「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”非線形的に跳ねるアイディアが重要”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#40

記事カテゴリ: PCゲーム
2016年10月31日

 『BREAKS LP』『トルクル(TorqueL)』『いろかたおりがみ』と、ジャンルを超えて作品を発表してきた”なんも”こと柳原隆幸氏。
 共通しているのは「ゲームの大部分を一人で作る」という制作姿勢だ。
 もっとも、どのようなゲームでも良いというわけではない。
 「非線形的に跳ねる」ための、核となるゲーム作りが心情だ。
 そこには「身の丈にあったゲーム作り」という考え方がある。

 一方でプロデューサーとして、数々のゲーム制作に携わってきた安藤武博氏。
 これまで心がけてきたのは、さまざまな人を巻き込んで、ゲームを「身の丈以上」の存在にしていくことだ。
 同じゲーム作りと言っても、まったく逆のアプローチをとってきた二人。
 柳原氏の「身の丈にあったゲーム作り」という考え方は、どこから来たのか。
 北海道出身だという柳原氏の少年時代のエピソードもふまえて、話は進展していった。

「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”非線形的に跳ねるアイディアが重要”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#40
▲写真左から柳原隆幸氏。シシララ代表・安藤武博氏

漫画における原作者の立ち位置が理想

★柳原氏:
(ゲームの趣向について)昔から音ゲーをわりとやってましたが、とにかくゲームって「新しい体験」をさせてくれるものなので、そこの1点ですね。
続編だろうがなんだろうが、新しい体験をさせてくれるものであれば、なんでもウェルカムという。

★安藤氏:
明快ですね。
作られるものもすべて新しい体験が提供できるかというところに結実されているわけですね。

★柳原氏:
ほぼほぼ、そうですね。
そういう意味でもジャンルとか、あまり気にせずに。
よく他人には「ゼロベースで考える」と説明しています。
皆さんも同じように言われると思うんですが、僕は人と違うゼロからやっているのか、いきなりアナログゲームに行ったりしちゃうんです。

★安藤氏:
ちなみに『TorqueL』はなぜ『TorqueL』というタイトルなんですか? オノマトペ的ですよね。

★柳原氏:
ものすごく適当ですよ。回るからTorque(=トルク)。あとはL字にできるからLをつけとくかという。プロジェクトネーム的なんですよ。読み方とかは全然気にしてませんでした。

★安藤氏:
ロゴデザインとかドットとかもご自身ですか?

★柳原氏:
そうですね。

★安藤氏:
『TorqueL』はスマッシュヒットして、第17回文化庁メディア芸術祭エンタテインメント部門で新人賞を受賞されるなど、高く評価されましたよね。
『BREAKS LP』と違って難しかったこととか、苦労したところはありますか? 
パズルゲームなので、ステージデザインが大変だったんじゃないかなあと思うんですが・・・。

★柳原氏:
ステージデザインもそうですが、より苦労したのは導入部分でした。
四角い箱から足をにょきにょき延ばしてステージを進んでいく内容で、操作方法が特殊なので、そこをどうステージデザインでわからせていくかがポイントでした。
そのうえで、ガチャガチャ遊んでいてもクリアできちゃうようにして、とはいえガチャプレイに頼りすぎると、後から苦労するバランスにしよう・・・。
そんな感じでしたね。

★安藤氏:
もともとこういった、ルールドリブンみたいなゲームは考えられていたんですか?

★柳原氏:
あるアイディアに対して、ヒューマンリソースを突っ込んでいったときに、どれだけ「跳ねるか」が重要だと思っているんです。
たとえば『龍が如く』(2005年、セガゲームス、PS2)というゲームがあって、神室町をいろいろ探索できますよね。
その時にビル1個では街にならないけど、たくさんビルを増やせば、ある時点から街になって、楽しめるようになるじゃないですか。

★安藤氏:
そうですね。

★柳原氏:
ビルを何個作ればおもしろくなるかという指針があるわけじゃない。
そうはいっても、確実におもしろくなるだろうと。
その時も、だんだんおもしろくなるわけじゃなくて、ある時に突然、ぐぐーんとおもしろくなると思うんですよね。
そんな風に「非線形的な跳ね方」をするようなアイディアというのがすごく重要だと思うんです。

