新氏はまず、『Forza Mortorsport2』でユーザーが制作したカーデザインのムービーを上映した。当時はクローズドサービスだったニコニコ動画に投稿されたものを誰かがYouTubeに転載し、それがアメリカメディアに報道されて、それがさらに日本にフィードバックされていったという事例を説明。
「著作権的にどうかというのは、とりあえずおいておいて」と前置きしながら、こういったユーザー発のムーブメントが日本から起こったことを高く評価。
次に『Home World2』のMODを紹介。これは同タイトルのデータをユーザーが勝手に改造したものだが、クオリティは非常に高い。データサイズは300Mと大きめだが、アメリカのインターネット上で無料で配布されているという。
これらの映像をニコニコ動画などで見た日本のユーザーが他のMODと組み合わせて、さらに新しいMODを作り投稿しているという。
「英語圏のMODコミュニティでは、YouTubeに画像を貼り付けることで盛り上がりをみせていたが、日本では波及していなかった。だが、ニコニコ動画がその状況を一変させてしまった」と新氏は指摘。
またスウェーデンの学生が開発した2D空間の物理演算環境ソフトで作られた映像を上映し「インターネット環境とニコニコ動画がなければ、波及にはもっと時間がかかっただろう」と語った。
そのポイントとなるのは、ユーザーが自分で消費するために生産を行う「生産消費者」になりつつあること。そしてそれを支えるPCやデジタルデバイド、ネットワークの進化・拡大といった「広範囲の技術革新があまりにも急激に起きた」こと。そして今後も急激に進化していくことでユーザーからのイノベーションが容易に起こる状況になるだろうと予想する新氏。
「たぶん、今年も何かハァ? というサービスが出てくるのではないか」と自らの予想を話した。
そういったイノベーションの発信は、実は企業からではなくユーザーから起こされているという研究を引き合いに新氏は論をつなげていく。
多くの場合、企業の人はそれをユーザーから聞いたことを「忘れてしまう」ため、あたかも自分たちがそれを開発したと思ってしまうのだという。その研究では、イノベーションの種はユーザーや顧客の方が先に作るという傾向があり、いままでの世界ではそれが分からなかったがネットワークの拡大により顕在化しているということになるのだろう。
またPCの進化による低価格化から、ニコニコ動画に動画を投稿するカロリーは劇的に減ったが、それを算出する経済指標がないと、コストの面からも現在の状況を指摘。
そしてニコニコ動画から無料オンラインゲームまで、安価なエンターテイメントにあふれる現在においてビジネス形態の普遍的なパターンとして、「ユーザーが自由に開発できる環境」「その流通の容易さ」「ユーザーからフィードバック」を挙げる。
「Xbox Live Community Games」やニコニコ動画は、これら3つの要素がうまくシステムが動いているという。
さらに時代の進歩による相対的な機器のコスト減や、『Second Life』など「モニターの向こう側」における社会性の確立など様々な点に話はおよび、結論が述べることなく終わってしまったが、今後何が起こるかわからないネットワーク世界を観察する上でひとつの指標になる講演だった。 |