「ピグミースタジオ」小清水史”ゲームやろうぜ!はインディの先駆けだった”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#48

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小野憲史
2017年02月27日

 大作ソフトと中規模・小規模タイトルが渾然一体となって、分厚いラインアップを形成していた初代PlayStation。
 その中でも異彩を放っていたのが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテイメント)が仕掛けた「ゲームやろうぜ!」だ。
 大学生を筆頭に、ゲーム作りの素人を対象としたコンペティションで、そこからさまざまなヒットタイトルが登場。
 いわばインディゲームの先駆けだったとも言えるだろう。

 この、世界的に見ても珍しい挑戦的なプロジェクトに第一期生として参加し、ゲーム業界のキャリアをスタートさせた小清水氏。
 その時の経験がゲーム作りから組織作りにいたるまで、さまざまな形で現在につながり、BitSummitの延命にも貢献したという。
 BitSummitの基板が固まった「3rd」、さらに進化した「4th」、そして2017年5月に開催が予定されている「5th」、そして小清水氏のキャリアと、話はさまざまに展開していった。

「ピグミースタジオ」小清水史”ゲームやろうぜ!はインディの先駆けだった”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#48
▲写真左から、ピグミースタジオ代表小清水史氏。シシララ代表安藤武博氏。※シシララのオフィスにて

協会が発足し、成長の土台ができた「3rd」

小清水氏:
(前回のBitSummitが「3rd」の開催前に危機的状況を迎えたという話を受け)
「2nd」で運営が死にかかったのもあるし、動く金額が大きくなって、みんなビビったんですよ。
全体で2,000万円くらいのお金が動いていましたから。
万が一、スポンサーがまったく集まらなかったら、誰が赤字を負担するんだと。

安藤氏:
当時は広告代理店も入れずに、自前でやられていたんですよね。

小清水氏:
そうですね。
キュー・ゲームスが旗を振っているといっても、業者向けの発注などは、みんな個人名義でやっていたんです。
それって、何かあったら全部、個人で負担するってことですから。
みんな、ワクワクする一方で不安になっていました。
アクセルばっかりでブレーキの踏み方が分からなくて、もし事故ったらどうするのと。
僕が本格的に関わりだしたのって、まさにそのタイミングだったんですよ。

安藤氏:
どんな風に感じられました?

小清水氏:
最初に聞いた時に、そりゃビビるだろうなと思ったんですよね。
これ以上広げるには、まず組織を作らないと無理だろうと。
それで一般社団法人インディペンデントゲーム協会を作ろうということになったんです。
そして、そこに理事として参加する企業は、赤字になったときに頭割りをして負担をするんだと。

安藤氏:
なるほど。

小清水氏:
その取り決めがないと、誰も動きようがないですからね。
時期的にギリギリで、ホントに大変だったんですけど、なんとか間に合って、そこからワーっと動いて。

安藤氏:
製作委員会に似たやり方じゃないですか。
さすがのまとめ方だと思うんですが、それまでそうした座組でモノを作られた経験はあったんですか?

小清水氏:
ピグミースタジオをはじめ、何度か会社を設立したり、お手伝いをしたりした経験があったので、その経験が生きました。
任してくれたら、すぐにやるからといって。
その時に、株式会社みたいに儲けていく組織ではないので、一般社団法人の方が良いだろうと提案させていただきました。
それで定款を作って、いろんな書類を作って、判子を押していって。

安藤氏:
そうだったんですね。

小清水氏:
そんな風に組織固めができたので、「3rd」は完成度が上がりました。
運営に広告代理店も入ってもらって、進行も遅れませんでしたし。
ただ、それでもまだまだ課題があって、いろんなところからお叱りを受けつつ、「4th」に繋げていきました。

安藤氏:
なるほど。

小清水氏:
「4th」ではTwitchの配信が始まって、ゲーム媒体さんにもご協力いただいて。
ちょっとずつ課題があって、それを克服して、進化していって。
今年は「5th」ということで、これまでの集大成にすることを目的としています。

