携帯アプリゲームを中心とした事業を展開するジー・モードが、2009年1月27日(火)よりWiiウェア向けソフト『ポップルと魔法のクレヨン』(以下『ポップル』)を配信開始する。
こちらは、同社初のWiiウェア向けオリジナル作品となっているが、本作を監修するゲームクリエイター・遠藤雅伸氏にとっても「初・Wii」作品になるという。
今回、そんな遠藤氏にインタビューを敢行。『ポップル』制作に関するエピソードから、最近のゲームユーザーの動向まで語っていただいた。遠藤氏がここ数年掲げる「命題」とは果たして…!?
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| モバイル&ゲームスタジオ代表取締役会長・遠藤雅伸氏。遠藤氏は『ポップルと魔法のクレヨン』に監修として携わる |
●今回、遠藤さんは監修という立場で『ポップルと魔法のクレヨン』に関わっているそうですね。
★遠藤雅伸氏 (以下、遠藤氏)
「ええ。企画を出すためのブレスト段階から参加しているので、最初から関わっている形になるかと思います。具体的には、僕の方から(制作を手がける)ジー・モードの熊谷くんに『こんな形でやったらどうだろう』といった提案をして、熊谷くんがディレクションを行っています。まあ、僕はバックアップのような感じ……のはずだったんですが、実際には色々やっていたと(笑)」
●シナリオや音楽面でも参加されていると聞きましたが、絵本でいうところの“おはなし”の部分を書かれているということでしょうか?
★遠藤氏
「“おはなし”は、ゲームとしてのギミックから組み立てられているので、ギミックを合わせた時にできあがります。その道筋を示すのが僕の仕事です。今回は、最初に物語があってそれを実現するためにゲームを制作しているのではなく、ポップアップブック(飛び出す絵本)という形態でアドベンチャーをやる場合には『こんなことができるよね』といったシーンを集めていって、それらをひとつの話にまとめています」
●『ポップル』は、ストーリーとしてはどのようなものに仕上がっていますか?
★遠藤氏
「話としては、一般的な童話や寓話をモチーフとして取り入れています。たとえば、カエルが打ち出の小槌を使うシーンがあったり、長靴をはいた猫が登場したりしますね。カエルには人間に戻る方法というものがあるんですが、それはたったひとつだけ、誰でも知っている方法だったり、そのあたりでモチーフが活きています。ストーリー展開を'80年代のゲーム好きにいわせると、ディスクシステムで発売された前後編にわかれてる某作品みたいな感じ……でしょうか(笑)。話は、『ポップル』の方がちょっと飛んでいますけどね」
●話が飛んでいる感じ?
★遠藤氏
「そう。毒リンゴを食っても死なない! 主人公のポップルは動じないキャラクタなんですよ。他のキャラクタたちが魔法にかかっているのに、コイツだけは何ともないという。ポップルをデザインするにあたっては、能動的に自分から動く主人公ではなく、場面を展開するきっかけ、いってみればマスコットとしての意味合いを強く持たせています」
●発表会では、「十数年ぶりに実際にプログラムを組んだ」ということもおっしゃっていましたが。
★遠藤氏
「3D演出などですね。スクリプトの延長線上で、スクリプトを書いてるうちに踏みこんでやる必要が出てきたので。最初は演出の処理を書類で指示していたんですよ。ただ、それだけだと伝わらない部分がありましたから。……まあ、何だかんだいって、作っているうちに楽しそうなんで僕もやりたくなちゃった、というのが本音だったりしますが(笑)」
●では、演出に関しては遠藤さんの意図するところが忠実に反映されているということですね。
★遠藤氏
「演出については、ふわーっとした感じに仕上げたい、というのがありましたから、その雰囲気を守るようにしています。また、ゲーム部分に関しては、『攻略』という言葉からかけ離れたものにしたかったんですね。テンポも、微妙に半拍ズレている感覚で、コアなプレイヤーにはイラッとする場面も多いと思います。でも、そのイラッとする人たちは、今のゲームシーンにおいては多数派とはいえないわけで、それを理解した上であえてそうしています」
●『ポップル』で訴求したいのは、ライトユーザーということですか。
★遠藤氏
「そうですね。DSとWiiを持っていて、その他のゲーム機はあまりピンとこないような方でしょうか。遠藤のファンですと、『某360こそ最強のハード!』という人も多いですが、今回はそこは狙っていません(笑)。ただ、ライトユーザーさんということで、『ネットに繋ぐ』というところがひとつネックになるかな、とは考えています。とはいえ、任天堂さんとNTTさんの方でWiiをネット接続するためのサポートもありますし、むしろそういったサポートを必要とする方にこそ遊んでいただきたいなと思いますね」
