インタビュー
 
15年の集大成を、15年経ても同じ勢いで 『エストポリス』関係者に訊く

2010.02.24

『エストポリス』公式サイト
 

 神と人の戦いをベースにした神ベースにした重厚なシナリオ、個性が際立つキャラクタたち。凝ったギミックを配置したやり応えのあるダンジョンが楽しめるなど、1990年代半ばのスーパーファミコン円熟期における名作RPGとして数えられる『エストポリス伝記II』。

 同作を制作したスタッフが再集結し、当時は実現できなかった新要素を盛り込んで制作された新作が、2010年2月25日(木)に発売となるニンテンドーDS向けシリーズ最新作『エストポリス』だ。

 これまで弊誌では、『エストポリス』のゲーム内容を紹介してきた。そして発売を迎える今回、本作のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの小島創氏と、オリジナル版の開発も行ったネバーランドカンパニーよりディレクターとして携わる宮田正英氏にインタビューを実施している。

▲今回インタビューに応じて頂いたおふたり。左より、ネバーランドカンパニー企画部ディレクター・宮田正英氏、スクウェア・エニックス プロデューサー統括部プロデューサー・小島創氏

 おふたりのお話から見えてきた『エストポリス』復活までの道のり、そして当時のファンと新しく触れるユーザーへ向けたメッセージをお届けしていこう。

※各写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます

15年前のオリジナルスタッフが再集結した新作

――まずは、『エストポリス』企画の発端からお話しいただけますか。

★小島創氏(以下、小島氏)
 ざっくり言いますと、ネバーランド(ネバーランドカンパニー)さんから企画の持ち込みのような形で「もう一度『エストポリス』をやれないだろうか」というご提案がありまして、私たちもRPGを得意としていますから、両社の意向が合致して取り組むことになりました。もともと『エストポリス』の名前は知っていましたし、当時の作品がユーザーさんから高く評価されているのを承知していましたから、私自身も是非! という感じでした。

――オリジナル版からゲーム性を大幅に変更されていますが、企画の立ち上げ時から織り込み済みだったのですか?

★小島氏
 打ち合せを重ねていく中で、当時の“まま”では面白くないという結論になりました。もちろん、オリジナル版を忠実に移殖するという案も出ましたが、それでは新たなユーザーさんにとってフックになる部分が弱いだろうと。ゲーム部分で何か新しさを取り入れたいと考えた時、アクション要素を前面に押し出すという切り口でいくことを決めました。ネバーランドさんは『ルーンファクトリー』シリーズなどでアクション性の強い作品を開発した実績もありますし、アクションRPGをお願いして問題ないという信頼もありましたから。
 また、今回の『エストポリス』の原形である『エストポリス伝記II』を振り返ってみると、フィールド上でプレイヤーキャラクタが一歩進むと、敵やギミックも一つ行動するというゲームシステムでした。そのようにオリジナル版でもかなりアクション性を取り入れていましたから、新要素としてアクションは親和性が高いと思います。

★宮田正英氏(以下、宮田氏)
 そうですね。私としてもアクション性を強めるという方向で問題ないと思いましたし、話し合ってすぐ「アクションRPGでいきましょう」ということになりました。

――当初、ネバーランドカンパニーさんから『エストポリス』の企画が提案されたということですが、その時点でアクション重視の方向性は固まっていたのでしょうか?

★宮田氏
 実は提案の段階で、現状の「アクションRPG」という案に加えて、「アクション性の少ないコマンド式RPG」という企画も用意してはいたんです。社内でも、どちらが新たな『エストポリス』として相応しいか大分検討しました。
 その後も小島さんと、アクション性を強めれば大幅にゲーム性が変わるが大丈夫なのか、ということを何度も確認して、やはりアクションだろうという結論に落ち着いたんです。当時のユーザーに楽しんでもらえる要素を残しつつ、アクションをやるという大枠が決まってからは、一気に企画が進行しました。

★小島氏
 ええ。アクションRPGで行くこと自体は、1回目の会議で決定していますね。

――次の懸案事項は、やはり当時のユーザーへの配慮、といったところでしょうか。

★小島氏
 そうなります。旧作のファンの方はアクションRPGになるということで驚かれる方も多いと思いました。ならば、旧作の良いところはしっかり受け継がなければならない、と考えた末が――シナリオと音楽です。特に音楽は曲調などはそのままに、あくまで音色の向上のみに作業をとどめています。
 シナリオに関しては、ゲーム性とプラットフォームの変更に合わせてリライトする必要が生じましたが、当時のファンの心にズドン! と響いたエピソード等の「核」だけは、必ず残すという方針をまず決めています。

