米Rockstar社がPlayStation 2向けに開発した学園生活体験シム『BULLY』。米国で10月17日(火)に発売されたばかりの本作をめぐり、欧米の複数メディアによる報道が一気に過熱している。
まず、暴力的ゲームに対する過激な言動で有名なJack Thompson弁護士が、発売前の内容検証を法的に申し立てたことは、以前にお伝えしたとおり。申し立てに応えて、フロリダ州の連邦裁判所が検証にあたったが、結局、“ゲームの出荷を差し止める理由は見当たらない”との裁定が下された。
販売元のTake-Two社代表から2時間にわたってゲームの主要場面を見せられたRonald Friedman判事は、「毎晩テレビで目にするものと大して変わらない。個人的には自分の子供にプレイしてほしくはないが、差し止め命令を出すまでにはいたらない」と述べたという。
Thompson氏は判事の裁定に対し、「国連査察団がイランに迎え入れられたときと同じだ。違法行為のない場面だけ見せてもらったにすぎない」と反論している。
いずれによせ、発売阻止の動きはおさまったかのように見えたが、今度は英国に騒ぎが飛び火した。
ヨーロッパでは『CANIS CANEM EDIT』(ラテン語で“共食い”の意)というタイトルに変更され、10月27日(金)に発売が予定されている本作。英国では“15歳以上向け”と認定されている。
ところが発売を目前にした今になって、英国の小売業者であるCurrys、PC World、Dixons(いずれも親会社はDSG International)が同作の販売を拒否したのだ。拒否の理由として、Currysは「ファミリー向けを信条としている私たちのイメージにそぐわない」と説明している。
ちなみに、Currysはこれまでに暴力的とみなされるゲームを多数販売しており、『BULLY』と同じくRockstar社が制作したPlayStation Portable向け新作ソフト『GRAND THEFT AUTO: LIBERTY CITY STORIES』の販売も予定しているため、方針の矛盾を指摘する声も出ている。
販売拒否の動きは、ほかの小売業者に波及しているわけではないようだが、同作が英国の政界に注目されるきっかけとなった。
英国議会で、かねてから暴力的ゲームに反対の立場をとる労働党のKeith Vaz議員は、ブレア首相との質疑応答のなかで「教師や同級生に向けて、バットや頭突きなどで暴力を振るう『BULLY』というゲームがある。最近ではゲームの暴力的描写が子供に与える影響が問題視され、Currysも販売を取りやめている。子供を保護する観点から、業界関係者や保護者団体などによる委員会を召集する考えはないのか」と質問した。
これに対して首相は「私自身はゲームを見ていないのだが」と前置きしてから、「クリエイティブ産業観光大臣は委員会を持つことを歓迎するだろう。重大な問題で多くの懸念があることも知っている。ビデオゲーム業界は数年で著しい進歩をとげたとはいえ、たしかに注意は怠らないほうがいい」と答弁。委員会召集におおむね同意している。
というわけで、『BULLY』は発売後も国境を越えて論争の火種となっている。暴力的描写を含むゲームはほかにも数多くあるのに、“ティーン以上向け”と認定された本作だけが大きく取り沙汰されてしまうのはなぜなのか。どうもゲームへの漠然とした不安から、スケープゴートにされているような気がしてならないのだが…。
(中島理彦)
【関連記事】
GamePolitics.com(英語)※『BULLY』をめぐる騒動を詳しく報道
マイアミCBS4局の報道(英語)
英国のタブロイド紙The Sunの記事(英語)
Currysサイト(英語)
過去記事:過激弁護士が、Rockstar社の新作にまたもやイチャモン
過去記事:騒動の渦中にあったRockstar社新作はティーン以上ならOK
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