ふぁみこん 雑誌 業界 昔話  

ガチンコゆえに生じた『ギャラクシアン』事件【1985】ファミマガ10月号

2011.05.09
ふぁみこん 雑誌 業界 昔話

 さてさて、創刊3号になりました。

 この頃になると、創刊号の売れ行きとか評判なんかもわかってきたりしてまして、プレゼントハガキの応募数にみんなでひっくり返っていた思い出が。売れ行きも好調で、そろそろ部数を増やそうなんて話が進行していた時期であります。

 とはいえ、まだこの頃の私は一介のアルバイト。「ぱふ」(※1)の仕事から離れ、徳間の仕事に専念を始めた時期でありました。編集部も神保町を離れ、徳間書店本社のありました新橋にお引越しが決まった時期。この号は神保町で編集した最後の号であります。

 本誌の内容はまだまだシンプル。
 「5大新作ごっくん」と銘打つ中に『ジャイロセット』(※2)が入っているのがまた、懐かしさとご愛嬌であります。その上には『本将棋』(※3)とか。
 この号には大きな思い出がありまして、84年9月のカセットの発売以来、都市伝説のように流れていた「『ギャラクシアン』の隠し音楽」のウル技をついに再現できたのでありました。

 んで、その記事がこちら。



 このウル技(※4)については、創刊号からかなり多くの投稿はがきが着ていたのですが、全く再現できなかったんですよねぇ。

・2コンのマイクに喋りながら
・2コンの上ボタンを押しながら
・2コンのボタンをすべて押して喋りながら(ボタン全部押せないって!)

 と、いろんなバリエーションがありつつ、リセットボタンを押すとか、電源を入れるとか、枝葉末節に渡って、さまざまなバリエーションがあったわけですよ。

 この技、これだけ投稿があるので「実際にあるのだろう」とかは思っていたのですが、今までどの雑誌にも公開されたことがなく、自分でも見たことがない。

 まして「優勝技」なんて枷を自分ではめてしまったもんで、毎号大きい技を作らなくちゃいけないハメになってしまったのでありました。こうやって自分の出した企画に首を締められること、業界の方は多いんではないでしょうか。

 で、相も変わらぬ徹夜作業でウル技の確認作業を進行していました(この号まではウル技担当は私1人)。
 そこでいつもの『ギャラクシアン』のハガキが目に止まったわけであります。

 ウル技についてはメーカー提供でない限り(それもほとんどないですが)資料なんかありませんから、ハガキを読んだ時のカンだけが頼りであります。メーカーの癖だったり、ハガキの枚数と内容の一致だったり。自分で知っているものもたまにあったりする(ゲーセン版のものをそのまま再現している場合もある)のですが、この『ギャラクシアン』については、微妙な一致と、はがきの枚数から「あるかも」という認識だけはあったのですな。

 しかし、再現できない。

 深夜のボケた頭で、疲れを感じておりました私は2コンを握ったまま、折りたたみの椅子にグッタリしつつリセットボタンを

 連打。

 連打。

 連打。

 と、そこで事は起きた。いきなり画面が切り替わって、噂のウル技画面が出現したのであります。

 一度再現出来れば、話は早い。自分のやっていたことを再検証であります。

 まず、徹夜して…でなく、2コンを握り締めていた状態を確認。

・マイクの音量はOFF
・十字ボタンは触っていない

 なので残りはABボタンのみ。んで、ABボタンを押したまんま、リセットボタンを

 連打。
 連打。
 連打ーーーーーーー再現できるよ、やったよママン!!

