イベントレポート  

専門学校入学式で稲船氏が講演会
あの「ゾンビ」続編ネタも?

2007.04.05.
 
 

 2007年4月5日(水)、ゲームスクール「デジタルエンタテインメントアカデミー」第16期生の入学式が行なわれた。「デジタルエンタテインメントアカデミー」は、任天堂やセガ、マイクロソフトなどといった21社のゲームメーカー、IT企業の協力の元で運営されている専門学校。入学式の閉式後、協力企業のひとつでもあるカプコンから、常務執行役員 開発統括本部長 稲船敬二氏による特別講演が行なわれたので、その模様をお伝えする。

 稲船氏は、『ロックマン』シリーズのキャラクターデザインを務め、『鬼武者』、『バイオハザード2』や近年では『DEAD RISING』『ロスト プラネット エクストリーム コンディション 』など数々のカプコンの名作を手がけている。

■手が届きそうなことを夢にしないで目標としよう

この日の為に大阪から駆けつけたという稲船氏は、クリエイターを目指す新入生、在校生に向けてこう語った。

 「ご入学おめでとうございます。大変な課題をこなし、夢に向かってがんばってください」「入学のときは夢って言葉をよく使うと思います。夢って言葉と目標という言葉は同じようで違う。手に届きそうなものは目標といいます。手に届くことを夢にしてしまうのは小さいと思います。ゲームクリエイターになることを夢にしないでください。なれることは目標として、クリエイターになった後に、夢をもってください」と話し、さらに 「この学校の就職率は高いというけど、最後まで卒業できた人から割合をだしてます。途中で辞めた人は計算にはいっていません。ここがトリックになってると思います。まず、皆さんは専門学校を辞めないことをまず第一目標に持ってください」という厳しくもある賛辞をおくった。

 その後は稲船氏の若き日のクリエイター時代を振り返って、当時のゲーム業界を話してくれた。
  「僕はこの4月でカプコン入社して20年になります。当時は僕もグラフィックの専門学校に通っていました。ファミコンが全盛期の時代だったこともあり、僕はゲーム会社への就職活動をしました。   関西では、大阪にはカプコン、神戸にはコナミがありました。当時はコナミの方がネームバリューがあって、学校の先生にコナミに行きたいと相談したら、神戸は遠いし大阪に住んでるのならカプコンにしろって強制的に薦められました(笑)そしてたまたま入社試験が先にあったカプコンに受かり、コナミの方はなし崩しで諦めたんですが、もしコナミの方が入社試験が早かったらもしかして僕はコナミの稲船ですって言っていたか、ここにいなかったかのどちらかです。いまはつくづくカプコンに入社して良かったなって思ってますけど、運命というのはどうなるかわかりません。」

■続編にたよってしまう現状がある

 そしてゲームクリエイターとしての現実も、実際の現場にいる立場として語った。

 「僕はカプコンのクリエイターになれましたが、現在はカプコンのクリエイターがゲームを作りやすい環境作りを行なう事に一番力を入れています。今まで僕も、簡単にゲーム開発できてきたわけではないんです。いろんな壁を乗り越える事でこのようにクリエイターになることができました。僕はその壁のハードルをさげて、のびのびと開発してもらう環境をつくりたいと思っています」
  さらに続けて「クリエイターは“面白いゲーム”を作りたいと思うのですが、企業は“売れるゲーム”を求めています。この“面白い”と“売れる”は必ずしも一致するわけじゃないんです。売れることが前提、に面白いゲームを作っていくのが一番大切になっていきます。よってどうしてもネームバリュー、続編に頼ってしまいます。例えば次世代機で発売するとしても、どうしても僕らサードパーティーは続編に頼りがち。メーカーは新しい機種でタイトルを発売するときも、次世代機が発売する前から開発しなければならないので、その次世代機が売れなかったらどうしよう?といった不安を常に抱えながら作っています。なので安定した続編物となり、リスクへッジを図ってしまうんです。経営陣、クリエイター自身もコケたくないですからね。」

