アメリカ時間の1月18日(水)、“ブラックアウト”がネットで決行されるかもしれない。
このブラックアウトとは、著作権侵害を防止するために作られたSOPA/PIPA両法案に対する抗議活動を指す。法案に反対するメーカーやメディアがウェブサービスを停止することで、いわばネットを舞台にしたストライキだ。
ブラックアウト決行を表明したサイトのなかで、特に目立つのはオンライン百科事典“Wikipedia”。創設者のジミー・ウェイルズ氏は、「ワシントン市に向けて大きなメッセージを発信する必要がある」と語り、ツイッターで参加の意向を明らかにした。ほかに、ソーシャルニュースサイトの“Reddit”、ゲーム関連ではニュースサイト“Destructoid”や、自由創作型ゲーム『Minecraft』の公式サイト“Minecraft.net”と、運営元の“Mojang.com”。また、オンラインマルチプレイFPS『Firefall』を開発するRed 5 Studiosにいたっては、ウェブサイトやコミュニティサイト、さらにはゲームのベータ版サービスをも24時間ダウンさせる。SOPAやPIPAが施行されたら、こんなことになりかねませんよ、という利用者に向けてのメッセージでもあるのだ。
Red 5社のCEOマーク・カーン氏はこう言っている――「小さなゲーム会社は不当な閉鎖から身を守る法的手段や政界でのプレゼンスもない。法案が施行されたらダメージを受けるだろう」「見当違いの法案には大変失望した。ESAが法案を支持することも恥ずかしく思っている」。さらに「ESAが不支持に回らない限り、E3には参加しない」とまで言い切っている。
さすがにグーグルやフェイスブック、ツイッターなどは参加を表明していないため、ブラックアウトにどの程度の効き目があるのかわからない。だが、ネット利用者として、いつもアクセスしているサイトがこの日ダウンする可能性があることは頭に置いておいたほうがいいだろう。
こうした反対の声が高まるなか、ついにオバマ政権も両法案に対する懸念をうかがわせる声明を出した――「海外のウェブサイトによるオンライン海賊行為は深刻な問題であり、真剣な法的取り組みが必要だと考えますが、言論の自由を侵害し、サイバーセキュリティのリスクを増やし、グローバルなインターネットのダイナミズムと革新性をそこなう法案は支持しません」。新法案の対象は、米国法が及ばないサイトに対象をしぼり、明確な犯罪活動に焦点をあわせるべきだとした。
これを受けて、さすがに法案の見直しも検討されている。すでに、SOPAで最も危険視されていた「問題サイトのDNSをブロックする」条項は削除されることになったし、18日に予定されていた議会での審理は延期となった。それでも法案の危険性が決して弱まったわけではないため、ブラックアウトがこのまま決行される可能性は高い。
最後に笑い話をひとつ。法案起草者のひとりであるラマー・スミス議員のサイトで、法案の指す侵害行為ととられそうな写真掲載が発覚した。クリエイティブ・コモンズにより、写真家の名を表記するなら使用可とされた写真を、同サイトは表記無しで使用していたのだ。ケアレスミスだろうし、普通は指摘を受けて直してすむところだろうが、もし法案が施行されたら、アクセスブロックやサイト運営費カットといった処分をいきなり食らっても、議員は文句を言えないのではないだろうか。
18日のブラックアウトに今も続々とサイトが名乗りをあげている。筆者が把握しているところでは、「Rock, Paper, Shotgun」「Raw Story」「PHP.net」に加え、ECA(Electronic Consumers Association)がオーナーとなっている「GamePolitics」など。一方、ツイッターのCEOディック・コストロ氏は「ひとつの国政問題だけでグローバルビジネスを閉鎖するなんてバカげている」と同サービスで発言し、ブラックアウトへの参加を否定している。
アメリカは現在、18日午前0時を過ぎたところ。抗議活動は筆者の予想よりはるかに規模が大きいようだ。Deadline.comが伝えるところによると、7千ものウェブサイトがSOPA/PIPAに対して抗議を表明しているという。そのなかにはWikipedia(英語版)、Wordpress、BoingBoing、Minecraft.comのようにストライキに入ったものもあれば、Mozillaのように、トップページに抗議のメッセージを掲載しているものもある。グーグルはサービスを継続しつつも、お馴染みのロゴを真っ黒な四角形で覆い隠し、「ウェブを検閲するな」とのメッセージを発している。
(中島理彦)
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