 さらに連打すると音楽が変わることも発見。かくして、上の記事は無事に完成できたのであります。

 発見してみれば実際のコトは簡単。
 ファミコンのリセットボタンはメモリクリアをせずに、設定されたスタート番地にジャンプするだけの機能なんですが、そこにABボタンを押していた場合の特殊条件をプログラムしていたんだと思うんですな。で、一定数カウントで、ウル技発動と。

 今だと逆アセンブル(死語)されて一発でわかっちゃうんでしょうか、当時はまだそういう時代だったのであります。

 なんにせよ創刊号からの謎が解明され、つかえていたものが取れてスッキリ。

 いちばんウル技の内容が近かった人を採用者としてチョイスし、無事、優勝技となったのでありました。

 しかし…。

 この技はこれだけでは終わらなかったのであります。

 発売後、しばらくして、血相を変えて飛び込んできた版権管理などの担当部署の方。そう

 ナムコからクレーム

 が入ったのであります。

 当時、ナムコはサードパーティとしては他のハードも含め別格の会社。
 ファミマガにも表2見開きの広告をいただいてました。

 その会社から、著作権についてのクレームが来たのであります。

 ここ、掘り下げとくと、当時のナムコは海賊版に限らず、パソコンのモノマネ作品、音源、キャラクターなどいろいろと動いておりまして、ビデオゲームというのものについての映像著作権を確保しようと頑張っていました。

 もちろんそれが悪いわけではないんですが、例えば、私の友人が高知のパソコンショップで作ってました「ギャラック」というPC8801のソフトも(これ、似てはいるんですが、当然コピーではないです。むしろ誉められるべき良く出来たソフト)ナムコさんのほうから訴状が届いて、和解金を払ったと聞きました。

 とは言え、このウル技の件はそれとは違うんですが、まぁ、「意図しない画面を勝手に出すのは!」というお叱りであります。

 by the way

 つまり、いかにウル技がガチンコだったか証明する事件でもあるんですが、ようは怒られて、下手すれば…ということだったんですね。

 まだファミマガが業界に強くもないですし、雑誌としては新参者。頭を抱えながら…。
 「シバの女王…」「風の谷のナウシカ…」と記事を反芻。

 で、
 「風の谷のナウシカ」!!!!!!!

 確認されました。んで、再現しました。
 ファミコンの初期的なPSG音源で、あの音楽が流れます。

 はい。こちら、徳間書店。「風の谷のナウシカ」の権利は関連会社含め、すべて徳間のものであります。

 それが隠しプログラムとはいえ、こうして、公に再現出る形で入っているというのが陽の目を見てしまったわけですな。

 現在ナムコが主張しようと頑張っている(まだ認められていない)映像権(※5)と、すでに認められている音楽の著作権とでは、どちらが勝つのか、これは明白でありました。

 目の前で繰り広げられるこの流れに対して、

 「権利関係って 怖い…」

 と、改めて肝に命じた創刊3号目だったのであります。


[さあにん@山本直人(twitter @sarnin)]

【脚注】
※1…雑草社刊行の漫画情報専門誌
※2…1985年8月13日に発売された、ファミリーコンピュータの周辺機器「ロボット」の対応ソフト
※3…1985年8月10日に発売された、ファミリーコンピュータ初の将棋ゲーム。正式タイトル『本将棋 内藤九段将棋秘伝』メーカー・セタ
※4…ファミリーコンピュータマガジンの人気コーナー「超ウルトラ技(テクニック)」の略称・ウルテク
※5…現状、ゲームソフトについても映画と同様に著作権は認められている。この当時ナムコが争っていたのは同様の映像を作るプログラムを認めないという権利。プログラムの内容については特許庁に申請することで保護されていたが、たとえばパソコンへの移植などまったく内容が違うものへの亜種クローンは規制できなかった。ゆえに特許権の場に、映像の著作権を持ち出してバックアップしようというのがナムコの考え方。ちなみに、ゲームプログラムは「放送」ではないので、現在でも「映像著作権」は認められていない。某動画サイトなどで流れているプレイ動画は他人の映像放送となっている上、BGMの著作権やキャラクタの意匠登録などがあるので、当時のナムコの主張とはまた違った意味でNGとなる。
※掲載している画像は「ふぁみこん 雑誌 業界 昔話」に掲載されているものです。

 
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