 「でも良く考えて欲しいんですが、新しいハードを買う人は、新しい何かに期待しているものなんです。安定した確約がある続編物では、高いお金を投資したユーザーは肩透かしをくらうと思うんです。いろんな壁があるうちの大きな壁の一つです。最終的にのりこえる方法は“根性”しかなかったりします。基本的にゲームというのは敵を倒して進むが基本ですよね。『バイオ』ならゾンビ、『ロックマン』ならロボットといったように。戦う事がゲーム。そのゲームを作る人たちも戦わなければならないのです。戦うと逆らうは全然違います。上からきたものをハネるのではなく、納得いくように変えていく事で戦いに勝つ事ができるのです。仕様書がおかしければ、直す必要もあるし、それ以上に面白いものがあれば提案する。そこに10年選手と新人に差はありません。しかたないやと投げやりになるのではなく、いつまでも闘争心は持っておいて欲しい。」

■お金が手に入ると人は変わってしまう

 稲船氏自信のカプコンでの経験から、さまざまな考え方が生まれたようだ  

 「僕はキャラクタデザイナーとしてカプコンに入社し、入社直後に『ロックマン』のキャラ、ロゴ、パブイラストから、データ出しまでほとんど一人でこなしていました。即戦力としてあつかわれたので、ある意味幸せでした。」
  「実力も付き、課長となったときにこういわれました。稲船はキャラクタデザインだからこれ以上はないけれど、がんばれば部長並の待遇にしてあげるよっていわれたんです。
  当時は、地位があるのはプランナーとプログラマーで、キャラクタデザイナーやサウンドデザイナーは大切と言われていながらも、現実問題としては士農工商でいう農民でした。そこで僕はデザイナーのままできっと部長になってやろうって思いました。その為に実戦したのは、キャラデザインだけでなく、マップやシナリオ、さらには企画も立てプログラマーと交渉などなんでもやっていきました。それでも僕は企画者とはならずに、キャラクタデザインの肩書きをしばらく捨てませんでした。僕はキャラクタデザイナーのままで部長の座を勝ち取ることができたんです。」   「僕はカプコン一筋でがんばっていますが、今まで何度も他社から給料も多く払うから来て欲しいと、誘いがありました。一筋といっておきながら何度も浮気しそうになったこともあります。実は今もあります(笑)でもそこで踏みとどまる気持ちも大切かなって思います。お金持ちになりたくてゲームクリエイターになるなら、辞めた方がいいと思います。
  今はいいゲームをつくりたいとクリエイターを目指しているんでしょうが「ロード・オブ・ザ・リング」でリングを持つと手にすると人が変わってしまうように、お金があると人間変わっちゃうんです。クリエイターになって2,3年と経験をつむと自信がついてきて、こんなに一生懸命ゲームつくって活躍してるのに、オレってこんな安い給料でいいの?って今を考えてしまう時がくるんです。そのお金の魔力によって、他社の引き抜きの誘いにのったりする人が多いんですが、大抵の人がそれで失敗してしまうんです。入社当時の情熱が飛んでしまうからじゃないですかね。」

  「僕も当時ひとりで『ロックマン』をつくっていたんですが、同時に開発されていたアーケードゲーム『ストリートファイター』の手伝いもしていました。ちなみ最終ステージ、タイに登場する「アドン」の勝った顔と負けた顔を書いていたのは僕です。その時、『ストリートファイター』を手がける同期の人間がいたんですが、まだ新人なので、スコアのグラフィックや、波動拳のエフェクト部分とか、大したことをしてなかったんです。でも当時はアーケードが全盛で『ロックマン』のようなコンシューマーの地位は低かったんです。あれだけ『ロックマン』をがんばった僕が、小さな仕事しかしてない同期の方のボーナスや給料が高かったんです。あのときは辞めてやる。と考えました。今思うと辞めないでいてよかったなと思ってます。そこで思ったのが、他人と比べるのではなく、まず自分がどう働くかがまず重要。まわりのレベルやそういったものは気にしない方がいい」

■猛反対された『DEAD RISING』。続編を開発中?

