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目指すのはゲームとしての高み!『鉄拳DR』『鉄拳6』インタビュー |
2006/05/11 |
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3D格闘ゲーム時代の幕開けとともに誕生した『鉄拳』。常に3D格闘ゲームの“重鎮”として作品を重ねてきたシリーズだ。2006年5月10日(水)現在、その『鉄拳』シリーズに、最新作とも言える2つのタイトルが存在する。PSP『鉄拳 DARK RESURRECTION』とPS3『鉄拳6』である。 シリーズ初の携帯ゲーム機ソフトとなる『鉄拳 DARK RESURRECTION』と、早くも次世代機のパワーを見せ付けた『鉄拳6』。この両タイトルが目指したものは何だったのか。E3会場内で、開発の中核を担った林直弘氏と原田勝弘氏にお話を伺った。 ※写真右: 株式会社バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部 第1制作ユニット ビジュアルデザイナー 林 直弘 氏
※写真左 株式会社バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部 第1制作ユニット ゲームデザイナー 原田 勝弘 氏
■移植であって移植でない。“忠実な再現”に向けて作り直す『鉄拳DR』
ジーパラ: PSP『鉄拳DR』はアーケードの『鉄拳5』の移植作になると思うのですが。
林氏 移植ではあるんですが、実はすべて作り直しになっています。アーケードとPS2、PSPはすべて別物といった感じで、やはりスペックに差があるんです。そして、そのスペックはアーケード→PS2→PSPの順に落ちていきます。なので、扱える情報量というのがPSPはアーケードよりも少ない、しかし、完璧な移植作品にしなければならない。そこで、作り直すという結論になったんです。
ジーパラ: すると、まず目指したのは“完璧な移植”ということですか?
林氏: “忠実なる印象の再現”ですね。アーケード版をプレイしたユーザーが、違和感を感じずにPSP版もプレイできる。そこを目標というか絶対の条件としました。 ですが、先ほども申したとおり、扱える情報量がPSPでは少ない。つまり、キャラクタのモデリングからリアルタイムでの演算内容(動いているキャラクタの位置関係やカメラアングル、光源など)まで同じデータをそのままPSPに持ってくることはできないんです。当然、何か、どこか削らなければなりません。でも、アーケードとPSPの間に違和感がないものにしなければなりません。それはそれは、大変でした。
原田氏: アーケード版はPS2の上位互換の基盤で作られるんです。なので、ある程度扱えるデータ量なども近いものになるんですね。だから、まだ移植は行いやすい。でも、PSPはそうではないんです。これまでのアーケードから家庭用機への移植とは次元が異なるんです。
林氏: しかも、画面比率がアーケードは4:3ですが、PSPは16:9です。つまり、描画範囲がPSPのほうがアーケードよりも多いんです。でも、スペックはPSPのほうが下。これは参りました。 そこで、「見た目の印象はアーケードのままで、クオリティはPSPのオリジナル」にすることによって、“忠実なる印象の再現”を実現させました。 たとえば、アーケード版では花が100本植えられていた、それがPSPではたとえ50本になっていたとしても、印象は変わらない。それはPSP版オリジナルのクオリティで花が描かれているから。そうした工夫で全体のクオリティを保とう、と。
ジーパラ: 今のお話を聞いただけで、素人目にもかなり大変そうだってことが想像できるのですが、納得のいくクオリティになるまで、どれくらいの期間が掛かりましたか?
林氏: そうですね。だいたい、3ヶ月くらいですか。
原田氏: 単純にデータを圧縮する、なんて作業だと、極端な話ですが16角形の物体が4角形になる、といった現象が起こってしまうんです。そうしてできたものを並べても、ゲームの印象が“軽く”なってしまうんですね。それは、許されません。
ジーパラ: そこで、作り直し、という手段がとられたと。
林氏: そうです。相当、苦労しました(笑)。ですが、そのおかげでアーケード版を作ったスタッフが驚いて満足するようなクオリティのソフトを作ることができました。一部、両方に携わった人もいるんですが、PSP版の開発スタッフとアーケード版の開発スタッフは基本的に異なっています。彼らの尽力のおかげです。
原田氏: 本当にね。一時、開発が同時進行だった時期もあったのに(笑)。こっち(アーケード)はこっちで“上”を目指すじゃないですか。移植のことなんかまったく考えずに。それをよく、ここまで作ってくれましたよ。
ジーパラ: なるほど。相当なご苦労をなされたことがよくわかりました。中でも、これは大変だったというキャラクタなどはいましたか?
