『アニュビスの仮面』梶川&下嶋”世界初のVRボードゲームは会話必須の協力ゲーム”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#25

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小野憲史
2016年04月08日

 スクウェア・エニックスで数々のヒットタイトルをプロデュースし、2015年に独立してシシララを設立。
 現在はゲームのプロデュースを続けつつ、毎週月曜日にニコ生「ゲームDJ・安藤武博の、つくった人がゲーム実況」を配信している安藤武博氏。
 本連載はそんな安藤氏が気になるインディークリエイターを直撃し、普段聞けないいろいろなことをズバリ聞いてみようという内容だ。

 今回のゲストは、世界初のVRボードゲーム『アニュビスの仮面』をリリースした、ギフトテンインダストリの梶川晴香さんと、フリーランスのゲームプログラマーとしてプロジェクトに参加した下嶋健司氏。
 三人の経歴も分野も異なるデザイナーが立ち上げた会社に、ゲーム業界出身ながら「ニート」を自称する下嶋氏が加わって、新体験のボードゲームが誕生した。

 テレビゲームだけでなく、アナログゲームも好きだという安藤氏。本誌編集長の杉村知顕も加わって、まずはゲームの試遊から対談がスタートした。

『アニュビスの仮面』梶川&下嶋”世界初のVRボードゲームは会話必須の協力ゲーム”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#25
▲限定販売でスタートした『アニュビスの仮面』。すでに売り切れ、現在生産中とのことだが公式サイトで購入を希望すると取り扱い店舗の情報を受け取ることができる

アニュビス神の仮面を被ってゲームスタート

★安藤武博氏(以下、安藤氏):
今回は世界で初めてVRとボードゲームを融合させたタイトル『アニュビスの仮面』をテーマに対談をお送りします。
これは「アニュビス神」の仮面をかぶりながらプレイするんですよね。
ボール紙で作られていて、ちゃんと耳もついていて、可愛いですね。

★梶川晴香(以下、梶川氏):
このゲームのために、スマートフォンを差し込んで360度パノラマ動画が楽しめるものを、ハコスコ社と共同開発をしました。

★安藤氏:
対談の前に、さっそく遊んでみましょうか!この連載を掲載していただいている、ジーパラの杉村さんにも参加してもらって、4人でやりましょう。

★杉村知顕(以下、杉村氏):
よろしくお願いします。

★下嶋健司氏(以下、下嶋氏):
『アニュビスの仮面』はエジプトの砂漠で発見された未知のピラミッドを探検して、王の宝を持ち帰るゲームです。
覗き込むとピラミッドの内部を透視できる「アニュビスの仮面」を使って、地図を完成させていきます。
一人ずつ順番に仮面を被って、内部の様子を口頭で伝えていき、スタートからゴールまで通路をつなげれば勝利です。

★梶川氏:
迷路は4種類のタイルの組み合わせからできていて、ほかに目印になるような石像、絵画、松明、植物などのチップもおくことができます。

★安藤氏:
4人で伝言ゲームをして、一つの地図を完成させようという遊びなんですね。
ワクワクしてきた。

★下嶋氏: 
映像が再生されるのは60秒間で、映像が消えたら次の人に交替します。
毎回プレイヤーによって見る所は違い、同じ所に立つことはありません。
またタイルの組み合わせは、映像が再生されている間しかできません。
タイルは前の人が作った通路につなげていくのではなく、それぞれが別々の通路を作っていきます。
その上で、連結できるポイントがあれば、お互いのタイルをつなげることができます。

★安藤氏:
これ、初見プレイで地図が完成する確率ってどれくらいなんですか?
ひらたくいえば、簡単なのか、難しいのか。

★下嶋氏:
だいたい失敗します。

★安藤氏:
わかりました。
失敗を恐れずに挑戦していきましょう。
だからこそ「もう1回やってみよう」となるわけですしね。

★下嶋氏:
それでは仮面を被っていただいて。
映像が始まったら教えてください。

★安藤氏: 
じゃあ僕から仮面をかぶりますね。
えーっと、映像が始まりました!
目の前に行き止まりがあって、そこの左側にたいまつがあって、白い犬が座っています。
その反対側には黒いアヌビス神が鎮座しています。
えーっと、奥にT字路があるのかな?
アザラシ、アヌビス、T字路になっています。

★梶川氏: 
全然わからないですね(笑)
自分の立ってるところはどうなっていますか?

★安藤氏: 
1ブロック先が通路になっています。
あ!終わっちゃった。

★下嶋氏: 
これがいま、聞きながら作った地図です。

★安藤氏: 
なるほど・・・そういうふうに受け取られるんだあ!
T字路の話が全く生かされていませんね(笑)

★梶川氏: 
どこがT字路だったのか、わからなくて。

★安藤氏: 
今説明したように、こっちが左でですね・・・
あ。これって、口頭で説明しても良いんですか?

