「ピグミースタジオ」小清水史”一周回って専用コントローラーに帰ってきた”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#49

2017年03月17日

 アーケードゲームからコンソールゲーム、そしてスマホゲームへと、過去40年間で急速に変化を遂げてきた日本のゲームシーン。
 一方でテレビが普及してもラジオがなくならないように、日本のゲームシーンはさまざまなプラットフォームが集積し、豊かなコンテンツ文化を生み出している。
 その中でも、すべてのプラットフォームでゲーム開発の経験があるベテランクリエイターは、今や貴重な存在だ。
 
 一方でアーケードゲームやコンソールとスマホゲームを分けるのが、物理コントローラーの有無だ。
 入力デバイスの違いは、ゲームデザインに影響を与え、それぞれのユーザー層にも違いを投げかける。
 これまでにない機能を持つコントローラーを備えた、ニンテンドースイッチが発売された今、それぞれのコントローラーが持つ特性や、ゲームが持つ求心力とは何か。
 ネットとリアルの融合も踏まえて、次代のゲームデザインが今、幕を開けようとしている。

「ピグミースタジオ」小清水史”一周回って専用コントローラーに帰ってきた”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#49
▲写真左から、ピグミースタジオ代表小清水史氏。シシララ代表安藤武博氏。※シシララのオフィスにて

ベテランゲームクリエイターの生かし方

安藤氏:
外から見ていると『忍者くん』(1984年、アーケード、UPL)、『ワンダーボーイ』(1986年、アーケード、セガ・エンタープライゼス、開発ウエストン)の西澤龍一さんとか、『ボコスカウォーズ』(1983年、PC、アスキー)のラショウさんとか、30年くらいゲームを作られているゲームクリエイターのレガシーを現代に復活させるみたいなことを、意図して仕掛けられている印象があるんですよ。
『ボコスカウォーズ』も、まさか今になって続編『ボコスカウォーズII』(2016年、PS4・Xbox One、ピグミースタジオ)が遊べるようになるとは思ってませんでした。
しかも今時の新しいアイディアや、当時できなかったフィーチャーが入っている。

小清水氏:
時代とか流れとか、そういうところの肌感覚的なところも含めて、そういったタイトルに光が当たってきたという感じでしょうか?
『ボコスカウォーズII』も、まさにあのタイミングだから出たソフトだったと思います。

安藤氏:
いちプロデューサーとして、興味深いですね。
発売までの経緯を振り返ってみていただけますか?

小清水氏:
いまスマホでゲームを遊ばれている人たちの中には、けっこうな割合で「昔は家庭用ゲームでゲームに熱中していたけど、今は離れてしまっている」人たちがいますよね。
そういう潜在的な市場があることは、皆さんよく分かっていると思うんです。
でも、いろんなプラットフォーマーさんのプレゼンテーションを聞いていると、「今、ゲームに熱いのはこの世代で、このターゲットですよ」としか言われないじゃないですか。
もちろん、その層に向かってゲームを作れとは言われませんが、それって間接的に言われているようなものですよね。
ああいった説明って、どうなのかなあと思っていて。

安藤氏:
はいはい。

小清水氏:
もっと潜在的な市場を掘り返して、いまゲームから離れてしまった層に対して、もう一度呼び込むようなことってできないんですかって、聞いてみたこともあるんですよね。
そうしたら「いや、その通りだと僕も思うんですが、なかなか上手くいかなくて・・・」

安藤氏:
社員という立ち場では、なかなか冒険もできないですしね。

小清水氏:
実際どこのプラットフォームも悩まれていると思うんですよ。
今の市場に向けてゲームを作るか、潜在的な市場に向けて作るか。
そんな中でも、僕は後者の可能性を感じていて。
幸いそれまでのタイトルで、開発費も少しは貯まったので、今だからこそ作る意義があるだろうと思っていて。
『ボコスカウォーズII』も、そうした層に刺さるタイトルじゃないかなと。
すごくニッチですけど、家庭用ゲーム機を買ってでも遊びたくなる・・・そんなゲームの一つになればいいかなと思って、作っています。

安藤氏:
そういった戦略があって、『ボコスカウォーズII』が良いということになり、ラショウさんに声をかけられたんですか?

