2009年8月5日(水)、東京・池袋にある東京芸術劇場において、音楽家・すぎやまこういち氏が指揮を務めるコンサート「第23回ファミリークラシックコンサート『ドラゴンクエストの世界』」が開催された。
こちらのコンサートは、世界的にも高い評価を受けるオーケストラ東京都交響楽団を、『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がけていることで知られるすぎやま氏が指揮するというもの。今回の演目では、7月に発売となったばかりの最新作『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』(以下、『ドラクエIX』)に収録されている楽曲が披露されている。
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| 『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がける音楽家・すぎやまこういち氏。同シリーズはもちろん、ゲーム全般に造詣が深いことでも有名 |
ここでは、コンサート本番直前のすぎやま氏にインタビューを敢行。『ドラクエIX』の楽曲制作や、ご本人の音楽活動について、さらにユーザーが気になるアレコレを語っていただいた。
★すぎやまこういち氏(以下、すぎやま氏)
(窓の外を眺めつつ)今日は雨が降っていないですね。天気予報だと今日のお天気は不安定だったと思うけど、大丈夫でしたね。このファミリークラシックコンサートはもう23回目なんですが、実はいつも当日の天気予報が雨なんですよ。でもね、過去に雨が降ったことはなくて。何か運命的な力を感じますね。
――ええ、午後からちょっと怪しかったですが、何とか晴れてよかったです。ではまず、すぎやま先生の近況についてお話いただけますか?
★すぎやま氏
とりあえず6月いっぱいまでは、この『ドラクエIX』のオーケストラの準備に追われていました。『ドラクエIX』の楽曲をづくりはじめたのが2004年末か翌年くらいですから、もう足かけ5年くらい制作していることになりますね。
――『ドラクエIX』の楽曲制作は順調でしたか?
★すぎやま氏
いや、今回は本当に試行錯誤でしたよ(笑)。たとえば戦闘の曲は、製品版に収録したのは5回つくり直したものですし、みなさんがまず耳にするであろう「序曲」も、導入部から作っては壊しの繰り返しで、やっぱり5回目のバージョンですね。ただ、その甲斐あって、「序曲」はいい仕上がりになりました。今日、生演奏を聴いてもらうと、なおその迫力を感じてもらえると思います。
――楽曲制作をされている間、何かすぎやま先生の周りで事件といいますか、大きな出来事はありましたか?
★すぎやま氏
僕自身のことでいえば、今まで『ドラクエ』関連のCDは僕らが展開する「SUGIレーベル」で取り扱っていたんですが、キングレコードさんに移籍することになったんですね。今日発売になる『ドラクエIX』のサウンドトラックも、キングレコードさんから発売となっています。
今回のサウンドトラックは、DS音源を収録したディスクに加えて、シンセサイザー版も別ディスクに収めている、2枚組です。この会場(東京芸術劇場)でも初売りとして売店で扱っていますから、お客さんが休憩時間に買ってくれると嬉しいですね(笑)。
――今お話にあったサウンドトラックのシンセサイザー版ですが、すぎやま先生ご自身がMIDIを打ち込んでいるそうですね。
★すぎやま氏
そうなんです。僕が自宅で打ったMIDIデータを元にCD化しています。今までにもシンセサイザー版の楽曲はありましたが、実際に僕がデータを入力しているのは初めてのことですね。
――ご自宅で作業されたんですか! では、機材もすぎやま先生が普段使われているものということですか?
★すぎやま氏
そうですよ。興味のない方には分からないかも知れないですが、メインで使った機材は、デジタルシンセサイザーが「ローランド JV-2080」、音源モジュールが「Proteus X2」、あとはアナログシンセで「KORG MS-10」という昔ながらの機材も使用しています。もちろん、この3つ以外にもサブで使用したものは多くありますが、いずれもアマチュアの方でも使える機材です。
シンセサイザー版の楽曲に関しては、プロ仕様ではない一般的な機器で勝負しているという面白さがありますから、そういった辺りにも注目して聴いてもらえると楽しいと思います。もちろん、DS音源のディスクも僕が全て監修しています。2枚とも聴きどころは多いですね。
――本日のコンサートのチケットは完売で、残念ながら来られないファンからは「公演の回数を増やしてほしい」という声もあるようですが?
★すぎやま氏
うーん……申し訳ないけれど、僕の都合だけでは決められないんですよ。オーケストラの都響(東京都交響楽団)の評価が、ここ最近とても高くなって売れまくっていますから、スケジュールがね、押えられないんです(笑)。同日の2回公演さえ難しいくらいで。
今後、『ドラクエIX』のオーケストラ版サウンドトラックについても都響に参加してもらうんですが、スケジュールの都合で今年の秋の録音になりましたし……。なので、『ドラクエIX』のオーケストラをCDで聴きたい皆さんは、今秋以降までお待ちください。
ちなみに、今日会場に来られた方、8月京都での「ドラゴンクエスト・スペシャルコンサート」と9月の札幌公演にいらっしゃる方は、『ドラクエIX』の楽曲オーケストラ版をいち早く聴けるわけです。これを読んで聴きたくなった人は……京都もチケット完売なので、札幌の会場に来てください。待っていますよ!
