インディーズ(独立系)ゲームとは、製作規模は小さくても自由な発想で作られるゲームのこと。最近は家庭用ゲーム機でもダウンロード配信が可能になったことから、新コンテンツとして注目がにわかに集まっているところだ。そんななか、インディーズゲームの普及をめざす団体“IndieCade”は米ワシントン州のシアトル市近郊で“IndieCade 2008 @ Open Satellite”というイベントを開催している(現地時間10月17日(金)までの開催となる)。
IndieCadeは、毎年優秀な作品を選定し、E3をはじめ、アメリカや世界各都市のイベントに出展を行っている。今回は同団体が初めて主催するイベントということもあり、関係者の意気込みはひときわ熱いようだ。
会場は、シアトル市から車で30分ほどのところにある、閑静なベルビュー市の展示スペース。ワシントン州は、マイクロソフト本社や任天堂のアメリカ支社などがあり、プログラマー人口が多いことで有名。ロサンゼルスを本拠地とするIndieCadeが、イベント開催地をあえてシアトル近郊に選んだのはこの点を考慮してのことだ。
写真を見てもわかる通り、展示スペースはこぢんまりとしているが、業界関係者向けにオープンされた10日(金)と11日(土)は、ゲーム開発者などが詰めかけ、アットホームながらも中身の濃い会話が交わされていた。
会場では26点の作品が展示され、一部の作品は開発者自身がプレゼンテーションを行ったほか、以下のプログラムが実施された。
【プログラム内容】
---1日目:10月10日(金)---
●講演:「ゲームデザインの戦略的アプローチ」
リサーチグループ“Electronic Entertainment Design and Research(EEDAR)”のGeoffrey Zatkin氏が、商業的成功をおさめるためにゲームデザインで注意すべき点を解説。
EEDARは、6,000作に及ぶゲームのフィーチャーを集計して売上との関連を分析している。同氏はその膨大なデータをもとに、グラフを駆使しながら「販売本数を見積もるときはヒットタイトルを参考にせず、ジャンル内の販売本数分布をしっかり見きわめよ」「開発途中のトラブルを避けるには、最初に打ち立てるビジョンが大事」「ゲームの楽しさを阻害する要素は極力取り除け」「トレイラーやデモの発表タイミングは売上にどれだけ影響するか?」と、興味深い話を展開した。おもに商業目的を念頭においた内容だったが、インディーズの開発者にも参考になる話は多かっただろう。
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●『flOwer』プレビュー上映
PS3向けにオンライン配信されるポエティックアドベンチャー『flOwer』の実機デモを紹介。デモを行ったのは、開発元・thatgamecompany社の共同設立者で、前作『flOw』のクリエイターでもあるJenova Chen氏。来場者たちもPS3コントローラを手にとり、風に舞う花びらとなって草原上空を飛び回る感覚を楽しんだ。
「銃撃やスポーツだけがゲームではないはず」という信念をもつChen氏は、ゲームが喚起する感情の幅を広げていきたいと抱負を語っている。その彼によると、前作『flOw』は“俳句”、本作は“詩(ポエム)”の位置づけになっているとのこと。また、開発期間は前作が8カ月、本作は16カ月と2倍になっているという。「PS3は開発が難しいという声を聞くけど、実際どう?」と質問してみたところ、「確かに難しい。僕らは小さな開発集団だけど、PS3向けに専念しているから何とかやっているよ」との答えが返ってきた。
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| flOwer (c) 2007 Sony Computer Entertainment America Inc. Developed by thatgamecompany. |
---2日目:10月11日(土)---
●講演:「インディーズからメインストリームまで」
前日に『flOwer』のデモを紹介したJenova Chen氏と、3Dパズルアクションシューティング『Portal』で成功をつかみ、Valve社のプログラマーになったJeep Barnett氏が、無名の若手集団が成功をつかむためのコツを伝授。
Chen氏は、新世代ハードの立ち上げにうまくのることができたのは幸運だったと認めつつ、「スケジュールの遅れは開発チームの士気低下につながるから要注意」「入金はなるべく早めてもらうようパブリッシャと交渉すること」といった有益なアドバイスを語った。
一方、Barnett氏は、開発途中でゲームのプロトタイプを第三者にプレイしてもらい、改良に改良を重ねることが大事だと強調。頻繁にプレイテストを行うことで自分ひとりでは気がつかなかったことが見えてきて、ゲームを納得いくクオリティにまで高めることができると述べた。
●討論会:「なぜイノベーション(革新性)は必要なのか?」
開発者たちが集って、ゲームにはそもそもなぜイノベーションが求められるのかという基本的な命題を語り合う。「最近とくに刺激的だったイノベーションは?」「技術と人のイノベーションはどちらが必要とされているのか?」といった気になる話題も飛び出し、突っ込んだ討論が進められた。参加者の出身国は、デンマーク、ドイツ、カナダ、中国、と国際色豊かだが、全員が問題意識を共有しながら話をしているのは興味深かった。
●“IndieCade 2008 award”発表会
本イベント出展作品の中で、高い評価を集めた作品が発表された。詳細は続報でお伝えする。
本イベントは、同時期に開催されていた東京ゲームショウとは比べものにならないほど規模は小さかったが、おのれのビジョンでゲームを作れる喜びと、自分たちの活動が業界の注目を集めつつあるという興奮で、開発者たちの目は輝いていた。主催団体のIndieCadeは、日本のインディーズゲームにもたいへんな関心を寄せているので、中小のゲームメーカー、同人プログラマー、日曜プログラマーや学生など、独自のゲーム作りを志している人たちが、こうした場で脚光を浴びる日も近いかもしれない。
(中島理彦)
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