『Back in 1995』一條貴彰”90年代のゲーム文化を楽しむムーブメントを日本からおこしたい”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#23

記事カテゴリ: PCゲーム
小野憲史
2016年03月25日

 『Back in 1995』で、最新技術を使って90年代のゲーム体験の再現に挑んだヘッドハイの一條貴彰氏。
 そのコンセプトに、デジタルシンセサイザーからアナログシンセサイザーへの揺れ戻しと同じ流れを感じるというシシララ安藤武博氏。

 一方で二人はスクウェア・エニックスとシンラ・テクノロジーを率いた、和田洋一氏の部下という、共通の経歴の持ち主でもある。

 シンラがゲーム業界にもたらそうとしていたものは何だったのか。
 そして、それはインディゲームとどのような関係があるのか。
 当事者だから知り得る貴重なふり返りを含めて、対談はさらにヒートアップしていった。

『Back in 1995』一條貴彰”90年代のゲーム文化を楽しむムーブメントを日本からおこしたい”シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#23
▲写真左からシシララ代表安藤武博氏、右ヘッドハイ代表一條貴彰氏

シンセサイザーとゲームの意外な関係

★安藤氏:
ドラムマシンみたいなものの出音も、アナログとデジタルでは、かなり違うんですよ。
多くのシンセサイザーにはシーケンサー機能があって、リズムが刻めるようになっていますよね。鳴らしてみましょう。
ずんどこどこどこすったんたん♪
こんな感じで。
この時、デジタルシンセサイザーでは、実際にドラムやスネアの音をサンプリングして鳴らしています。
だから音としてはリアルなんですよ。
これはこれで良いのですが、最新のダンスミュージックとしては今ひとつ体に響いてこないんですよね。
アナログシンセサイザーではリズムの音も波形を混ぜて人工的にドラムっぽく聞かせています。シャーというノイズ音はスネアみたいに聞こえるよねとか、それっぽい音にして鳴らしているわけです。ファミコンがこの形式で発音させていますよね。本物の打楽器の音ではないわけで、音としては偽物なんですが、アナログのリズム音源は出音がすごいんですよ。聴いてみましょう。
ズーンズンドゥオンドゥオン♪、みたいに。
この音圧が、アナログシンセサイザーならではの味なんですよね。

★編集部:
聞き比べると、こっちの方が明らかに音圧がすごいですね。

★安藤氏:
あとアルペジエイターという機能もありました。
これはアルペジオ(分散和音)を自動的に作って、鍵盤一つで自動演奏してくれる機能です。
よくギターの弾き語りとかで、ジャン♪と一度に和音を鳴らすのではなくて、ぽろんぽろん♪と短音ずつ鳴らす演奏法がありますよね。
あれのすごい版です。
これが昔のアナログシンセサイザーでも可能でした。
自分で新しい音を作ってプリセットしておき、分散和音で鳴らすことができたり。
1フレーズをちょっとずつずらしながら、輪唱するように再生することもできたり。
しかし多くのデジタルシンセサイザーでは、シーケンサーはシーケンサーでしかなくて、リズムを刻むだけになっちゃったんです。
ある意味では、より楽器っぽくなっていったし、ある意味では直感的ではなくなっていった時代がありました。
でも、いろいろできるほうが楽しいじゃないですか。アルペジエイターはすごく直感的ですよね。

★編集部
そうですね。

★安藤氏:
乱暴に言うと、デジタルシンセサイザーって、80年&90年代の音しか出せないんです。70年代の良さというか、初期ファミコンの良さみたいなものがなくなってしまった。
それは技術的に不可能だからというのではなくて、世の中がそれを「古い音」とみなしてしまった結果なんですよね。
それが今になって再評価されて、最新技術であえて「古い音」が出せるようになっている。デボリューションされているんです。
実際にアルペジエイターなんかは、今のシンセでは搭載されているものも多いですし、演奏もしやすくなっていますね。

★一條氏: 
このへんがまさに、これから勉強しようと思っていたところなんです。
自分が好きな音楽の生い立ちみたいなものにふれることができました。

★安藤氏: 
いえいえ、佐野電磁さんだと、もっと詳しいと思うんですが。
コード線で繋げる時代のシンセサイザーの話とか。
いろいろやっているうちに、偶然生まれてしまった音とかもありますし。