――『ドラクエIX』の楽曲ですが、ネット上を中心に色々な意見が飛び交っているようです。すぎやま先生はネット上の意見などはご覧になったりしますか?
★すぎやま氏
普通に見ていますよ(笑)。ネット上でも色々な意見があるようですね。皆さんそれぞれが違う意見を持っていたり、思い入れのある曲について話してもらえることは、僕としてはとても嬉しいです。ただその上で、可能なら生のオーケストラで曲を聴いてもらいたいです。ゲームをプレイして聴いたり、CDで聴くのとはまた違った感動を体験してもらえるはずですから。
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| すぎやま氏が手にしているのが、同日発売となった「ドラゴンクエスト IX 星空の守り人 すぎやまこういち シンセサイザー版&オリジナルサウンドトラック」 |
――ゲームのお話をさせていただきたいと思います。本日、『ドラクエIX』の出荷本数が350万本を突破したそうです。
★すぎやま氏
ええ、僕も先ほどスクウェア・エニックスの方から聞きました。すごいですね。確かに、街中で「すれちがい通信」をやっている人たちが多いみたいですからね。
――『ドラクエIX』の話題でよく上がるのが、「冒険の書(セーブファイル)が複数個ほしかった」というものなんですが、実際にプレイされているすぎやま先生はどう思われますか?
★すぎやま氏
『ドラクエIX』は本当に堀井さん(※シリーズを手がける堀井雄二氏)のやりたいことが目いっぱい詰め込んであって、たとえば「すれちがい通信」もそうですが、容量に余裕がないんですよ。結果として、冒険の書をひとつにせざるを得なくて、堀井さんもスタッフもかなり悩んだ末の決断だったみたいです。もし、冒険の書を複数入れた場合は、お話の部分を削らなくてはならなかったと聞いていますし。
ただ、僕としては、たとえ冒険の書がひとつだったとしても、製品版に「すれちがい通信」のような新要素を収録して正解だっと思っています。
このインタビューが始まる前、都響のメンバーと「すれちがい通信」をやりました。それで「これが君のキャラクタ? それが僕のね」という感じで遊んでいたわけです。そうしたら、誰に聞いてもその部屋の中にいない人の作ったキャラクタが、「リッカの宿屋」に来ていて、「隣の部屋の人? もしかして道路を歩いている人のキャラかな?」なんて話で盛り上がっちゃって(笑)。こういう面白さって、今までの『ドラクエ』じゃ味わえなかったものですから、何にせよ、新しいことを優先して良かったんじゃないかと思うんです。それに、みなさんもお話を削った『ドラクエ』は遊びたくないでしょ?
――なるほど。もうひとつ話題にあがっているのが、ギャル妖精「サンディ」なのですが、すぎやま先生は「サンディ」みたいなキャラクタはお好きですか?
★すぎやま氏
「サンディ」はね、初めて登場した場面で、僕の音楽との合い具合がおかしくて笑っちゃいました(笑)。「サンディ」は好きなキャラクタですよ。ほかのキャラクタとちがって、あの子だけは現代っぽく振る舞うところも面白いですね。
――すぎやま先生的にも「超うける!」という感じですね!
★すぎやま氏
ええ、そうですね(笑)。
――すみません、脱線しました。…お気に入りのイベントシーンはありますか?
★すぎやま氏
ゲーム後半のムービーシーンですね。あそこは先に映像があって、それにタイミングや曲調をあわせて制作しているんです。あとは、「悲壮なるプロローグ」という曲が流れる「ベクセリアの町」のイベント。悲しい曲とイベント内容が上手くマッチしていました。
――では、お気に入りの楽曲という点ではいかがですか?
★すぎやま氏
お気に入りの楽曲って、よく聞かれるんですけど、これは答えようがないですよ。だって、気に入らない曲はゲームに収録していませんから。強いて言うなら、ファンの方が「お気に入りの楽曲」として挙げてくれるものと、作曲者としての僕では好みに違いが出るという点はあります。
多分ファンの方は、「序曲」や戦闘のBGMみたいな盛り上がる明るい曲がお好きかと思うんですが、僕はゲーム終盤の神殿で流れる「運命に導かれ」や、先ほどあげた「悲壮なるプロローグ」のような静かな曲調が好きですね。
――制作にあたって、印象深かった曲は何でしょうか?
