「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”ゲーム作りは子育てのようなもの”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#41

2016年11月14日

 ゲームを作る際に「ゼロベースで考える」ことが心情だという柳原隆幸氏。
 カメラを引いて、引いて、引いていった結果、デジタルゲームではなく、アナログゲームの制作にまで足を踏み入れた。
 「身の丈にあった、ミニマルなゲーム作り」を心がけた結果、作品はすべて国籍・文化・宗教などに関係なく、ローカライズ不要で遊べるものばかり。
 日本のインディゲーム開発者の中でも、非常にユニークな存在だ。

 もっとも、これらはすべて「自分が作らなければ、どうやら誰も作らないだろう」というものばかりだという。
 そうしたアイディアを製品として世に残すことが、ゲーム開発者としての、自分の役割だと語る柳原氏。
 最新作『いろかたおりがみ』を軸に、対談はさまざまに広がっていった。

「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”ゲーム作りは子育てのようなもの”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#41
▲写真左から柳原隆幸氏。シシララ代表・安藤武博氏

折り紙で、折る回数や柄に着目した人はいなかった

★柳原氏:
(制作のモチベーションについて)さっきもいったとおり、子育てに近い感じなんですね。
もともと、個人制作者になる前から、基本的に作る側にいよう、ずっと作り続けようという思いがありました。
その上で僕が形にしないと、どうもこのアイディアは周りから出てこないぞ、というのがあって。
何かミームを残すような感じでしょうか。
逆に誰かが作ってくれれば、それを遊べば良いだけなので、自分としても楽なんですが。

★安藤氏:
それで『トルクル(TorqueL)』が出て、その次が『いろかたおりがみ』(2016年、FullPowerSideAttack.com、アナログゲーム)になるわけですね。
いきなりアナログゲームに跳ばれている。
たしかに、他からは出てこない製品かもしれませんね。

★柳原氏:
ゲームマーケットで頒布するためにパッケージ版を出して、次にウェブでも自由に遊べるようにして、最後に解説本を作りました。

★安藤氏:
対象年齢が6歳からと書かれているのがすごく印象的でした。
子供と一緒に遊ばれながら作られたものなんですか? 
それとも作られた後で、子供でも遊べると思われたんですか?

★柳原氏:
後者ですね。
もともと『いろかたおりがみ』は、一人でも遊べるものというコンセプトで作りました。
アナログゲームはおもしろいですが、遊ぶ時に人数が必要なるのが面倒だなと。
よくホテルなどで『タングラム』というパズルゲームが部屋の引き出しに入ってたりしますよね。
あのイメージです。

★安藤氏:
ああ、なるほど。

★柳原氏:
対象年齢については、最初にアナログゲームを作るにあたって、どういった情報がパッケージに必要か調べたところ、たいてい対象年齢が記されていたからですね。

★安藤氏:
ちょっとやってみていいですか?
そもそも、いったいどんなものなのか・・・ルールに沿って折り紙をしていくんだろうなとは思いますが・・・。

★柳原氏:
元の折り紙を折っていきながら、カードに印刷された形を作っていく遊びです。
折り紙には模様が印刷されていて、その模様もあわせる必要があります。
お題ごとに折る回数が決められているのがミソです。
お題は全部で45種類作りました。

★安藤氏:
これ、言い方は乱暴ですが、めっちゃいい暇つぶしになりますね!
詰め将棋のお題を作っていくような感じなので、けっこう問題制作に苦労されませんでしたか?

★柳原氏:
いえいえ、問題を作るのは簡単なんですよ。
一回折って形を作って、そこから順に開いていけば良いだけなので。

★安藤氏:
最初の図柄を決めるのも一種のゲームデザインですよね。
どのように作ったんですか?