林氏: リリは大変でした。髪の毛を短くしてくれって言ったんです。長いと動かすのが大変ですから。でも、短くなりませんでした(笑)。
原田氏: 我々は我々で、基盤の限界に挑戦するわけです。移植のことなんか考えずに。さらに、長い髪の毛は難しい、と言われると余計に挑戦したくなる。これは当然です。
ジーパラ:なるほど、それはごもっともですね。林さん、リリの他に特に大変だったことはありますか?
林氏: レイも大変でした。長くてひらひらした服も、長い髪と同様に大変です。あとは…強いてあげるとすれば「ラブリー」という一面に風船が敷き詰められたステージがあるんですが、これも辛かったですね。キャラクタの動きにあわせて、風船を動かさなければならない。さすがに、「このステージなくしていいですか?」と聞いたんです。ですが、誰とは言いませんがこの辺り(原田さんを示しながら)の方が…。
ジーパラ: ダメ、と?
林氏: はい。
原田氏: もちろんですよね。アーケードをプレイしているユーザーが違和感を感じるでしょう。それに、ユーザーの立場に立ってみれば、オリジナル(アーケード)以上のものを求めてきますから。その期待になるべく応えるようにしたいですから。入っていて当然と思ったのに「あれ、ここないの?」って。そんなのありえません。
ジーパラ: なるほど。
林氏: でも、こちらも「そうだよなぁ」と思いましたので、なんとかしようと。で、いろいろ試行錯誤を重ねた結果、少しだけ演出を変えることにしたんです。 アーケードでは床に敷き詰めて動かしただけなんですが、PSPでは上から風船が落ちてくるようにしています。で、その風船がキャラの頭の上にちょこんと当たる、と。床の風船と落ちてくる風船、双方が絶えず動いているため、プレイしている際の印象はアーケードもPSPも同じなんです。
ジーパラ: それはおもしろいですね。他にもそういったオリジナルの演出があるんでしょうか?
林氏: うーん。多々あるんですが、ほとんどが地味なんですよ。アーケードでは大きな1枚のテクスチャを張って龍の絵を描いていた、というところがPSPでは違う描き方になっている、とか。言われてよく見ないと気がつかないような部分がほとんどですね。
原田氏: アーケード版に慣れているユーザーがPSP版を見たときに、「あ、これ普通じゃん」と思ってくれると、我々は満足なんです。アーケードよりもパワーが劣るPSPで、同じものを作れたんですから。で、今回はその工夫が至るところに入っています。でも、そのほとんどは目に付きにくいところなんですよ。ただ、どんな些細な部分であっても、きちんと作ることによって、全体のクオリティが高まるんです。PSPの『鉄拳DR』は、それが本当にできています。
ジーパラ: なるほど。それでは、ゲーム内容についてお聞かせください。格闘ゲームの要とも言える“バランス”ですが、これはいかがですか?
林氏: アーケード版とまったく同じです。 それはどういうことかというと、アーケード版における「キャラクタの座標」「高さ」「向き」など、いろいろな要素のリアルタイムで行われている演算のデータを、そのまま使っているということです。 やっぱり、バランスが変わるとアーケードで遊んでくれているユーザーが違和感を覚えてしまいます。何度も申し上げているように、それは絶対に避けたかった。なので、オリジナルであるアーケード版のデータを持ってきて、同じバランスに仕上げています。 正直、PSP版のバランスを一から作り直した遥かにラクだったんです。でも、それはやりませんでした。なぜなら『鉄拳』ですから。
ジーパラ: しかし、そうするとアドホックによる通信対戦でやりとりするデータ量が多くなり、プレイに影響が出るのでは?