★すぎやま氏
『ドラクエIX』を象徴する曲でもある、「天使界」のテーマ「天の祈り」ですね。「天の祈り」は元々1コーラスで制作していたんですが、テストロムをプレイして「天使界」にいる時間がかなり長いと感じたので、1コーラスではプレイヤーが飽きてしまうと考えました。それで、1コーラスを2コーラス、3コーラスとのばしていって、最終的には1ループという形に落ち着きました。
――シリーズを通して作曲することに難しさは感じられますか?
★すぎやま氏
たとえば、同じ「お城のテーマ」を作曲するとしても、9作品あるなら全て異なったコンセプトで作るわけで、それはやっぱり大変なことです。まあ、幸いにして『ドラクエ』は開発期間が長いので、じっくり曲作りに専念できるから助かっていますが(笑)。
僕が、作曲家や画家といったクリエイター職の良いところだと思うのは、年齢による衰えがないということなんです。それこそスポーツ選手はずっと現役でいることは肉体的に難しいかもしれませんが、クリエイター職は年をとっても活躍できます。歴史を振り返ってみれば、交響曲も名画も手がけた人物の晩年に生み出されている場合が多く、むしろ後期になるほど評価の高い作品が輩出されているわけです。
かのピカソの作品にしても、高い評価を受けているのは後期の作品。そういったクリエイターは年齢を重ねても活躍できるという事実は、僕を奮い立たせますね。多分、僕はもう後期に入っているんですが、「よし、やろう」という励みになります。
――前作『ドラクエVIII』はプレイステーション2で、本作『ドラクエIX』はニンテンドーDS用のソフトです。対応ハードが携帯機になったことで、作曲に妨げになると感じられましたか?
★すぎやま氏
いいえ、全くありません。基本的にはどんなハードでも同じです。ファミコン時代を思い返してみれば、3トラックにPSG音源で曲を作っていたわけで、それに比べれれば今の状況は天国みたいなものです(笑)。
――すぎやま先生は、熱心な『ドラクエ』ユーザーとしても知られています。毎回、そのやりこみぶりには驚かされるのですが、『ドラクエIX』のプレイ状況を教えていただけないでしょうか?
★すぎやま氏
「ワイヤレス」と「すれちがい」は今日はじめたばかりです。本編のパーティはレベル50くらいで、パーティ構成は主人公が「旅芸人」のまま、後は「武闘家」2人と「僧侶」ですね。
――主人公が「旅芸人」のままという部分も気になりますが(笑)、「武闘家」を2人パーティに入れていらっしゃるのには、何か理由があるのですか?
★すぎやま氏
戦闘で、先に敵から攻撃されるのが嫌いなんです。殴られる前に、1ターンでやっつけたい(笑)。なので、「武闘家」に「ほしふるうでわ」を装備させて速攻でモンスターを倒しています。先手必勝。 「武闘家」2人はレベル99になったら、「バトルマスター」にしようかと思ってます。「僧侶」を「賢者」にするのもいいですね。
――では、最後の質問です。これからの『ドラクエ』シリーズに期待することを教えてください。
★すぎやま氏
それは、僕が考えても仕方ないことです。すべては堀井さんの頭の中ですよ。毎回、僕は堀井さんのアイデアに「こんなことを考えているのか!」と驚かされているんです。次の『ドラゴンクエストX』以降にしても、堀井さんが何を考え出すのかワクワクして待っているわけで、そういう意味ではファンの皆さんと同じ視点でしか語れないですね。楽しみに待ちましょう(笑)。
――ありがとうございました。
[ジーパラドットコム 広田]
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| なんとインタビュー後には、こちらの無理なお願いを快諾していただき、すぎやま氏が「すれちがい通信」に応じてくれた! |
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| 大道芸人「すぎまろ」がこちらのDSに到着! これがすぎやま氏のキャラクタなのだ。もし、「すぎまろ」に出会えた方は、ほかのすべての運を使い果たす恐れがあるくらいに幸運といえるだろう |
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| コンサートを指揮するすぎやま氏。幕間の絶妙なMCも相変わらずで、観客にオーケストラが演奏する感動と共に、滅多に聞けない話題を提供していた |
●●●『ドラゴンクエスト』コンサート情報●●●
◆京都
2009/8/29
ドラゴンクエスト・スペシャルコンサート
◆東京
2009/9/12・9/13
バレエ「ドラゴン・クエスト」スターダンサーズバレエ団公演
◆北海道
2009/9/21
東京都交響楽団・札幌公演「すぎやまこういちがやってきた!」
◆北海道
2009/9/24
第5回 東京メトロポリタン・ブラス・クインテット 旭川公演
◆北海道
2009/9/25
第6回 東京メトロポリタン・ブラス・クインテット 札幌公演
チケットなどの詳細は「すぎやまこういちの世界」で確認のこと |