「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”フルパワーで、サイドからアタックする”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#39

記事カテゴリ: PSVita PS4 PCゲーム
2016年10月14日

 スクウェア・エニックスで数々のヒットタイトルをプロデュースし、2015年に独立してシシララを設立。
 現在はゲームのプロデュースを続けつつ、毎週月曜日にニコ生「ゲームDJ・安藤武博の、つくった人がゲーム実況」を配信している安藤武博氏。
 本連載はそんな安藤氏が気になるインディークリエイターを直撃し、普段聞けないいろいろなことをズバリ聞いてみようという内容だ。

 今回のゲストは2Dアクションゲーム『トルクル(TorqueL)』で文化庁メディア芸術祭第17回エンタテインメント部門新人賞を受賞するなど、彗星のようにゲーム業界に現れた”なんも”こと柳原隆幸氏。
 個人サークル「FullPowerSideAttack.com」で活動しており、クリエイティブの範囲もデジタルからアナログゲームまで幅広い。
 ゲームの大半を一人で創り上げるという、インディゲーム開発者の中でもユニークな存在だ。
 クリエイティブの原点とは何か、安藤氏からの問いかけが始まった。

■『トルクル(TorqueL)』PV

業務の合間に開発し、センスオブワンダーナイトに出展

★安藤武博氏(以下安藤氏):
実は昨日の夜中におもしろいことがあったんですよ。
毎週月曜日にゲームの開発者をお招きして、「つくった人がゲーム実況」という番組をやっているんですが、そこでパズルゲームの『Brain Dots』(2014年、トランスリミット、スマートフォン)をとりあげるにあたり、ある女優の方にゲストに来ていただく相談をしていたんです。

★柳原隆幸氏(以下柳原氏):
はいはい。

★安藤氏:
そうしたら、その方がゲームの説明を聞いていきなり、「『TorqueL』(トルクル、2013年、FullPowerSideAttack.com、PC・PS4・PS Vita)みたいなゲームですね」と言われたんですね。
まさに今日、『TorqueL』を作った人と対談をすることになっていたので、めっちゃ奇遇だなあと。
何百万もあるゲームの中から、わざわざ『TorqueL』というゲーム名が出てきたところに、奇妙な縁を感じました。

★柳原氏:
ありがたいですね。

★安藤氏:
よく聞かれると思うんですが、柳原さんは「なんも」というペンネームというか、屋号みたいな形で活動されていますよね。
どういう意味なんですか?

★柳原氏:
もともと北海道出身なんですよ。
「なんも」も北海道の方言で、「なんでもない」という意味です。
だから、これを聞いて意味がわかる人は北海道民だという。

★安藤氏:
なるほど。

★柳原氏:
本名だと思われる方も多くて。
南雲さんですか? みたいな。
いえいえ、違いますと。

★安藤氏:
もうひとつ、「FullPowerSideAttack.com」というブランド名の由来についても、同じ流れで聞いて良いですか?
けっこう攻撃的な名前なので、バリバリのシューティングゲームみたいなのがお得意なのかなと思ったら、まったく違いますよね(笑)

★柳原氏:
座右の銘ではありませんが、正面からやると大変なことでも、側面や背面からなら、何とかなるだろうと思っているんです。
ただ背面から攻撃すると、危険なので、側面に回って、ちょっと相手から見えるくらいの立ち位置で、ガツンとやろうみたいな。

★安藤氏:
それで、フルパワーで、サイドから、アタックするぞという。

★柳原氏:
そうですね。
それで何かチーム名みたいなものが必要な時は、ずっと「FullPowerSideAttack.com」という名称を使っています。
コミケなどでもサークル名にしていますね。

「FullPowerSideAttack.com」柳原隆幸”フルパワーで、サイドからアタックする”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#39
▲写真左から、柳原隆幸氏、シシララ代表安藤武博氏

★安藤氏:
もともと、どういうプロフィールなんですか?

★柳原氏:
もともと、2009年に大学院を卒業してセガに入ったんです。
学生時代からミニゲーム程度のものは作っていて、ネットワークの管理も一通りやっていました。
純粋なゲーム開発者ではなくて、ネットワークエンジニアとしてなら、潜り込めるだろうと。
実は進路を決めたのがけっこう遅かったんですよね。
道内で就職活動をしていても、あんまりパッとしなくて。
ゴールデンウィーク中に「いっちょゲーム業界も狙ってみるか」と思って、上京して集中的に就活しました。
そうしたらセガに内定をいただけまして。

★安藤氏:
それでネットワークエンジニアになられた。

★柳原氏:
すでに、ある程度ゲームを作る技術もあったので、ネットワークエンジニアをやりつつ、空いた時間にゲームを作ってもいいと上司から言ってもらえたんです。
まだネットワークエンジニアむけの新人育成カリキュラムがなかったころで。
ゲームプログラマー向けの新人研修をやったので、企画のまねごとみたいなものもやりました。

