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隠さずに表現すること。
『テイルズ オブ ジ アビス』は描きたかった『テイルズ オブ』の形。
吉積プロデューサーインタビュー

2006/02/28

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 『テイルズ オブ ジ アビス』の発売から2ヶ月あまり。すでにクリアしたユーザーも多いことだろう。そして、その多くが“衝撃的”な表現に驚きを感じたのではないだろうか。既存の主人公像を打ち壊したルーク、次々と命を落としていく登場人物――。『テイルズ オブ ジ アビス』のプロデューサー・吉積信氏は、ゲーム中の表現を通して何を描きたかったのか。本作の持つテーマについてお話を伺った。
※このインタビューは2006年1月30日(月)に収録したものです。
まっさらなルークは自分を探す。そこには現代日本の若者の姿が重なる

ジーパラ:プレイ開始からルークに驚かされました。自分勝手で他人を思いやることができなくて。既存の主人公像とはあまりにもかけ離れているような気がしました。なぜ、ルークは主人公でありながらあのような性格なのでしょう?

吉積  :ルークの表現は、制作を進めていく中でとても悩みました。ですが、2005年は『テイルズ オブ』シリーズ10周年、それを記念する『テイルズ オブ ジ アビス』だからこそ、これまでのシリーズとは違う主人公、違う作品を作れるのでは、と思いました。なので、「もう、ユーザーさんに嫌われても良い。描きたいものを描こう」と迷いを吹っ切りました。
 ルークは、まっさらなんです。何も知らないんですね。生きていくうえでの基本的なことも知らないんです。そのため、彼に教えることは山のようにありました。そうした知識の詰め込みを優先的なことからやっていったために、社会情勢などには疎くなっちゃったんです。教える側も、そこまで手が回らなかったんですね。
  それに、ご存知のとおりヴァンには自分の計画がありました。そのためには、ルークに余計な知識は持って欲しくない、自分の言うことだけを聞くようになってほしい。そうしたヴァンの動きもあるうえに、公爵家の長男でもある。めったなことは言えないし、態度にも気をつけなければならない。こうした要因が重なって、ルークは作中のような性格になったんです。

ジーパラ:ルークにはモデルとなった人物などはいるのでしょうか?

吉積  :ええ、平和な環境に暮らしている、今の世の中の若者です。ゲームの舞台となっている「オールドラント」は、実は仮想の地球です。現代の地球上でも、毎日どこかで紛争や戦争が起こっている。でも日本をはじめとした、いわゆる平和な場所に住んでいる人たちは、そんなことを実感していない。戦争なんて過去のものと思い、そこでどんなことが起こっているのか、まったくといっていいほど知りません。そして、まったく知らないから、ときには実際に苦労している人に不快な印象を与える言動を取ってしまうことがある。それがルークなんです。
  でも、ルークもいつまでも子供じゃない。最初はわからないことだらけでパニックになっちゃって、知ることを拒絶する場面もあるけれど、途中で自分で気付いて成長する。誰でも成長するんです。要は、きっかけが掴めないだけ。このルークの成長は、ゲーム的に大きなイベントなのですが、ユーザーさんにも「きっかけ」を強く感じてほしかったんです。それは、ここにルークを通して『テイルズ オブ ジ アビス』で描いている「自分探し」が込められているから。そう、この「自分探し」って、今の日本にも重なるところがあるでしょう。ニートとかいろいろ問題になっていて。でも、苦しいからって逃げちゃだめなんですよ。

あえて隠さずに描く。心の根底から湧き出る心情を理解してほしかったから

ジーパラ:プレイで驚いたと言えば、登場人物の死んでいく姿にも驚きました。子供や老人、ジェイドの友人などなど、実にたくさんの人が死んでいってしまいます。それも、ぼかした表現ではなく、バッサリ斬られたりして。

吉積  :そうですね。そこも悩んだんですが、あえてハッキリ描きました。みんな、理不尽でしょ。死んじゃう人たちって。

ジーパラ:ええ、イエモンさんやジョンくんとか。なぜ、この人たちが? って悲しかったです。

吉積  :そう、理不尽なんですよ。でも、それは現実に世界中で起こっている、実は身近なことなんです。そこで大事なのが、「残された人たちがどう思うか」ということ。大切な人を奪われて、逝ってしまった人たちから託されたものや思いを受け止めて、どうするのか。いろいろな人たちの死を通して、ルークたちがどんな気持ちになって、どんな思いを秘めたのか。それを感じてほしかったんです。なぜなら、それは「心の根底」から出てくる感情だから。こうした、「人間の心理の根底」も本作のテーマのひとつです。

ジーパラ:ですが、残された人たちの感情を描くだけなら、あそこまでハッキリ描かなくともよかったのではありませんか?