★一條氏: 
これからもう少し自主勉強します。

★安藤氏:
音楽ってホントに流行り廃りを繰り返しながら、混じり合って発展してきたんです。
結果的に最新のシンセサイザーでは、設定次第でいろんな音が出せるようになってきて。
ゲームの開発でも最終的につまみを1つ回すだけで、グラフィックがファミコン風・PlayStation風・Xbox One風みたいに、いろいろ切り替えられるようになるんじゃないかなあ。
楽器を触っていると、そういうのがわかるんですよね。
『Back in 1995』を遊んで、そんなことを思い出しました。

★一條氏:
80年代シンセポップが大好きなんですが、かたや楽器の方はどっから学んでいくかわからない状態だったんですよ。
ウェブで動画を見たり、解説を読んだりするしかなかったので、すごくわかりやすかったです。

★安藤氏:
ありがとうございます。
あんまりゲームを作っている人にシンセサイザーの話をすることはないんで、嬉しいですね。

★一條氏:
今だといろんなシンセサイザーがPC上で再現できますし。

★安藤氏:
本当に、いろんな音源が無料で使えますしね。
一方で楽器というハードウェアとしての良さも残っていて。
シンセサイザーってムチャムチャ重いんですよ。
中には30キロ以上あって、棺桶なんて言われているものもあるくらいで。
それでも楽器の良さって、レバーやダイアルで直感的に操作できたり、手触り感みたいなのが残っているところかなあと思っていて。

★一條氏: 
それこそ、アナログならではの操作感ですね。

★安藤氏: 
テレビゲームの音の歴史って、アナログの矩形波や三角波、そしてノイズ音と差分PCMていうのを組み合わせて、これはフルートっぽい、ドラムっぽいみたいなところから生まれてきたじゃないですか。
だから、実はシンセサイザーとゲーム開発は密接につながっていると思っていて。
シンセサイザーをはじめた高校生の頃は、将来ゲームを作るなんてまったく思っていなかったですが、今となってはシンセサイザーをいじっていて良かったと思います。
インプットとかアウトプットとか、ゲームにすごく近いんですよ。

「つくる・あそぶ・まぜる」ということ

★一條氏: 
シンセサイザーもそうですが、音楽は人類の大きな文化じゃないですか。
ゲームもそのように古くから存在している表現や、文化的なものから、何かしら学んだり、とりいれていく必要はありますね。
音楽とゲームのつながりでいうと、海外のインディゲームシーンでは、音楽文化との密接なつながりを感じます。
クラブでパーティをやっていて、ゲームクリエイターがDJをやっていたり。

★安藤氏:
はいはいはい。

★一條氏;
僕も少しだけDJをかじるんですが、そういう人たちはヒットチャートの上位にある曲だけでなく、自分たちで作曲したものをガンガンかけたりしますよね。
そういった光景を見たりすると、「隣の芝生が青く見える」状態かもしれませんが・・・海外のインディシーンの方が「ゲームを子供のオモチャではなく、嗜好品・文化として捉える」ことに先を行っているように思えてしまいます。

★安藤氏: 
たしかに、音楽を作るみたいにゲームを作っている感じはあるかもしれない。

★一條氏:
安藤さんが「ゲームDJ」と名乗られているのも、それに近いのかなあと思って。

★安藤氏: 
そうなんですよ。
さっき一條さんが言われたように、自分の好きな曲もかけるけど、自分でつくった曲もかけるというのが、最近のDJのあり方ですよね。
これが日本ではあまり浸透していなくて、どこかFMラジオのディスクジョッキーみたいに、最新のヒットチューンとか、70年代のロックシーンとかを紹介する人という気がするんです。
でも、実際にクラブカルチャー界隈で、すごく人気のある人たちだと、自分で曲をつくる、まぜる、今売れている曲も流すという、3つをやられているじゃないですか。
これをゲームの世界でもやろうと思ったんですよ。
つくるし、伝えるし、まぜるしと。
そのためにゲームDJという肩書きを作ったんですよね。

