[CEDEC2016]自衛隊公認かつ激ムズ! 話題を集めた『自衛隊コレクション』はこうして作られた~公文書と関係者への徹底取材でわかったこと

記事カテゴリ: iPhone Android
2016年08月26日

 2015年3月に防衛省からリリースされたスマホゲーム「自衛隊コレクション(Jコレ)」。
 自衛隊公式ゲームアプリというオフィシャル性もさることながら、その激ムズなゲーム内容も手伝って、リリースと同時に各種メディアやSNSなどで情報が拡散。
 官公庁が作る「政府広報ゲーム」としては異例の、8000ダウンロードというスマッシュヒットを記録しました。
 こうした反応は当初から期待された物だったのか。そもそも、どうしてゲームという題材を選択したのか。
 そして、いくら開発費がかかったのか。
 CEDECで行われた講演「行政、広報、ゲームの『今』ー無料ゲームアプリ『自衛隊コレクション』はどのように開発されたのかー」では、こうしたゲーム開発者が知りたい内容について、情報公開制度を通して防衛省から入手した行政資料と、関係者へのヒアリングを通して得られた内容をもとに、精度の高い情報が共有されました。
 なお講演者は東京電機大学の蔵原大氏と、ゲームジャーナリストの小野憲史氏です。

万人受けするグラフィックに脅威の鬼難度

 『Jコレ』は一般の民家を舞台に、ミニチュアの自衛隊員が匍匐前進をしたり、画鋲を飛び越えたりしながら、親指一本でカジュアルに操作するアクションゲームです。
 陸上・海上・航空自衛隊の活動をモチーフにさまざまなミニゲームがプレイでき、ゲームをクリアするとスコアに応じて自衛隊の各職種が紹介されるというもので、自衛隊の「職種紹介」的な機能もそなえています。
 グラフィックも親しみやすく、かつ可愛すぎないテイストで、開発者自ら「藤子不二雄の漫画をイメージした」とのこと。

 しかし、難易度はそのへんの無料アプリが裸足で逃げ出すほどで、ネット上では「難易度が高過ぎて一度もクリアできない。自衛隊の訓練の厳しさが垣間見える」「昔遊んだ『魔界村』を思い出した」などの感想が多数聞かれました。
 こうした反応に対して、本件のクライアントともいうべき防衛省陸上幕僚監部募集援護課募集班では、大きな成果が得られたと言います。
 実際、本件には「ダウンロード数」というわかりやすい成果指標がありました。そして8000件という数字は防衛省として満足すべき結果だったそうです。

広報・宣伝施策の一環として企画

 それでは『Jコレ』はどのように開発が行われたのでしょうか。
 本アプリはもともと防衛省の新人募集に関する広報施策の一環として、コンペが行われたことに端を発します。
 これに対してゲームアプリとホームページの制作案件を広告代理店の大広が受注。その後、広告・インタラクティブコンテンツ制作で定評のあるBB mediaと共同で開発し、納品したという流れになります。
 ちなみに受注金額は1485万6000円で、現状のゲームアプリ開発費用の平均額からすると、かなり低水準。にもかかわらず冒頭のような広告・宣伝効果が出たということで、かなり「効率の良い(=関係各者ががんばった)」プロジェクトだったことがわかります。

 もっとも、ゲームはあくまで「防衛省が新人募集でリーチしたい高校生に向けた広報・宣伝施策の一環」であり、その手段の一つとして「ゲーム」という手法が採用されたにすぎないとのこと。「スマホアプリである」「毎日起動してもらえる」「老若男女が説明なしで使用できる」といった点が重要視された結果とのことでした。
 また、同様の理由から「一過性のものではなく、毎日少しずつ起動してもらえる/話題にしてもらえる」ものが理想だったとのこと。そのため、開発中に防衛省側から「もっとゲームを難しくして欲しい」と修正指示があったとあかされました。これにはテストプレイでゲームがすぐにクリアされてしまった、という経緯があったそうです。

 もっとも、ゲームがクリアできなければ、ラストの「職種紹介」の画面を見ることはできません。そのため2016年内に難易度バランスを調整した「訓練版」の追加リリースも決定したそうです。
 これも反響の高さゆえで、広報宣伝ゲームとしては異例だといいます。

カジュアルゲームながら企画書・仕様書を整備

 一方で開発を行ったBB media側では、「誰もが簡単に遊べる」「自衛隊の訓練をモチーフにする」がテーマにかかげられました。
 本作はUnityベースで開発されており、騎士を操作して囚われの姫を救出に向かうスマホゲーム『GOL:Legend』(D&D Dream Corp.)にインスパイアを受けたそうです。実際、両者を遊び比べてみると、その影響がみてとれます。
 なお、受注にいたるまでにパワーポイントによる企画書のやりとりが数回あり、二転三転のすえ、最終的に今の形に着地。
 開発においても、かなりしっかりした仕様書が作成され、それぞれのステップで防衛省側の承認を得て開発を進めたとのことです。
 また、その際にゲームについて詳しくない人間が見ても内容がわかるように、部内で巡回させやすい内容にすることが重要だったといいます。これには防衛省内で担当者が原則として二年単位で変更するため、業務の引き継ぎがしやすいようにする、という事情もあるとのことです。

