イベントレポート
 
「死ぬまで、死んでも、ゲームを創りたい」小島監督が学生に語る

2009.04.27

関連リンク:小島秀夫公式ブログ「HIDEO BLOG」
 
 2009年4月26日(日)、東京・銀座にあるアップル直営店「Apple Store, Ginza」において、様々な分野で活躍する著名人が講師として登場する学生向けイベント「Dream Classroom」が実施。“小島監督”こと、ゲームデザイナーの小島秀夫氏が講師として招かれた。

右が小島秀夫氏。講演は話題に合わせたスライドを上映しつつ、トークショウ形式で行われた

※写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます。

 敵と戦うのではなく、“敵から隠れる”という斬新な切り口で世界中にファンを生んだ潜入諜報アクション『メタルギア』シリーズの生みの親である小島氏。また、その独創性を高く評価され、2001年には米「ニューズウィーク」誌において唯一日本人として「未来を切り開く10人」にも選ばれた。

 「ジジイの説教」と斜に構えた表現をしながらも、常に「次代へ伝えなければならないこと」を自身の作品へ真摯に刻み込んできた小島氏が、今学生に伝えたいこととは何か? イベントで語られた内容をお届けしていこう。

小島監督、学生時代を語る

――学生時代、一番刺激を受けたことは何ですか?

◆小島秀夫氏(以下、小島氏)
 映画ですね。小学校5年生くらいのころから一人で映画館に通うようになって、確か初めて観た映画は'70年代半ばのSF作品で「ローラーボール」だったと思います。とにかく僕は本を読まない子どもでしたから、「物語」というものは映画やテレビを通して覚えました。

――小島監督にとって映画の魅力とは?

◆小島氏
 見ることのできない世界や時代を教えてくれる、見られないものを見せてくれることでしょうか。
 僕はこう見えて東京生まれで、3歳まで東京で暮らしていました。それから大阪の茅ヶ崎の方へ引っ越したんですが、そこでの生活に全く馴染めなくて、家に閉じこもってばかりいたんです。その時に、救われたのがテレビで放送していた映画で、観て楽しいというだけじゃなくて、スパゲッティの食べ方や、「アメリカの冷蔵庫はでっかい」なんてことを知ったり、「チュー」の仕方を覚えたりしたわけです(笑)。

――映画から教わったことが多いわけですね。

◆小島氏
 そうです。映画を観て、その作品のサントラを聴いて、原作の小説を読んだり。ノベライズを読んで、小説版を手にとって、その作家のことも覚えたり…。ファッションも含めて、僕にとって「最初の窓口」と呼べるものが映画なんだと思います。

――では、小島監督が最も影響を受けた映画は何ですか?

◆小島氏
 これは答えようがないですね、「あらゆる映画」としか。特定の作品を100回も観るようなことはしていないんです。大体どの作品も1、2回観る程度です。自分の中には残り続けますが。強いて好きな映画として挙げるなら、「2001年宇宙の旅」でしょうか。でも「2001年」は映画館で観ないとダメなんですけどね。

――映画と出会ってから、小説を書き始めたという話も聞きましたが。

◆小島氏
 やっぱり小学校5年生の時なんですが小説にハマって、学校の行き帰りに創作していました。原稿だけじゃなくて、表紙にかける帯まで作っていましたよ。
 中学に入ってからはSFを書き始めて、横書きのミドリ枠の原稿用紙にこだわって、近所の文房具屋に「オレは有名な作家になるから、この原稿用紙を入荷しておいてくれ」とか言っていましたね(笑)。

――中学から高校にあがる頃、映像と本格的に付き合うようになったそうですね。

◆小島氏
 中学・高校の時に、友だちと8mmで映画を撮る「ヒデタツプロ」なるものを結成して、年に2回くらい文化祭なんかで4、50分程度の短編を上映していました。撮っていたジャンルは「刑事もの」と「ゾンビもの」で、「ゾンビもの」では、牛肉や骨でなんとかホラーっぽい特殊効果を出せないか苦労していましたね。