★一條氏:
やっぱりそうだったんですね。

★安藤氏:
これまでは、紹介する人は紹介するだけ、つくる人はつくるだけと、分かれていたんです。
でも僕はつくれるし、紹介できるし、二つをかけあわせると、すごく面白いんじゃないかとか。
そのうえで、これはPS1のオフラインゲームだけど、ニコ動で実況しながら遊ぶと、組み合わせでオンラインゲームみたいな楽しみになるんじゃないか、という感覚ってあるじゃないですか。
これって「まぜる」ということだし。
もっといえば、Steamみたいな最新のプラットフォームで95年当時のゲームを配信するのも、まぜるということだと思いますよ。
そういう分野って普通におもしろいし、そういうのがないって、ほかのメディアに比べてまだまだ貧しいなと思うんですよね。

★一條氏:
そうですね。

★安藤氏:
そうはいっても、両方できる人は少ない。
自分だったらできるな、だったらやってみようと思って。
その時に、わかりやすい肩書きが欲しかったんです。
新しいんだけど、誰もが覚えられて、少しダサイ方が良いかなと。
かっこいい名前をつけると、ちょっとひかれちゃうから。

★一條氏: 
少しダサイというのが重要ですよね。

★安藤氏: 
今となってはなじみましたけど、最初はエバンジェリストって、わからなかったですしね。
いろいろ考えて、「ゲームDJ」はめっちゃダサいけど、覚えやすいし、やっていることも説明しやすいと思って。
新しく会社をつくるときに、この肩書きと共に活動していこうと。
これだったら、古いものも新しいものも全部とりいれられるなと。
音楽と同じで、埋もれてしまった名作も紹介していくし。
最新のコンソールにも食らいついていくし。
そんな立ち位置で活動していくと、ゲームの世界も豊かになって、おもしろくなるんじゃないかなあ。

★一條氏: 
膨大にあるゲームの中から、どれを選んでいくかが安藤さん自身のカラーになっていくと思うので、仮に今後ゲームDJみたいな方がどんどん増えても、それぞれで違ったファンがついていきますよね。

★安藤氏: 
そうなんです。
もっともっと、増えていくと良いですよね。ゲームDJ。
そのうえで、さっきも言われたように、人それぞれにセンスって違いますから。
埋もれた名作の紹介みたいなことだと、比較的誰でもコピーできると思うんです。
でも、今日一條さんと話をしていて一番テンションが上がって興奮していることは、95年ごろの色合いや質感、テクスチャって、ムチャクチャかっこいいということじゃないですか。
それってセンスの話だから、コピー不可能なんですよね。

★一條氏:
はいはい。

★安藤氏:
それこそ人によっては、こんなローテクなことをやってと、ディスられるわけですよ。
でも自分たちは「そこがかっこいいのに、なんでわからないの」と言っているわけで。それが「センス」ということです。
そういう人がどんどん入ってきて欲しいんですよね。
お前が古いと思っていても、俺の手にかかれば「新しいし、懐かしいし、おもしろいんだ」と。
理屈抜きでおもしろいからいいじゃん、かっこいいじゃんというのが、ホントに「音楽みたいにゲームを作る」ことかなあと思っていて。

★一條氏:
本当にそうですね。

★安藤氏:
実際、お客さんって「かっこいいか、否か」「おもしろいか、否か」じゃないですか。テクニックや専門技術の話とか、どっちでもいいですよね。
でもあえて狙って、昔風につくったものに対して、無意識のうちにお客さんがおもしろがってくれて、受け入れられたみたいな感じでモノ作りができると、すごくいいなあと思っていて。
『Back in 1995』は、すごくそのポテンシャルを感じるプロジェクトなんですよね。

★一條氏: 
僕は本作を作り始めた時は「めちゃかっこいい」と思ってくれる人って、あんまりいないと思っていたんですよ。
でも発表したあと、「よくここに目をつけてくれた!」と言ってくれる人が出てきてくれて。
展示会で高校生くらいの人が遊びに来てくれたこともあるんですよ。
「なんだこの糞グラフィックは!」などと言われて終わるのかなと思ったら、この怪物がよく見えなくてなんか怖いみたいな話で盛り上がってくれて。
ゲームって、こういうグラフィックだった時代もあって、でも僕はそれが好きだから今でもやっているんですと説明したら、「おもしろそうです」「これからもチェックします」と言ってくれて、うれしかったですね。

『Back in 1995』は海外ゲームだと思われていた?