★柳原氏:
わりと経験則ですね。
最初は無彩色の折り紙に番号をふるみたいなところからはじめて、なんとなく4色だなとわかってきて、だんだんシンプルになっていきました。
折り紙の折り方の研究をしている人もいるんですが、まったくそういうのとは関係なく、自分で折っていきながら、一番バランスがいい形におさめた感じです。

★安藤氏:
それまでデジタルゲームを作られていて、いきなりアナログゲームを作られることに、迷いみたいなものはなかったんですか?

★柳原氏:
そこが「ゼロベースで考える」という部分です。
『BREAKS LP』を作って、もっとカメラを引いていって、『TorqueL』になりました。
次はもっとカメラを引いていって、デジタルゲームの枠も取っ払って、玩具か否かというところまで引いていって、『いろかたおりがみ』になりました。
最初に決めたのが「折り紙を折る」「回数を決める」という2つのルールです。
そのうえで紙をCGで表現するかと言われたら、けっこうめんどくさかったんです。

★安藤氏:
「折る」というのは、まさにデジタルゲームが苦手なところですね。

★柳原氏:
3DCGを少しかじっていたので、技術的にも少し厳しいことがわかっていました。
よしんば実現できたとしても、わざわざデジタルでやる意味を感じなかったので、アナログでいいやと。

★安藤氏:
冊子にも「折る回数がそれほど着目されていない点が気になっていた」と書かれていますね。

★柳原氏:
スペースが余ったので、載せてみました。
先ほどいった「多角的に見る」という話と、ちょっと重なる点なんですが、折り紙で折る回数はそんなに言わないなあと。
あと、なんで折り紙に柄がついていないんだと。
柄がついている方がわかりやすいじゃないですか。

★安藤氏:
たしかに。

★柳原氏:
いろいろ調べると、特許の絡みとかが出てくるんですが。
そのへんの話が「俺が作らないと誰もつくらないよなあ」という話につながっていくわけですね。

★安藤氏:
さっきからお話を聞きつつ、考えていて、今ようやくクリアできました!
回数が2回と指定されていたので、意外と簡単かなと思ったら、難しかったです。
だからこそ、できたら気持ちいいですね。
これ「競う」ことができるんですか?

★柳原氏:
とりあえず一人でも遊べで、みんなで一斉に遊んで順位を競うとか、工夫すればみんなでも遊べますよと。

★安藤氏:
飲み会に持っていって、できなかったら罰ゲームという感じで、遊ぶと楽しい。
そういう余地がすごくありますね。

★柳原氏:
公式の設定などはつけない感じで、いろいろ考えていただければと。

★安藤氏:
それが先ほど言われていた「跳ねる」という要素の一つになっているんだなあ。
子供と遊ぶと、こちらが驚かされそう。

★柳原氏:
ゲームマーケットとかだと、親子連れが多いんですよ。
親御さんとお子さんで一緒にやると、お子さんの方が得意だったりしますね。

★安藤氏:
回数が2回と指定されて、ずっと折り紙を見ながら考えていました。
子供だったら躊躇せずに、ガンガンと折ってきそうですね。
我ながら「大人になったなあ」というか、老いを感じました(笑)。
たぶん、指定された回数より少ない回数でできちゃったりもしますよね。

★柳原氏:
そこがヒントでもあり、縛りにもなっています。
ちゃんと回数ぴったりに完成させないと駄目だよと。

アナログパズルゲーム『いろかたおりがみ』

 『いろかたおりがみ』は、お題にある図の色と形に指定された回数で折るための折り方を探す、1人から遊べるアナログパズルゲームです。


▽『いろかたおりがみ』公式HP
http://www.irokata.net/

■『いろかたおりがみ』紹介動画

柳原氏が語る映画「シン・ゴジラ」

★安藤氏:
前の2作品にも共通していますが、国籍、文化、宗教、まったく関係なく遊べるものですね。
けん玉などと同じで、ローカライズの必要性が全くない。
それは意識されていますか? 
それともミニマムなものを追求すると、自然にそうなるんですか?