原田氏: 最初はそうでしたね。1Pと2Pで、それぞれ対戦結果が違ったりしていましたよ。でも、それも最初のうちで、開発を進めていく中で完全に解消することができました。ぜひ、アドホックで対戦してください。何の問題もありません。
ジーパラ: それでは後ほど、北米のユーザーと対戦させていただきます(笑)。対戦といえば、特殊なキャラクタと戦えるとのことですが。
林氏: ゴーストキャラですね。全世界のPSP版『鉄拳DR』ユーザーのプレイデータがサーバーに集約されます。レースゲームでよくあるゴーストと同じ概念ですね。特定のユーザーが良く使うコンボや技などを記憶し、それを使ってくるキャラです。 これを数百人分単位でダウンロードし、メモリースティックデュオに記録します。で、そのデータを呼び出していつでも対戦できる、と。ちょっとしたゲームセンター感覚ですね。
原田氏: これはすごいですよ。日本だけでなく、世界中のプレイヤーのデータですから。当然、中には日本、もしくは世界でトップレベルの腕を持つユーザーのデータ、分身がやってきてそれと対戦できるのですから。
林氏: ほかに、ゲームシェリングで対戦することもできます。これは前述のゴーストキャラではないですけど。 あと、対戦とはちょっと違いますけど「鉄拳道場」以外にも1人用のモードが揃っています。やっぱりPSPなので、1人で遊ぶシチュエーションも多々あるかと。そこは充実させてあげたいな、と。 それに「おまけ」モードもいくつかありますよ。シリーズのファンが懐かしく感じるものもありますよ(笑)。
原田氏: それと、ストーリーモードのムービーもすべて収録されています。アーケードのユーザーがまだ見ていないリリとドラグノフのムービーも入っていますから。 ゲームの仕様もデータもすべてUMDいっぱいに入っています(笑)。
■今回の映像はテスト。PS3の限界を今から目指す『鉄拳6』
ジーパラ: それでは『鉄拳6』ですが。本作はシリーズの中でどのような位置づけのタイトルになるのでしょう。
原田氏: 正統な続編であることは確かです。ですが、現時点ではまだこれ以上のことは申し上げられません。 ただ、私個人としては、ユーザーの期待を裏切らないものにしたいと考えています。まぁ、キャラクタが減っても嫌でしょうし、知らないキャラクタばっかりになっても嫌でしょうし。とは、考えています。
ジーパラ: なるほど。まだまだ内緒なんですね(笑)。それでは、今回のE3にあわせて公開された映像なんですが。
原田氏: この映像は、いわゆるムービーではなく、リアルタイムレンダリングです。プログラムでリアルタイムに演算しています。つまり、このクオリティでゲームをプレイできる、ということです。なので、今回の映像でもコントローラを使ってカメラの位置を動かしたりすることができます。 今回、お見せした映像は単なるテストです。短い期間でハードに触り、その限られた時間内で試しに作ったようなものです。光源による人体の影も不完全ですし、本来のクオリティのものではありません。なので、ここで出すことには、本当はあまり賛成できなかったんですよね。
ジーパラ: いわゆるムービーかと思っていました。にもかかわらず、まだまだクオリティが上がる、と。
原田氏: ええ。キレイなムービーは時間とお金さえ掛ければ、誰にでも作れます。ですから、我々は違う方向性を目指します。もう、今からPS3の限界を目指します。 我々は、PS3でキレイなゲームを作るのではなく、PS3で動くクオリティの高いゲームを作るのです。そのために、現時点からPS3の機能の上限を超えるタイトルの製作に向かっているんです。『鉄拳』は新ハードの発売日に間に合わせることを目的としたゲームではなく、高いクオリティが求められるタイトルですから。そこを踏まえ、まずは技術面から攻めている、といったところですね。
ジーパラ: なるほど。すでにハードの上限を見据えているのには驚きました。それでは、原田さんの『鉄拳6』におけるビジョンをもう少しお聞かせください。
原田: ゲームを遊んでいるユーザーも、それを見ているユーザーも一緒に盛り上がれるタイトルを作りたいですね。プレイの様子を見て、映像の迫力に圧倒されて興味を持ち、盛り上がる。そんなインパクトを与えるタイトルです。そして、その重要な要素のひとつがビジュアルです。まずは、このビジュアルについて深く推し進めていきたいですね。 そこに至る考えはいくつかあるのですが、たとえば画面比率。16:9は、ただ単に画面サイズが横長になった、というものではありません。そこで何が表現できるのか、それを突き詰めていく必要があります。 そうして最終的に、「これがPS3なんだ」というタイトルを作り出していきます。他には、ネットワークを使って大きなこともやりたいと思っています。
ジーパラ: 何が表現できるのか、というのはなかなか難しいですね。
原田氏: そうですね。ですが表現方法はもっと練っていかなければなりません。PS3の機能に溺れるだけでは、足りないんです。「機能を使い切ることを目標にする」か、「機能以上のことを考えて、結果的に機能を使い切るか」実は、結果としての見た目は同じになるかもしれませんが、意味合いはまったく異なります。我々は、後者として、動いていきます。
ジーパラ: お二人とも、本日はありがとうございました。 |