★安藤氏: 
理屈抜きで「なんか怖い」って最高じゃないですか。

★一條氏: 
若い人たちにも伝わるんだなというのが最近の発見です。

★安藤氏: 
この前まで埼玉県川口市で「遊ぶゲーム展」をやっていましたよね。
あそこでも40年くらいまえのビンテージゲームをバンバン動かしてたじゃないですか。
僕も行きましたが、若い人がけっこう会場にいたし、みんな昔のロックやテクノポップを聞こうみたいな感じで遊んでいたように思います。
生まれて始めてベクタースキャンのゲームとかを遊んだと思うんですよね。
あれって当時としては画期的な技術で、今となっては枯れて死んでしまっているけど、今みるとすごくエフェクトがかっこよかったり。

★一條氏:
はいはい。

★安藤氏:
あと、筐体のデザインがメチャメチャかっこいいみたいな。
今はもうゲームってスマホにアプリとして入ってしまうので、筐体がないじゃないですか。
でもシンセサイザーと同じで、つまみがあるからかっこいいみたいな。
昔のゲーム機は色合いも形も、超格好いいなとか。
そういうのを評価するみたいな動きもでてきましたよね。
そういうのもあって『Back in 1995』から新しくゲームを楽しむ価値が生まれる感じがして、すごくわくわくするんですよね。
旧くないんですよ。
デボリューションって言葉も、響きが格好いいですからね。

★一條氏: 
僕もこのプロジェクトって、時代を少し先取りしすぎているのかなと思っていて。
たぶん僕が作らなくても、5年以内には同じようなことをする人が出てくるんじゃないかなと思っているんです。
そのうち、90年代を楽しもうというムーブメントが出てくるはずですからね。
ちょっとおごった話ですが、それを「日本初」でやりたかったんです。
このタイトルを発表したとき、一番悲しかったのが、「これ海外のプロジェクトだと思っていました」「外国人がやっているのかと思っていました」と口々に言われたことなんです。
それって裏を返すと、変わったモノ、尖ったモノは海外のインディが作るものだと、プレイヤーと開発者の両方が思ってしまっているということなんですよね。
それを変えなきゃという使命感があって。

★安藤氏:
なるほどなるほど。

★一條氏:
僕は開発のほかに、ゲーム開発用のツールやサービスの会社さんと契約して、インディクリエイターにそれらを広める仕事をやっています。「日本のゲーム開発者を支援する」という形でいろいろやっています。
今となってはなくなってしまいましたが、シンラ・テクノロジーもその一つでした。
もちろんエンターテインメントに国籍は関係ありませんが、でも僕は日本人なので、日本から「こいつはすごい!見たことない!」と思われるようなタイトルがもっともっと出てきてほしいと思って居ます。
『Downwell』(2015年、スマートフォン、Devolver Digital)とかも、海外タイトルみたいという意見が多かったそうで。
こういうタイトルを日本人が作っていてもいいじゃないですか。
僕も彼も、たまたま自分が好きで作ったゲームがグローバル向けっぽく見えただけで、日本っぽい絵柄が入っていないことはそんなに変かなあと。

★安藤氏: 
全然変じゃないです。
一人でも多くの人に受け入れられれば、それにこしたことはないですよね。
それに今となっては国境も国籍もインターネットのおかげで、ぐっと薄まってしまった。ローカライズの概念も、変化してきた。
『ケイオスリングス』がアメリカのアプリ市場で1位をとったとき、アメリカのスクエニのスタッフの一人に、「この絵柄でアメリカで1位をとると思わなかった」と言われたんですよ。
『Gears of War』(2006年、Xbox 360・PC、マイクロソフト、開発エピックゲームズ)みたいなテイストじゃないと、アメリカでは売れないという固定概念が彼らもあったみたいで。
実際に僕も、もともと日本人向けに作ったので、アメリカで1位をとると思っていなくて。いってもトップ3くらいかなと。
でも、けっこう長い時間1位をキープしていて、その時に変わってきたなと思ったんですよ。