小清水氏:
実はその前に『野犬のロデム』のリメイク版(2014年、PlayStation Mobile、ピグミースタジオ)を出しているんです。
あのタイトルも、オリジナル版はMacintosh向けのニッチなゲームでしたよね。
でも、そういうゲームを欲しがる層が潜在的にいるだろうということも見えていたので。
それに、ラショウさんにお会いしたときから『ボコスカウォーズII』の話はしていました。

安藤氏:
そうか、ラショウさんといえば『野犬のロデム』がありましたね。

『ボコスカウォーズII』

ハード:PlayStation4、Xbox One ※ダウンロード専用タイトル
ジャンル:シミュレーションRPG
メーカー:ピグミースタジオ
リリース日:2016年11月10日(木)
価格:2500円(+税)


▽『ボコスカウォーズII』公式サイト
http://bokosukawars2.com/


■『ボコスカウォーズII』プレイ映像

キャリアを重ねたからこそできること

小清水氏:
西澤龍一さんもレジェント級のゲームクリエイターですが、今はピグミースタジオでスタジオディレクターとして、いろいろなスマホゲームの開発に、関わっていただいているんですよ。
もともとアーケードゲームの開発者なので、売上を睨みながらゲームデザインを調整していくのはお手の物ですからね。
当時の開発の知見をそのままスマホゲームにも生かしていただいています。

安藤氏:
今は関西にいらっしゃるんですね。

小清水氏:
そうなんですよ。
本人もスマホゲームの可能性をよく語っていますし。
そのため、どちらかというと『忍者くん』『ワンダーボーイ』路線ではなくて、スマホゲームで得た知見を積み重ねた上で、何かができるんじゃないかと思っているんです。

安藤氏:
西澤さんはウエストン時代に『ダークハーフ』(1996年、スーパーファミコン、エニックス、開発ウエストン)というRPGを作られています。
勇者と魔王を交互に進めていくという、ものすごく独特なシステムで、プロデューサーは僕が勝手に師匠と呼んでいるスクエニの渡辺泰仁さんです。
そんな風にアーケード・コンシューマ・スマホゲームと、さまざまなプラットフォームでゲームを作られていて、これからも多彩なゲームを作られる可能性を感じますね。

小清水氏:
彼にしかできない、新しいゲームがスマートフォンで生まれるんじゃないかと思います。

安藤氏:
30年選手のプロデュース方法がとても共感できるというか、良いですよね。
キャリアがあそこまでの人たちは本当にすごい。
先日も僕が毎週月曜日にやっているインターネット番組「つった人がゲーム実況」で、バズルゲーム『EXIT』(2005年、PSP、タイトー)を取り上げたんです。
本作のディレクターだったアオキヒロシさんと、プロデューサーの河上聖治さんにお越しいただきました。
僕が大好きな横スクロールアクションの『ラスタンサーガ』(1987年、アーケード、タイトー)と、格闘ゲームの『サイキックフォース』(1996年、アーケード、タイトー)などを作られた人です。

小清水氏:
ああ、なつかしいですね。

安藤氏:
『EXIT』はオリジナルのパズルアクション。ものすごくバランスがいいステージが100種類も入っているにも関わらず、半年間で作られているんですよ。
仕様書も持参いただいて、拝見したんですが、若手だったら足し算しがちなところを、綺麗に引き算でまとめられていました。
制限の中できちんと整えて、かつ遊びにオリジナルの要素を加えられています。
ビジュアルや世界設定も、時間をかけずにすぐに作ってチーム内で共有されていて。
プロダクションのやり方もすごく無駄がなくて、洗練されていました。

小清水氏:
昔は今ほどツールなども揃っていなかったので、皆さん現場で培われた独自のノウハウをお持ちでしたよね。

安藤氏:
そうなんですよ。
だから普通は年齢を重ねるとロートルと呼ばれて、現役引退みたいな形になりますが、ゲーム作りは作れば作るほど知見が貯まっていくから、本人に新しい環境に順応するだけの柔軟性があれば、経験のある人の方がおもしろくて美しいゲームを作れるんじゃないかと思っています。
ただ、ゲーム業界の問題点として、先週も中裕司さん(元セガ・エンタープライゼス、現プロペ)と別の場所でトークイベントがあったんですが、大手にいるとおもしろいゲームを作って売れた人は、すぐに偉くなってしまうので、ゲームを作らせてもらえなくなるんですよね。

小清水氏:
ああ、分かります。

安藤氏:
でも、作れる人はずっと作っていれば良いと思うんです。
映画監督はずっと監督です。
それがゲーム業界では、良いゲームを作ったら、今度は取締役になって、マネージメントをやれと言われてしまう。
本当はめっちゃ面白いゲームを作れるのに、苦手なことをやらされて、作れなくて、窮屈になって、どうしよう・・・。みたいな問題ってあると思うんです。
そこをラショウさんにしろ、西澤さんにしろ、うまくプロデュースされているというか、ベテランのゲームクリエイターを生かすモデルケースを作られていて、とてもいいなと思います。