――本作はもちろんですが、『エストポリス伝記II』のシナリオも、宮田さんが書かれたと聞いています。

★宮田氏
 はい。シナリオは、オリジナル版も私が書いています。本作に関しては、ほぼシナリオ全般をリライトすることになりましたが、そうすると当時は入れたくても容量の都合で見送らざるを得なかったエピソードが、色々と浮かんでくるわけです。そういった部分を書き加えられたこともあって、今回はとても楽しい仕事でしたね。
 特に前回は、マキシムとセレナに関するイベントが少し弱かったと思っていたので、ふたりのエピソードを厚くしてイベントもたくさん組んでいます。当時のファンの皆さんには、追加されたエピソードを楽しんでもらえると嬉しいです。

マキシム セレナ

★小島氏
 本当に、今回の『エストポリス』の開発体勢は珍しいケースだと思います。オリジナル版が15年前に発売されていて、当時のディレクター(宮田氏)とプランナーが再び揃って新作を出せるということは、そうある話ではないですから。

★宮田氏
 そうですね。リメイク作品でも、オリジナルスタッフが揃うのは難しかったりしますから。

――おふたりの作業分担は、どのようになっているのですか?

★小島氏
 全体の進行管理や、ネバーランドさんから提案していただくアイデアをどう組み込むか判断するなど、作品全体のコンセプトに筋を通すのが主な役目です。ゲームの肝なので、アクション部分のバランス調整にも参加しています。


★宮田氏
 私はシナリオとディレクション担当です。物語やイベントを書きながら、開発の進行管理をしています。

★小島氏
 当時、評価されたシナリオが、同じ書き手によってリライトされるというのは、『エストポリス』の魅力のひとつですね。


★宮田氏
 やっぱり、チャンスがあれば書き直したくなるわけです(笑)。マキシムとセレナの件もそうですが、今回は15年前にできなかったことが実現できたので、納得のいくものに仕上がりました。

――シナリオのリライト作業には、どれくらいの時間がかかっていますか?

★宮田氏
 時間と言いますか、意図的に当時のイベントを残している部分があるにせよ、ほぼシナリオ全部を書きなおしているので、作業的には全て改めたことになります。街やNPCの数はゲームデザインに合わせて減らしましたが、会話量は当時よりむしろ増えていますし。

★小島氏
 私たちが開発に際して会話量の目安にするのは、データとしての容量になりますが、『エストポリス』の会話の多さはアクションRPGとしては破格です。多分、一般的なDS向けのRPGと比較すると、倍くらいのボリュームになります。もう、いつの間にか宮田さんが新しいテキストを書きあげていて「あ、ここは新しい。え、これも新規!?」みたいな状態でした(笑)。

★宮田氏
 私はシナリオも書きつつ、同時にイベントを調整したりと、ゲームの中身もいじれるので、ゲームをプレイしながら問題あると感じたらすぐつけ足して、小島さんに確認してもらうということが可能だったわけです。シナリオと開発が分業ではないことが、逆に強みになっていますね。


「謎解き」は“ロジック詰め”ではなくて――

★小島氏
 チュートリアル部分を充実させたので、その部分にも宮田さんに新たなテキストを多く書いていただいています。とにかく、遊び方が分からないから途中で止めてしまうというユーザーさんを出したくなかったので、随所に文章でのヘルプを入れました。


――ゲーム冒頭部分では、マキシムとレクサスの会話を通して操作方法を伝えるという流れで、チュートリアルっぽさを感じさせないあたりが楽しいですね。

★小島氏
 今回は冒頭部分がガラリと変わっています。オリジナル版では最初の「エルシドの町」から次の町へ行くための鍵を洞窟で見つけて帰ってくるという、割とまったりした内容でした。

★宮田氏
 一応、オリジナル版でも冒頭のイベントらしきもので「四狂神」同士の会話があるなど、物語をぼんやり示していましたが、DS版のようなオープニングもありませんでしたからね。