★安藤氏:
「非線形的な跳ね方」ですか・・・なるほど。

★柳原氏:
2倍の労力をかけたら、2倍おもしろくなるだけでは、1人でやっていると、他のゲームに絶対に勝てないんですよ。

★安藤氏:
セガ時代からずっとそんなことを考えられていたんですね。
だから個人制作者になっても、そういう「跳ね方」ができるアイディアが重要だと思えた。
それはおもしろいですね。
ゲームはほとんど人月ですからね。

★柳原氏:
漫画でいう原作者みたいな立ち位置が、たぶん理想だと思うんです。
『TorqueL』もBGMと一部のSEを佐野さんにお願いした以外は一人で作りましたが、あれを原作にして、絵をリッチにしたりとか、ストーリーを足したりとか、まあできるよねと。

★安藤氏:
できますよね。
『TorqueL』で印象的なのは、足長おじさんのようなキャラクターが少女の手を引っ張っているという、このロゴです。
『BREAKS LP』にはなかった、キャラクター設定だとか、キャラクターにもとづく世界設定が感じられる。
これをリッチにしていくと、『ICO』(2001年、PS2、SIE)みたいな雰囲気になるかもしれない。
この有無でゲームがすごく変わる気がします。

★柳原氏:
実は人型キャラクターを入れると、プレイヤーに箱の上下左右が示せるのですごくゲームがわかりやすくなったんです。
そういう意味では、リッチにするための要素は、『TorqueL』ではほとんど入れていないんですよ。

★安藤氏:
そこも含めて考えた上での、ゲームとして一番ソリッドな、最小単位な感じなんですね。

★柳原氏:
そうですね。
一番ミニマルな形でやって、支援がなかったとしても、こういう形になりますという。

★安藤氏:
今までの話を伺っていると、途中で梯子を外されても大丈夫な状態を保たれていますね。
たとえ一人でもゲームを作れるからねという。
何者にも頼らない強さは、「前向きな絶望感」すら感じますね。
良い意味でのシニカルさになっていて、すごい特徴的だと思います。

★柳原氏:
よく自分のことなのに、他人事みたいな感じで説明しちゃうんです。
諦観しているというか、厭世的というか。

★安藤氏:
諦観とはいい言葉ですね。
厭世的というと、烏瞰カメラ視点になりますね。

★柳原氏:
子供の頃の一時期、思ったような評価が得られない状況が続いて、いつからか、自然に自分自身と作品とを、ぷつんと分けて考えるようになりました。

★安藤氏:
子供の頃からそんな感じなんですね。
インディゲーム開発者は、けっきょくゲームを作っている人たちなので、あんまりこういう話は出てこないんですが、そもそもゲームが作れない、作らない言い訳として、「一人では作れない」「人がいないとスケールしない」というのがあります。

★柳原氏:
そうですね。

★安藤氏:
柳原さんはそれに対して、「いや、できるけどな」って。ずーっと言っているような感じがして、それがすごくおもしろいですね。
みんなが色々と言っているようななことを、冷静にアイディアで解決していくような雰囲気というのが、とてもユニークで個性的です。
それが諦観みたいな領域までとぎすまされているところが、すごくいいんです。

『トルクル(TorqueL)』 [Win32パッケージ変換版] リリース

[編集部注※]
 柳原さんの『トルクル(TorqueL)』が「Win32パッケージ変換版」として2016年10月21日(金)にリリースされました。
 Windows版Windowsストアで手にいてることができます。
 『トルクル(TorqueL)』はキャラクターが入ったハコを転がしたり、伸ばしたりして進む。ちょっとふしぎな2D回転アクションゲームです。
 ただ転がるだけ、伸ばすだけでは越えられないところも、ハコを伸ばしたまま転がることで、ジャンプで乗り越えたり、飛び越えたりすることができます。
 プレイヤーはハコを操作してそれぞれのステージ(Chamber)のゴールまで移動させることでゲームを進めます。