ネットとリアルがだんだん近づいてきている

小清水氏:
お二人以外にも、いろいろ動いているプロジェクトがありますよ。
それに『ボコスカウォーズII』の発売日って、偶然にもファミコンミニの発売日と重なってしまったんですよね。
その時に、まさにコンセプトが同じだと思ったんですよ。
任天堂さんもいろいろ考えた結果、この市場がいけるんじゃないかと思われたんじゃないかと思うんですよね。

安藤氏:
なにか今、そういう流れがありますよね。
僕のオフィスでも、来客が一番スイッチを入れて遊ぶハードは、ファミコンミニですからね。

小清水氏:
ニンテンドースイッチも、そういった流れの延長線上にあるハードだと思っていて。
スマホやタブレットのように持ち出して、対面で遊べるけど、コントローラーがすごくリッチじゃないですか。
スマホとコンソールの違いって、常々コントローラーだと思っていて、もっとコントローラーを追求していくべきだと思っていたんです。
そりゃ処理速度が上がる方が良いに決まっているんだけど、同時にコントローラーにも秘密がないといけない。
まさにニンテンドースイッチは、我が意を得たりでした。
あのコントローラーには、まだまだ絶対に隠された使い方があるんじゃないかな。

安藤氏:
絶対にありますよね。

小清水氏:
いまニンテンドースイッチでゲームを開発されている方々って、それを目の当たりにされていて。
「うぉっ、これを絶対に使おう!」みたいなことがあると思うんです。
ピグミースタジオでも、ニンテンドースイッチであんなことをしたい、こんなことをしたいというアイディアが、どんどん膨らんでいます。

安藤氏:
いろいろ刺激を与えてくれるハードですよね。

小清水氏:
実際問題、ネットワークという意味では、コンソールよりもスマートフォンの方が、いつも携帯しているし、常時接続だしで、勝っているわけじゃないですか。
でもみんなで集まって何かをやろうという時って、目と目をあわせて何かをするのが大事だというか、何かそういう流れになってきている感じがするんです。
ネットとリアルの境界線が、どんどん薄まってきているというか。
ちょっと話はズレますが、昔からソーシャルゲームを作られているIT関係の企業さんも、ゲームそのものには興味はないけれど、ゲームが持つ集客力には興味があるって、よくおっしゃいますよね。

安藤氏:
そうですね。

小清水氏:
それが今まではケータイで、ネットでというところに閉じていたんですが、だんだんリアルでも人を集める動機になるんじゃないかということに、興味を持ち始められている方が増えてきていて。
たとえば堀江貴文さん・・・。

安藤氏:
ホリエモンですね。

小清水氏:
はい、その方がロケットサイエンスというゲーム会社を設立されていて、そこに『シーマン』(1999年、ドリームキャスト、セガ、開発ビバリウム)の斎藤由多加さんもジョインされていて。
僕も裏方で、いろいろとお手伝いしているんですよ。
そこでも同じような話をしていて、堀江さん自身もそこに興味を持たれていますね。
いまこのタイミングで、ゲームを通して人がリアルに集まるところに興味があると。
そっちはそっちでいろんな企画があって、話が進んでいます。

スマホとコンソール、それぞれのUI

小清水氏:
ニンテンドースイッチも同じで、外に持ち出していろいろ遊べるゲーム機で、今までにないことができそうで。
たぶん任天堂さんも、みんなが大勢で遊んで、遊んでいる姿自体がおもしろいようなゲームを考えられていると思うんです。
8人同時でプレイできるとか、そうですしね。
それが口コミで広がるところを狙われているんだろうなと。

安藤氏:
PVも遊んでいる姿が中心になっていますね。
その中でも、コントローラーの存在が浮き彫りになっているというのがおもしろい。
スマホゲームを作り始めてから10年くらいになるんですけど、最初はあの強化ガラス1枚のインターフェースに驚喜していました。
それまでコントローラーのデザインは決められていたけれど、スマホではUIのアイコンから自分で決めないといけなくなった。
ハード開発を半分するような感じで、すごくおもしろかったんです。

小清水氏:
ああ、そうですね。

安藤氏:
でも、この10年間でスマホのインターフェースは一切変わらなかったんですよね。ずっと強化ガラス一枚。
だんだん、つまらなくなってきて、また前に戻るというか。
コントローラーやハードの形状も含めてデザインしていかないと思い切り新しい遊びは提供できないんじゃないかと思うようになってきました。