★下嶋氏: 
説明したり、目印のマーカーをおくのはいいんですが、タイルを動かすのはダメです。
他の人が組み立てたタイルを連結させることで、間接的に修正することはできます。

★安藤氏: 
わかりました!とりあえず口で説明しますね。
ここに僕がいますよね?
ここが白い犬、左に松明、ここがT字路です。

★杉村氏: 
じゃあ全然違うな。

★梶川氏: 
これは難易度が高い。

★下嶋氏:
説明し忘れましたが、白い犬がスタート地点です。
こことゴールの祭壇をつなげることがゲームの目的になります。

遺跡の探索は成功したのか? ドキドキの答え合わせ

★安藤氏:
・・・というわけで、1人1回ずつ仮面をかぶって、スマホの映像を見ながら地図を作りましたー!
これ、話すだけじゃなくて、聞く力もすごく重要ですね。
杉村さんは右と左をよく間違えるし(笑)
でも、60秒の時間制限があったら、そうなりますよね。

★杉村氏: 
自分の行動を手前から一つずつ順序良く説明していかないと繋がらないですね。

★安藤氏:
自分が説明した光景が、全然伝わってなくて、愕然としたり。

★梶川氏:
それで、最終的にT字路のタイルの場所がどこになるのか、もめている最中なんですが・・・。
そこの景色は私と下嶋さんは全然見ていないから。

★安藤氏:
僕の言うことを信用していただけるのであれば、ここです!

★杉村氏:
でも、僕はその1つ向こう側だと思うんだよなあ。

★安藤氏:
どれくらい自信がありますか?

★杉村氏:
自信ありますよ!

★安藤氏:
じゃあ、杉村さん案でやってみますか!
これ、答え合わせはどうやるんですか?

★下嶋氏:
スタートからゴールまで、完成したタイル上を犬のユニットを動かしていきます。
動かし方はアプリが指示してくれます。

★安藤氏:
結構、自信ありますよね?

★杉村氏:
初回プレイでいきなりクリアしたりして!

★アプリ:
「これから答え合わせです。
3,2,1、一歩進みます、一歩進みます

★安藤氏:
ええっ? ここで一歩進むの?

★アプリ:
左を向きます、一歩進みます、一歩進みます、左を向きます、一歩進みます、ゴールしました!
あってたかな?」

★梶山さん:
あってません(笑)

★安藤氏: 
あああああ!なるほど。
ここがずれているんだ。

★杉村氏: 
僕の方が正解だったんだ。

★安藤氏: 
ちょっと待って!
さっき、杉村さんの案を採用しようと言ったのに、タイルの配置がそのままでしたねこれ。
わかりました、敗因は「コミュニケーション不足」です!(笑)

★杉村氏: 
惜しかったですね。
わかったつもりで進めるのではなくて、確認しながらやらなくてはダメですね。

★安藤氏: 
もう一回遊んでみたらクリアできますね。
思ったより難しくなくて、良いゲームバランスでした。
おもしろかったです。

★下嶋氏: 
大きいマップのバージョンもあって、慣れてきたら、そっちの方がおもしろいです。
合計で7回見ることができるので、最大7人まで遊べます。

★編集部:
何がすごいって、安藤さんも杉村編集長も、ゲストのお二人とは初対面なのに、必死になって、みんなとしゃべってるということですね。

★安藤氏: 
本当にそうだよ、めっちゃ喋ったよ!
それに、初対面だけどATフィールドを1秒も早く取り除こうとする努力をかなりしました(笑)
もう回りくどいことはいいから、一体どうなってるんだ!と。
年齢も立場も一切関係なくてね。

★下嶋氏: 
もう1回やると、今度はどうしようかという話になるので、さらに盛り上がります。

★安藤氏: 
その人の説明の癖みたいなものもわかってきますね。

★杉村氏:
僕みたいに、右と左を間違えやすいとか。

★安藤氏:
そもそも、仮面をつけている時って、言ってみれば目隠しをしているのと同じ状態じゃないですか。
VRで映像は見えているけど、タイルを並べている状況は見えていない。
それをうまく利用しているところがすごくて、このゲームの新しさですね。

★下嶋氏: 
ありがとうございます。

学生時代の仲間達が再集結して起業

★安藤氏: 
じゃあ、ひとしきり盛り上がりましたので対談を始めましょうか!
もともと、どういう経緯でこの遊びを思いつかれたんですか?

★下嶋氏: 
海外のインディゲームで『Keep Talking and Nobody Explodes』(2015, PC, Steel Crate Games)という、VRで爆弾を解体するゲームがあるんですよ。
一人がOculus Riftをかぶって、その人だけ時限爆弾が見えていて、まわりは解体図を見ながら指示を出していくという内容です。
今年のIndependent Game FestivalでExcellent Design部門も受賞しました。

★安藤氏:
ああ!あのゲームですね。 
これってVR『鈴木爆発』(2000, PS1, エニックス, 開発SOL/安藤氏がプロデュースを務めた作品)やん!と思いながら、受賞式の模様をストリーミングで見ていました。

★下嶋氏: 
殺人事件の犯人と凶器と現場を当てる『Cluedo』というボードゲームがあって、それを混ぜたものを最初は考えていました。
そこからだんだんと形が変わって、今のような内容になりました。

