欧米ゲーム事情  

E3プレゼンの勝者は? 3大巨頭がメディアに放ったインパクト(後編)

2009.06.06
Tech Radarの記事(英語)
 さて翌日。前日の興奮さめやらぬなか、任天堂とSCEのプレスカンファレンスが行われた。次の2社はどんな一手を打ち出すのだろう、さすがにMSほどのインパクトはないのでは……会場の席に座った記者たちの胸には、そんな思い込みがもうあったかもしれない。だが、ふたを開けてみれば、意外や意外……。

・任天堂
 昨年、ゲーマー層の拡大をうたう一方で「コアゲーマーを見捨てた」との批判を浴びてしまった任天堂。今年のカンファレンスでは、彼らがそんな不満を解消することに努めていたのは明らかだ。

 まるでお日様のようなニコニコ顔がトレードマークだった、Nintendo of America(NoA)の重役Cammie Dunaway氏も、メディアやブロガーにからかわれたことを意識してか、今年は一貫してシリアスな表情に。そんな小さなところにも、今回のプレゼンは昨年の反省を踏まえていることが伺えた。

 たしかに、ラインナップは注目すべきものだ。4人まで同時プレイできる『ニュースーパーマリオブラザーズ for Wii』に続いて、『スーパーマリオギャラクシー2』、『THE LEGEND OF ZELDA: Spirit Tracks』と、おなじみの任天堂キャラが活躍する新作の数々。そして、記者たちの興奮をさらに呼び覚ましたのが、『黄金の太陽』の新作となる『Golden Sun DS』と、カンファレンスの最後に紹介されたとどめの一打、『METOROID Other M』だった。宮本茂氏がステージに現れなかったことを残念がる声もあったが、同氏はのちに、『NEXT ゼルダ』を紹介する講演も行っている。

 だが、ハード面に対する反応は芳しくない。例えば、Wii Motion PLUSを使用する『Wii Sports Resort』は、昨年も発表していたもので新鮮味には欠ける(もちろんグレードアップはしているが)。岩田社長が明かした『Wii Vitality Sensor』に至っては、北米記者たちの反応は“狐につままれた”という形容がピッタリ。ネットでは、そのセールスポイントを理解できない彼らの、当惑の声が行き交っていた(もちろん、これが商品化されて対応ソフトが発表されれば、反応は違ってくるかもしれない)。



 最後の『METOROID Other M』発表で、ようやくいつもの熱狂を取り戻した今回のカンファレンスだが、全体的には、パンチに欠けているという印象を与えてしまったようだ。NoAのReggie Fils-Aime社長が話をしている間、実況ブログをする記者からは「このスピーチ原稿はいかにも、MSのProject Natal発表の前に書かれたって感じ」とキツイ一声も放たれていた。

・ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)
 それから1時間後、次の会場へと駆けつけた記者たちがあわただしく席に陣取る中で、SCEのプレスカンファレンスがスタートした。今回は事前に漏れた情報がことのほか多く、“Worst Kept Secret in E3(だだ漏れのシークレット)”とまで揶揄されたプレゼン。冒頭でステージに現れたSCEAのJack Tretton社長が、「みんな来てくれないんじゃないかと思っていたよ」と、自虐コメントを発していたのが可笑しかった。

 にもかかわらず、明かされたPS3ソフトのラインナップは実に強力。期待の『Final Fantasy XIII』はもちろん、緻密で鮮やかなグラフィックで舞台を描出した『Uncharted 2: Among Thieves』『Assassin's Creed 2』には、記者たちも息をのむばかり。また、PSPタイトルも、『Gran Tourismo』PSP版は視覚的に強烈な印象を植えつけ、初公開となる『Metal Gear Solid Peace Walker』も「これまで見たPSP向けソフトのトレイラーの中で最高の出来」と声があがるほど。『FF』シリーズのさらなる新作『Final Fantasy XIV Online』といったサプライズにも歓声があがった。

 PSP Goは、事前にこぼれ落ちた情報によって記者たちはすでに知っていたとはいえ、反響は悪くない。ただしデザインは賛否両論で、「ゴージャス、セクシー」「携帯端末の悪いところを寄せ集めたみたい」との声が入り交じっている。

 一方、プレイステーション・モーションコントローラへの北米メディアの反応は残念ながらイマイチ。ステージではちゃんと実機デモも見せていたし、それなりに盛り上がったが、コントローラを無用とする「Project Natal」のあとでは、やはり、どうしてもかすんで見えてしまったようだ。ただし、デバイスの感度の良さは驚嘆に値するもので、お絵かきソフトやリアルタイムストラテジーのインターフェースとして期待する声もあがっていた。



 プレゼンの終盤では、さらに『The Last Guardian』『Gran Tourismo 5』とビッグタイトルの紹介が続いたあとで、『God of War III』の実機デモで締めくくり。このあたりで、記者たちの鼓動が大いに高まっているのが手に取るようにわかった。SCEはビッグタイトルのオンパレードにより、「いよいよソフトが充実してきた」との印象を与えることに成功したようだ。

* * *

 こうして振り返ってみると、こと、メディアに与えたインパクトに限って言えば、今年のE3カンファレンスは“ぎりぎりSCEの勝利”といっていいだろう。

 MSの「Project Natal」でとりわけ印象的だった「Milo」は、たしかに素晴らしいものだが、ステージではビデオ映像によるプレゼンにとどまり、会場でもクローズドで明かされたとはいえ、いまだ開発中との印象が拭えていない。また、Xbox 360ソフトのラインナップについては、「ジャンルにやや偏りがある(多くは銃撃戦中心のアクション)」という指摘もあがっている。

 その点、SCEは、力の入ったソフトをこれでもか!というほど数多く打ち出したことで、「Project Natal」に圧倒されていた記者たちのハートを、何とか取り戻すことができた。PSP goの件がなければ、もっと余裕で差をつけることができたかもしれない。

 一方、“カンファレンスの敗者”と見られてしまったのが任天堂。マリオやメトロイドといった強力なブランドで新作をアピールしたが、他の2社に対抗するインパクトは放てなかった。ニュースサイトの“TechRadar”はいみじくもこう言っている――「任天堂は、ゲーマーと非ゲーマーの溝を埋めるという従来のメッセージを繰り返すことで、SCEとMSのように、来場者をあっと言わせるチャンスを逸してしまったのではないか」。

 もちろん、これらはあくまでも北米記者たちの受けた印象にすぎず、今後、市場がどんな反応を見せるかはわからない。それでも、

ゲーム業界の新参者だったマイクロソフトが強烈な一打を放ち

しばらく一人勝ち状態だった任天堂がパンチに欠け

SCEが充実のラインナップでぎりぎり逆転を決める


……という流れは、本当に予想外。これからもゲーム業界には、刺激的な展開が待ち受けているはずだ。

(中島理彦)

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