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こんな“世間知らずな主人公”と“楽しい戦闘”は初めて!?『TOA』レビュー
2005/12/21
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[ナムコ「テイルズチャンネル」]
 スーパーファミコン時代から続くナムコのRPG『テイルズ オブ』シリーズ。その最新作『テイルズ オブ ジ アビス(以下アビス)』が12月15日(木)に発売された。本作はキャラクタデザインに藤島康介氏、テーマソングにBUMP OF CHICKENを迎え、『テイルズ オブ シンフォニア(以下シンフォニア)』のスタッフが開発を手掛けたシリーズ10周年記念作品だ。

 本作の舞台は、音素と呼ばれるエネルギー(のようなもの)が満ちた世界オールドラント。人々は自分たちの王よりも、ローレライ教団が詠む「預言(スコア)」を頼って生きていた。
 主人公・ルークはキムラスカ・ランバルディア王国の王家に連なる17歳の少年。幼い頃に誘拐されて以来、屋敷の中だけで生活を送っていた。その世間知らずの彼が、ある出来事を契機に世界中を巡ることになる。旅の中でルークは、世界のこと、人々のこと、そして自分のことを知る。

 戦闘は『シンフォニア』と同様の画面構成で、基本的な仕様も同じ。また、シリーズお馴染みの「チャット」「料理」「称号」といったシステムも用意されている。もちろん、これらはまったく同じというわけではなく、適度に手が加えられている。しかし、本作最大の特徴はこうしたシステム面ではなく、“描かれている主人公の姿”。それはもう、ビックリするような描かれ方なのである。

■蹴る!文句を言う!身勝手に振舞う!ルークってほんとにヒドイ!

 ほぼすべてのゲームで“主人公=プレイヤー”という図式が成り立つ。そのため、主人公というキャラクタは外見や性格が“良く”描かれている。そうでないと、なかなか感情移入できず、ゲームを続けようという気持ちにならないからだ。
 ところが、そんな固定概念を思いっきり打ち砕く主人公が現れた。その名はルーク・フォン・ファブレ。お前はホントにヒドイやつだ!
 確かに事前に公表されている資料によると「大変な世間知らずでわがまま」とある。それにしても、ヒド過ぎないか? ミュウを蹴るわ、仲間に悪態はつくわ、すぐにすねるわで、こんなに笑えない傲岸不遜な主人公は見たことない。「もう、操作したくない」と、本気で思っちゃった(実際、途中まではほとんど使わなかった)。
 なぜ、こんな子にしちゃったのよ? もしかして、キャラ設定に失敗? いや、そんなことはない。確信犯だ。仲間(この時点でそう呼べるかどうかは微妙だが)の言動から、“わざと”ルークをヒドイ人物に仕立て上げていることが分かる。これらは会話の端々で読み取れるのだが、とある街を舞台にして起こるイベントで決定的となる。
 では、もしかしてルークは一生このまま? 最初はそんな不安が脳裏をよぎったが、結果的には問題なし。ちゃんとルークも冒険の中で成長する。主人公っぽくなったよ。ゲームの数だけ主人公がいるけど、本作のような描かれ方をしたのは珍しいのでは? 今回は若干、キツイような気がしなくもないが、ルークをはじめとする各キャラクタの性格設定が丁寧に作られていることは確か。そのため、最後にはルークをキライじゃなくなっているから不思議。


■フリーラン、イイ!術もイイ!戦闘の面白さはシリーズ最高!?

 『テイルズ オブ』シリーズと言えば、「リニアモーションバトル」。『テイルズ オブ ファンタジア』では真横から見た2D画面だった「リニアモーションバトル」も作品を重ねながらカタチを変え、『シンフォニア』では斜め上から見た3D画面の「マルチライン リニアモーションバトル」になっている。そして、『アビス』の戦闘は『シンフォニア』のそれに手を加えた「フレックスレンジ リニアモーションバトルシステム」である。ちなみに、マルチタップを使うことで最大4人まで同時に戦闘に参加できるシステムも復活している。うれしい。
 と、長くて覚えにくいシステム名称は置いといて。具体的にどうなのかというと、基本的な操作感覚は『シンフォニア』と一緒。走って斬って技出して。これの繰り返しである。しかし、筆者が個人的に感じた『アビス』と『シンフォニア』の最大の相違点は「フリーラン」。
 戦闘画面が3Dとは言っても、『シンフォニア』では操作キャラはターゲットに一直線に走っていった。そのため、ターゲットと操作キャラの間に別のキャラがいると、進行が阻害されてしまった。しかし、『アビス』ではプレイヤーの好きなようにキャラクタを走らせることができるようになっている。障害となっているキャラを避けることも、ぐるぐる動いて逃げ回ることもできるようになっているのである。そして、実際にプレイをしてみると、この「フリーラン」が実に楽しい。“相手の攻撃を避けて、また攻撃”“ヒールストリームの枠にうまく収まり続ける”といった戦略面で大いに活躍してくれるのである。「フリーラン」は、プレイを大きく助ける、重要な仕様なのだ。
 さて、『アビス』にはもうひとつ、従来のシリーズから変更された特筆すべき仕様がある。それが、術を発動させる場所を任意で選べる「フリーターゲット」が設定されたこと。これまでは、術を発動するときに、対象となるキャラクタを決めていた。そして詠唱が終わるとターゲットが移動していてもちゃんと、そのキャラに術が当たっていた。しかし『アビス』では、術を落とす場所を自分で決めなければならない。つまり、ぼけーっとしていると、術が当たらないのだ。だって、詠唱中に動いちゃうんだもん。そう、確実に術を当てるには、仲間の攻撃や魔物の動きなどを見て、移動先を予想しなければならないのである。
 と、言うのは簡単だが、これがなかなか当たらない。自分ではうまく狙っているつもりなのだが、意外と難しい。ところが、繰り返し狙っているとだんだん当たるようになってくる。そうなるともう、こっちのもの。それまで敬遠がちだったジェイドやティアを使うのが楽しくなってくる。フリーランで走り回る近接攻撃系も楽しければ、じっと動かず的を狙う遠距離攻撃系もおもしろい。トドメに、離れた場所から弓で攻撃するナタリアもイイ。『アビス』の戦闘は、もしかしてシリーズ最高の出来なのではないだろうか。


■“ひらめき”で勝負!ミュウアクションが頭を柔らかくする!?

