ただ漫然と近づいたのでは、敵の先制攻撃をボコボコ食らってしまう。敵にはそれぞれ攻撃範囲が設定されているので、これをうまく避けながら「プレイヤーだけが攻撃できる位置」をいかに確保するかがポイントとなる。行動力と相談しながら、敵の動きを読み、ダッシュで死角へと潜り込む感覚は、シミュレーションゲームのようでもあり、アクションゲームのようでもある。
「移動モード」でうまく先手を取り、「戦闘モード」で爽快なコンボをたたき込む――。これを繰り返しながら、見事マップ内の敵リーダーを撃破すれば戦闘終了だ。

 こうして書くとややこしそうだが、何より筆者が感動したのは戦闘時間の「短さ」だったりする。これだけのシステムを詰め込んでいるにもかかわらず、本作の戦闘時間はだいたい1~2分。移動~戦闘への移行もシームレスに行われ、ボタンを押した瞬間から即コンボスタートになるので、実際は移動! 撃破! ハイ次! ハイ撃破! といった感じでサクサク進んでいく。リーダーを撃破すれば即戦闘終了(残ったザコの分の経験値も獲得でき、しかも速攻で撃破した場合はボーナスまで付く)としたのも絶妙で、戦闘時間の間延びにうまく歯止めをかけている。
  しかもこの「1~2分」は、シミュレーションゲームの戦略性と、アクションゲームの緊張感と、格闘ゲームの爽快感がすべて詰まった、ものすごく密度の高い「1~2分」だ。ただ詰め込むだけでなく、それを1~2分という尺に収めた開発者のセンスと技術には脱帽するほかない。戦闘システムの「濃さ」は、最近のRPGの中でもピカイチじゃないだろうか。


■育成、編成のバリエーションは無限大

  バトルに出撃させる4人は自由に編成可能。プレイヤーは旅の途中、剣や杖といった遺品を見つけることで、その武器のかつての持ち主を実体化させ、共に戦わせることができる。このあたりは、戦死してしまった勇士(エインフェリア)を神界へと導くとされる「ヴァルキリー」ならではの設定だ。
  前作同様、エインフェリアたちはいずれも個性的で、それぞれ修得する魔法や攻撃のバリエーション、それに性格、背景設定などが異なる。お気に入りのエインフェリアを見つけ、育てていくのも本作の大きな楽しみだ。

 育成面でユニークなのが「スキル」のシステム。本作でスキルを修得するには、装備品に刻まれた模様(ルーン)が、特定のパターンになるよう組み合わせて装備する必要がある。たとえば、アイテムを使用する際に行動力を消費しなくなる「フリーアイテム」なら、“頭”、“腕”、“発揮”、“反抗”の4つのルーンで発動。この状態でしばらく戦っていれば、やがてそのスキルを修得し、使用可能になるというわけだ(修得してしまえば、装備は変更してしまってもOK)。
  最初のうちは使えるルーンの種類も少なく、修得できるスキルもごく限られているが、新たなアイテムを手に入れることでどんどん使えるルーンが増え、スキルの幅も広がっていく。『VP2』では、敵が落とす骨や羽などもアクセサリとして装備できるので、新しい敵が出てくるたびに「新しいルーンを落とすかも!?」とワクワクしてしまう。必要なルーンによっては、あえてランクの低い防具を装備しなければならなかったりするのも、なかなか悩まされるところだ。

 大勢のエインフェリアの中から、誰をレギュラーメンバーに加え、どのようなスキルを修得させるか? パーティ編成や育成のバリエーションはそれこそ、プレイヤーの数だけ存在すると言っていい。また、あんまり使わないようなキャラでも、育てて「解放」(パーティから外し、一人の人間として新たな人生を歩ませること)してあげることでレアなアイテムが手に入ったりするので、時おりメンバーを入れ替えつつ、まんべんなく育ててあげた方が最終的にはオイシかったりする。このあたりも、パーティメンバーの固定による戦闘のマンネリ化を防ぎつつ、プレイヤーのやり込み心をうまくくすぐってくれる。


■パズル要素たっぷりのダンジョン探索

  街やダンジョンのマップは前作同様、サイドビュー視点となっている。サイドビューのRPGというと今では珍しいが、筆者のようなオジサンからすると、昔懐かしい『ソーサリアン』や『リンクの冒険』『イースIII』なんかを思い出し、ちょっとニヤリとしてしまったりする。
  ダンジョン探索のカギになるのが、新たに追加された「光子アクション」。アリーシャは□ボタンを押すことで「光子」を飛ばすことができ、これを当てることで、敵やオブジェを一定時間結晶の中に封じ込めることができる。これだけでも敵との戦闘を回避したり、積み重ねて足場がわりにしたりと使い方は様々だが、もっとも頻繁に使うのはやはり、結晶にもう一度光子を当てることで発動する「交換転送」だろう。交換転送とは、読んで字のごとく、アリーシャと結晶の位置を入れ替える特殊能力。これを使えば、たとえばジャンプでは届かないような高い足場や、アリーシャが通れないような狭い通路でも、ちょっと頭をひねれば行くことができたりする。これら「光子アクション」を駆使しながら、パズル要素たっぷりのダンジョンを進んでいくのも、『VP2』の楽しみのひとつとなっている。

 また、ダンジョンのあちこちに設置された「封印石」も、『VP2』から追加された新要素のひとつ。封印石は、台座に置かれているうちはその周囲一帯の敵に影響を与え、台座から外して持ち歩けば、逆に自パーティへとその効果をもたらす。出現する敵やダンジョンに応じて、どんな封印石を持っていき、どんな封印石を設置するのがベストか。封印石の使いこなしも、ダンジョン攻略の重要なファクターと言えるだろう。

■PS2でふたたび生まれた「伝説」

  前作に比べ、様々な点で「進化」している本作だが、前作のデキが素晴らしかっただけに、ちょっとした不満もなくはない。
  たとえば、前作ではエインフェリアを仲間にする際、彼らが一体どのように死んでいったかが克明に描かれていたのに、今回はそれがなくなってしまい、遺品を見つけるだけでポンポン仲間になっていく。これでは感情移入どころではなく、ただの安っぽいお助けキャラだ。
  また、システムに凝りすぎるあまり、全体的にごちゃごちゃしてしまっている印象は否めない。十数時間遊んでもまだよく理解しないで使っているシステムがあったり(学習能力低すぎですか?)、いちいちルーンを確認しながら装備を変更しなければならなかったりと、「面白いんだけど、100パーセントは使いこなせないもどかしさ」みたいなものを感じてしまう。このへんもう少し、シンプル&ストレートにしてもよかったのでは、という気はする。

 とは言っても、ここまで述べてきた魅力に比べれば、これらの不満点など些細なもの。特に北欧神話を題材とした魅力的な世界観と、恐るべき密度とテンポを誇る戦闘システムは、PS2の歴代RPGと比べてもトップクラスの出来映えと言ってしまっていいだろう。前作『VP』がPSで伝説を生んだように、本作もまた、PS2の「伝説」として語り継がれるソフトになりそうだ。

(C)2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved. /Developed by tri-Ace Inc./Character illustration: KOU YOSHINARI/YOU YOSHINARI
 
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