BitSummitの目指すビジョン

安藤氏:
BitSummitの歴史がつまびらかになって、相当すっきりしました。
そのうえで、今後のビジョンはどの辺りでしょうか? 
お祭りとしてはかなり認知されてきて、プレゼンスも高まってきていると思うんです。

小清水氏:
そこは常に協会内でも議論しているところなんですよね。
BitSummitはずっとパワーアップしていくのか・・・。
そもそもパワーアップって何とか・・・。
まあ、今よりインディクリエイターをたくさん呼べた方が良いとは思うんですが、それよりも質の高さというか、本気度のある人がたくさん集まるイベントになっていくといいですよね。
「大ヒットしたあのゲームって、実はBitSummitから出てきたんだぜ」みたいな言われ方がされるようになるといいなあと思っています。

安藤氏:
インディがおもしろいものをワーっと作って、持ち寄って、そこからヒットが生まれて、イベント自体もみんなに支持されて・・・。
そんな状況を作るのが一つのゴールだったりするんでしょうか。

小清水氏:
そうですね。
それに、ほかのイベント主催者さんからすると、すごくおこがましいんですが、海外の人たちにとって、BitSummitは東京ゲームショウの次に大きなイベントとして思われているみたいなんです。
それにはIndie MEGABOOTHさんが参加されているとか、いろいろな理由があると思うんですが。

安藤氏:
たしかに、海外に対する発信力と拡散力はものすごいものがありますよね。

小清水氏:
そこもBitSummitの良さだし、今後も伸ばしていかないといけないのかなと。

安藤氏:
その一方で日本のインディゲームシーンは海外にとって、すごくストレンジに思われているところが、まだまだありますよね。
過去の対談で「マジックがまだない」という言い方をされている方もいました。
海外だとインディ発祥のおもしろいゲームにお金がついて、ビジネスになるという例が多々ありますが、日本では言ってみれば、ちゃんと食べていくプロジェクトを継続しながら、オリジナルも作るみたいに、つつましくやらないとできない。
なかなかスケールしないジレンマがあって、どうしていったら良いでしょうね。

小清水氏:
ホントに皆さん悩まれているし、必勝パターンが見つからないですよね。
そこはBitSummitの課題でもあると思っています。
でも現状は作り手の熱量があるから、まだチャンスだと思っているんですよ。
そこはスポンサーさんも期待している部分でしょうし。
そういうものも利用して、良いゲームを作っていきましょうと。

安藤氏:
良いゲームというのは・・・

小清水氏:
売上がたって、独創的で、遊んでおもしろいゲームですね。
もっとも、そんな三拍子そろったゲームを、日本でどれだけ作れる人がいるかというと、実際にはなかなかいなくて。
実際には、そのうちの1つができるだけで、すごい才能だと思うんですよ。
そこで、そういった人たちが集まれれば、そこからいろんな組み合わせが生まれていって、可能性が高まるんじゃないかなと。

安藤氏:
そうですね。

小清水氏:
インディの人たちって、「自分一人で何でもやる」みたいな美学があるじゃないですか。
もちろん、それはそれですごいことなんですが、違う才能の持ち主が2人、3人と集まることで、1人でやっている時の10倍、20倍も輝けるのであれば、そっちのほうがずっと素晴らしい。
だから、お互いが出会える場所があることが大事で、それが組織だったり、BitSummitの存在意義なのかなあと思っています。

ゲームやろうぜ!がきっけだった

安藤氏:
小清水さん自身はピグミースタジオの前は何をされていたんですか?

小清水氏:
SCEがPlayStation1の頃に「ゲームやろうぜ!」というプロジェクトをされていて、初回に応募しました。
それがゲーム業界に入った、直接のきっかけですね。

安藤氏:
シフトさんとか、ボンバーエクスプレス(現:ビサイド)さんとか、あの頃の時代ですね。

小清水氏:
みんな、今で言うインディだったと思うんですよ。
これまでにない才能を持った人たちで、独自のおもしろいゲームを作っていこう、そこにSCEは予算を投下していきますという。
良い時代でしたよね。

