インタビュー
 
なぜマウスでなければならなかったのか――『SFO』インタビュー
2008.08.11
関連URL:『ストリートファイターオンライン』公式サイト
 
 E3前後のドタバタですっかり掲載が遅くなってしまったが、実はE3に出かける前、ダレットの『ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション(以下、SFO)』のインタビューを行っていたのだった。

 去る7月9日(水)にはいよいよ正式サービスが開始され、その後もアップデート予定として、あの「ガイル」をはじめ、カプコンの『私立ジャスティス学園』、そして石ノ森章太郎氏の人気コミック「サイボーグ009」からも新キャラクタの参戦が続々発表されるなど、ここのところ大きな発表が続いている『SFO』。そもそも「マウスで格闘」というアイデアはどこから生まれたのか? 今後の運営、アップデートの方針は? ――そんな『SFO』の気になる部分を、ダレット戦略局局長・波多弘幸氏と、戦略局編成室コンテンツプロデューサーの内田洋平氏のお二人に直撃してみた。

 なにぶんインタビューを行ったのが正式サービス開始前であったため、一部「もう知ってるよ!」という情報も若干含まれていたりもするが、そのあたりは随時注釈で突っ込んでいくので、そんな微妙なタイムラグも含めてお楽しみいただければ幸いである。

ダレット 戦略局局長・波多弘幸氏 ダレット 戦略局編成室コンテンツプロデューサー・内田洋平氏

※各写真をクリックすると、拡大したものを見ることができます


「マウス」へ辿り着くまでの試行錯誤
――そもそも企画が動き出したのはいつ頃から?

波多弘幸氏(以下、波多氏):まだダレットが出来る前、僕がカプコンに所属していた頃から構想としてはありました。当時から、僕と稲船(稲船敬二氏)の間で、『ストリートファイター』を軸に、カジュアルなオンラインゲームをやりたいねという話があって。それが大体4年弱くらい前。具体的に企画として動き出したのは3年前くらいかな。

――その頃からマウスで行こう、と?

波多氏:いえ、一番最初は違いましたね。普通にキーボードだったりゲームパッドだったり。「『ストリートファイター』をオンラインにする」というのがまずあって、どうやって遊ばせるかというところは後回しでした。でも具体的に検証をはじめてみると、やっぱり通信のラグは避けられないという問題に突き当たった。ラグを「出さないためにどうしよう」ではなく、ラグは「あるもの」という結論。そこに達した時に、じゃあラグを前提にした対戦格闘ってどうしたらいいんだろう、って方向になって。

――最近だと、対戦格闘ゲームでも比較的スムーズなオンライン対戦を実現しているものが出てきていますが。

内田洋平氏(以下、内田氏):これはですね、通信形式が違うんですよ。他のゲームでは本体同士を直接マッチングする形式をとっているものが多いんですが、これだとラグが起きにくいかわりに、計算している機械が目の前にあるので、不正やデータの改ざんなどがいくらでもできてしまう。これを避けるため、『SFO』ではデータのやりとりをする際、すべて一度サーバ上で整合性をとっているんです。たぶんこうしないと、延々チートとの戦いを余儀なくされてしまう。

波多氏:それにたとえば、一生懸命昇竜拳コマンドを練習して、やっと出せるようになったのにチートで負けてしまった。そんな時の嫌悪感とか挫折感って、すごくツラいものだと思うんです。オンラインゲームって結局はファンサービスだから、提供する側としてはそこに責任を持たなくてはいけない。

――ラグを受け入れるところから始まったと。

波多氏:もうひとつの課題として、キーボードの壁があった。一般のユーザーがPCのゲームで遊ぶ時、一番の壁になるのがキーボードなんです。これをクリアしないと、みんなが気軽に遊べるものにはなり得ない。ラグの問題、それにキーボード。いろんな問題がある中で知恵を絞りまくった結果、「マウスを使うことで、それらが一気に解決するんじゃないか」っていうのがあるとき見えたんです。

――そこからは比較的スムーズに?

波多氏:いえ、それはあくまで仮定で、それが「行ける」という確信に変わるまでにはまた同じくらいの熟成期間があって。マウスで波動拳コマンドを入力できたら面白いんじゃないかとか、でもやってみたらやっぱりちょっと難しいよねとか、試行錯誤の連続でしたね。マウスを見るのがイヤになった時もありました。

――最終的には、かなりシンプルなところに落ち着きましたね。

波多氏:それしかなかったというのが正直なところですね。たぶん同じような状況なら、誰が作っても遅かれ早かれ同じところへ辿り着いていたのではと。でもそうしたら今度はまた別の問題が出てきて。

――別の問題?