■『トルクル(TorqueL)』 [Win32パッケージ変換版]
対応デバイス:PC
対応OS:Windows 10 バージョン1607 (build 14393) 以降
ジャンル:2D回転アクションゲーム (ストア内ジャンル: プラットフォーマー)
開発・販売: FullPowersideAttack.com
販売価格:1000円(税込)
プレイヤー:1人
BGM作曲:佐野電磁/sanodg

▽ストアページ
https://www.microsoft.com/store/apps/9nblggh4xzwh

実家が酪農家で、周りには何もなかった

★柳原氏:
自分のゲームを出したいというよりは、このアイディアはどうやら、俺が形にしないと誰も出さないらしいぞ、というところから作っている感じですね。
ゲームやアイディア自体に人格はありませんが、僕は勝手にそこに対して擬似的な人格を付与していて、子育てみたいな感情で作っているんですよね。

★安藤氏:
厭世的であるとか、諦観しているというのは、神様目線のカメラ視点が備わっているということだから、一人の人格の中に二つのカメラがあるようなものですよね。
それが子育てみたいな感じにつながっていくんでしょうね。

★柳原氏:
自分ごとではないので、かなりやれている部分もあります。
自分自身のことだったら、こんなにめんどくさいことはやってないですよ。

★安藤氏:
そうしたカメラを持っている人に、たまに会うんですが、その状態が嫌な人の方が多いと思います。
この対談にも出てくれた、『エアシップQ』プロデューサのカトタクこと、加藤拓さんがまさにそんな話をしてくれました。
すべてが画面の中の出来事のように見えてしまうことがあるんだとか。
柳原さんはどうでした?

★柳原氏:
アイディアを考える時に、多角的視点で見るみたいな言葉があるじゃないですか。
僕にとっては一つのことでも、常に頭の中で立体的に見えているんです。
昔はいやでしたけどね。
最近はもう、なるようにしかならないと。

★安藤氏:
一流のアスリートが持っていると言われている視点ですね。
サッカー選手でもゾーンに入ると、サッカーグラウンドを上空から見下ろすようなイメージをもちながら、主観視点でプレイするようなことができると言われていますが。

★柳原氏:
『TorqueL』の場合でいえば、最初は「箱が綺麗に転がる」しかなかったんですよ。
そこに箱の4辺が伸びたり、縮んだりというアイディアが加わりました。
同じくセンスオブワンダーナイト2011に出展されていた、『Incredipede』というゲームに影響を受けた部分もあります。
そのゲームは目玉型のキャラクターに足が生えて、どんどんステージを歩いて攻略しちゃうというアクションパズルでした。
それを箱の形に転用したのは、自分のアイディアです。

★安藤氏:
興味深いですね。
ゲームって普通のもの作りに比べると、おそるべき伏線が張られていることが多くて、同時にいろんなことを考える必要がある、知的生産労働の中でもっとも複雑なものだと思うんです。
そういう力は、どうやって養われたんですか? 
音楽の世界でも、歌詞と曲が同時に降りてくる人がいます。
ゲームの場合はもっと、いろんな要素がありますよね。

★柳原氏:
先ほど北海道出身といいましたが、北海道の中でも道東の端なんですよ。
周りにはなにもなくて。
実家も酪農家で、何もコンピュータと関係なかったんです。

★安藤氏:
通常の家庭とはそもそも広さの感覚が違うわけですね。
それこそ、ヘクタール単位とか。

★柳原氏:
牧草地もありましたし。

★安藤氏:
空間の捉え方が普通の子供とは違うかもしれない。

★柳原氏:
そうかもしれないですね。
家に帰っても何もすることがなくて、子供の頃はインターネットもなくて。
コミック誌「コロコロコミック」をすり切れるまで読むとか、数少ない買ってもらったゲームを何周も遊ぶとか、それくらいしかなかったですね。
周囲から入ってくる情報量が圧倒的に少ないので、その中でどうおもしろがれるか、みたいなことは延々とやっていた気がします。

★安藤氏:
地方は都会と比べると情報が少ない傾向にあるので、そういうことはありますよね。
Cygamesの社長である渡邊耕一さんと、酒の席でそうした話になるんです。
渡邊さんはゲームのやり込み度合いが半端じゃない。
なんでそんなにやっているのか、突き詰めて聞いていくと、地方は都会と比べるとやることもゲームの供給量も少ないという説です。したがって一本あたりの密度が濃くなる。