●となると、やはりゲームの難易度もあまり高くないと。
★遠藤氏
「ええ。電気店で『インターネットください』って店員さんに言うような方を見据えていますから、ゲーム中にはかなりヒントを散りばめています。それでも進めた時には『私って天才!?』と思ってもらえるように作っていますよ。あくまで僕の想定ですが、1週間くらいはのんびり遊んでもらって、そのあとは友だちに聞くなり、ネットで調べるなりして、やり込んでもらえたらと考えています」
●『ポップル』のようなライトユーザー向けの作品に、やり込み要素を盛り込むというのは珍しい気もしますが。
★遠藤氏
「ライトユーザー向けに作っても、それ以上に受け入れられることもありますから、ある程度用意はします。以前、『ポコパルコ』というWebサイト上で遊んでもらうFlashゲームを、今回と同じように熊谷くんと一緒に制作したんです。これが日本のライトユーザー層にウケた後、何故かヨーロッパで人気が出るという不思議な動きを見せて。その動きもふまえて、『ポップル』の世界観には南欧的な色合いを取り入れたりしています。登場する魔女も高笑いしながら魔法をかけてきますからね。明るいですよ」
●子ども向けとしても安心な感じですね。
★遠藤氏
「もちろん。子どもたちが遊んでも安心なもの、ということでかなり気を使って制作していますから。まあ、ポップルをリモコンで「掴む」とちょっと可哀そうな感じになりますが、そこは実際に試してみてください(笑)」
●ちなみに、今回の『ポップル』が遠藤さんにとって、WiiウェアもしくはWiiソフトにはじめて本格的に携わることになるのでしょうか?
★遠藤氏
「そうですね。Wiiでつくったのは今回が初めてですね。ゲームキューブ向けのソフトにも関わっていたこともあって、どんなハードかはそこそこ把握していましたから、それほど難しくはなかったですけど」
●Wii向けソフトを制作された方には必ず伺っているんですが、操作方法がパッドからリモコンに変更されたことで、ゲームデザイン上難しい点はありましたか?
★遠藤氏
「初っ端が一番苦労していますね。というのは、スタッフの中に『ヌンチャク付けて、こうやって動かして……』って、考えるコが多いんですよ。でもそれじゃ駄目だと。『ヌンチャクを付けて』という発想を過去に置いてきてほしい。ヌンチャクを買うということ自体がWiiのユーザーにとっては敷居が高いことなんだよって、それを説明することから始めました。で、そこからです。『リモコンだけで遊んでもらうにはどうしたらいいか』を考え始めました」
●なるほど。まず、スタッフに「Wiiリモコンだけで」という意識を持ってもらったわけですね。では具体的に、どのように操作方法の検討を?
★遠藤氏
「人が最初にリモコンを持った時にすることって『振る』なんですよ。特に『横に振る』という行動をとることが多い。なので、それが反応になるような形のゲームであろうと、まず決めました。実際、ゲーム中のアクションも、人がリモコンを持った時の基本的な動作にならって作ってあります。ですから、リモコン以外のコントローラだと逆にやりにくいと思います。多分、ヌンチャク付けてというのも適当ではなくて、Wiiリモコンだけで操作するというのが最適なゲームに仕上がっていますね」
●今回の『ポップル』、パッケージ販売ではなくて、Wiiウェアによる配信販売ですが、どういった経緯で決まったのでしょうか。
★遠藤氏
「今回つくった『ポップル』はジー・モードの仕事です。ジー・モードという会社自体がゲーム配信事業を手掛けていますから、『配信するタイトルで面白いモノがやれないか』というのが最初からのテーマでした。企業イメージもありますし、こういう作品も作っていますというアピールにもなりますしね。そのかわり、やるからには新しいものを作ろう、多少持ち出しになっちゃっても仕方あるまい! というくらいの意気込みで取り組んでいますよ。なので、設定を起こす時点から、Wiiウェアで販売することを念頭においた手法を取り入れて作ることができました。音楽は必ずMIDIでやろうとか」
●音楽面でも参加されているそうですね。
★遠藤氏
「音楽担当がいますから、一からMIDIをいじってというわけではないですけど、あがってきた楽譜を見せてもらって意見を出したり、調整してもらったりしています。『この音楽は僕のゲームではやめてよ!』って(笑)。まぁ、それは冗談としても、小節ごとに細かく見て、『ここは一度上げて欲しい』とかその都度お願いしています」
| コンテンツとコミュニケーション、 どちらが面白い? |
●今、Wiiはもちろん、ニンテンドーDSを中心にライトユーザー向けの「カジュアルゲーム」が支持されていますが、このような現状を遠藤さんはどのように考えていますか?