 ルーク一行は、ゲーム中で様々なダンジョンに潜っていく。しかし当然のごとく、すんなり最深部まで辿り着けるわけがない。「橋が切れている」「段差がある」なんてごくごく、当たり前。そこで登場するのが、ミュウである。
 ミュウは「火を吐く」「物を壊す」など、数種類のアクションを起こすことができる。使えるアクションの種類はゲームの進行に合わせて増えていくのだが、それは同時に、考えなければならないアクションのパターンも増えていくことを意味する。そのため、ダンジョンなどで詰まったときにミュウのアクションをいろいろと試す必要がある。
 さらに、ダンジョン内の謎解きのほとんどは、ノーヒント。自分の“ひらめき”だけが頼りとなる。とは言え、これらの謎解きがまるっきり手も足も出ないほど難解なわけではない。ちょっと悩んだフリをしているだけでも、「!」とか「!!」といったように答えが見えてくる。このアタリのバランスに対する感じ方は個人個人で違うと思われるが、筆者の率直な感想は「悪くない」である。少なくとも、無用な“イジワルさ”はなかったように思う。
 さて、ダンジョンの謎解きで活躍するミュウアクションだが、実は街中でもがんばってもらうことになる。具体的には、無造作に置かれている宝箱の開封。しかし、宝箱に火を当てたからって開くわけでは、もちろん、ない。ここでも、ちょっとした“ひらめき”が必要なのだ。
 ここで、中から出てくるアイテムは必ずしもスゴイものとは限らない。だが、そんなことは問題ない。開けられたことがうれしいのだから。なお、こうした街中の宝箱はいくつも存在する。全て開けられたときには、頭が柔らかくなっている!?


■これは過度な期待なの!?でも、一度良いものを見たら戻れないんだ!

 シリーズをすべてプレイした筆者にとって、『アビス』はなかなか遊び応えのある作品だった。しかし、言いたいこともある。
 『アビス』の発表時から、「開発陣は『シンフォニア』のスタッフ」と伝えられていた。『シンフォニア』がシリーズ最高の作品と信じている筆者は当時、これを聞いて小躍りするほど喜んだ。それまでの『テイルズ オブ』シリーズにはなかった「序盤のルート選択(ゲーム途中まで進め方が2種類あった)」「好感度」といったシステムを導入した『シンフォニア』のスタッフが、再び『テイルズ オブ』を作るのだ。『シンフォニア』で感動を与えてくれた前述のシステムを踏まえ、より一層の感動を与えてくれるのだろう、と。『シンフォニア』の後に発売された『テイルズ オブ リバース』『テイルズ オブ レジェンディア』の2作品にはなかった、両システムを復活させてくれるのだろう、と。
 しかし、残念ながら『アビス』にはどちらも含まれていなかった。もちろん、それが悪いわけではない。映画や小説に分岐がないように、ゲームにも分岐がなくて何が悪い。だが、筆者は『シンフォニア』で自分で道を選ぶ楽しさを知ってしまった。『シンフォニア』で“パートナー”を選ぶうれしさを味わってしまった。それも、他のRPGではなく、1995年から好きでプレイを続けている『テイルズ オブ』シリーズで。だからこそ、期待してしまった。“ここまでゲームを作り込んでくれた”という気持ちを味わわせてくれた「ルート選択」や「好感度」というシステムの再来を。だが、それは叶わなかった。残念である。
 それと、欲を言えばもう少し「10周年記念」を感じさせてくれる要素が入っているとうれしかった。確かに、歴代のキャラを無闇に登場させることが良いことだとは思わない。しかし、シリーズのファンが“ニヤリ”とする程度の“小ネタ”はもうちょっと入れてくれても良かったのではないだろうか(一部「人形」で入っているが)。たとえば『テイルズ オブ レジェンディア』の「骸骨の仮面」に関するスキット。ひとつのネタがこのくらいで良いから、いろいろとあるとうれしかったなぁ。せっかく「フランベルジュ」もあるんだし、固有名詞で「ノーム」とかも出てくるんだし。
 余談だが、予約特典のDVDに収録されていたスキットは素晴らしかった。ストーリーもおもしろく、登場人物も豪華。これぞ10周年記念!
 と、いろいろと書いてきたが『アビス』は実際に良くできた作品だ。戦闘は楽しいし、ストーリーも練られている。“音素(フォニム)”という独創的な設定を用いているにも関わらず、矛盾や疑問を感じさせないようにまとめられているのがすばらしい。また、最初はルークと同様に世界のことをまったくわからないプレイヤーが、ルークが旅をして様々なことを知っていくのと同じように、知識を深めていくようになっている。このシナリオ構成、“さじ加減”は実に絶妙だ。そう、『アビス』は安易な設定と安易なセリフ回しで安易に作られたRPGでは、決して、ない。心に残るシーンも山のようにある。クリア後、しばらくは余韻にひたれるほどのクオリティであることは間違いない。…さて、そろそろ2週目を始めるか。GRADE使って。
(ジーパラ編集部)
 


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