★柳原氏:
もっとも自分自身では、ゲームをクリアしたか否かは、あまり気にしていなくて。
楽しい時間をありがとうくらいですね。

★安藤氏:
さっきも「新しい体験があるか否かでしか見ていない」と言われていましたよね。
その切り口も独特だと思います。

★柳原氏:
そうですね。
クリアしたものもありますが、途中でほおってしまったゲームもありますし。
RPGとかで、ルーチンワークだとわかった瞬間に止めちゃうとか。
自分だったらこうするとか、こうしたいとかは、けっこう考えていました。
ただ、その時は開発機材がないから何もできないんですよね。

★安藤氏:
そういうときに脳みその中とか、紙と鉛筆で多角的にデザインされていたわけですね。

★柳原氏:
そうですね。
こことこう組み合わせれば、ああなるんじゃないかとか。
けっこう考えていたと思います。

★安藤氏:
新しい体験を与えてくれたか否かということで、すごく印象に残っているゲームってありますか? もはやファミコンの登場自体がスゴかったとか、作品じゃない気もしてきましたけど。

★柳原氏:
そういう意味では、新しい感覚を得る体験というのが、ほとんどゲームだけだったんですよ。
映画館も地元にはなかったし。
もちろんテレビはありましたが。

★安藤氏:
ゲームしかなかったというのは、ゲームソフトを買えば新しい体験ができたという意味ですか?

★柳原氏:
そうですね。
基本的に新しい感覚はゲームから得られるという認識でした。

★安藤氏:
話を『TorqueL』に戻すと、反響はいかがでしたか? 
『BREAKS LP』よりもたくさんの人に遊んでもらえたと思いますし。
マス向けのゲームってこれが初めてのようにお見受けしたんですが?

★柳原氏:
そうですね・・・こんなものかなというのがあって。

★安藤氏:
そこでも諦観ですね、こんなものという。

★柳原氏:
出た結果に対して、感情的にどうこういう意味があまり見いだせなくて。
こういう結果が出たら、じゃあ次にどうしようかというのを考えるべきで。
個々の結果に対しては、あまり感情が動かないんですよね。

★安藤氏:
いわゆる、誰よりもたくさん生産して、流通させて、消費するという、資本主義的な考え方とはまったく一線を画しているので、そもそも商業ベースでゲームを作る人ではないですよね。

★柳原氏:
まあ、その流れの中でお金がもらえて、生活ができたらありがたいなあ・・・というのはあるんですけど。

★安藤氏:
そういう考え方でモノ作りをしていると、じゃあ次はこんなものを作ったらどうなるのかな、という発想になっていくので、作るモノに対してもバリエーションが出てくるんですかね?

★柳原氏:
そうですね。
『BREAKS LP』も出した段階で当時できることはやりきっているので。新しいアイデア無しで、ただの延長線上だと興味がないですね。
続編を出さないんですか、とは言われるんですが『トルクル(TorqueL)』もその当時できる範囲でやりきってしまっているんですよね。

★安藤氏:
『TorqueL』はすごく続編を期待されませんか?

★柳原氏:
権利周りをきちんとした上で他に作りたいという人がいれば止めません。

★安藤氏:
僕は商業ベースで、ここに肉付けをしていく仕事なので、真逆の仕事をしているわけですが、やっぱり自分の中では「続編は出さない」と決めているものがありますね。
そういったゲームは、いわば一発芸で終わってしまっているので。
でもファンがついたということではありますよね。

★柳原氏:
続編を期待されるのはありがたいんですが、個人でやる以上はモチベーションが上がらないと難しいですね。

★安藤氏:
そんな厭世的で諦観されている柳原さんの制作のモチベーションって何なんですか?


(以下次回)

■安藤武博 関連リンク
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ジャンル アクション / 思考・知略
リリース日 2015年01月23日 (【PC】)
2014年12月24日 (【TVゲーム】PS4)
2016年11月09日 (【TVゲーム】Wii U)
価格 有料ダウンロード
コピーライト Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014
公式コミュ
PRサイト http://www.torquel.net/
 

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