安藤氏:
本当にそうですね。
それにシフトさんもビサイドさんも健在で、バリバリにゲームを作られていますし。
すごく成果があった、すばらしいプロジェクトでした。

小清水氏:
SCE自体も久多良木健さんや、丸山茂雄さんがバリバリやられていた頃で。
特に丸山さんがソニー・ミュージックエンタテインメントの音楽文化を持ち込まれて。
すごくクリエイティブでしたよね。
その流れがあったからこそ、「ゲームやろうぜ!」が実現できたのかもしれません。

安藤氏:
僕もちょうどその頃、旧エニックスでゲームを作り始めたので、傍からみていて「おもしろいことをやっているなぁ」と、いろいろ刺激を受けました。

小清水氏:
その時は「とにかくクリエイターは、お金のことは気にせずに、おもしろいものを作ることに専念すれば良い」という雰囲気がありました。
実際に、全国各地にすごくたくさんのプロジェクトを作られて。
そこから『XI[sai]』(1998年、PlayStation、SCE、開発シフト)『どこでもいっしょ』(1999年、PlayStation、SCE、開発ビサイド)などが出てきて。
その影には結局表に出なかったプロジェクトもたくさんあって。
上手くいったこと、上手くいかなかったこと、全部ひっくるめて、いろんなドラマがありました。

安藤氏:
小清水さんもその渦中にいらっしゃったんですね。

小清水:
企画・デザインから入っていって、すぐにまとめる人というか、仕上げみたいなポジションになり、何本かゲームのディレクションをするようになりました。

安藤氏:
それまで、どこかの会社で経験があったとか?

小清水氏:
いや、それが最初ですね。
実際、『XI[sai]』のメンバーもみんな大学生でしたし、みんなそんな感じで。
SCEさんとしても、既存のゲームクリエイターじゃない人を呼んできて、おもしろい人だったら一回やらせてみたらどう、という感じでした。
ゲームを作ることの技術的なところは、後から教育したらいいという。
実際、ゲームクリエイターの教育には力を入れていましたね。
いろんなセミナーを開催してくれたり、代理店のサポートをSCEが一括で契約していて、ツールの使い方で困っているところがあったら、電話一本で教えてくれる環境になっていたりと、手厚い環境が整っていました。

安藤氏:
それはすごい。

小清水氏:
それにPlayStation1では、けっこうツールが良くできていましたよね。
痒いところに手が届かない部分もありましたが、少人数でもアイディアで勝負できたところがあって。
『XI[sai]』がいきなり100万本のヒットを記録したのも、そんな下地があってこそだったと思います。
そのへんで経験させてもらったのが最初ですね。
そこからずっと、インディゲームにか関わってきたというか。

安藤氏:
日本のゲーム業界だと珍しいキャリアかもしれないですね。

小清水氏:
新しいクリエイター、新しいゲーム開発に携わることを、ずっとやってきたつもりです。
そういったフィールドには、実力はあるけれど、個性的な人も多いので、そういう人たちとのコミュニケーションの仕方とか、まとめ方も、だんだん身についてきました。

安藤氏:
結果的に組織づくりもうまく。

小清水氏:
確かに、その頃の経験がBitSummitでも生きたところがありますね。
どこが足りないのか、何となく分かったという。

ライスワークとライフワーク

安藤氏:
ちょっと話を戻すと、日本のインディシーンには売上がたって、独創的で、遊んでおもしろいという風に、三拍子そろった才能を持っているクリエイターはなかなか出ていません。
そういう人は、まだまだ大手企業にいると思うんですよね。
木村さんみたいに、上場企業の役員を辞めてオニオンゲームスを作られて、インディゲームを主戦場にされている人は、やっぱり少数派です。
実際「インディになると食べていけなくなるんじゃないか」「年収が下がるんじゃないか」と心配されている人は、けっこういると思うんです。

小清水氏:
そうですね。

安藤氏:
その一方で、ピグミースタジオさんには50名ほどの社員がいます。
これまでいろんな尖ったゲームをリリースされていますが、メインストリームのセールスランキングでは見かけないタイトルばかりですよね。
平たく言うと、どうやって食べていくための環境を作られているのでしょうか。
作り手にとってのパラダイスみたいにも感じられるので、その仕組みが分かったら、やってみたいという人が増えるのかなと思います。