★安藤氏:
2009年ごろは、まだそんな感じだったんですね。

★柳原氏:
ただ、僕が書いていた企画書って、ある程度自分でも作れるものだったんですよ。
ゲームのロジックはこうで、これとこれとこれを組み合わせて作って、でももっと豪華にするんだったら、アーティストさんをたくさん入れて・・・という感じの内容です。

★安藤氏:
自己完結した感じの企画書だったんですね。

★柳原氏:
そうですね。
新人研修の報告書と一緒に上司に提出したら、「これ、実はあなた実際に作れるでしょ」みたいになって。
だったら空いた時間に作ってもいいよという話になり、ずっと作ってしました。
だいたい2009年から2012年あたりまです。

★安藤氏:
そうなんですね。

★柳原氏:
ただ、作っていても発表の場がなかったんですよ。
かりに社内コンペみたいなものがあって、職種関係なく一同に企画を提出できて・・・みたいな機会があれば、また違ったんでしょうが。
せっかく作っているのに何も出せないんだったら、困ったなあと。

★安藤氏:
こんなにアウトプットをたくさんされる方だったら、なおさらですね。
作れても世に問えないというのは、かなりのストレスだったでしょう。

★柳原氏:
それで、2011年にむりやり発表しようと、CEDECのインタラクティブセッションと、東京ゲームショウのセンスオブワンダーナイトにセガ社員としてエントリーしたんです。

★安藤氏:
どうでした?

★柳原氏:
CEDECでは、「Flashによる Android及びiOS 向け出力を用いた新規ゲームプロトタイプ作成の一例」というセッション名で出展しました。(http://cedec.cesa.or.jp/2011/program/poster/C11_P0075.html
タイトル通り、Flashで作ったアプリをスマホ向けに出力できるという技術デモで、ツールのサンプルとしてゲームのデモも行いました。
ただ、そういう趣旨だったので、ゲームそのものの評価は得られませんでした。

★安藤氏:
センスオブワンダーナイトではどうでしたか?

★柳原氏:
『Taplib (仮称)』というリズム&パズルアクションゲームを出展しました。(http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2011/business/sown/presentation.html
「経路探索ブロックパズル」というキーワードで、スマホの画面上のブロックをタップしながら、音楽が自動生成されていくような内容です。
ただ、そこから何かビジネス的に広がっていくことはありませんでした。

★安藤氏:
そうだったんですか。

「業務時間内に作る」という甘えを封印した

★柳原氏:
それまでも『無限回廊 光と影の箱』(2010年、PS3、SIE)や『Antichamber』(2013年、PC、Demruth)のプロトタイプ版が発表されたりと、センスオブワンダーナイトからビジネスにつながった例も、なくはなかったんですが。
とりあえず『Taplib (仮称)』については、特に何も声がかからず。
はてさて、どうしてくれようかと。
悶々としながらゲームを作り続けて。

★安藤氏:
業務を時間内にちゃんと終わらせて、空き時間に自分のゲームを作っている人って、たまにいらっしゃいますよね。
前職にもいたなあ。

★柳原氏:
ただ、そこに甘えてしまっている自分もいたんですよ。
どうせ「出せないんでしょ」と。
それで、もう1年セガに勤めることにして、社内の時間を使うのではなく、すべて自宅で開発することにしました。
そのころから個人制作者としての活動が始まった感じです。

★安藤氏:
よく自分で気づかれましたね。
実際、商品は売ってナンボだと思います。
すでにアウトプットのイメージがあったんですか? 
今だとコミケ以外にも、Steamだとか、いろんなやり方がありますが。

★柳原氏:
当時もインディゲームが云々という話はあったので、インディゲームクリエイターなのか、同人ゲームとしてコミケで出るのか、いろいろ調べたんですよ。
でも、当時の認識で言うと、どっちもぶっちゃけ大して変わらないと。
実際、ルール的にコンフリクトするものって、あんまりないんですよ。
だからコミケも出るし、IGFにも出すし、国内のコンペにも、全部出すと。

★安藤氏:
なるほど、わかりやすいですね。
そうして、はじめて出したゲームが・・・

★柳原氏:
『BREAKS LP』(2012年、PC、FullPowerSideAttack.com)ですね。

■[C85] BREAKS LP for Windowsプロモーションビデオ (フル)

★安藤氏:
尖ってますね!
なんていうのかな・・・俺もこういう洒落た感じというか、尖った感じのゲームを志して作っていた時期もあったんですが、ここから「折り紙」への振れ幅がすごいなと。
いってみれば水口哲也さんが作りそうなゲームじゃないですか。
佐野電磁さんも楽曲を提供されています。

★柳原氏:
良く言われますね。

★安藤氏:
どっちかというとゲームというよりは楽器に近い感じですよね?

★柳原氏:
もともとセンスオブワンダーナイトに出展した『Taplib (仮称)』も、パズルをといていくと演奏になるというコンセプトでした。
ただ、パズルと演奏がすごく離れていたので、少し厳しいなあと思いながら作っていました。
そこで、それを少しよせましょうと。
音ゲーで音を作るというよりは、音をリミックスするようなものができないかなあと。

★安藤氏:
もともと、そういう音楽がお好きなんですか?