★小島氏
 オープニングは、DS上下2画面に巨大ボスが登場することもあり、かなりのインパクトです。15年前なら良くても、今のユーザーさんが見て満足していただけないような箇所は、すべて構成を変えて作りなおしています。

★宮田氏
 その一方で、最初のボスを倒して帰ってきた後、“幻の魚「ナワロア」を食べよう!” みたいな、いかにも『エスト』らしいイベントはそのまま残してありますから、当時を知る方にはハードが変わっても同じゲームだと感じてもらえると思います。

★小島氏
 個々の印象的なイベントはそのまま残しているので、大筋の物語という骨組みは変えず、新要素を肉付けしていった感じですね。ですから『エストポリス伝記II』を遊んだ方は、「こうだったな」という懐かしさと、「お、変わった」という驚きの両方が味わえるはずです。

――シナリオを再構成する場合、やはり『エストポリス伝記II』当時の資料をあたられたりするのですか?

★小島氏
 今風にアレンジするにしても、大もとの設定が明確になっていないとやりようがありませんし、もちろん現存する資料は確認しています。ただ意外と、当時はそこまで考えていなかった設定が、今回シナリオを起こすには必要だったりして、宮田さんに根掘り葉掘り聞きました(笑)。
 細かい設定でも、“こうだからこうなる”という筋道を立てておかないと、シナリオに粗があるように見えてしまいますから。「この設定はどういうことでしたか?」という打ち合せを初期の段階はかなりやっていますね。

★宮田氏
 代表的なところでいえば「波動器」ですよね。『エストポリス伝記II』では「波動」という、はっきりとは分からない力だけが存在していましたけど、今回は「波動」を操る機器として「波動器」が登場します。

★小島氏
 それを受けて私が、「では、その“波動器”は誰が作ったものなんでしょうか?」といった具合に、設定を詰めていったわけです。各設定がバッティングしないようにしたり、世界観の土台となる部分なので気は使っています。


★宮田氏
 当時の資料といっても、それほどゴツいものがあるわけではないんですよ(笑)。場合によっては一行しか書いていない設定を膨らませて、詳細まで決めて、それぞれ設定を作りました。

――アクション部分に関しては、過去の資料が存在しないわけですから、設定づくりも大変だったのではないですか。

★小島氏
 主人公たちにアクションさせる! といっても、ではどう動くのかといった基準を決めなければならなかったり、あとは謎解きのギミックも見直しています。『エストポリス伝記II』では、“こちらが一歩動くと、敵も一歩動く”という仕組みを利用して敵を閉じ込めるギミックがありましたけど、本作は互いがリアルタイムに動くのでやりにくいんです。

★宮田氏
 キャラクタにジャンプさせるかどうかも、かなり話し合いましたね。謎ときやパズルって、ジャンプ一つできるだけでも全く難易度が変わってきますから。結果として、謎ときのギミックは旧作から全て作り変えました。『エストポリス』のキャラクタは、それぞれ固有のアイテムを持っていて、それらを利用して謎をとく場合があります。ギミックは、各人の個性と役割が際立つように設定しています。

★小島氏
 オリジナル版のギミックは今回収録していませんが、当時おもしろいと感じた謎ときの“発想”は大事にしています。
 『エストポリス伝記II』で、トゲに囲まれている場所のギミックがあるんです。トゲを発動させるスイッチに箱を置くというものなんですが、スイッチに箱を置いてしまうと、トゲは出ない代わりに宝箱が取れなくなります。そこでどうするのかといえば、トゲの出る部分に箱を置いて、トゲ自体を出せなくするいう方法なんです。スイッチ使わないのか! という驚きもあって、すごく印象に残っていたんですね。そういう“まさかの発想”が、『エストポリス』のギミックにも活かされています。

――その“まさかの発想”ギミックを作ったのは…?

★宮田氏
 私です(笑)。ロジック詰めのパズルではなくて、ひらめきで解決するパズルにしたかったんです。

★小島氏
 最近の謎ときって、ロジックを積み重ねて解決するものが多いじゃないですか。それって良く考えられていますけど、回答を予想できてしまう呆気なさもあると思うんです。ロジックに寄った謎ときばかりがゲームに収録された場合、単なる作業の反復になってしまって面白みに欠けますから。宮田さんにお願いして、オリジナル版で作った頓知の効いた“発想”を今回も活かしてもらっています。

★宮田氏
 いわゆるアクションRPGで見られる謎ときとは、ちょっと違った趣向を楽しんでもらえると思います。

★小島氏
 解けた後「なるほどやられた!」という悔しさを味わっていただけると嬉しいです。


全滅したら、5レベル↑↑ 斬新な初心者への配慮

――ライト志向のユーザーに向けて、盛り込んだ仕様はありますか?

