元宮秀介のこれぐらい知っとけ
 
第1回
ゲームを変えるのは、このスピーカーではないか?
2006.07.12
 
 

 任天堂がこの冬に発売する新型ゲーム機Wiiのコントローラ、Wiiリモコンは、つくづく素晴らしい発明だと思う。
プレイヤーの腕の動きを読み取るモーションセンサーを内蔵しているので、従来のコントローラに拒絶反応を示す人でも、「これなら自分にもできそうだ」と親しみを感じるのではないだろうか。実際、任天堂の狙い通りにゲーム人口を拡大する起爆剤となる可能性は高い。
しかし、多くのゲームメーカーは、発売当初は同じ過ちを起こすに違いない。腕を使う、体を使うという目新しさばかりに着目し、スポーツゲームや剣をブンブンと振り回すゲームを数多くリリースすることだろう。
まるでニンテンドーDSの発売直後に「画面をひたすらこする」ゲームが乱立したように。

実は体を使ったゲームというのは、子どもたちにとっては珍しい存在ではい。バット型やテニスラケット型をしたコントローラを内蔵した「体験ゲーム」と称される商品が、すでに山のようにリリースされており、子どもたちの間で何年にも渡って一定数以上のヒットを記録しているのだ。
遊んでみるとわかるが、「体感ゲーム」は、体を使うので発汗を促し、プレイ後は爽快感を感じられる。その反面、体をフルに使うので疲れやすく、長く遊べない、という欠点がある。ゲーム内容が単調になりがちで飽きやすい、という側面もある。

ニンテンドーDSがそうだったように、モーションセンサーを使った本当の面白さを兼ね備えたゲームの登場には、しばらく時間がかかるだろう。

しかしWiiリモコンを使って、ごく簡単に革新的なゲームを作る方法がある。
その鍵はWiiリモコンに内蔵されたスピーカーにある。ゲーム機のコントローラにスピーカーが内蔵されるのは、ゲーム史上でこれが初めてのケースとなる。
5月にロサンゼルスで開催されたゲーム見本市E3会場で、Wii対応ソフト「ゼルダの伝説 トワイライト・プリンセス」を体験した人はこう語っている。
「釣りをする場面でWiiリモコンを釣竿のように振ったら、耳元で風を切る音がした。それは凄いリアリティだった」。

この談話は、僕にあるエピソードを思い出させる。10年以上前にムーンライダーズの鈴木慶一氏が僕に語ってくださったことがあるのだ。鈴木慶一氏にゲームの未来像について尋ねたら、氏は「それはサウンドだ」と明確におっしゃった。
そのときの僕は今以上に未熟者だったので「音楽家らしいアイデアだなあ」と感じただけだったが、今にして思えば非凡なる卓見だったことがわかる。

具現化するとなると、いろいろなアイデアが沸いてくる。

例えば、ホラーゲーム。気分を出すために部屋を真っ暗にしてプレイすることもあるだろう。
そんなシチュエーションでWiiリモコンから「……お前を殺してやる」と唸るような低い声が聞こえてきたら、プレイヤーはどれだけの恐怖を感じるだろう。

例えば、恋愛シミュレーションゲーム。ロサンゼルスのを携帯電話に見立てて、ヒロインから耳元で「キミのことが好きだよ」とささやかれたら、気分はどれだけ高揚するだろう。

さて、これらのアイデアをどのメーカーが最初に商品化するか、今から楽しみで仕方がない。