ビデオゲームがエンターテインメントとして広く受け入れられるようになってすでに久しいが、北米のゲーマーや業界関係者は、他の業界に比べ、いまだに世間の中で肩身の狭い思いをしているようだ。その理由について、シムシリーズや『Spore』の生みの親であるWill Wright(ウィル・ライト)氏は、「一般の理解が足りないのは、ゲーム業界が、12歳の男の子向けのゲームを作り続けているからだ」と発言した。
この発言は、大学関係者向けのニュースサイト“Chronicle of Higher Education”とのインタビューの中で飛び出したもの。ライト氏は、「この20年間、ゲームに対して文化的な偏見が根強く残っているが、その多くは業界が自ら招いたことだと思う。いま作られているものを見ると、大半は12歳の男の子向けばかり。ゲームというフォーマットは、本来、それ以上の可能性を秘めているはずだ」と語った。
同氏によれば、もともとゲームは、人間にとってなじみ深い存在。大昔から人々は、碁やチェスなどから戦略的・抽象的思考を学んでいたという。
「本当は、遊びこそが基本的な教育手段なのだが、私たちの文化はそのことを忘れてしまった。ゲームと共に成長しない大人は“遊び”という概念を、非生産的な暇つぶしととらえるようになってしまった」とライト氏。
こうした現状に対する苦言は、若手のクリエイターからもあがっている。PSNタイトル『flOw』『Flower』をリリースしてきたThatgamecompany社のJenova Chen(ジェノバ・チェン)氏は、ライト氏の発言とほぼ時を同じくして、ゲーム開発者向けのカンファレンスで次のように訴えた。「ゲームの本質はこの20年間、ほとんど変わっていません。ゲームは人間の幅広い情緒を十分にかき立てておらず、未成熟です。大勢の大人が楽しんでいるのに、玩具として片付けられてしまう問題をはらんでいます」。
このように、“教育”“情緒”とキーワードは違いこそすれ、ゲームに対する問題意識では、2人はほぼ一致しているようだ。
なお、ライト氏のいう「12歳の男の子向け」が具体的にどんなゲームを指しているのか、インタビューからは明らかではないが、対象ユーザーや内容にまだまだ偏りがあるのは事実だろう。日頃、世間の無理解に苛立っている業界関係者にとって、上記の言葉は耳に痛いものだったに違いない。
(中島理彦) |