[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート

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小野憲史
2017年09月05日

 シリアスゲームにゲーミフィケーション……ゲームの可能性は拡大を続けている。
 エンタテイメント分野でも、監修や開発協力などの名目で、ゲーム開発者が外部の専門家にオファーを出す機会が増えている。
 もっとも、各々の業界にはそれぞれの慣習やスタイルがある。時にはそれらが原因となり、トラブルに発展する例もある。
 ただし、トラブルをおそれるあまり、コラボレーションが薄まるのでは本末転倒だ。

 こうした中で、ゲーム開発者と外部の専門家がどのような点に気をつければ、双方がハッピーになれるのか。
 「CEDEC2017」で8月30日(水)に行われた「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」セッションで、本テーマに関する議論が行われた。

 講演者はモノビットでCTOと事業戦略室長エグゼクティブプロデューサーをつとめる蛭田健司氏と、日本将棋連盟に所属する女流棋士(女流三段)の香川愛生氏。
 将棋でアマチュア5段の実力を持つ蛭田氏と、ゲーム好きが高じてCEDECに自費参加した経験もあるという香川氏の間で、現在構想中の新しい将棋ゲームに関するコラボレーションのスタイルが紹介された。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート ▲蛭田健司氏
[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート ▲香川愛生氏

なぜ今、あらためて「将棋界とのコラボ」なのか

 はじめに蛭田氏はゲーム開発者が、新作ゲームを開発する上で専門家とコラボレーションをするメリットとして、「専門家ならではのアイディア」「ゲームバランスの調整」「プロモーションに生かす」という3点をあげた。
 それぞれ、開発序盤、開発終盤、発売直前から発売後の運営段階となる。

 これに対して香川氏は将棋界がゲーム業界とコラボレーションするメリットとして、「ゲームの力を活用して、より多くのファンを獲得する」点をあげた。

 実際に蛭田氏と香川氏の間で、新作将棋ゲームの構想が練られている最中だという。
 蛭田氏は新作のコンセプトとして、「将棋ゲームの敷居を下げる」ことを掲げた。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲ポスト電王戦以降、「強さ一辺倒」の将棋ゲーム開発は曲がり角を迎えている

 レジャー白書によると600万人。未成年者を含めると1000万人もいるとされる将棋の愛好家。
 将棋電王戦やコミック「3月のライオン」、さらには藤井聡太四段の29連勝などで、大きな盛り上がりを見せている。
 一方で将棋には、まだまだ敷居が高いというイメージがつきまとう。
 一介の将棋ファンとしても、こうした状況を変えたいという蛭田氏。
 香川氏も同様の思いを抱いていたという。
 両者の出会いは、ある将棋クラブに香川氏が指導に赴いたところから。
 個人的な親交がプロジェクトのきっかけになった。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲対局指導の様子を蛭田氏が投稿

 蛭田氏は「まだプロジェクトはスタートしていない」としながらも、香川氏からさまざまなアイディアを得ているとコメントした。

 既存の詰め将棋をさらにわかりやすく表現したり、詰め将棋を解く毎にリワードがもらえたりといったものだ。

 いずれも既存の将棋というゲームメカニクスを利用して、新たな将棋の魅力を提案するものになる。
 時には3~4歳の子どもや、外国人にむけて将棋の普及活動を行うこともあるという香川氏。
 それだけに、既存の枠にとらわれない、さまざまな提案が行われているという。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲既存の将棋ゲームにはみられない、さまざまなアイディアを香川氏が提案

1+1=無限大という視点を持つ

 また蛭田氏は本トピックに関連して、プロモーションにおける重要な指針を示した。
 コラボレーションを通して、双方のコミュニティ以外の層に広げる方法を、最初からイメージしておく必要があるという点だ。

 今回の例で言えば、既存の「ゲームファン」「将棋ファン」を取り巻く、「ゲームも将棋も興味がない人々」をどのように取り込んでいくかが課題になる。

 コラボレーションにより、互いのファン層を拡大していける可能性があるということだ。
 逆にこうした視点がなければ、せっかくのコラボレーションも小さくまとまってしまいがちだという。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲「その他の方々」に意識を向けることが大切

 蛭田氏が「ゲームが完成したら、ぜひお知り合いの方にも広めて欲しい」と打診すると、香川氏はこれを快諾。
 その上で蛭田氏は、将来的にはテレビCMをはじめとした、マス広告への展開も視野に入るような内容にしたいと抱負を語った。

