[CEDEC2017]温故知新で学ぶゲームのマップデザイン/「ゲームにおける『マップ』のデザイン~アナログゲームの知見から」レポート」

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小野憲史
2017年09月04日

 コンピュータエンタテインメントのカンファレンス「CEDEC2017」。
 しかし、そこで行われるのは「コンピュータゲーム」を巡る議論だけではない。
 コンピュータゲームの周辺には、さまざまな遊びや技術が存在するからだ。
 9月1日(金)に開催された「ゲームにおける『マップ』のデザイン~アナログゲームの知見から」もその一つ。
 アトリエサードの德岡正肇氏が、アナログゲームでこれまでデザインされてきた、さまざまなマップ形式について、概要とメリット・デメリットを整理した。


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ゲームボードは現実世界とゲームの接点

 はじめに徳岡氏が紹介したのが「現実空間」だ。
 『Pokemon GO』をはじめとして、あらためて現実空間を活用したゲームが増加している。
 徳岡氏は「プレイヤー体験が特殊であり、体験自体に価値が発生する」と評価した。
 もっとも身体的な危険が発生したり、運営側のコストが高く、時には警察対応などの特殊なリスクが発生したりすることもある。
 施設内運営ゲーム(バックパックPCを背負ってプレイするVRゲーム等)の場合は、プレイヤーがその場所まで移動しなければならない点もネックだ。

 ボードゲームはこうした現実世界に紐付く問題を、一気に解消できる。
 つまり、ゲームボードとは現実世界とゲームの接点だといえる。
 この観点を進めると、ボードゲームはマップの抽象化の度合いで整理できる。
 そのうち、もっとも具象性が高いやり方が、「ジオラマ」や「一般的な平面地図」だ。
 もともとウォーゲームは軍隊の卓上演習から進化した経緯があり、今でもジオラマを用いたミニチュアゲームは全世界で親しまれている。
 徳岡氏は「非常に直感的で、地図上のオブジェクトの位置関係などが正確」だと評価。
 後述する「マップ形式によって発生する『ゲームの綾』も、もっとも少ない」とした。
 その反面、ジオラマを使用する場合は、あらゆる意味でめんどうくささが増加する。
 平面地図の場合、距離や地形に対するイメージがつかみにくい問題もある。
 もっとも、コンピュータゲームの場合(FPSやRTSなど)、これらの欠点が解消され得る。
 その際、必要に応じてUIを工夫し、プレイアビリティを確保することが重要だと指摘した。

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▲平面地図は距離や高低差がわかりにくい。そのためコンピュータゲーム化する場合はUIを工夫する必要がある

マップを多角形で区切るという発明

 では、他の方法でこれらの問題を解消するには、どうしたらいいか。
 問題の根本原因は、具象的なマップをそのまま用いようとした点にある。
 ならば、マップを何らかのやり方で、抽象化してやれば良い。
 一つのアイディアが、マップを多角形で区切ることだ。
 もっとも、抽象化することで必然的にデメリットも発生してくる。
 以下、徳岡氏は「トライアングルマップ」「スクエアマップ」「へクスマップ」の利点と欠点について述べた。

 トライアングルマップはアナログゲームの「ダイヤモンドゲーム」のように、三角形でマップを区切るやり方だ。
 3人プレイに最適で、方向や距離が意外と正確であり、前後左右に対する直進性もある。
 もっとも多くの場合、直感的ではない制約がつきまとう。
 スクエアマップは「ファイアーエムブレム」シリーズをはじめ、多くのコンピュータゲームで採用されているスタイルだ。
 この「なじみやすさ」が一番のメリットになる。
 もっとも、斜め方向における距離や関係性が不正確になるのは、周知の通りだ。
 最後に六角形でマップを敷き詰めるへクスマップ。
 ウォーゲームなどで一般的に使用されている。
 斜め方向に対する関係性の問題も解決されている。
 しかし、直進性が完全には担保されない(上下は良くても左右移動はガタガタする)のが問題になる。

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▲スクエアマップ(上)とへクスマップ(下)

 ここで徳岡氏が指摘したのが、マップと世界の関係性だ。
 スクエアマップを使用する場合、前述のように斜め方向への配慮が難しくなる。
 そのため京都の市街図のように、世界が碁盤の目のようになりがちだ。
 もっとも建物内など、直行する直線で囲まれたマップを作るうえでは、これが利点となる。
 逆にへクスマップでは、世界が六角形で表現されることになる。
 そのため、碁盤の目のような世界を表現するには向いていない。
 しかし、幸か不幸か現実の地形は、もっと混沌としている。
 これが史実の戦いをゲームで再現する際、へクスマップが多用される理由になる。

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▲へクスマップ(上)では部隊とモスクワ・ミンスク・キエフは等距離だが、スクエアマップ(下)では距離が異なってしまう

マップデザインはゲーム体験に直結する

 さて、世界を抽象化するには、他にエリアトゥエリア(AtoA)マップと、ポイント・トゥ・ポイント(PtoP)マップというやりかたもある。
 AtoAマップは地図を境界線で分割し、それぞれのエリアを1マスとするやり方で、『信長の野望』などでおなじみだ。
 現実世界をそのままマップにすることができ、複雑な地形も正確に表現できる。
 ただし、細かい表現がしづらい点も事実だ。
 特に現実の地図を使用する場合、地図と現実の地形のずれに注意する必要があるとした。
 地図上ではつながっていても、実際には移動できない場合(険しい山脈など)などだ。

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▲エリアマップ

 このAtoAマップの発展系が、PtoPマップだ。
 マップ上に重要地点(ポイント)を配置し、ポイント間を線で結んで移動可能なルートとするやり方で、地図と現実の地形のずれによる問題が解消できる。
 ただし、どこにポイントを設置し、どのようにラインを結ぶかで、作り手の解釈が強く働く。
 徳岡氏は中東の地図をモチーフにしたPtoPマップを例に、この問題を解説した。
 イランを孤立させる、エジプトとサウジアラビアは地理的には隣接していないが、ラインで直結させるなどだ。
 また、抽象性が高すぎるきらいがあり、ゲーマー向けに最適化されすぎている点も否めないとした。

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▲ポイントトゥポイントマップ

 このように、各々の形式で一長一短があるマップのデザイン。
 その一方で、マップデザインはゲーム体験と密接に関係している。
 しかし、経験が少ないゲームデザイナーは、慣例的に自分が慣れた方式を採用しがちだ。
 近年ではトライアングルマップの頂点のみを敷き詰めるなど、新しい方式を採用したアナログゲームも登場しているという。
 徳岡氏は「時間不足で駆け足になってしまったが、資料を補足・追記して、後日CEDiL(CEDECの講演資料が掲載されるサイト)で公開したい」とまとめた。

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▲トライアングルマップの応用例

 

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