元宮秀介のこれぐらい知っとけ
 
第19回
ニンテンドーDS Lite発売一周年、
その軌跡を振り返る
2007.03.20
関連URL:任天堂
 

  ニンテンドーDSの軌跡を振り返ると、それは非常にエキサイティングな道程だった。アメリカのゲーム見本市「E3」でニンテンドーDSが初めて世間に公開されたとき、評判は賛否両論、いや戸惑いのほうが多かった。画面はダブルスクリーンを採用し、操作には主にタッチペンを用いる。ゲームの歴史を紐解けば、いまだかつてなかった異端児といえる存在だったのだ。
  そのためか、発売前の下馬評は、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPSP(プレイステーション・ポータブル)のほうが高かった。プレイステーション2の高性能をそのまま小型化し、大型で解像度の高い美しいモニターを採用したそれは、洗練されたデザインと相まって「さすがはソニー」と大勢を唸らせた。
  かたやE3で発表されたニンテンドーDSは、野暮ったいデザインだった。PSPへの対抗意識もあったのだろう。任天堂としては異例だが、発売前に大きなデザイン変更がなされたほどだった。

 しかし、このマシンが1983年のファミリーコンピュータの発売をきっかけに、本格的に始まった家庭用ゲーム機の歴史の中で、史上最速の1,000万台の売り上げを記録するのだから、ゲームの世界は面白い。

 任天堂がニンテンドーDSを発売するに当たって掲げたテーゼは、「ゲーム人口の拡大」だった。そのため、ゲームのコントローラに親しみにくさを感じる人向けに、タッチペンを採用したわけだ。任天堂の工夫は、これだけには止まらなかった。普段ゲームに触れない人に、一度でいいからタッチペンを握ってニンテンドーDSのゲームで遊んで欲しいと、大型書店の店頭など、ゲーム売り場以外の場所でデモンストレーションをくり返した。小林幸子や天童よしみの公演が行われていた新宿コマ劇場にも、ニンテンドーDSの試遊台を設置したほどだ。

 起爆剤となったのは、任天堂が「Touch Generation」と自ら呼ぶソフト群だ。犬を飼う『Nintendogs』、メディアアートの『エレクトロプランクトン』などの意欲的な作品が矢継ぎ早に発売された。その中でも本命中の本命といえるのが、『川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』であることは言うまでもあるまい。
  自分の脳年齢が判別できる、衰えた脳を鍛えられる、という触れ込みのこのソフトは、特に高年齢層にアピールした。子供が親にニンテンドーDS本体と共にプレゼントする光景も目立ち、特にこの日前後に売れたことから「敬老の日需要」という言葉も生まれたほどだ。

 ニンテンドーDS Liteは、こうした機運の中で生まれ、DSのさらなる普及へひと役買った。本体がひと回り小さくなり、液晶画面が格段に明るくなった。そして、デザインはさらに洗練されたものとなり、ティーンエイジャーたちからはアップル社のiPodと同様のファッションアイテムとしても認知されるようになった。
  任天堂が巧みなのは、こうした努力を重ねながら、今までゲームに触れなかった人を引き込んでおいて、ここぞというタイミングで従来路線の名作ゲームを畳み掛けるようにリリースしたことだ。『おいでよ どうぶつの森』『マリオカートDS』『NEWスーパーマリオブラザーズ』、そして『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』……これらのソフトは、どれも300万本を超えるメガヒットを記録している。任天堂の狙いは、見事に成功したのだ。

 また、ゲーム機としてではなく、扱いやすい情報端末としての需要も増えてきている。京都の嵐山にある百人一首美術館「時雨殿」でのナビゲータとしての利用を皮切りに、BUNKAMURAで開催された「スーパーエッシャー展」では、絵を拡大して見るためのビューワーとして利用された。また、国土交通省が実施している「日本橋観光まちナビ」サービスにおいては、日本橋近辺の名所の案内や動画が見られる観光ガイドとしても使われている。

 ニンテンドーDSの未来を想像するとき、僕はワクワクする。まだまだ未知数のことが多いからだ。例えば、Wiiとの連動は、『ポケモンバトルレボリューション』でコントローラとして利用する、とその一端を示されただけだ。まだまだ新たな連動方法があり、新しい遊びを提示してくれる、と信じている。

 個人的に最も楽しみにしているのが、「ワンセグチューナー」(仮)だ。これを挿せば、ニンテンドーDSで地上波デジタル放送を観られるようになる。移動中はもちろん、ベッドの中でふとんに包まってテレビが見られるようになるのが楽しみでならない。

 1年後、このコラムが続いているのなら、同じ時期にまたニンテンドーDSの軌跡を振り返ってみようと思う。そこには、どんな文章がしたためられるのだろうか。

■ 今回のキーワード ■

ニンテンドーDS Lite
  ニンテンドーDSの上位機種にあたる携帯用ゲーム機。発売はクリスタルホワイトが2006年3月2日、アイスブルーとエナメルネイビーが3月11日に発売された。価格はいずれも16,800円(税込)。その後、ノーブルピンク、ジェットブラックが加わり、全5色のカラーバリエーションが用意されている。全世界での販売台数は、平成19年3月期で2,300万台(DS、DS Lite含む)を見込んでいる。


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