波多氏:格闘ゲームって、簡単に言えば時間を使って習熟度を上げていくゲームですよね。でも簡単に技が出せるとなると、それが必要なくなってしまう。そこでまた試行錯誤があって、それでようやく出てきたのがパーツの組み替えだったんです。パーツごとに技を持たせて、組み替えに時間をかけてもらおう、自分らしい組み合わせとか、組み合わせのフィット感を楽しんでもらおう、というのが見えてきた。

――本当に試行錯誤の連続ですね。

波多氏:でもその結果、パーツの組み合わせを考える、パーツを集める、それから自分の組み合わせを人に見てもらうといった、新しい楽しみ方ができたんですよ。


リボルテック、金庸氏とのコラボレーション
――今回、海洋堂のリボルテックとコラボレーションしていますが、これはパーツ組み替えのアイデアとどちらが先だったんでしょうか。

波多氏:組み替えですね。パーツ組み替えに行き着いた時、「まてよ、人間の体を組み替えちゃっていいのか」って。たとえばチュンリーの腕をポーンと取ってザンギエフの腕をくっつけてとか、ちょっと倫理的にどうかなと。でも人形だったら抵抗感がない。それで海洋堂さんにアイデアを持っていったら、あっという間に話がまとまって。こっちはヒヤヒヤだったんですが、何なら僕らで商品化させてくれないかとまで言ってくださって。

――あれはじゃあ、世界観的にはフィギュアが戦ってるという?

内田氏:そうです。ジオラマのステージ上でフィギュアが戦ってるイメージですね。空き缶くらいの大きさ。

――対戦してると『ストII』ステージが選ばれることが多いので、なんか等身大のようなイメージがありました。

内田氏:あれもジオラマですよ。スーパージャンプでぴょーんって飛ぶと、後ろで見てるオッサンがちらっと見えるようにしようか、なんてアイデアもありました。結局ナシになりましたけど(笑)。

波多氏:せっかくなので、今触ってみますか。

――あ、これですこれです。ワンフェス会場で一度拝見しましたが、これって普通のリボルテックより一回り小さいですよね?

波多氏:通常のリボルテックと、リボルテックミニの間ですね。新しいサイズなんですよ。

――やっぱりよくできてますね。昇竜拳とかのポーズもちゃんと……。

波多氏:関節もしっかり、いろんなモーションを再現できる作りになっていて……。

(しばしインタビューを忘れて遊びにふける一同)

――そろそろインタビューの方に戻りましょう(笑)。今回、『ストリートファイター』以外のキャラクタが参戦していますが、これはどういった経緯で?

波多氏:ダレットとしてアジア戦略を考えていくにあたって、当初から中国の人たちが知ってるキャラクタを入れていこうと思っていたんです。それでいろいろ調べた結果、金庸さんに辿り着いた。中国では老若男女みんな知っていて、日本で言えば司馬遼太郎さんのような人。それなら頼むしかないだろうと。もしかしたら反対されるかもと心配したんですが、すごく頭の柔らかい方で。

――逆に日本で展開するにあたって、『ストリートファイター』以外のキャラクタが入ることへの心配はありませんでしたか。

波多氏:今は金庸さんのキャラクタだけですが、そのうちにもっといろんなキャラクタを入れていく予定です。今はバランス的に金庸さんの比率が高いですが、将来的には金庸さんのキャラクタもいて、あのキャラクタもいてといった感じで、もっとお祭り感を出していきます。

――ということは、今後まったく違う作品とのコラボレーションも?