★柳原氏:
開発環境の都合もあるんですよね。
『BREAKS LP』はUnityで作りましたが、当時は日本語入力がエディタ上でうまくできなくて。
全部英語で書いたらこうなったという。
『TorqueL』もストーリーがそんなにないので、メニューも全部英語にしました。

★安藤氏:
折り紙は日本独自の文化だといわれますが、海外の反響はどうですか?

★柳原氏:
折り紙を知っているか否かだと、半々ですかね。

★安藤氏:
折って何かを作りあげるのは、海外の人からすると、かなり新しい体験では? 
日本人の僕ですら、『いろかたおりがみ』の体験は新しかったです。

★柳原氏:
折り紙を知っている人なら、それをベースにしたものだと説明できますし、なるほどということになります。
形を作るというよりも、もっとシュリンクして、平面で作るという感じですね。
BitSummitの後くらいに、遊び方をフランス語に翻訳したいという方から連絡がありました。

★安藤氏:
基本はウェブでみて、落として、自分でやれと。

★柳原氏:
ウェブ上で折り紙を印刷できるpdfにして。カードやルールも全部公開しているので、基本無料で遊べます。

★安藤氏:
遊べば遊ぶほど折り目がついて遊びやすくなりますよね。

★柳原氏:
そうですね。最初に折り目をつけると、遊びやすくなりますね。
それは各自でやってくださいと。

★安藤氏:
パッケージを作る上で難しかったり、楽しかったりしたことはありますか?

★柳原氏:
印刷と製造を業者さんにお願いしたんですが、立体の感じがつかみにくかったことですね。
いま見るともう少し修正した方が良かったところはあります。
プロダクトデザインは、漫画家をやっている後輩にお願いしました。

★安藤氏:
プロダクトデザインも印象的です。
『BREAKS LP』『TorqueL』『いろかたおりがみ』と、完全に記号だった世界が、次第に具象的になっていく。

★柳原氏:
アナログゲームの市場を見ていく中で、パッケージにイラストがあった方が良いだろうなあというのは、ぼんやりと考えていました。
ただ、あまりにもキャラクターを強調しすぎるとゲームとして違うというのもあって。
最終的にお願いした人は大学の後輩なので、そこは勝手知ったるなんとかで。
「こういうものをつくりたい」とお願いして、イメージについて話あって、最終的にああいった形になりました。

★安藤氏:
お手本というか、答えが全部明示された冊子を作られた狙いは何でしたか? 
そういったモノがないパズルゲームもありますが・・・。

★柳原氏:
それは、どうやって折るんですか? 解答集が欲しいです、と結構言われたからですね。

★安藤氏:
ああ、そうなんだ。

★柳原氏:
あとは本の作り方というか、こういう感じで作れば、なんとなく収まりが良いなあと言うのがボンヤリと見えたというのもあります。
だけど、あんまりコストはかけたくなくので、フォトブックのサービスを使って作っているんですよ。
サービスの仕様を応用することでフルカラーで安価に、冊子として違和感のない形にできました。

★安藤氏:
冊子があることで、また遊び方も広がりますもんね。
答えがわからなくて、本当に折れるのかとモヤモヤするよりは、あった方が良いという場合もあります。
それに「この手順以外で回答できる場合があります」と明示されているところが良いですね。

★柳原氏:
パッケージ版は300個作って、もう売り切ってしまって、あとは冊子だけになりました。

★安藤氏:
ダウンロードのされ方はどんな感じですか? 

★柳原氏:
専用のおり紙が作れるフライヤーをイベントで配布していることもあって細かくは把握していないですね。
アクセス数自体は見えているんですが、そんなに多いわけではないと思います。

★安藤氏:
『いろかたおりがみ』は、ゲームをこれからデザインしたいなあという人に対して、いいサンプルを提示されていますね。
一番最初のプロトタイプなんて、紙と色鉛筆があったらできちゃいますし。

★柳原氏:
もっと目を細かくするとか、やろうとすればできるんでしょうが、これくらい人間の認識力の限界かなという気がしますね。

★安藤氏:
今までの流れで言うと、柳原さんの中では『いろかたおりがみ』も“おしまい”なわけですよね。

★柳原氏:
そうですね。
ウェブサイトはおいておきますし、イベントに出れば何かいうかもしれませんが。

★安藤氏:
いまは新作を作り始めているんですか?

