「ピグミースタジオ」小清水史”先の見えない不安と、そこからの反動”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#47

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小野憲史
2017年02月17日

 スクウェア・エニックスで数々のヒットタイトルをプロデュースし、2015年に独立してシシララを設立。
 現在はゲームのプロデュースを続けつつ、毎週月曜日にニコ生「ゲームDJ・安藤武博のつくった人がゲーム実況」を配信している安藤武博氏。
 本連載はそんな安藤氏が気になるインディークリエイターを直撃し、普段聞けないいろいろなことをズバリ聞いてみようという内容だ。

 今回のゲストはピグミースタジオ代表で、日本インディペンデント・ゲーム協会の理事という肩書きも持つ小清水史氏。
 『ボコスカウォーズII』など数々のインディゲームを世に送り出す一方で、BitSummitの中核メンバーとしても精力的に活動している。
 今や日本を代表するゲームイベントの一つにまで成長したBitSummitを、第一回目から知る数少ないクリエイターの一人だ。
 これまで何度も対談で触れられてきたBitSummitを振り返るところから、対談はスタートした。

「ピグミースタジオ」小清水史”先の見えない不安と、そこからの反動”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#47
▲写真左から、ピグミースタジオ代表小清水史氏。シシララ代表安藤武博氏。※シシララのオフィスにて

こびとが作るデジタルおもちゃ工場

安藤武博氏(以下安藤氏):
今回は大阪のピグミースタジオから小清水史さんにお越しいただきました。
『野犬のロデム』 『ボコスカウォーズII』など、インディでさまざまな話題作をリリースされていらっしゃいます。
個人的には『僕は森世界の神になる』が好きなんですよ。
漫画「火の鳥 未来編」が好きで、ちょっと似たような世界観が気に入っています。

小清水史氏(以下小清水氏):
ありがとうございます。
実際、徐々にヘンなゲーム、尖ったゲームをよく出している会社だと認知されてきたようで。
「こんなことできませんかね?」「こんな変わったことを考えているんですけど」といったご相談も、いただくようになってきました。

安藤氏:
ホームページを拝見しましたが、「世界のデジタルおもちゃ工場」を標榜されていて、小清水さん自身もTwitterで「工場長」を自認されています。
かなりユニークな立ち位置の会社だとお見受けしました。

小清水氏:
ピグミーってドワーフとかと同じで、ヨーロッパの妖精の一種なんですよ。
そんなふうに「こびとが素敵なおもちゃを作っている」という意味合いで起業しました。

安藤氏:
ゆめゆめしくて、いいですね。
ゲームを作りたくて起業されたんですか? それともおもちゃ作り?

小清水氏:
あんまり境界線を引くつもりもなくて。
ゲームだけでみても、コンソールゲームもスマホゲームも、どっちも大好きだし。
今後、いろんなおもしろいデバイスが出てきて、そこで作っている可能性も十分あるだろうし。
ニンテンドースイッチなんかも、そうしたものに近しい感じがありますよね。
すごく楽しみなハードの一つです。

安藤氏:
遊び全般ということなんですね。

小清水氏:
そうですね。
だから、変な言い方をすると、最初からインディゲームに注力していこうという思いがあったわけではないんです。
起業して今年で10年目になるんですが、インディゲームに注力しはじめたのは、この5年くらいでしょうか。
まあ、自分の経歴もインディに近しいものがありましたし、今になって振り返ると最初から、そういうことがしたかったんだろうなと思います。

安藤氏:
実際、一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会の理事もされている。
平たく言うと、「BitSummit」の中の人ですよね。
これまで本対談でも、個人クリエイターから企業の社長まで、いろんなタイプのインディの方と対談をしてきました。
その中で日本のインディに強い影響感を与えている要素の一つが、BitSummit。