★小島氏
 たとえば、下画面には常にミニマップが表示されるようになっています。操作すれば、入ったばかりのダンジョンでも全体像がすぐ分かるので、ジャンプが採用されて多少、立体的に複雑になったダンジョンも難なくプレイできるはずです。

★宮田氏
 先ほども出ていましたが、テキストでのヒントといった配慮もありますし、あとは何より「レベルブレイク」の存在が大きな助けになると思います。

――ゲームオーバーになるたび、主人公たちのレベルを5上げるか選択できるという思い切った仕様の「レベルブレイク」。ゲームバランスに影響はないのでしょうか?

★小島氏
 初心者向けという意味合いもありますが、「レベルブレイク」を導入した狙いはゲーム途中で脱落するユーザーさんを出したくなかったということに尽きます。RPGならレベルを上げることで先に進めますが、アクションでは上達できないと次へ進めないから諦めしてしまう、という状況をなんとかしたかった。

★宮田氏
 開発も終盤にさしかかって、マスターアップの1ヶ月前くらいに思いついたのが「レベルブレイク」でした。僕自身が試遊プレイしていて、これは勝てないかもという敵が出てきて…。

★小島氏
 プレイの仕方にもよると思うんですが、レベルを上げないで、チュートリアルも見ないような感じでゲームを進めていくと、やっぱりどこかで詰まってしまう瞬間が来るんですね。宮田さんのプレイを言うわけじゃないですけれど、上手い下手に関係なくゲームを楽しんでほしいんです。

★宮田氏
 ただ、「レベルブレイク」を使うかどうかで全く差がつかないのもつまらないので、「レベルブレイク」を使ったプレイヤーのステータス画面には「初心者バッジ」という印が表示されます。シナリオの進行には、一切関係ありません。

★小島氏
 私みたいに出会う敵はすべて倒す、というスタイルのプレイヤーは「レベルブレイク」は使わないと思います。十分レベルが上がっているでしょうし、プライドが許さない(笑)。別に「初心者バッジ」を持っていたからといって馬鹿にされるわけでもないですし、ペナルティともいえないユルさですけれど。


★宮田氏
 私はあっさり「レベルブレイク」を使いますね(笑)。ゲームオーバーになった時、もういいやと諦めて欲しくないんです。旧シリーズがRPGだったこともあって、基本はアクション苦手というファンの方も少なくないでしょうけど、苦手であっても最後まで楽しんで頂きたい。
 とりあえず遊んで強い敵にやられてしまっても、「レベルブレイク」してみてください。5レベル上がるとグッと楽になるんですよ。特に序盤で5レベル違うと、全く難易度が変わってきますから。何回やられても5レベル上げられますから、そのうち勝てます。

――でもそれですと、敵を倒すメリットというか、楽しみが減ってしまいそうなものですが。

★小島氏
 いえ、もちろん地道に敵を倒していくと、良いことがあります。敵を倒した後さらに攻撃を加え続けると「デルデ」というアイテムが手に入るのですが、それを集めて「パーセライトの街」へ持っていくと、かなり良いアイテムと交換して貰えるんです。

★宮田氏
 「デルデ」は戦わないと手に入りませんし、倒した相手とのレベル差が大きく開いていると、あまり手に入らないんです。ですから、ちゃんと強くしたい場合は敵と積極的に戦っていく、というスタイルが良いわけです。面白い武器などを手に入れたい場合は、「レベルブレイク」しないでプレイすることをおすすめします。

★小島氏
 後輩のアクションゲームを全く遊ばない男に、ある週末『エストポリス』を試遊してもらったのですが、クリアできていたんです。とはいっても、「レベルブレイク」を繰り返して主人公たちをレベル99にしてからクリアを目指すという方法でしたけど。

――それは、ちょっと勿体ない遊び方ですね(笑)。

★小島氏
 彼は、敵を倒してレベルをあげるどころか、チュートリアルすら見ていないんですよ。それでもエンディングまで行けていますから、「レベルブレイク」は初心者への配慮としてかなり上手く作用していると思います。


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