2003年に自身で書いたという小島氏の履歴書。多用される「創作」ということばが印象的だが、これは創造するという意味合いを持つ「創る」が、小島氏の好きなことばだから アポロ11号による月面着陸。小島氏曰く「僕らの世代でこれに影響を受けていない人間はいない」とのこと。小島氏自身も個人的な夢としては宇宙へ行ってみたいのだとか
当時少年だった小島氏は、大阪万博で初めて「グローバリズム」を感じたという。「色々なものが見られた以上に、世界中の人と会うことができた」と語る小島氏は、近所住まいだったこともあり、足しげく万博へ通ったそうだ 「人生で一番暗い時代に、膝をかかえて聴いた」と小島氏が語る、イギリスのロックバンド「ジョイ・ディヴィジョン」。鬱々とした世界観で避けられることも多いが、英・米の後進アーティストに与えた影響は計り知れない

死ぬまで、死んでも、ゲームを創りたい

――高校、大学と進んでいく中で、映画や小説の世界で職に就こうとは考えなかったんですか?

◆小島氏
 当時は映画を勉強したくても、僕の通える映画の学校がなかったんです。小説の方は書いていましたけど、賞などで設定された既定枚数に収めることがどうしてもできなくて、ダメでした。だから、新人賞への投稿みたいなこともしていなくて、中学のころ、当時の「ハヤカワSFコンテスト」に投稿しましたが、みごと落選でしたね。 
 実は、出版社としてのハヤカワにも入りたいなという気持ちもありました。僕の好きな海外作品で翻訳されていないものが、編集者になれば読めるんじゃないかと思ったんですよ(笑)。

――そこから、ゲーム業界を志したのは、どんな転機があったのでしょうか?

◆小島氏
 映画を撮りたくても撮れない、鬱々とした僕を友だちがゲームセンターへ連れていってくれて、そこで『ゼビウス』と出会って、衝撃を受けました。それまでのゲームって背景は黒一色だったんですが、『ゼビウス』には色のついた背景があって、敵もちゃんとしたキャラクタとして成立していて、世界観があったんです。それで、これなら「ゲームで映画と近いことができる」と思って、コナミに入社することを決めました。
 言ってみれば、中学生の頃から持っていた小説や映画をあきらめて、夢破れて、ゲーム業界に入ったんです。だから、僕は夢を叶えられなかった人間。今ではゲームを創るのは天職だと感じていますし、死ぬまで、死んでも、ゲームを創りたいと思っていますけどね。

小島氏が影響を受けたと語るゲームソフト3作品。左から、『ゼビウス』『スーパーマリオブラザーズ』『ポートピア連続殺人事件』。いずれも小島氏の言うところの世界観が確立されており、各ジャンルの礎になった作品だ

――小島監督が、ゲームを創るプロとしての自覚をしたのはいつですか?

◆小島氏
 最初の『メタルギア』が店頭に並んだ時は、驚きました。自分で制作したものが発売されて、店頭に並んで、ユーザーが手に取り、遊んでくれて、何十時間かかけて評価してくれる。
 先ほども言いましたが、僕には書いても誰にも読ませない小説というのが山ほどあって、その時感じたのは、誰も見てくれないものを創りつづけるのはツラいってことなんです。創りたいものは体から溢れてくるのに、誰にも見てもらえない。だから、自分のゲームを遊んでもらって、評価してくれるということに感銘を受けました。
 しばらくして、『スナッチャー』が発売される頃になると、ユーザーからお便りがかなり来るようになったんです。中には「人生観が変わりました」という熱烈なものまであって。その時、自分の創ったものが人に大きな影響を与えるんだということを、悟りました。
 それ以前は、自分が創りたいから作品を創っていたんですけど、その時から人のために作品を創るんだという意識に変わりました。今では、『メタルギア』のファンは世界中にいます。だから、ファンが望む限りは、僕は『メタルギア』を創らなければならないと考えています。

――小島監督は“クリエイター”である一方で、“サラリーマン”でもあります。そのバランスはどうとっているのでしょうか。

◆小島氏
 会社として利益をあげなければならない。そして、クリエイターとしてモノづくりをしなければならない。このふたつのバランスを保って仕事するのが、僕ら“サラリーマン・クリエイター”だと思います。局面局面で苦労はしましたが、今までを振り返ってみても楽しかったですよ。プロだからこそ続けられたんです。自分を評価してくれる人がいるから続けられる。