小清水氏:
ありがとうございます。

安藤氏:
BitSummitは、まだ今年で5回目なのに、ゲーム業界の風物詩に、あっという間に成長しましたよね。
大手企業の方も、その時期に京都に集まる。
でも、BitSummitってどんなふうに始まったのか、僕自身も良く知らなかったりするんですよ。
そこで、今日はその話からいろいろ伺えればと思っています。

小清水氏:
今年も5月20日・21日に「A 5th Of BitSummit」を開催する予定で、現在エントリーの受付が始まっています。
もっとも、第1回目の時は自分も一参加者にすぎなかったんです。
協会が立ち上がり、運営にがっつり関わり始めたのは、第3回目からですね。

安藤氏:
そうなんですね。

A 5th Of BitSummit(フィフス オブ ビットサミット)

 今回で5回目を数える国内最大のインディゲームイベントBitSummit。
 2017年5月20日(土)、21日(日)2日間の日程で、京都市勧業館「みやこめっせ」で行われます。

日程:2017年5月20日(土)・21日(日)
時間:10:00~17:00
会場:京都市勧業館「みやこめっせ」 1階 第2展示場
主催:BitSummit実行委員会
 ・一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)( Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit /Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH )
 ・株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス
 ・株式会社インピタス
 ・京都府
制作:株式会社オリコム


▽BitSummit公式サイト
http://bitsummit.org/

BitSummitはどのようにスタートしたのか

小清水氏:
もともとBitSummitはキューゲームスに当時、所属していたジェームズ・ミルキーというアメリカ人が旗振り役になって、2012年にスタートしたんです。
ただ、もう少し視野を広げてみると、もともとは同社代表のディラン カスバートのアイディアだったんですよ。

安藤氏:
『スターフォックス』(1993年、スーパーファミコン、任天堂)などのプログラマーをされていた方ですよね。
お名前は良く存じ上げています。
最初はどんな感じだったんですか?

小清水氏:
キューゲームスをはじめ、京都にはオリジナルでおもしろいゲームを作っている連中がいっぱいいるから、そういうゲームを集めて何かイベントをやろう、おもしろいゲームを京都から世界に発信していこう、というのがコンセプトだったようです。
それでミルキーは海外メディアとのパイプも太いし、ちょっとやってみない? と。

安藤氏:
ミルキーさんもゲームディベロッパーだったんですか?

小清水氏:
もともとは「1up」という海外ゲームメディアの編集長だった人なんです。
アメリカ人なんだけど、日本のゲームやゲームクリエイターが大好きな方で。
僕も最初は全然知らなかったんですよ。

安藤氏:
そういった方がキューゲームスにいらっしゃったんですね。
立ち位置的にはどんな感じだったんですか?

小清水氏:
一言で言えばプロデューサー的な役割でしょうか。
ミルキーのおじいさんがたしか日本人で、子どものころ、ニューヨークに住んでいたときに、ゲーム機とかウルトラマンのビデオとか、そういった日本のポップカルチャーが常に送られてきたそうです。
ミルキー自身もそういった作品を通して、日本のことが大好きになっていって、周りの友達にも自慢していたらしいんですね。

安藤氏:
なるほど。

小清水氏:
そういった「日本好き」が高じてゲーム雑誌の編集長になって、彼にしてみれば憧れだった日本に来日して、キューゲームスに入社することになって。

安藤氏:
それでディランから「何かお祭りをやれ」と言われた。

小清水氏:
ミルキーも最初は半信半疑だったそうなんですが、思ったよりもスポンサーが集まったんです。
エピック・ゲームズ・ジャパンさんとか、ユニティさんとか。
海外のメディアにも声をかけたら、予想以上に集まってくれて。
クラブハウスみたいな場所で開催されたんですが、蓋を開けてみたらすごい人で、中で身動きがとれないくらいになってしまって。

安藤氏:
それはまた、ゲームのイベントとしては尖っていますね。

小清水氏:
僕も最初は勘違いしていて、京都国際会館に行ってしまったんですよ。
「ここじゃないです」と言われて、そこから会場を調べて、移動して、会場の中に入ったらびっくり…。
あの熱気はすごかったですね。

