[CEDEC2016]バンダイナムコ「VR ZONE Project i Can」開発・運営で見えてきたものとは? キーマン二人が語り尽くした60分

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2016年09月02日

 新たに関連セッションにVR Now!マークがつけられ、試遊やライトニングトークなど、VR関連の施策が非常に充実していたCEDEC2016。
 その中でも最も注目度の高かったセッションが、メインホールで開催された『「VR ZONE Project i Can」の知見、全部吐き出します!」です。
 お台場に期間限定でお目見えしたVRアトラクション「VR ZONE Project i Can」のポストモータムとあって、多くのゲームクリエイターが詰めかけました。
 登壇したバンダイナムコエンターテインメントの「コヤ所長」こと小山純一朗氏と、「タミヤ室長」こと田宮幸春氏は、本施策で得られた知見について縦横無尽に語りました。

そのミッション、実行不可能?

 「VRに関心のないリア充男女に事前予約しないと入れない観光客だらけのお台場の店舗まで平日も(仕事や学校を休ませて)来店していただき、3000円以上を消費していただく」
 「VR ZONE Project i Can」のプロジェクト開始にあたって掲げられた目標です。

 この、常識で考えたら実行不可能なゴールにむかって開発チームは一丸となって立ち向かい、まずまずの成果を得ました。

 なぜ、このような目標になったのか。

 コヤ所長は「VRエンタメで世の中を沸かせてみたい、可能性を追求してみたい。そのためには社内の取締役(フィクサー達)に、VRエンタメがイケルることを証明したい」からだと語ります。

 つまり、これだけ高いハードルをクリアすれば、さすがに無視できないはずだというわけです。
 コヤ所長は「社内のフィクサーが90年代のVR絶望時代なので、様子見が多い」とコメント。40代の「バーチャルリアリティ世代」と、20代の「VR世代」には大きな溝があると指摘しました。

 それでは、このターゲットの需要を満たすため、どのようなコンテンツを開発すべきか。
 はじめに決められたのがコンセプトとなるキーワードでした。
 アトラクションでもなく、ゲームでもなく、大人がやりたくてもできないという問題を抱えた体験を、実際のように体験できるもの・・・。

 ここから「Project i Can」というコンセプトを決定。

 さらに「VRエンタメは体験者を外から観察するのが楽しい」ことから、試遊体験の様子を収めたPVを作成。
 「さあ、取り乱せ」というキャッチコピーと共に宣伝をおこないました。

 もっとも、このコピーが効き過ぎたのか、高層ビルの鉄骨をわたって猫を助ける「高所恐怖SHOW」と、電車の運転手になる「トレインマスター」では、人気が大きく異なる結果に。

 両名ともコンテンツに留まらず、施設全体のデザインにかかわったのは初めての経験だったとのことで、ゲームセンター運営にもつながる新しい知見が得られたとしました。

なぜボトムズなのか−−全長4mの魔法

 続いてトピックは7月にスタートした「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」に移りました。
 効果測定がわかりにくくなるため、あえてIPモノを排除してスタートした「VR ZONE Project i Can」。
 ある程度知見が集まったところで、満を持してIPコンテンツの投入となります。

 よく「なぜボトムズなのか」と聞かれるというコヤ所長。

 「自分が好きだった」「キリコがVRゴーグルをつけていた」「ガンダムはすでに『戦場の絆』があった」など、さまざまな理由がありましたが、一番大きかったのは「全長4mというサイズ」だったといいます。
実際、ガンダムのように全長18mの高さだと、VRエンタメにした時の驚きが減少するのです。

 コヤ所長は「VRは現実との比較がないと驚きが少ない」といいます。
 開発に際しては「VIVEコントローラを筐体につけて傾きを検知」「VR酔いを防ぐため被写界深度を浅くし、暗めのグラフィックにする」などの工夫もおこないました。
 その結果、それまで20代が圧倒的だった客層が、いきなり40代の客層が増加したといいます。