互いの業界について学ぶ

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲ゲーム開発の基礎知識について、専門家が事前に学んでおくと、話が早くなる

 実務面で蛭田氏が強調したのは、「コンテキストのすり合わせ」と「コミュニケーションの取り方」だ。
「コンテキストのすり合わせ」とは、各々の業界の特殊事情について、それぞれが共通認識を持つということ。
 実際にゲーム業界外のビジネスマンから、「なぜゲーム開発は巨額の開発費がかかるのか」「なぜ長期間かかるのか」といった質問を受けることが多いという。

 この背景にあるのが、ゲーム開発の特殊性であり、長く続いた保守的な雰囲気だ。

 蛭田氏はα版、β版といったゲーム開発の一般的な流れと、「人月単価」という考え方を説明。
 また参考資料として、自著「ゲームクリエイターの仕事:イマドキのゲーム制作現場を大解剖!」(翔泳社)をあげた。
 実際に蛭田氏は香川氏に本書を献本して、ゲーム業界について勉強してもらったという。
 香川氏も「イラストが多く、門外漢にもわかりやすかった」と書籍を評価した。

 一方で蛭田氏も将棋界について、ある程度のことは知っていたつもりだったが、それでも驚かされることがあったとコメント。
 お互いの業界について学ぶ努力が欠かせないとした。

メールのやりとりは上手くいかなかった

 また、「コミュニケーションの取り方」について、良かった点と悪かった点が具体的に挙げられた。
 コラボレーションにおいて、最も難しい問題の一つが、円滑なコミュニケーションの取り方だ。

 そもそもコラボレーションをとりたいと願う間柄は、互いに本来の業務で多忙であることが多い。
 そのため、しばしば行われるのが、互いにアシスタントを立てて連絡を取り合うやり方だ。

 しかし、実際にはこれがもとで連絡ミスが発生し、互いに疎遠になっていき、コラボレーションの失敗につながる例も少なくない。

 その一方で蛭田氏と香川氏は、互いにアシスタントなどを立てず、直接連絡をとりあっているという。

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲忙しさを言い訳にしないために、どのような工夫を行うのかが重要

 もっとも、ツールについて変遷はあった。
 一番上手くいったのは、Facebookのメッセンジャーで直接やりとりするスタイルだ。
 その前提条件として、蛭田氏は香川氏からの呼びかけに際しては、どんな時でも最優先で返信することをルール化したという。
 そのためには、時には目の前の仕事を中断する必要も出てくる。
 それを可能にするために、常にスケジュールに余裕を持たせるように、効率的に仕事をするように心がけているという。

 逆にうまくいかなかったのが、メールでのやりとりや、共有ドライブを用いた議事録共有だ。

 香川氏は「長文メールに対して、どのように返信したら良いか困ってしまい、けっきょく電話したり、チャットしたりしたことがあった」とあかした。
 ふだん使い慣れていないツールの使用も、レスポンスが悪くなる遠因だという。
 そのため議事録も作成せず、常にメッセンジャーで必要な情報を互いにアップデートするように心がけているとのこと。

 この背景として、前述の通り本プロジェクトが蛭田氏と香川氏の個人的な人間関係からスタートした点がある。
 その上で蛭田氏は「自分のやり方を押し付けるのではなく、相手の立場にたって考えることが重要」だと指摘した。

ゲームが他業界に誇れるたった1つのこと

[CEDEC2017]将棋人口を増やし、ゲームの売上拡大も狙う/「ゲームビジネスの可能性を広げる異業種コラボ! 双方の市場を拡大するためのノウハウ」レポート
▲ゲームは役に立たないからこそ、愛される存在になれる

 最後にコラボレーションの魅力として、「読みあうこと」をあげた香川氏。

 香川氏は蛭田氏が将棋ファンであることから、「棋士や将棋ファンの思いをくみ取ったうえで、さまざまな提案をしていただいている」と評価した。

 そのうえで「ゲーム開発者と専門家の間にいない、一般のファンの思いを常に思い図ることが重要であることに気づかされた」と語った香川氏。

 そのためには、関係者が互いの気持ちを「読みあう」ことが重要だという。

 一方で蛭田氏は「ゲームは現実の役に立たないからこそ、常に新しいものに挑戦せざるを得ない。だからこそ素晴らしい。だからこそ、広く愛される存在になれる」と自説を展開。

 このゲームの素晴らしさについて、ゲーム開発者は自信を持って、他業界に広げていって欲しいとまとめた。

 

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