安藤氏:
主催者側もそこまで大きくなるとは思わなかったんですかね。

小清水氏:
当然第一回目なので、スポンサー企業がまったく集まらなかった時のリスクなども考慮したと思うんですよね。
でも、すごく良いイベントで、可能性を感じました。
その時に『勇者ヤマダくん』(2016年、スマートフォン、DMM、開発オニオンゲームス)の木村祥朗さんとはじめてお会いして。
ちょうど木村さんがゲームから一時離れていて、ポリポリクラブを主な活動のフィールドにされていたころだったかな。

「ピグミースタジオ」小清水史”先の見えない不安と、そこからの反動”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#47 ▲写真中央が、ジェームズ・ミルキー氏。第1回BitSummit時の様子
「ピグミースタジオ」小清水史”先の見えない不安と、そこからの反動”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#47 ▲写真右が、ディラン・カスバート氏。第1回BitSummit時の様子

みんな迷走して、疲れた顔をしていた

安藤氏:
僕もポリポリファミリーなんですよ。
この対談がきっかけで、2016年の9月に「ポリポリ☆クラブピコショワ音楽会」というイベントにも出させていただき、楽器を演奏してきました。
この対談って、木村さんの話にもよくなるんですよね。

小清水氏:
ポリポリクラブは僕も4回くらい出させてもらいました。
ただ、最初は全然わからなくて。
BitSummitの会場でも、帽子を被った木村さんが一人で座っていて。
テーブルにはポリポリクラブのチラシだけおかれていて。
でも、その時は顔と名前が一致しなくて。

安藤氏:
前からお知り合いだったんですか?

小清水氏:
一方的にこちらが知っていたというだけですね。
もともと『MOON』(1997年、PlayStation、アスキー、開発ラブデリック)が好きだったし。『王様物語』(2009年、Wii、マーベラスエンターテイメント、開発CING・タウンファクトリー)でプロデューサーをされていたことも知っていましたし。
当時は若干、疲れた顔をされていたかなあ。

安藤氏:
この対談でもそういう話が出ました。
ゲーム作りで精神的に疲れて、外国を放浪して充電されて、その繰り返しだったとか。
ちょうど『王様物語』が終わって、マーベラスから離れられた時期だったかもしれませんね。

小清水氏:
ブースにもiPadが置かれているだけでした。
でも、そこで可愛らしい絵が表示されていて。
話しかけて「あー!」って感じになって、当時温められていた企画をどんどん見せていただいたんですよ。
他に『東京ジャングル』の片岡陽平さんとか、いろんなゲーム開発者がいて。
わーっとそこでもりあがって、とにかくがんばろうぜと。

安藤氏:
一回目にもかかわらず、そういった人たちが何かを感じて、京都に集まった。

小清水氏:
そうですね。
みんな思い思いのビジョンを温めていて。
それからみんな、どこか疲れていましたね。

安藤氏:
ちょうど携帯電話のゲーム市場が広がったことで、コンソールの市場に見直しが入った時期でしたよね。
「これからはスマホだ」となっていって。
パッケージゲームで腕を磨いたベテランが辛い時期になっていたんですよね。

小清水氏:
コンシューマの国内市場が縮小して、今まで通りにいかなくなってきて。
その一方でスマホゲームがぐんぐん成長して。
もちろん皆さん、ゲームクリエイターとしての才能は高く評価されていたので、スマホゲームの会社さんから、どんどん仕事の話がきていたんですよ。
でも、いざ行ってみたらKPI云々とか言われて。