――小島監督の今後の動向を教えてください。

◆小島氏
 ゲームはテクノロジー依存型なので、飽きることがありません。また、他の分野の人とのコラボレーションも最近は実現できますから、ゲームの制作はやめようとは思わないです。引退はしない。とはいえ、今年で僕も46歳。そろそそ余命も意識しつつ、映画や、ひとりでやることにも興味が湧いてきています。死ぬなら、現場か映画館で死にたいですね。
 あと、個人的な夢としては宇宙へ行きたいというのがあります。月面着陸までいかなくてもいいんですけど、成層圏を脱して地球を俯瞰で眺めてみたいですね。死んだら宇宙葬にしてください。「ジョイ・ディヴィジョン」を流しながら(笑)。
 新作は……6月、アメリカのE3で会いましょう。

――学生に向けたメッセージをお願いします。

◆小島氏
 仲間を探してください。僕はコナミに入ったら仲間がいました。今ではちゃんとしてますけど、僕の入社当時は社内に漫画家くずれがいて、ミュージシャンくずれみたいな連中がいた。はっきり言えば、僕の周りに最初からゲームを創りたかった人は誰もいなくて、ただ何か新しいことをやってやろうと集まってきただけです。
 でも、彼らは僕の人生で初めて仲間と呼べる人たちでした。いい年したサラリーマン同士が会社で殴り合って、そのかたわらで泣いている。そうやって、作品を創ってきました。仲間がいれば、何十年だってやっていけるはずです。だから、みなさんも仲間を探してみてください。


死なれては困ります

 以下に、今回の「Dream Classroom」の参加者から小島氏へ投げかけられた質問と、それに対する小島氏の回答を掲載しよう。

Q:小島監督がゲームにメッセージを込めるのは何故ですか?

◆小島氏
 すべてのゲームが「説教」をする必要はないですけど、色々な思想がある。自分が手がけるゲーム関しては、メッセージを入れたい。「A HIDEO KOJIMA GAME」は説教ゲームと思ってください。

Q:小島監督にとって、ゲームと映画の違いは何でしょうか?

◆小島氏
 映画は時間をカメラによって操作することができます。ゲームはユーザーが操作するインタラクティブなものなので、創り手が時間を操作することができません。ただ、ユーザーが直接キャラクタ操ることによる没入感は映画以上だと思います。

Q:登場人物のセリフはどのように書いているんですか?

◆小島氏
 まずは、キャラクタの設定を決めます。設定さえあれば、キャラクタたちは勝手にしゃべり始めるんです。後は、音楽でもかけながら一気に書きあげて、しばらくして冷静な目で微調整を行います。

Q:小島監督が学生時代に書いたという小説は、作品の中で使う予定はないのでしょうか?

◆小島氏
 使いませんよ(笑)。ラジオドラマの台本として使うなんていう案が出たこともありますけど、「やめとけ」と。実際読んだら、ゲームとはアプローチが全く違うのでビックリすると思いますよ。

Q:小島監督が監督が創ったキャラクタたちの中で、小島監督が最も入り込んで創ったキャラクタは誰ですか?

◆小島氏
 実は、スネークに関しては、あくまでプレイヤーが主人公ということで、はじめはキャラクタづくりをしていなかったんです。スネークは無個性であるべきだと思っていました。シリーズを積み重ねることで、人気が出て、キャラクタとして深みが出ましたが。
 個人的に一番好きなのは、オタコンです。弱くて、モテなくて、ヘナチョコで、登場キャラクタの中で一番ゲームっぽくないじゃないですか。みんなが戦ってもオタコンは戦わないで弱さを見せる。一番冒険したキャラクタだと思っています。

Q:人生には限りがあります。僕の作品を見ていただく前に、小島監督に死なれては困ります。あと何年現役でいるか、ここで宣言してください。

◆小島氏
 あと20年……というと、余命が20年になりそうなので、やめます。30年くらいは余裕じゃないですか? その後は、機械のカラダになるなり、サーバーの中に入るなりするので、もう2世紀くらいはいけると思いますよ(笑)。
 まあ、冗談はさておき、もの創りをはじめてから、自分ひとりの体ではないと思っていますから、大丈夫ですよ。作品、持ってきてくださいね。

[ジーパラドットコム 広田]


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[プレスリリース]
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3月19日配信スタート『METAL GEAR SOLID TOUCH』
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