★柳原氏:
いや、実は全然つくってないんですよ。
最近だとVRの話もあったので、いくつかネタを考えたりもしましたが、一人で作れないないものも多くて。
とりあえずメモだけしておいて、寝かしているものが多いですね。
たとえばVRでいえば、野球のキャッチャーがやりたいなあというアイディアがあって。

★安藤氏:
そのアイディアは僕も聞いたことがあります。
日ハムの大谷翔平投手の球がキャッチングできるVRとか。

★柳原氏:
でも、そういったコンテンツは野球ゲームの開発が得意な、大手ゲーム会社が作った方が絶対にいいものができるじゃないですか。

★安藤氏:
たしかに。

★柳原氏:
あと、『TorqueL』のWiiU版をリリースする予定が進行中で、モノとしてはほぼ完成していて、次はCERO審査を通さないと、という段階です。
だから今は取り立てて自分が作りたいネタがないので、インプットを増やそうかなと思って。
映画を見たり、イベントに行ったりというのも、そのひとつです。
最近だと映画「シン・ゴジラ」を何回も見に行ったりとか。

★安藤氏:
なんで「シン・ゴジラ」なんですか? 
それ自身が新しい経験だったということですか?

★柳原氏:
まあ、そうですね。
そもそも、これまで映画ってあまり見に行くことがなくて。
ちょっと暇が増えたので、意識して見に行こうかなと。

★安藤氏:
諦観している柳原さんが「シン・ゴジラ」をどんなふうに見ているのか、ちょっと興味がありますね。
僕も2回みたんですが、前のめりで見るタイプの映画だと思うんです。
画面を見ながらぶつぶつ言ったり、終わった後で拍手したり、みんな能動的に見ている感じがしました。
柳原さんとは真逆かなと思ったんです。

★柳原氏:
なんでしょうね・・・最初に見に行った時は「好き勝手やってるのに、おもしろいのはずるいなあ」と思いました。

★安藤氏:
ずるいなあと思うこともあるんですね。
良いなあと言うか。

★柳原氏:
当然、総監督の庵野秀明さんとかの実力があって、ああなっているんですが、ああやられちゃったらみんな、立つ瀬がないというか。

★安藤氏:
何をやってもいい、どれだけ人やお金をつかってもいいという話があったら、何か作ってみたいものはありますか?


(以下次回)

『トルクル(TorqueL) 』Wii U版リリース

 対談にも話題に上った『トルクル(TorqueL) 』のWii U版が2016年11月9日(水)にリリースされました。

■『トルクル(TorqueL)』Wii U紹介映像

■『トルクル(TorqueL) 』
対応機種:Wii U
ジャンル:2D回転アクションゲーム
開発・販売: FullPowersideAttack.com
リリース日:2016年11月9日(水)
販売価格:1,000円(税込) ※ニンテンドーeショップ ダウンロード専用
プレイ人数: 1人
CEROレーティング: A(全年齢対象)


▽任天堂ウェブサイトソフト紹介ページ
https://www.nintendo.co.jp/titles/20010000023691


著作権表記:
Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014 sanodg [Nobuyoshi Sano]
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■安藤武博 関連リンク
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ジャンル アクション / 思考・知略
リリース日 2015年01月23日 (【PC】)
2014年12月24日 (【TVゲーム】PS4)
2016年11月09日 (【TVゲーム】Wii U)
価格 有料ダウンロード
コピーライト Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014
公式コミュ
PRサイト http://www.torquel.net/
 

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