安藤氏:
ARPPUの目標額が設定されて・・・とかですよね。

小清水氏:
アーケードをやっていた人なら慣れている話だったかもしれませんが、コンソールで売り切りゲームを作っていた人たちからすると、まったく別の畑みたいな感じがしたんでしょうね。
KPIドリブンのゲーム設計とか、今までやったことがなかったし、そもそもわからないし、今までやってきたゲームデザインの積み重ねが通用しない時代になっていくことに対して、みんな不安もあっただろうし。
どこか、それまでの自分のキャリアをゼロにされたようなところと、なんとなく「こんなことをするためにやっていたのかな」という思いが合わさって。
とにかくみんな疲れていて、これからどうしようかなと言っていて、木村さんも周りの人もみんな迷走していた時期でした。
ただその場にいた人たちは、みんな「これからどうなるかわからないけど、こんなアイディアを温めている」「わかる、わかる!」みたいな感じだったんですよ。

安藤氏:
おもしろいことを考えているのに、会社や周りからは認められなくて、これまでと言っていることも違うし、どうすんねんという時に、タイミング良くBitSummitがスタート。
それまで抱えていたモヤモヤ感がそこで爆発。
ソーシャルゲームに対する反動で立ち上がったような感じだったんですね。

小清水氏:
ピグミースタジオとしてもその頃は、インディゲームでやっていこうという思いがありました。
そこで「きっかけがあれば一緒にやりましょう」「何か企画を持ってきてくれたら、できる範囲でパブリッシングできるかもしれません」とか、いろんな話をしましたね。

安藤氏:
それは、盛り上がったでしょうね。

小清水氏:
ほかにも木村さんとの話で一番覚えているのが、漫画「天才バカボン」の話なんです。
ただキャラクターがバカをやっているだけじゃなくて、けっこう哲学的じゃないですか。
バカなことをするんだけど、最後は「これでいいのだ」で締めて、でもそのための導線があって。
そんな話とか、とにかくいろいろしました。

安藤氏:
たしかに木村さんのゲームには「これでいいのだ」感があります。
『勇者ヤマダくん』も「〜なのだ」という言いまわしが多く見られますしね。

小清水氏:
あの時の会話が、なにか間接的にでも、生かされたとしたら嬉しいですね。
そんなふうに、とにかくみんながみんな、すごい影響を受け合ったイベントだったと思うんです。
わーっと、やったるぜ! みたいな。

行政が参加して、急速にイベントが拡大

小清水氏:
それで、第一回目がそんなふうに終わって、翌年「2nd」をやるというときに、京都府さんからお声がけいただいたんですよ。
それがあって、いきなり会場が「みやこめっせ」に移ることになって。

安藤氏:
いきなり巨大な会場になりましたよね。

小清水氏:
今から考えると無謀でしたね。
会場が何倍も大きくなって。
どうやって埋めるのかとか、課題だらけで。

安藤氏:
小さなクラブの中で盛り上がった熱気が、いきなり自治体に届いてしまったんですね。
そこは京都のおもしろいところですね。

小清水氏:
京都府はアニメとかも含めて、いろいろアンテナを広げていらっしゃって。
それで入ってこられたんだと思うんです。
他にも「2nd」からソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE、現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)さんが協賛に入られて。
すごく大がかりになりました。
そういう意味では進化したんですが、中身としてはダメダメでしたね。
ステージイベントが30~40分とか押しまくったりして。

安藤氏:
クラブで集まってわーってやるのとは訳が違いますしね。

小清水氏:
みんなゲーム屋であって、イベント屋ではないですしね。
それなりにがんばったと思うんですが、手作り感がハンパなくて。
いろいろとお叱りをいただきました。
ただ、「1」の熱気を「2nd」でも引き継げて、盛り上がったのは間違いなかったです。
会場が広くなったことで、前回以上に出展数も増えて、未熟だけど良かったんじゃないかなと。

安藤氏:
それで「3rd」に移るわけですが、すんなり行ったんですか?

小清水氏:
実は「3rd」の前に一回、BitSummitが終了の危機を迎えたんです。


(以下、次号)

 

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