インタビュー
 
我々は『キノスワールド』を諦めません――GMO Gamesインタビュー
2008.10.17
関連URL:『キノスワールド~パジャマの騎士~』公式サイト
 
 既報のとおり、GMO Gamesは2008年10月31日(月)17時をもって、同社が現在運営中のMMORPG『キノスワールド ~パジャマの騎士~』のサービスを一時休止する。

 突然の発表で驚いたユーザーも多いかもしれないが、あくまで「一時休止」であって、これでサービスが終了するわけではない。今後は開発元である韓国NFRONT社からタイトルのIPを買い取り、GMO Games側で全面的に内容をリニューアル。GMO Gamesの開発による、まったく新しい『キノスワールド』として来秋を目処にサービスを再開する予定だと言う。

 単なるサービス休止ではなく、自社タイトル化+全面リニューアルということで、その背景にはかなり大きな決断があったものと思われる。そこでなぜ今回このような決断に至ったのか、今後の『キノスワールド』はどうなっていくのか、GMO Games代表取締役社長、アンディ・クォン氏にお話をうかがった。

GMO Games代表取締役社長、アンディ・クォン氏

オープン直後のパニックから、買い取り決断に至るまで

――まず、今回サービス休止決定に至った理由についてお聞かせいただけますか。


アンディ・クォン氏(以下、クォン氏):ユーザーの皆さんには本当に申し訳ないと思っています。最大の理由は、やはりクォリティの部分。7月11日(金)にオープンβテストを開始したのですが、スタート直後からものすごい数の不具合報告が寄せられるなど、まともにサービスが提供できていない状態でした。

―― 不具合というのは、たとえばどんな?

クォン氏:サーバーが落ちる、ログインできない、レベルアップ時に割り振ったパラメータが正常に反映されない、回復薬を使うとゲームが止まることがある……というのが、私たちが認識していた「四大不具合」でした。ただこの多くは、ソフトウェア側での“同期のズレ”に起因するもので、こちらではどうにもならない。オープン初日は私も完全にパニック状態で、週末は会社に泊まり込んで様子を見て、週が明けるとすぐに韓国へ飛んで、NFRONT側にソフトウェアの修正をお願いしたんです。

――それですぐに対応していただけたと。

クォン氏:いえ、ここからもさらに時間がかかり、結局完全に落ち着くまでに約1ヵ月を要しました。これはサービスとしてはあってはならないことですし、こちらの不手際だったと真剣に反省しています。同時に、今回のサービス休止・タイトル買い取りについて真剣に考えたのもこのときでした。

――ということは、7月の時点ではもう構想にあった?

クォン氏:そういうことになります。今回の件で痛感したのが、開発側と我々とで、ゲーム開発に関する根本的な考え方というか、持っている“哲学”が食い違っていたということ。ここがかみ合っていない以上、おのずとゲームとしての限界も見えてしまう。また今回、日本でのサービスにあたってグラフィックを日本向けにリニューアルしたり、日本独自のシナリオを持たせたりといった大幅なカルチャライズを行ったんですが、そこが開発側への負担となって、大事な案件に人員が割けない、ひいては新たな不具合を招いてしまうといった悪循環もあった。これらを踏まえると、本当に理想的なサービスを提供するには、こちらで開発を行うしかないだろうと。

――かなり思いきった決断だったのではないでしょうか。

クォン氏:もろもろの調整が済んだのがだいたい9月末くらい。開発権まで買い取りとなると、NFRONTと我々だけでなく、ライセンサーであるSamsung、それにGMOインターネットグループ全体にも関わる問題になりますから、もちろんいろいろと苦労はありました。ただ一度“本気でやります”とユーザーに約束した以上、我々にはサービスを提供する責任がある。それに我々なら『キノスワールド』をもっとうまく変えていけるという確信もありました。

――今回は1年間のサービス休止ののち再開、という形になりますが、運営を続けながら徐々に修正していく、という選択肢はなかった?

クォン氏:当然、選択肢としてはありました。ただそれだとやはり修正できる範囲に限界がある。『キノスワールド』については根本から変えていかないと意味がないと思っていましたので、こういう形をとらせていただくことになりました。

終始真剣な表情を崩さなかったクォン社長。運営側として、オープン直後のトラブルには相当な責任を感じているようだ

より日本人向けに生まれ変わる『キノスワールド』

――具体的に、どのような部分を変えていく予定ですか?


クォン氏:詳しいところはまだこれから詰めていく段階ですが、横スクロール型のMMORPGという部分と、“誰でもシンプルに楽しめる”という基本コンセプトは残しつつ、それ以外はほぼすべて変えていくつもりで考えています。具体的なところでは、まずシナリオやクエストをより充実させ、レベル上げに明確な意味や目的を持たせる、レベルアップ時のパラメータの割り振りをなくし、より気軽に楽しめるものにする、アイテムの性能を見直し、もっと使えるアイテムを増やす――などが候補にあがっていますね。グラフィックも平尾リョウさんのイラストにより近いものに変えていく予定です。