★柳原氏:
音ゲーは好きでしたね。
『Rez』も参考にしたりしました。
ゲームがゲームの中で完結するのではなくて、そこから何か生み出せないのかなあと漠然と考えていました。

★安藤氏:
しかもこれ、LeapMotionにも対応していますよね。
これが2012年の作品ですか。
最近でこそ、こうしたフィジカルな体験とゲームがあわさってきていますが、早いですね。

★柳原氏:
LeapMotionはわりとタイミングが良かったですね。
今はVR向けの展開がメインになっていますが、当時はMacにつないで、マップを指でズームできるとか、手のひらでスクロールできるとか、わりとそっち側の押し方だったんです。
LeapMotion専用のアプリストアという話もあったので、ちょっとやってみようかなと。
それで手をかざすと、それにあわせて動くようになっています。

★安藤氏:
ホントだ!
あー、操作感が気持ちいいですね。

★柳原氏:
弾を動かして、ランダムに出てくる敵を倒していって。
そんな風にゲームを遊んでいると、自然に楽器を演奏しているみたいなものをめざしました。

★安藤氏:
音楽の部分以外はどれくらいの人数で作られているんですか?

★柳原氏:
一人ですね。
ちょっと物量的に大変でしたが。

★安藤氏:
ホントにさっき言われていた「一人で作れちゃう」というの本当にを実践されたんですね。

★柳原氏:
そうですね。
2011年に佐野電磁さんとお知り合いになる機会があり、何かやりたいですね、みたいな話をしていました。
そのつてでBREAKS LPの仕組みを説明した上で楽曲を提供していただきました。
遊んだデータはすべてメモリ側に保存されていて、ゲームをクリア後に音楽データをWAVファイルにエクスポートして、ウェブで共有できるようにしています。

★安藤氏:
おもしろいですね。

★柳原氏:
ホントにリミックスかといわれると、そこまではたどり着けていないと思うんですが、まあその辺も含めて、延々とこれを作り続けるのも得策ではないなあと思いまして。
ある程度できたところで、完成品として出そうと。

★安藤氏:
反響はどうでしたか?

★柳原氏:
あまりプレイデータがネットで共有されなかったので、まあこういうものかなと。

★安藤氏:
淡々とされていますね(笑)
FullPowerSideAttack.comとしての活動とは別に、2013年に時雨堂(https://shiguredo.jp/)という会社も立ち上げられましたね。
こちらはゲームに限らず、より幅広い感じ。
時雨堂で法人向けの仕事を受けながら、インディでも活動されていくという感じでしょうか?

★柳原氏:
まあ、そうですね。
ただ、時雨堂の方はぼくがあまり手を出さなくても回るようになっています。
だいたい週に2日くらい時雨堂で働いて、あとは自分の好きなゲームを作るという。
たいへん恵まれた環境を与えてもらっています。

★安藤氏:
好きなものを作れる環境がきっちり用意された上で、次から次へと作品が飛び出してくる感じなんですね。

★柳原氏:
なはは。

★安藤氏:
一作目の『BREAKS LP』が出ました。
次回作は、すぐにできたんですか?

★柳原氏:
次が『TorqueL』になるんですが、『BREAKS LP』の最後の方から作り始めたので、開発時期は少しかぶっているんです。

★安藤氏:
さっそく全然違うゲームになってきましたね。
先ほどもパズルゲームと音ゲーの融合みたいな話もありましたし。
『BREAKS LP』が音なら、『TorqueL』はパズルを切り出したみたいな感じでしょうか?

★柳原氏:
当時は2013年の初頭でしたが、いろいろな組み合わせを試していたら、たまたまおもしろい動きができたので、『TorqueL』を作り始めたというのが正直なところです。

★安藤氏:
『BREAKS LP』はかなり尖ってました。
さっきも「シェアする人が少なかった」というのも、ああいったゲームが好きな人たちに、しっかり刺さらなかっただけという気がします。
そうはいってもゲームというよりは、シンセサイザーやクラブミュージックが好きな人たちが喜びそうな内容。
なにか反動みたいなものがあったんですか?

★柳原氏:
うーん、このへんで普通のゲームを作っておこうかなと、ぼんやりと考えていたくらいですね。

★安藤氏:
そんな感じなんだ(笑)
もともとお好きなゲームとか、趣向はあるんですか?

(以下次回)

■安藤武博 関連リンク
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安藤武博 Twitter
シシララTV

 
ジャンル アクション / 思考・知略
リリース日 2015年01月23日 (【PC】)
2014年12月24日 (【TVゲーム】PS4)
2016年11月09日 (【TVゲーム】Wii U)
価格 有料ダウンロード
コピーライト Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014
公式コミュ
PRサイト http://www.torquel.net/
ジャンル シューティング / 思考・知略
リリース日 2012年 未定 (【PC】)
価格 有料ダウンロード
コピーライト
公式コミュ
PRサイト http://fullpowersideattack.com/breaks
 

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