吉積  :いや、死んでしまうシーンをぼやかすと、感情もぼやけてしまう。悩んだうえで、そう判断しました。それにハッキリ描くことで、ルークたちが受けた衝撃を、より鮮明にユーザーさんも感じられるはず。だからこそ、プレイを通してルークたちと同じ気持ちになれるだろう、と。そういう期待がありました。
 ですが、ルークたちは死を受け止めた後、自分たちの感情をすべて言葉にしているわけではありません。全部を語ってしまうと、プレイしたユーザーさんがひとつの気持ちで固まっちゃうでしょう。そういう制限は持たせたくなかった。最後のところは、自分で感じ取ってほしかったんです。
  こうした表現もそうですけど、『テイルズ オブ ジ アビス』は多方面でこだわったことで「やりたかった『テイルズ オブ』」がほぼすべてできたと思っています。意図したものができました。「これが『テイルズ オブ』なんだ」という気持ちですね。

ヴァンは藤島先生にとって未知のキャラ!?隠されたエピソードが明らかに!

ジーパラ:先ほど、「心の根底」という言葉をおっしゃられましたが。それはタイトル名の「アビス」に関係があるのでしょうか?

吉積  :ええ、いつもタイトル名にはその作品の根本になるものを付けています。それは『テイルズ オブ ジ アビス』も同じです。「アビス(abyss)」という単語を直訳すると「深淵」とか「奈落」になるんですが、作中の「魔界」もタイトルに含まれた意味のひとつですね。そこに、先ほどの「心の根底」という意味も込めています。
  ちなみに、「ジ」という定冠詞が付いているのは、海外のスタッフからの提案です。ゲームのストーリーや世界、そこから付けたタイトルの意味を伝えたところ、「じゃあ、定冠詞を付けたほうが良いよ」と言われたんですね。発音の響きも良い、とのことでしたので、それでシリーズ初の定冠詞付きタイトルにしました。

ジーパラ:以前、イベントで「ティアは巨乳」「アニスは二面性」などキャラクタの設定にまつわるお話をされていましたが。

吉積  :そうですねぇ(笑)。実は、藤島先生にキャラクタデザインをお願いするときにすでにストーリーラインがほぼ決まっていたんです。なので、先生には「このキャラクタはこういう性格で、こんな活躍をします。こんな役割です」といったようにお伝えしたんです。それを、先生の手でカタチにしていただいた、と。

ジーパラ:決定稿が出るまで、時間が掛かったキャラクタはいましたか?

吉積  :ルークとヴァンですね。最初、ルークはとてもかっこ良かったんです。それこそ、「あぁ、ゲームの主人公キャラクタ」みたいなかっこ良さでしたね。でも、ルークは普通の主人公とはちょっと違う。なので、「ワイルドさ」を先生にプラスしていただきました。そうですねぇ。全体のイメージというか、シルエットがなかなか決まりませんでしたね。僕だけでなく、スタッフからもいろいろ要望が出ていましたから。
 ヴァンは、先生も「初めて描いたキャラ」とおっしゃられていましたね。僕をはじめとしたスタッフのイメージ、物語における役柄、性格などなど、それをうまく融合させるのが難しかったようで…。最終的には、先生のイラストを見て僕が判断しました。「これでいこう」って。正直、先生のイラストで僕の中のヴァンが少し変わったんです。「これがヴァンなんだ」って。
  登場キャラクタのなかでは、個人的には「ジェイド」がお気に入りです。名刺にも載せていますし。外見も好きですし、わかっているんだけどちゃんと言わない、そんな大人な性格も好きです。


  『テイルズ オブ ジ アビス』の開発終了後、すぐに『テイルズ オブ ザ テンペスト』の制作に移行されたという吉積プロデューサー。「開発陣は、ひとつ終わると少し休んでもらうんだけど、こっち(自分)はねぇ…。ホントはちょっと休みたいんだけど(笑)」と、シリーズを待つユーザーのために、多忙な毎日を過ごしていらっしゃるご様子。現在は『テイルズ オブ ザ テンペスト』の発売に向けて、集中していらっしゃるとのこと。『テイルズ オブ ジ アビス』同様の良い作品になるよう、期待しています。ありがとうございました!

RPG 
テイルズ オブ ジ アビス
品番 SLPS-25586    
メーカー バンダイナムコゲームス 定価 7140 (税込)
ジャンル 生まれた意味を知るRPG 発売日 2005.12.15
備考




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