暴力的内容を含むビデオゲームを、批判的に取り上げることの多いアメリカのマスメディア。そんなマスメディアの姿勢を茶化した討論番組が、ネットで公開されている。
一見、本物の討論番組のようだが、実はこれ、冗談ニュースを制作する“Onion News Network”というサイトのコンテンツ。「暴力ゲームは、子供が世界の終末を生き延びるための備えになっているか?」というテーマで、大学教授やアナリストと名乗る人たちがしかめっ面で語り合っている。
核戦争の勃発やゾンビの大量発生により、世界が終末を迎えるのはもはや前提。「最近の調査で、ゲームをプレイする子供は武器店でアイテムを取引したり、ゾンビにかまれた傷を治療する方法を習得していることがわかった」「いや、まだまだ生ぬるい。もっと実用的なサバイバル技術を教えるべきだ」と議論が白熱し、しまいには「暴力ゲームに長時間没頭するのは、孤独な未来を生き抜くための最良の学習法だ」と断定する人も……。
実際のマスメディアの姿勢とは真逆をいくこのユーモア動画、今まで「暴力ゲームの危険な影響から子供を守るべき」という主張にいらだっていたゲームファンには痛快な内容かもしれない。だが、ちょうど同じ頃、本物のニュースサイトでも「暴力を空想することは、子供の発育にむしろ良いこと」という論が採り上げられていた。
さすがに上記のユーモア動画ほど極端ではないが、それでも珍しい意見を述べたのは、「The Trouble with Boys」という本で現代の男の子が抱える問題を分析したPeg Tyre氏。彼女はこの本の中で、「暴力描写を遠ざけるのは、男の子の発育によくないこと」と述べている。
Tyre氏によれば、「男の子が暴力的な言動や思考をするのはごく自然であり、本人が暴力的な人間に育つことにはならない。彼らは暴力の中で、勇気や善悪、チームワークといった概念を学んでいる」とのこと。最初は彼女自身も、暴力描写を含むビデオゲームには抵抗があったが、息子たちと一緒に『Halo』をプレイしていくうちに、見方が変わったのだという。
これまで、暴力的なゲームに関する議論は堂々巡りになることが多かったが、暴力描写の“効用”という新しい視点は、議論の行き詰まりを打開する糸口になるかもしれない。
(中島理彦) |