小清水氏:
その話もBitSummitの第一回目でいろんな人としました。
僕は「ライスワーク」と「ライフワーク」という言葉を使い分けていているんです。

安藤氏:
いい言葉ですね。

小清水氏:
好きな仕事だけ、つまり「ライフワーク」だけでやっていければいいんですが、それが難しいのは、インディであろうがなかろうが、どの企業でも同じだと思うんですよね。
そのために、裏方的な仕事もけっこうやっています。
確実に収益を上げていくための「ライスワーク」を同時に二つ、三つと並行して、ポートフォリオを作っていって。
それだけだと先がないので、オリジナルのゲーム作りも「ライフワーク」としてやっていって。
その両方でバランスをとるということですね。

安藤氏:
「ライスチーム」と「ライフチーム」で社内は分かれているんですか? 
それとも一人の社員が兼務しているんですか?

小清水氏:
「ライフチーム」は自分たちの好きなものを作れますが、自分たちの技術以上のものは作れない弱みもありますよね。
逆に「ライスチーム」には、自分たちの企画ではないかもしれないけれど、最新技術を発注元の企業と共有できる強みがあります。
そこで、「ライスチーム」が得た他社の技術や知見を「ライフチーム」に、「ライフチーム」が培った独自の技術や知見を「ライスチーム」に、それぞれ還元していって。
そんな風に相乗効果を狙っています。
そのため部門としては分かれていますが、社員は両方を行ったり来たりという感じです。

安藤氏:
ホームページの制作実績欄に『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』(2015年、スマートフォン、スクウェア・エニックス、開発エイリム)がありましたね。
僕も少し関わったタイトルですが、そのドット絵の部分をピグミースタジオさんでやられていると知って、親近感が湧きました。
それもまた「ライスチーム」と「ライフチーム」の相乗効果を狙ってのことなんでしょうか?

小清水氏:
そうですね。
ドット絵は弊社の「ワイスワーク」として、いろんな形でお手伝いさせていただいています。
そんなふうに続けていると、ドッターですごい腕を持っている人たちが、それこそSNKの全盛期のゲームを支えたドッターたちが集まってきてくれて。

安藤氏:
関西にはすごいドッターがメチャメチャいそうですね。

小清水氏:
特別天然記念物みたいな人たちが一杯いて、会社がそういう人たちの憩いの場になっていますね。
でも、どの企業でも「ライスワーク」と「ライフワーク」のバランスみたいなことは、いつも気にされていらっしゃるんじゃないでしょうか。

安藤氏:
将来的には「ライフワーク」がどんどん大きくなっていって、それだけでも普通に食べていけるのが理想なんでしょうか?
それとも、バランスなんて関係ないくらい攻め続けていかれるのか・・・。

小清水氏:
たぶん、どんな状態になっても「ライスワーク」は続けるんじゃないでしょうか。
さっきも言ったように、「ライスワーク」には技術が他社と共有できるメリットがあって、そこがいいなあと思っていて。
一方で「ライフワーク」の方でも、最近尖ったゲームの企画を弊社に持って来られる方が増えた気がします。

安藤氏:
「こんなのを考えたから、一緒にやりませんか」ということですか?

小清水氏:
それもありますし、まだ本当にコンセプト段階のものまで。
「ライフワーク」を続けていることが、良い宣伝になっている気がします。
あそこだったら何かやってくれるんじゃないかという。


(以下、次号)

A 5th Of BitSummit(フィフス オブ ビットサミット)

 今回で5回目を数える国内最大のインディゲームイベントBitSummit。
 2017年5月20日(土)、21日(日)2日間の日程で、京都市勧業館「みやこめっせ」で行われます。

日程:2017年5月20日(土)・21日(日)
時間:10:00~17:00
会場:京都市勧業館「みやこめっせ」 1階 第2展示場
主催:BitSummit実行委員会
 ・一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)( Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit /Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH )
 ・株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス
 ・株式会社インピタス
 ・京都府
制作:株式会社オリコム


▽BitSummit公式サイト
http://bitsummit.org/

 

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