 もっとも、こうした手順を踏んだことで、一度承認を得たゲーム内容が途中で変更になるなど、開発に手戻りが発生することは、原則としてありませんでした。また成果物を納品したのに代金が支払われない未収金や、プロジェクトの途中で定時金がいきなり下がるといったトラブルもありませんでした。
 ただし、防衛省側から提示された資料が不足気味で、自分たちで情報を集める必要があったのが大変だったといいます。

 前述のように本作は自衛隊の職種紹介も兼ねています。一方で具体的な職種や装備がわかりにくく、開発チームでラジコンの戦車を購入したり、ブルーインパルスの演舞飛行を見に行ったりという苦労もあったそうです。
 また、総額で約1500万円という受注額は、大広やBB mediaの企業規模からしても、それほど大きな金額ではありません。
 これについては、TVCM・印刷物など広報・宣伝予算を満額で受注しようとしたが、結果的にゲーム開発・ホームページ制作のみに留まった、という説明がなされました。

マジメでマメな会社が有利

 最後に蔵原氏が政府官公庁や公共機関から広報宣伝ゲームを受注・開発する時のコツについて整理しました。
 『Jコレ』に限らず、広報宣伝ゲームは財務省ホームページ「財務大臣になって財政改革を進めよう」や、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「人工衛星開発シミュレーションゲーム」など、さまざまなものが存在するといいます。しかし、ゲーム業界と今ひとつ縁が遠いのも事実です。
 こうした点について、蔵原氏は今回の調査を通して、「ゲーム開発に留まらない、総合的な企画・開発力」「コンテンツの全体像をプレゼンする能力」「発注元の組織文化に精通ている」という3点をあげ、「マジメ・マメな企業が喜ばれる」ことがわかった、とまとめました。
 特に防衛省サイドによると、「細かい細部の技術仕様について説明されても、担当者がわからない。それよりもこのコンテンツで何がしたいのか、全体像をわかりやすくプレゼンしてほしい」という要望が強くあったとのことです。

 また「発注元の組織文化への精通」については、「二年単位で担当者が変わる」「クライアントの要望を理解する(防衛省であれば負傷・事故といったネガティブなテーマをゲームに盛り込まない)」といったことが求められます。
 いわば防衛省がクライアントといっても、実際は日本の大企業とそれほど変わりはないとのこと。

 また、コンペの内容については官報などに掲載されることが多いものの、「ゲーム開発」という項目で掲載されることはなく、「広報・宣伝」「インタラクティブコンテンツ/シミュレーションの活用」などが一般的とのことです。

 最後に防衛省サイドの「防衛省・自衛隊は全国で24万人の職員を抱えており、日本有数の大企業だともいえる。さまざまな技能が必用とされる、日本社会の縮図でもあり、就職・転職の選択肢の1つとして考えてもらえれば嬉しい」というメッセージが紹介され、講演が終了しました。

 
ジャンル アクション /
リリース日 2015年03月19日 (【スマホ】iPhone(アプリ))
2015年03月18日 (【スマホ】Android(アプリ))
価格 基本プレイ無料
コピーライト (C)2008-2014 Japan Self Defense Forces All Rights Reserved.
公式コミュ
PRサイト http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/jcollection/index.html
 

この記事のカテゴリ

この記事を共有しよう!

『SINoALICE』(シノアリス)事前登録者数が444,444人を突破。事前登録報酬の追加を決定 【マイクラPE】0から始める『マインクラフト』第8回:牛やニワトリをお世話する「牧場」を作ってみよう! 【週刊ジーパラが批評252】『モンハンXX』や『ドラクエライバルズ』など、ビッグタイトル関連作品がいきなり公開!? 『天華百剣 -斬-』累計100万ダウンロード突破。巫剣「小烏丸」がゲーム内に登場 『パズル&ドラゴンズ』アニメ「進撃の巨人」とのコラボ第2弾の開催が決定。年6月5日(月)より開催 なんか話題になってるっぽい、男顔なのか女顔なのか診断してくれて似てる有名人を検索してくれる「pictriev, 顔検索エンジン」で遊んでみる 『消滅都市2』と『にゃんこ大戦争』の第3弾コラボレーションが決定。コラボ限定バイクが手に入るキャンペーンも開催  『ファントム オブ キル』夏の大型プロジェクトティザーサイトを公開。詳細は6月10日に情報解禁 「Re:ゼロから始める異世界生活」から、エミリア 抱き枕カバー、フルグラフィックTシャツ レム、ポストカードセット各種グッズの再販予約受付が開始 『ディバインゲート』2017年夏から、『ディバインゲート零(ゼロ)』として新章スタート。インターフェイスの改修や、新主人公を実装へ