【CEDEC2016】未来のVRゲームの姿はどうなる? 「視覚だけじゃないこれからのVRシステム」レポート

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2016年09月02日

 Oculus RiftとHTC Viveの発売、そして今秋のPS VR発売にむけて、いよいよ一般ユーザーにも身近な存在になってきたVRゲーム。
 もっとも、これらは一朝一夕に生まれてきたわけではなく、長い基礎研究の蓄積があります。
 その中でも重要な役割をはたしてきたのが学術研究で、一般的に商業化される製品の5年から10年先をみこして研究が行われていると言われます。

 つまり、学術研究をウォッチすると、未来のゲームが見えてくるということ。
 CEDEC2016でも「視覚だけじゃないこれからのVRシステム」が開催され、視覚や聴覚に限らない新しい体験が提示されました。
 登壇者は東京大学の鳴海拓志氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏、大阪大学の青山一真氏です。

無限に歩けるってどういうこと?

 最初に登壇した鳴海氏は、自分の足で無限に歩けるVRシステム「無限回廊 – Unlimited Corridor」と、それに至るまでの研究の道のりについて発表しました。

 「無限回廊」は東京大学の廣瀬・谷川・鳴海研究室と、ユニティ社の共同研究で開発されたもので、「無限に歩ける」ように錯覚する迷路を生成できるVRシステムです。
 体験者はOculus Rift DK2とゲーミングノートPCを背中に背負い、6x6m四方の空間の中に設置された、半円形状の壁を伝い歩きしながら進んでいきます。
 壁に手をあてて前に進むと、実際には円周上を歩いているのに、目に見えている映像はまっすぐなため、あたかも直進しているように錯覚してしまうのです。
 また、二つの円弧の間に通路が作られている点がミソで、これによって三叉路が表現できます。あみだくじのような迷路構造をもつマップを、どこまでも歩いて行くことができるのです。

 本研究のベースになっているのが、視覚と触覚を組み合わせることで、感覚間の相互作用を引き起こし、空間知覚をより強く操作させられる「視触覚リダイレクション」と呼ばれる研究です。

 吹雪で視界が遮られた状況では、まっすぐ歩いているように見えて、実際はぐるぐる円周上に歩いているだけ・・・こういった現象がおきることが知られています。

 これと同じように、人の空間知覚に錯覚を起こすことで、実際は曲がって歩いているにもかかわらず、まっすぐに歩いていると錯覚させる「Redirected Walking」と呼ばれる研究が、2000年代に入って盛んにおこなわれるようになりました。

 もっとも、これを完全に視覚だけで行うと直径44mの円弧が必要です。
 本研究はこれに対して壁を伝い歩きする、すなわち触覚を併用すると、直径5~6m四方の空間でも同様の効果が得られた点がポイントとなります。

 鳴海氏は将来的に、テーブルの縁を伝い歩きする、家庭用ロボットに手を引かれて歩くなどで、家庭内でも「無限にまっすぐ歩ける」体験が実現できるのではないかと示唆しました。

「無限回廊」に最適なソフトウェアとは?

 この「無限回廊」に「建設中の高層ビルに設置された仮想通路を歩く」というコンテンツを加えて、記憶に残るエンタテインメントに昇華したのがユニティ社の簗瀬氏です。ハードウェアを開発したのが鳴海氏なら、ソフトウェアを開発したのが簗瀬氏ということになります。

 安全面も考慮してゆっくり歩かせること、「視触覚リダイレクション」を利用するため壁に手をふれさせること、そして三叉路を活用すること・・・。これらを考慮した結果、最初に出てきたアイディアが「ダンジョン探索」でした。
 しかしダンジョンの雰囲気を出すために画面を暗くすると、リダイレクションの効果が出にくいため、早々にボツとなります。
  続いて出たアイディアが高層ビルの上を探索するというシチュエーション。
 特に片側だけ壁のある仮設通路の上を進んでいく状況であれば、体験者の歩みも自然と遅くなるし、壁に手を触れてもらえる。さらに仮設通路を壊すことで体験者の進行方向も誘導できるため、最適だと考えたとのことでした。

 「無限回廊」にはゲーム開発者ならではの工夫も込められています。
 体験者に「風船を回収する」という目的を与えたこと。冒頭にエレベーターで高所に移動するムービーが差し込まれ、自然に状況を説明していること。前述のような仕掛けで体験者の行動を自然に制限し、一定の方向に誘導していること。そして最後にどんでん返しを用意し、印象に残る体験にしていることです。

 また、高層ビルの探索というシチュエーションによって、思わぬ二次効果も得られました。
本作ではレイテンシーやトラッキングのロス、歩行時にかかる遠心力などで、軽微なVR酔いが発生する場合があります。

 しかし体験者からは「高所を歩くことで覚える眩暈と、VR酔いを錯覚した」という声が寄せられたのだとか。
 体験者のコンテキストが状況と相まって、VR酔いに合理的な納得感を与えたのです。

 「ゴールとルールを与えて、人の行動をコントロールするのがゲームデザイン」で、ゲーム以外にもゲームデザインの知見は広く適用できる語る簗瀬氏。
 研究成果をより印象的なものにするために、ゲームデザイナーができることはたくさんあるとまとめました。

人体に電気を流して感覚を制御する

 最後に登壇したのは大阪大学大学院の情報科学研究科に所属する青山一真氏です。
 青山氏の所属する研究室では経皮電気刺激によって発生する感覚を研究しています。
モニターで視覚情報を提示したり、触覚フィードバックつきのデバイスを使用するのではなく、電気刺激によって神経へ直接的に感覚を伝えようというわけです。

 実際に経皮電気刺激による触力覚電気刺激は軽量・安価・小型な装置のみで、さまざまな感覚を惹起できる可能性があるといいます。
 これを視覚情報とくみあわせると、VRやARで見えている物体に対して手応えを感じさせることが可能になります。
 青山氏は指先に振動センサー、手首に電極をつけて、AR空間内に存在する物体に仮想的な触覚を加える研究を紹介しました。

 青山氏らの研究は触覚に留まりません。

・舌に電極を流して味覚を構成する要素(甘み・旨味・苦み・塩み・酸っぱい)のうち、特定の要素をマヒさせることで、味覚を再現する研究
・顔の表面に電極をはりつけ、網膜に電気刺激を与えて、特定の画像を投影させる研究
・こめかみと耳の後ろに電極を張り付け、前庭に電気刺激を与えて、加速度感覚や角速度感覚を操作する研究
など、さまざまです。

 特に前庭電気刺激に関する研究では、被験者の後ろからオートバイを走らせ、距離が一定以内に近づくと電気刺激が発生するようにプログラムして、自動的に衝突を避ける映像も紹介。
 電気刺激によって外部から人体の移動を制御するという研究に、会場からは驚きの声も聞かれました。

 青山氏は本研究を応用して、視覚と前庭感覚の不整合を調整することで、VR酔い対策にも使えるのではないかと指摘します。
 10年後には実際に移動する感覚を覚えながら、VRゲームを遊んでいるのかもしれない・・・そのような想像がふくらむセッションでした。

 

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