★安藤氏:
そういう流れなんですね。 
では、ギフトテンインダストリさんについてもお伺いします。
サイトを拝見させていただくと、ボードゲームを中心に作られていますよね。

★梶川氏:
実はボードゲームを作る会社でも、ゲームを作る会社でもないんです。
でもゲームしか作っていないんですが(笑)

★安藤氏:
何者なんですか?(笑)

★梶川氏:
もともとゲームデザイナーの濱田隆史、CADデザイナーの佐藤、グラフィックデザイナーの私という、3人のデザイナーが集まって2015年に創業した会社です。
ギフト(1点もの)と大量生産の中間に位置するものづくりをモットーに掲げています。
少数でもお客様から本当に求められている商品をキチンと作って届けられる会社になりたい、それでギフト「10」インダストリ(ギフトテンインダストリ)という社名になりました。

★安藤氏:
なるほど。
そのコンセプトに合っていれば、ゲームである必要はないと。

★梶川氏:
それはそうなんですが、濱田がゲーム業界出身で、佐藤も玩具向けのCADデザインを行っていたので、自然とアナログゲームの方向に進んでいったんです。
その中でも晴眼者と視覚障害者がハンデなしで遊べる製品に力を入れています。
初期に発売した『アラビアの壺』も、音を使った戦略性のある3目並べに似たゲームです。

★安藤氏:
おもしろそうですね。

★梶川氏:
別に濱田としては、身内に視覚障害者がいるとか、そういった理由ではなくて、将来独立した時のために、100種類くらいのビジネスアイディアを考えていたそうです。
そのうちの一つだったみたいですね。
ちょっと言い方は難しいですが、視覚障害をもたれる方って、いつの時代でも一定数の割合で、必ず存在するじゃないですか。
そのわりに、晴眼者と視覚障害者が対等に遊べるゲームって、ほとんどないんですよ。
その一方で、大手企業が参入できるほど大きな市場でもないんです。

★安藤氏:
目のつけどころがユニークだなあ。

★梶川氏:
晴眼者と視覚障害者を対等に競わせるには、音・手触り・振動などとった情報の活用が求められますよね。
そのためには、今までにないアイディアがベースの、質の高いゲームデザインが必要です。
それは濱田がずっとやりたかったことですし。
また、佐藤が専門としていた玩具の世界とも相性が良いですしね。

『アニュビスの仮面』梶川&下嶋”世界初のVRボードゲームは会話必須の協力ゲーム”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#25
▲写真左から、シシララ代表安藤武博氏、ギフトテンインダストリの梶川晴香さん、フリーランスのゲームプログラマー下嶋健司氏

マックスニートゲームからの使者

★安藤氏:
梶川さんはどんな感じでかかわられたんですか?

★梶川氏:
三人とも武蔵野美術大学出身で、在学中からのつきあいなんです。
濱田と佐藤は同期、私は二年下の後輩でした。
学科は違っていましたが、地域のお祭りに一緒に参加してものづくりをしたのをきっかけに、なんとなくつるんでいて。
卒業後、アニメーターや図書館員をしていましたが、図書館員の時に誘われました。

★安藤氏:
これまで、どういった作品に携わられていたんですか?

★梶川氏:
長野にある作楽クリエイトというアニメスタジオで、1年ぐらい動画をやっていました。
業界には珍しく、すごく丁寧に教えてくれるところでしたね。
アニメの専門学校に行くよりも詳しく教えてくれたんじゃないかなあ。
そこで「ジュエルペット」や「カードファイト!! ヴァンガード」といった作品に参加しまして・・・子ども向けの健全なアニメが多かったですね。
たまにI.G.やボンズからも仕事が来ていました。

★安藤氏:
今はギフトテンインダストリのグラフィック全般を担当されているんですか?

★梶川氏:
もともと絵描きなので、2Dのイラストやエディトリアルデザインなどですね。
『アニュビスの仮面』ではボックスアートや、3DCGのテクスチャも描いてます。
ただ、最初は営業で、という話だったんですよ。
それが気が付くと絵も描くようになりました。

★安藤氏
では、下嶋さんはどんな形でかかわられたんですか?
名刺には「マックスニートゲーム」とも書かれていますね。

★下嶋氏:
それは学生時代からやっていた、ゲーム開発サークルの名前なんです。
卒業後はシリコンスタジオでプログラマーをしていました。
『ブレイブリーデフォルト』のデバッグから入って、『ブレイブリーセカンド エンドレイヤー』(2015, 3DS, スクウェア・エニックス, 開発シリコンスタジオ)ではプログラムをやりました。
それが終わって「もう働きたくないでござる」と退職したんです。

★安藤氏: 
でたーっっっ!(笑)
それはそれは、前職の同僚が大変お世話になりました。

★下嶋氏:
そのころ濱田さんと雑談中に「何かやりたいことはないの?」と聞かれまして。
「VRとボードゲームを融合させたようなものを作りたい」といったら、それはおもしろそうだと。
それが『アニュビスの仮面』の発端になりました。

(以下次号)

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ジャンル その他 / 思考・知略
リリース日
価格 3980円(税抜)
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