★一條氏:
そうなんですか。

★安藤氏:
だめ押しになったのが、『拡散性ミリオンアーサー』(2012年、スマートフォン・PS Vita・ニンテンドー3DS他、スクウェア・エニックス、開発マイティークラフト・ミューテーションスタジオ・ヘキサドライブ・ビサイド・リアルスタイル)が台湾・韓国・中国で大ヒットしたこと。
あのゲームは、もともと日本人にフォーカスして作ったものだから、最初は海外なんて眼中になかったんです。
でも向こうの人たちも、「日本人が作るとこうなる」ということが、だんだんわかってきたみたいで。
僕らにも「東欧の人が人形劇をやると、ちょっと天気が悪くて寒い感じになるけど、それって味だよね」みたいな受け入れ方があるじゃないですか。
そういうのが世界的な認識として広まってきたというか。
だから日本人が作ると細い腕で巨大な剣を振り回すんでしょとか。
小さい女の子も大活躍するんでしょとか。
「スター・ウォーズ」の亜流みたいなロボットがでてきて、人間とやりとりするんでしょとか。
時には同性同士で好きになったりすることもあるんでしょとか。
そういうテイストが普通に受け止められるようになってきてた。

★一條氏:
そういったところは、昔と大きく違うところですね。

★安藤氏:
だから、むりやり自分の意図に反してキャラクターデザインや世界設定を変えなくても、それが日本の個性だと言われるようになってきましたよね。
今はJRPGや国産ゲームが冬の時代のように言われて久しいですが、日本人がもっとのびのびと作っていいと思うんです。
一方で『Back in 1995』みたいに、ちゃんと海外の人にコンセプトが伝わるように作ってもいいし。

★一條氏: 
僕も別に海外に向けて作ったわけじゃなくて、自分が好きなように作ったら、たまたまそういう反応だったというだけなので、最初のうちは、けっこう戸惑いがあったんです。
Youtubeでトレーラーを公開したら、ヨーロッパ圏の方から英語以外でコメントがついたり。
どうも『サイレントヒル』が現地で人気だったことも大きかったみたいで。
そんなふうに垣根がなくなってきたので、クリエイター自身がやりたいことが、やりやすい環境になりつつあるんだなあと思いますね。
まだまだやれると思うんですよね、日本人は。

★安藤氏: 
やれると思います。

なぜシンラ・テクノロジーに参加したのか

★一條氏: 
そんな中でも、「日本人がやっても良かったんじゃなかったの」というネタがどんどん海外のインディゲームクリエイターに先取りされているのをみると、悔しいんですよ。
この前Steam Greenlightに登場した、侍の一生を描くローグライクRPG『Shigatari』(PC、Superlegitgames)などは、まさにそうですね。
最近Facebookで友達になったブラジル人のゲーム開発者も、日本の街を舞台に巨大ロボットが戦うアクションゲーム『OVERRIDE』(PC, The Balance Inc.)を作っているんですよ。
それもコントローラを4個使って、1体のロボットを4人で操縦するんですよね。
そういうのを見るのが歯がゆくて。

★安藤氏: 
映画でもそういうのってありますよね。
つい最近でも3回くらいありました。
まずは「パシフィックリム」。なんで日本人がこれを作れないのかと思いました。
それからライトノベル原作の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。あれもゲームのリトライの解釈を見事にエンターテインメントに昇華していました。
「インターステラー」を観たときも、これは「トップをねらえ!」と「火の鳥」じゃないかって思ったんです。
重力ターンとか「火の鳥」だし、ウラシマ効果で地球では1万年くらいたっているので、もう会えないかもみたいなネタは、80年代にガイナックスがやっているんですよね。

★一條氏: 
そうなんですか、それは未見でした。

★安藤氏: 
似たような例はほかにもまだまだありますよ。
「パシフィックリム」は蓋をあけてみると中国で大ヒットしたから続編製作が決まったようですね。本国ではマニアックなものとして受け入れられているけど、残りの二作はけっこう評判もよくて、実際に見ても「インターステラー」なんか時間を忘れるような完成度でした。
ハリウッドがこんな感じなのに、やり方が下手なところは日本人にはあるから、これを乗り越えていければいいなあと。
自分も、つくり手の一人として、ゲームだけはふんばりたいですね。