★遠藤氏
「大変になってきているな、という印象は確かにあるんです。何が大変かというと、『わざわざゲームをやるために自分の時間を削ってもらう』というのが、まず大変じゃないですか。しかも、それでもプレイしたいゲームっていうのが、ユーザーそれぞれの価値観の中で少なくなってきていると思うんです。たとえば、かつてのゲーム少年が成長してゲーム好きな大人になって、『今度出るソフト気になっているんだよね』ってお店で買っても、開封すらしないで『積んじゃう』わけです。それって、自分の興味のあるゲームに対して、わざわざ時間を割く余裕ができていないということですよ」
●いわゆる「積みゲー」というやつですね…。
★遠藤氏
「ええ。本来の自分のゲームに対する興味と、実際の遊び方にものすごくギャップがあるわけです。じゃあ、実際に何で遊んでいるのかといえば、ちょっとした空き時間なんかに楽しめるものが、携帯機などでプレイされているわけです。とはいえ一方で、それでも『コイツだけはっ!』という作品は、もう学校、会社休んでもプレイするというユーザーもいてくれるわけじゃないですか!?(笑) だからそういう動きもありますし、カジュアルゲーム全盛と言われますけど、あくまでカジュアルゲームが出てきたことによって、重たいゲームをやるプレイヤーとの比重が変わってきているだけだと思います」
●プレイヤーの質も変わってきているのでしょうか?
★遠藤氏
「今の若いユーザーはカジュアルゲームから入ってきますから、重たいゲームをプレイしてもあんまり深くまではやり込まない。結果、重たいゲームでもヌル目の設定にならざるを得ないわけです。たとえばですけど、今大ヒットしている『某ハンター』で考えても、ものすごく支持されている一方で、どれだけの数のユーザーが途中で脱落しているか。訓練所で挫折しちゃうユーザーもいるわけですよ」
●販売本数や出荷本数が、必ずしも定着したユーザー数ではないと。
★遠藤氏
「そうですね。流行っているからと買ってみて、『これは自分にはハードル高すぎる』とあきらめてしまうユーザーが、今は結構多いはず。ただ『某ハンター』の発売元は、きちんとゲームを作っていますよ。ある意味『ちゃんと難易度の高いゲームを出す』という業を背負っているので、しっかりやり応えのあるタイトルを出し続けてくれています。ただ、それにユーザーがついていけないというのも、また事実です。そういったユーザーは、ゲームをゲームとしてではなく、単に『みんなで遊ぶコミュニケーションツール』と受け止めている」
●コンテンツの内容よりも、コミュニケーションが重視されるわけですね。
★遠藤氏
「ただ、その変化っていうのは必ずしも悪いものではなくて、コミュニケーションも面白い要素だと思うんです。だから数年前から、僕の命題としては『コンテンツとコミュニケーションでは、どちらが面白いのか?』になっています。今のところ僕としては、コンテンツよりも、コミュニケーションの方が本質的には面白いと考えていますけどね。コンテンツがなくても生きていけますけど、コミュニケーションがないと人は死んでしまう場合だってありますから。そんな本質の部分が違うのかな、と思っていたりします」
●オンラインゲームでも、カジュアル志向が強まっているのは、コミュニケーションツールとして利用される方が多いから、といえるのでしょうか?
★遠藤氏
「それもあるかもしれませんが、重いコンテンツだとコミュニケーション要素って希薄になっちゃうんです。逆に軽い、つまりはカジュアルなコンテンツだと、コミュニケーションは濃密になるんですよ。気軽にやり取りできますしね。だって、『あのゲームやった?』という話題の時に、もの凄くディープなことしか話せないと、あんまり人が集まらないでしょう? コミュニケーションが成り立たないゲームって敬遠されてしまうんです」
●では、最後にユーザーへのメッセージをお願いします。
★遠藤氏
「『ポップル』のフンワリした感じで楽しんでいただければ。個人的には、2008年の後半はこの仕事でみっちりだったので、遠藤の代表作としても遊んでいただける作品に仕上がっていると思います」
●本日はありがとうございました。
(ジーパラドットコム 広田)