波多氏:ヒントとしてお伝えすると、『ストリートファイター』以外のカプコン作品とか、それからアニメのキャラクタとか。いろいろなところとお話は進めていますよ。

(※この後実際に、『私立ジャスティス学園』 「サイボーグ009」とのコラボレーションが発表された)


「ガマン」導入のワケ
――オープンβテスト中に「ガマン」や「ナゲ」が追加されるなど、かなり大きなシステム変更がありましたが。

波多氏:クローズドβテストの後半くらいから、ユーザーさんからの意見やアドバイスがかなり多くなってきていて、これは無視できないだろうと。特に「ガマン」の導入については150%、ユーザーからの意見によるものです。

――「ガード」ではないんですよね。あくまで「ガマン」。

波多氏:あれをガードと言ってしまうと、コンマの世界で勝負しているような人たちに失礼ではないかというのがあって。これもラグの問題になるんですが、結局辿り着いたのが「ゆるいガード」。

内田氏:ガードを入れるとどうしても試合が長引くし、初心者にとってはそれがフラストレーションになってしまう。だから対戦が停滞しないように、ガードしても体力は削られる仕様にして、あとはそこからの脱出方法として「ガマンカウンター」というのを用意して。

――けっこう削られますよね。でもだからこそ、ギリギリまで耐えてがまんカウンター、という駆け引きができた。焦ってすぐに反撃しようとしても、次の技で潰されてしまったり。

波多氏:あとは「ガマン」に対する攻略手段として「ナゲ」があって。

内田氏:このあたりは、基本コンセプトである簡単さを追求した結果ですね。コマンドは簡単ですが、そのかわり頭を使って読みあいをしてくださいと。

――でも「ガマン」がなかった頃って、それこそ当たるか避けるかしかなかったわけですよね。これはかなり思いきったシステムだったと思いますが。

内田氏:最初はもっとステージも広くて、何段もジャンプできて、空中でも自由に必殺技が出せて……と、重力のあるシューティングゲームみたいな感じでしたね。波動拳も1画面に5~6発くらい出たり。あとは操作にももっとクセがあって、要はキャラクタをひもで引っ張るような感じだった。

――今でもちょっと「ひも」っぽさは残っていますね。

内田氏:最初はもっと柔らかいひもだったんです。どう動くか予測しにくい中で、相手の攻撃をいかに避けるか、みたいな戦略があった。結局今のような、格闘寄りの方向にシフトしていったわけですけれど。


アップデートは週1、いただいた意見には真剣に対応
――今後の展開としては?

波多氏:もうみなさん予想はついてると思うんですが、次は、飛ばして落として待ってる人がやってきますね。いつもしゃがんでる人。

内田氏:へんな髪型で、頭の上にモノとか乗せられそうな人。

――もう言っちゃいましょうよ(笑)。
(編集部注:もう発表されてしまいましたが、ガイルです)


内田氏:そして彼にはすごいコスチュームがいっぱい用意されます。コスチュームも山ほど考えていますので、あまりアダルトな方向にはいかない形で、いろいろ出していくつもりです。

――見た目だけでなく、パーツによって技や性能が違うのも面白いですね。

内田氏:そうですね。たとえば通常のリュウの腕だと波動拳、昇竜拳が使えますが、これをスカジャンの腕にすると灼熱波動拳になったり。それこそ今後、今までにはなかったような必殺技なんかも入れていきます。

――ザンギエフとリュウのパーツを組み合わせて、投げ技も波動拳も使える万能キャラクタを作ったり、人それぞれいろんな楽しみ方ができる。

内田祖:強いんですよね、それ(笑)。勝ちにこだわるならそういったスタイルもありですし、面白い組み合わせや、オリジナルのきれいな形にこだわるのもユーザー次第ということで。

――ただこうしたパーツの組み替えがあると、バランス調整が大変だと思いますが。

波多氏:これはもう、やるしかないですね。ある程度のやり方は構築できていますし、パッケージゲームと違って、ユーザーからの意見をもとに随時チューニングしていくこともできる。だからホントに、意見はどんどん送ってください。必ず目は通しますから。

――アップデートについては今後、どれくらいのペースで?

波多氏:小さなものも含めるなら、毎週木曜日、週1でアップデートを行っていく予定です。さすがにすべての意見を反映させるわけにはいきませんが、いただいた意見には真剣に対応していくというのが、ユーザーさんへの礼儀だと思っています。

――すでにゲームヤロウの『サドンアタック』とのコラボレーションが発表されていますが、自社のタイトルとのコラボレーションはあったりしないんですか?

波多氏:それは、たとえば『○ンスターハンター フロンティア』とか。

――それも含めて、いろいろと。

波多氏:これはもう、ユーザーからの要望が多ければ社内でもぜひ調整していきますので、とぜひ書いておいて下さい。ユーザーさんからの意見って、社内で企画を通す時に強い説得材料になりますから。

――わかりました(笑)



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