★一條氏: 
ふんばりたいですね。
クリエイターの皆様には上から目線で恐縮なんですが、感性とかセンスとか、突拍子もないものを作り出す力が、まだ日本人にはあると思っていて。
日本でもインディゲームの文化が根付きつつあるんですが、まだ盛り上がりに欠けるように感じられるのは、何が原因なのかずっと考えているですよ。このところずっと。
今の持論は、それは活躍できる場と、インディゲームクリエイターとしてのキャリアモデルみたいなものが少ないんじゃないかと思っています。
それでシンラ・テクノロジーに加わったんです。

★安藤氏: 
なるほど。

★一條氏: 
クラウドゲームのプラットフォームを作って、誰でも巨大なマシンの上でおもしろいものを作っていこうというコンセプトがすごくて。
それについて、和田さんとすごく話をしたんです。
これができたら「いろんな人が好きなゲームを作って、それで食べていけて、継続的にゲームがリリースできる世界を作る」という、自分の夢に近づく最短手だと思ったので、参加しました。
でも、コンセプトや技術面とは別の理由で頓挫してしまったので、今またそれを実現する方法を模索中です。

★安藤氏: 
とても野心的なプロジェクトで、あそこまで大がかりで動いていたので、解散のニュースにはびっくりしましたよね。
じゃあ、ちょっとシンラの話をしましょうか。

★一條氏:
自分から話を振ってしまいました。

★安藤氏:
俺は思うんですけど、あのくらいの規模で動かそうと思ったら、圧倒的な執行権限を持っている人が引っ張らないと、なかなか進まないんですよ。
シンラがやろうとしていたことって、時代を先取りしすぎていて、人によっては理解できなかったじゃないですか。
実際、新しすぎるものは周りから反発を呼ぶというか、心配されるんですよね。
コンセプトがわかるまでに、けっこう時間がかかるわけですよ。
そのプラットフォームでみんなが遊ぶようなものがでてきて、ようやく周りがついてくる。
そういったことはiPodでもスマートフォンでも、全部経験しました。

★一條氏:
すごくよくわかります。

★安藤氏:
iPodでゲームを作っているときは、同僚から頭がおかしいといわれていました。
iPhoneで『ケイオスリングス』が出ても、まだ誰もスマホでゲームを作らなかったですし。
『パズル&ドラゴンズ』(2012年、スマートフォン、ガンホー・オンライン・エンターテイメント)が出て、『拡散性ミリオンアーサー』も出て、収益としてどーんと上がって、はい右へならえでみんながスマホに参入してきて。
今となってはスマホで作るなんて当たり前ですよね。
スクエニでいうと、ほぼ全部の部署でスマホのゲームをつくるまでになっているんじゃないかと思います。
ここまでになるまで、大げさにいうと約10年、短くみつもっても5年くらいのブランクがあるんです。
シンラは5年くらい未来の話をしていたので、そんなこと誰にもわからないですよね。
ハッキリ言って、やっている本人たちもわからないから、おもしろいわけじゃないですか。

★一條氏: 
それをどうやって周りに説明するかが、難しいところでした。

★安藤氏: 
そういうときって、めっちゃ権力を持っている人が「俺もわからないけど、お金かけてもいいんじゃないか、やってみれば」といわないと、いくらでも頓挫しちゃうんですよね。勝手なことを言っていますが、それがシンラが解散しちゃった原因じゃないかなあ。
和田さんがスクエニの社長だったら、いまだに続いていると思うけど。事業的にリスクを大きく取りすぎてまで、そういうことはやらないという判断も、当然あるわけです。

★一條氏: 
実際にいろんな会社さんを訪問して、おもしろがってくれる人もいました。
でも、ビジョンを理解してもらえる方は技術開発・研究部門が中心で、残念ながら、日本の会社組織的には、社の方針に大きくかかわれる方は少ないんですよ。
その上層部の人たちを巻き込めなかったから、早期に大きな絵が描けなかったのかなとも思います。

(以下次号)

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