小清水氏:
実際、コンソールとスマートフォンって、コントローラーの違いが、ゲームを遊ぶ人の違いにも繋がっていたと思うんです。
僕はその中でも両方のゲームが好きな方なんですが。
最近もスマホの画面をタップするだけのゲームから、すごくおもしろいものが出てきていますし。
スマホではないですが、最初に『クッキークリッカー』(2013年、PC、Orteil)を遊んだときも、延髄切りをくらったような衝撃を受けました。

安藤氏:
クリックするだけでええんか!という。
シンプルだけど、恐るべき中毒性を秘めてますよね。

小清水氏:
ゲーム業界に対して、いろんなUIを作って大仰な設計しているけど、僕らはクリックだけでこれだけおもしろいゲームが作れるしって言われた気がして。
どこかバカにされたような気がしたし、とにかくショックだったんですよ。
ゲーム作りについて、根本的な部分から考え直したところもあります。
最近だと『TapTitans2』(2016年、スマートフォン、GAMEHiVE)がおもしろいですね。
そんなふうに、タップだけで遊ぶゲームと、コントローラーで遊ぶゲームと、それぞれの良さがあって、それぞれにユーザーがついていて。
ゲームの求心力と、コントローラーの秘密の関係性ということに、何かすごく興味があります。

安藤氏:
今日あらためて思ったのは、ゲームにはいろいろな種類があり、それらが堆積していっているということです。
何か決まったものがあるわけじゃなくて、あれもゲーム、これもゲーム、みんなゲームで。
そして、新しく出てきたゲームが過去のテクノロジーを飲み込んで駆逐するわけでもなくて、積み重なっていく。
おそらく、これからもコントローラーで遊ぶゲームが楽しいと思う人もいるだろうし、スマホゲームでガチャをして興奮する人もいるだろうし、ネットゲームで人と繋がってコミュニケーションするのが楽しい人もいなくならない。
全部ひっくるめて語れないし、何かが出てきたから何かが滅びるという世界でもない。

小清水氏:
そうですね。

安藤氏:
最初のBitSummitでは、参加者の中に「僕らが作っていたゲームが滅びてしまうかもしれない」という思いもあったと言われていましたよね。
でも、スマホやソーシャルゲームのブームが熟れてきて、どうもそんな簡単な話でもないと、最近は分かってきたんじゃないでしょうか。
むしろ、自分たちがどうやったら心地よく、おもしろいものに取り組んでいけるかについて、クリエイターが選択していくことが重要な時代になってきた気がします。
それらをひっくるめて、同じゲームで語られるおもしろさというか、奇妙さってありますよね。

小清水氏:
それぞれのデバイスごとに、向き不向きがあって、おもしろさが違いますしね。
これから、もっとおもしろい状況になっていくんじゃないですかね。

安藤氏:
ゲームは何年か1回、新ハードの発売で一回リセットされて、作り手もそこに向かってワーって移動して、ハードが出ること自体で作りながら食べていけた。
その中の一つとして、スマートフォンが出てきて、僕もワーっとそっちに行って作った。
まさに、次にどうなるかなみたいなことを、今は模索しているんです。

小清水氏:
なるほど。

安藤氏:
今回は相当複雑だなと思っていて、いろんな選択肢が出てきて、それぞれが組み合わさって、答えが一つじゃなくなってきた。
それで、ゲームを作るよ、遊ぶよ、実況するよ、記事で伝えるよ、という活動を続けながら、リサーチしているんですが、まだまだ分からない。
その中でも、なんとなくリアルなものと、バーチャルなものが組み合わさって、今まで見たこともないような新しいムーブメントが起こるような、ぼんやりとしたイメージがあるんですが、何か感じられていることってありますか?


(以下、次号)

A 5th Of BitSummit(フィフス オブ ビットサミット)

 今回で5回目を数える国内最大のインディゲームイベントBitSummit。
 2017年5月20日(土)、21日(日)2日間の日程で、京都市勧業館「みやこめっせ」で行われます。

日程:2017年5月20日(土)・21日(日)
時間:10:00~17:00
会場:京都市勧業館「みやこめっせ」 1階 第2展示場
主催:BitSummit実行委員会
 ・一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)( Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit /Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH )
 ・株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス
 ・株式会社インピタス
 ・京都府
制作:株式会社オリコム


▽BitSummit公式サイト
http://bitsummit.org/

 

この記事を共有しよう!