――こうなると、もうほとんど別のゲームになりそうですね。


クォン氏:それくらいの覚悟で臨んでいます。韓国のオンラインゲームがしばしば「クリックゲーム」と呼ばれるゆえんだと思うのですが、とにかく無駄にプレイ時間を引き延ばすような作りは絶対に避けたい。レベル上げそのものが目的になるのではなく、レベルはあくまでクエストやストーリーを進めた“結果”としてついてくる、というのが我々の理想。

――このあたりが先ほどおっしゃっていた“哲学”の違いでしょうか。

クォン氏:そうですね。我々の基本理念は“楽しくなければ意味がない”ということなんです。たとえゲームでも、後で振り返った時に「やってよかった」と思えるものでなければならない。韓国の人たちは、一言で言えば考え方がシステマチックなんです。ひととおりのゲームシステムと場所を提供しておけば、あとはユーザーが勝手に遊んでくれると思っている。でも、日本のプレイヤーは違いますよね。よくストーリー性を重視すると言われますが、それはゲームで遊ぶ際に、何らかの目的・目標を求めるからです。レベルを上げるために敵と戦うのではなく、悪い魔王を倒して、お姫さまを助けるためにレベルを上げる。そこが根本的に違う。

――日本でサービスするにあたって、「レイチェル」という“助けを待つお姫さま”的なキャラクタを追加したのもそうした考えから?

クォン氏:そのとおりです。これについてはユーザーからの評判も良かったですし、方向性としては間違っていなかったと思っています。

――途中からとは言え、GMO Gamesとしては初の自社開発タイトルになるわけですが、このあたりに不安はなかったですか。

クォン氏:『キノスワールド』が初の自社開発タイトルになるというのはさすがに予想外でしたが、私自身、もっと国産のオンラインゲームが増えていくべきだとは思っていましたし、いずれは自社で開発も行っていくつもりでした。本作のプロデューサーであるユン(ユン・ジェス氏)はもともと、実名は挙げれませんが韓国で某大作オンラインゲームの開発に関わっていた人ですし、「やろう」と決めてからは迷いはありませんでしたね。

――国産タイトルが増えていくべき、というのはどんな考えから?

クォン氏:ゲームというのは文化産業ですから、ある程度は国産と海外産のバランスがとれていないとおかしい。にもかかわらず、相変わらず日本でオンラインゲームと言えば韓国産が主流ですよね。果たしてそれで本当に日本のユーザーが満足できているのか。国産のタイトルがもっと増えれば、オンラインゲーム市場は今よりもっと大きくなる可能性を持っているはずです。

――今後のサービススケジュールについてですが、具体的な再開時期はいつごろになる予定ですか。

クォン氏:あくまで予定ですが、来年6月にクローズドβテスト、7月にオープンβテストをそれぞれ実施し、9月に正式サービスを開始……というスケジュールで考えています。その間、ユーザーの皆さんはお待たせしてしまうことになりますが、公式サイトや開発者ブログなどを通じて、進捗状況は逐一報告していくつもりです。ユーザーとの糸は切らさないようにしていきますので、今はただ、我々を信じてお待ちいただければと思います。

――再開時には、現在のデータは引き継げるのでしょうか。

クォン氏:IDなどの会員情報などはそのまま使用できるようにしますが、キャラクタなどのデータについてはいったんゼロに戻させていただくと思います。先に述べたとおり、再開後はまったく違うゲーム内容・バランスにするつもりですので、ここは申し訳ありませんがご理解下さい。

もちろん自分でも『キノスワールド』はもちろんプレイしており、それだけに思い入れは深い。キャラクタレベルは50に達しているという


『コルムオンライン』でも大型アップデートを予定

――GMO Gamesとしての今後の目標は?


クォン氏:パブリッシャーとして成長していく、というのが一つ。今も新しい運営タイトルについては検討していますし、ライセンス事業については今後も止まらずに進めていきます。より先のビジョンとしては、『キノスワールド』で得たノウハウをベースに、今後は自社開発にも力を入れていきたいですね。

――御社のタイトルですと、ほかに『コルムオンライン』がありますが、こちらでは何か新しい展開は?

クォン氏:『コルムオンライン』については、おかげさまで正式サービス開始から数えて今年で4周年目になります。まだ詳しい内容については言えませんが、4周年を記念して大きなアップデートを用意していますので、楽しみにしていてください。

――そのアップデートはいつごろに?

クォン氏:11月頭ごろから、ある程度の長期スパンで行っていく予定です。内容については、ユーザーが一番望んでいるであろう内容……とだけ申し上げておきます。また公式サイトなどでも、特設ページなどを設けて、ゲームと連動したお祝いイベントを行っていきます。

――それでは最後に、ユーザーに向けてメッセージをお願いします。

クォン氏:今回のサービス休止については、本当に申し訳ないと思っていますし、我々としても悔しい思いでいっぱいです。ただ我々は『キノスワールド』を諦めたわけではありませんし、断固たる決断のもと、必ず皆さんに喜んでいただけるものをもう一度お見せするつもりです。それまでもう少しだけ、お待ちください。

――本日はどうも、ありがとうございました。

今回特別に公開していただいた、レイチェルの未公開設定イラスト。1年後、生まれ変わった『キノスワールド』でふたたびレイチェルに会える日を楽しみに待とう

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■関連リンク
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