 「ボトムズ」に続いて投入された「ガンダムVR ダイバ急襲」。
 お台場に侵攻してきたザクに対して、アムロが操縦するガンダムが撃退。
 プレイヤーはガンダムの手のひらを模した筐体で、一部始終を間近で体験することになります。

 筐体には床やプレイヤーがしがみつく指が揺れたり、熱いヒーター(ザクのヒートトマホークを再現)が近づいたりという仕掛けがほどこされています。

 本作について、「ガンダムのコクピットは無重力空間ならではのデザインで、実際に手のひらから乗り込むのは危険」「手のひらにのってお台場を周遊するアイディアもあったが、微妙すぎてボツ」などの経緯があったとのこと。

 最終的に「戦車の120mm滑走砲と同じサイズの弾丸を連射するザクマシンガンって何だ」「A-10に搭載された30mmガトリング砲の2倍も大きい、ガンダムの60mmバルカンって何だ」「ヒートホークとビームサーベルの斬り合いを間近で見たらどうなる」といった具合に、ガンダムを通して当初のコンセプトである「さあ、取り乱せ」をストレートに体験できる内容にしたと語られました。

コンテキストに左右されるVR体験

 セッションの後半ではこれまでの知見をもとに、「なぜVRエンタメの反応に個人差があるのか」「ゲームとVRの本質的な違いは何か」について、タミヤ室長から説明がありました。

 「高所恐怖SHOW」でも、すたすたと床を歩いて猫を助ける人から、始まった瞬間にギブアップする人まで反応が様々。ヒアリングから「とび職や自衛隊のパラシュート部隊の人など、普段から高所になれている人ほど、怖さを感じやすいことがわかった」と言います。

 また、スキーで断崖絶壁を滑り降りる「スキーロデオ」では、「雪景色に白い吐息というグラフィック」に「前方からの送風」が加わった結果、本来感じるはずのない「寒さ」を感じた体験者もいたとのこと。この人もスキー熟練者でした。

 タミヤ室長は「体験者のコンテキストによって『VR共感力』が変わる」と指摘し、多くの人に実在感を感じてもらう上で、現実や実物にある題材が有用だとコメント。

 ファンタジーを題材に取る上でも、炎や火花といった物理法則に基づく演出が利くといいます。

 さらに、刺激は複数の器官から提供すると、さらに効果的とのこと。
 実際に「ガンダムVR」でも、爆発の映像(視覚)に対して、爆発音(聴覚)、地響き(振動)と、刺激を重ねていくごとに体験者の驚きが増していったと語りました。

 また多くのVRエンタメ開発者を悩ませる「従来の開発ノウハウが通じない」問題について、タミヤ室長は「ゲームは感情移入させるメディアで、VRは体験して感動するメディア」だと分析。

 実際に、多くのゲームはHUD・カメラワーク・BGM・ヒットエフェクトなど、その世界やキャラクターに感情移入させるための仕掛けに満ちています。

 ところが、これらをVRエンタメに投入した瞬間に、プレイヤーは「VRの魔法」から覚めてしまうというのです。

 また、Oculus Touchを使用したデモ「ToyBox」をプレイした時の衝撃についても語られました。
 本作はタイトルどおり、玩具箱をひっくり返したような世界で、さまざまな遊びや体験ができるというもので、明確なルールはありません。

 しかし、VR空間内で体験する行為一つひとつが刺激的で、「ゲームルールを作るのがアホらしくなってきた」というほど。
 VRエンタメでは「どんなルールがおもしろいか考える前に、まずおもしろい体験の発見が必要」であり、企画には「実際には体験できない世界でのさまざまな体験を、頭の中で創造する力が求められる」と整理しました。

 「我々は良く“百聞は一体験に如かず”と言いますが、これはVR開発者が制作時に肝に銘じる言葉でもあります。リアルな体験でなければ得られない感動を、コンテンツの中心に据えて開発にチャレンジしてみてください」(タミヤ室長)

 

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