大ヒットを飛ばした稲船氏の最新作にもこのようなエピソードがあったようだ。

 「ついこないだ手がけた『DEAD RISING』と『ロスト プラネット エクストリーム コンディション 』は、ちょっと怒られるかもしれないけど、売れる事が難しいXbox 360、受けないジャンル、まず成功しない海外展開と、社内で三重苦といわれてました。これに立て続けに二本チャレンジするとしたとき、特に経営陣にはバカか?と言われてしまう程でした。そこで僕は先ほどいった、他とは比べないようにしました。他社と比べてしまうと確かにバカな事だったかもしれませんが、海の向こう側をみると例えばEAが出した『グランド・セフト・オート』は1,000万本を優に越えた販売実績がある。ヒットした『バイオハザード』でも到底足元に及ばない数字です。海外規模でみるとそういう会社がある。隣だけが見本、ライバルではない、と。

  鎖国状態になっている日本のゲーム業界ももっと海外展開にチャレンジする必要がある。これからのチャレンジにこの2本はいいきっかけになりました。新しいハードを出すと、ユーザーは新しいものを求めるという自論は間違えてないと思います。だからカプコンはPS1では『バイオハザード』、PS2では『鬼武者』Xbox 360『DEAD RISING』と『ロスト プラネット エクストリーム コンディション 』という続編ではない新作タイトルをだしてきた。
  でも今回の2作品はいつもより反対が多かったです。ゾンビものという理由で『バイオ』と同じジャンルにされ、違うコンセプトであるのを説得するのは大変でした。その新しいことに挑戦するわけですから失敗は大きなプレッシャーになります。僕はそういうときほど、大きく出ます。『鬼武者』の時も金城武の起用やプロモーションに非常に多くのお金がかかりました。『バイオハザード』を戦国時代でやりますとウソをついてスタートさせた経緯もあって(笑)あとには引けないプレッシャーを自分にもかけつつ、会社にも大きなタイトルだよ。とアピールして成功させました。

  『ロスト プラネット』は開発途中からは社内でも評価されたんですが、『DEAD RISING』は最後までこれはヤバイと会社から厳しくいわれました。うちには品質管理部があって、ここで「売れないな」っていわれるとホントに売れない事が多いんですが『DEAD RISING』は、これはヤバイねって言われました。でも海外の人たちはE3でもかなりの評判をうけ、死体の腕をなげたらそこにゾンビが群らがったり、熱したフライパンでゾンビの顔を黒こげにしたりなど、度を越えた残酷描写だと、皆笑ってくれたのが嬉しかったです。国内では笑いは出ずに引いてしまうことが多い。最終的には日本でも売れて、続編の声があがり、現在てんわやんわの状態です。続編については話せませんけど、もともと続編の予定がない『DEAD RISING』開発チームでしたので、作ってるとも作っていないともいえる状況です。

 これからいろんな壁に注意しなければならない。そこで最初にはなした目標を作って欲しい。この学校を辞めないという目標を思い出したら、毎回壁を乗り越えられるんじゃないか。その先にクリエイターという大きな目標があらわれます。
 
  僕の夢はカプコンに世界一のゲーム会社にすること。それには新しい発想発をもった力が必要です。学校を卒業をしてカプコンへ行きたいという風に思ってくれたらさらに嬉しい。卒業したら僕と一緒に夢をかなえて欲しい」と公演を締めくくった。

■いまのゲームの風潮はキャバクラのせい?

 
    その後、一番最初に手をあげた人にだけ質問をきくといい、一番に新入生の「ゲームクリエイターはモテますか?」という質問に稲船氏は以下のように答えた。 「クリエイターだからもてるということはないんじゃないかな?いい人間がモテるのでは?いい人間になる為にはいいクリエイターでいる必要もあるかもしれない」
  さらにはこんな余談も飛び出した 「ゲームクリエイターがダメになる要因があります。ある程度、自信がつくと飲み行くなど、色々なつきあいがって、キャバクラにも誘われます(笑) 綺麗なお姉さんに囲まれて、そこでクリエイターであることを明かすと、「どんなゲームをつくってるのー?」って聞かれるんです。そこで『ロックマン』というと「知らない」といわれ(笑)。で、『バイオハザード』と答えると、「それ知ってるーすごいー」って。そうするとクリエイターはモテたいと思って『バイオハザード』を作っちゃうんです(笑) 『ロックマン』はつくりません。子供向けゲームが少ないのはキャバクラに行くせいで、みんなキャバクラ嬢が喜ぶ大人向けゲームを作ってしますのです。これはワナです。ゲーム業界の未来がありません(笑) 」 と、まんざら嘘でもなさそうな現象を説明していた。

■『DEAD RISING』 (C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGTHS RESERVED.
■『ロックマン』 (c) capcom co., ltd. all rights reserved.

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