『Downwell』もっぴん“Twitterでつぶやいたらいきなり…”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#1

2015年09月25日

 『拡散性ミリオンアーサー』など、数々のヒットタイトルをプロデュースしてきた安藤武博氏。その安藤氏が2015年9月に古巣の株式会社スクウェア・エニックスを退職し、株式会社シシララを立ち上げて新たな活動をスタートする。
 本連載はそんな安藤氏が気になるインディークリエイターを直撃し、普段聞けないいろいろなことをズバリ聞いてみようという内容だ。

 そんな記念すべき第一回の対談相手は、米サンフランシスコで3月に開催されたIGF(Independent Game Festival)でファイナリストに選出され、一躍注目を集めたアクションゲーム『Downwell』の作者、もっぴん氏だ。東京インディフェスで偶然ゲームをプレイし、非常に興味を覚えたという安藤氏からのラブコールで、今回の対談が実現した。

 かたやスク・エニという大企業で長年ゲーム開発に携わってきた安藤氏と、デビュー作の『Downwell』リリースに向けて、部屋にこもって日夜ひとりで開発を続ける毎日というもっぴん氏。
 新旧ゲームクリエイターの代表格ともいえる二人が、各々の経歴やゲーム作りの価値観、ゲームクリエイターとしての生き方などについて、相違点・共通点をたっぷり話し合った120分となった。

『Downwell』もっぴん“Twitterでつぶやいたらいきなり…”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#1
▲現在もっぴん氏が開発している『Downwell』。安藤氏の一目惚れでこの対談が実現した

Twitterでつぶやいたら、いきなりパブリッシャーから連絡が来ました

★安藤武博氏(以下安藤氏):
今までいろんな対談をやってきました。
でも、当たり前ですが相手はプロのクリエイターさんばかりで、インディーゲームクリエイターの方と話をしてみたいなと、前々から思っていたんです。
そんな中、今年の5月に秋葉原で開催された「東京インディフェス2015」で、もっぴんさんのゲーム『Downwell』を遊んで、すごくおもしろかったんですよ。会場に出ているゲームの中で、一番おもしろかった。

★もっぴん氏:
マジっすか! すごく光栄です。

★安藤氏:
会場でも簡単に経歴とかお聞きしましたよね。ゲームを作り始めて間もなくて、ほとんど1人で作っているということで。インディの方でも、そこまで個人で活動している人は少ないし、いたとしてもプロのゲーム開発者が週末に趣味で作って、プロとしての実力をインディという場で披露されている場合が多い。
でも、もっぴんさんは最初からインディで、かつ一人で活動されていて、すごくおもしろいと思ったんです。こういう人がたくさんいると、日本のインディもこれから盛り上がるんだろうなあと考えて、本サイトでの記念すべき対談の第一回目にインディのアイコンというか、僕にとっては象徴である、もっぴんさんにお越しいただきました。

★もっぴん氏:
自分のような個人でゲームを作って食っていこうとしているインディは、日本ではまだ少ないかもしれませんね。海外ではけっこう多いと思うんですが・・・。

★安藤氏:
たしか『Downwell』の開発バージョンを動画にとって、Twitterでアップロードしたら、アメリカのパブリッシャーから連絡があったんでしたっけ。

★もっぴん氏:
そうですね。最近日本でもPS4とPS VitaでCollected Editionが発売された『HOTLINE MIAMI』というゲームがありまして、そのパブリッシャーであるDevolverDigitalという会社からです。
インディのパブリッシャーで一番波に乗っているといわれていて、大好きな会社なんですよ。いつか一緒に仕事ができれば良いなあと思っていたら・・・。

★安藤氏:
いきなり先方からオファーが来て。

★もっぴん氏:
ちょっとゲームのビルド(開発版の実行プログラム)を送ってみてよといわれて、送ってみたらパートナーにならないかと誘われて、夢のようでした。

★安藤氏:
彼らとパートナーシップを結んで『Downwell』を作られているんですよね。これがデビュー作になるんですか?

★もっぴん氏:
はい、いま最終調整中で、あと1ヶ月くらいで出したいですね。スマートフォン(iOS & Android)版を先行リリースして、のちにPC(steam)版をリリースする予定です。

★安藤氏:
いろんな意味で今を象徴しているなあ。

『Downwell』もっぴん“Twitterでつぶやいたらいきなり…”|シシララ安藤武博のインディーズを見ずに死ねるか!#1
▲安藤武博氏

Twitterで連絡を直接するのは、彼らにとってもレアケースだった

★安藤氏:
どのへんがイケいけてるんですか?

★もっぴん氏:
まず目利き力ですね。
彼らは良質なインディゲームしかパブリッシュしないんですよ。もっとも暴力的で変わったゲームばかりなんですが。そのためブランド力がすごく上がっています。
また実際に契約して驚いたのは、ほんとに自由にさせてくれたんですよ。たとえば値段設定にしても、僕は有料アプリで出したいんですよ。でも売上的にはF2P(基本プレイ無料のアイテム課金方式)の方が良いじゃないですか。最近の例だと『クロッシーロード』などがそうですよね。

★安藤氏:
F2Pだと、お客さまが支払う額に天井がないですからね。

★もっぴん氏:
でも僕はバカだから、有料アプリで出したくて。
そうしたら、お前の好きなようにしたら良いよと言ってくれて。

★安藤氏:
有料アプリには有料アプリの良さがあります。
最初にお金を払って遊ぶ人と、無料で暇つぶしに遊ぶ人では、ゲームに対するロイヤリティが全然違う。
僕もパッケージゲームとF2Pゲームの両方を作ってきたので、そこは実感します。
はじめにお金をいただく方が、構造的にファンになってくれる率が高いんですよ。F2Pゲームの課金率って、どんなによくても3ー4%くらいです。PCオンラインゲームでも10%といわれていて。
それって9割以上の人がとりあえず遊ぶけど、作り手側からすると「お前のゲームにお金を払う価値はない」と言われているようなものなんですよ。
それに対して有料アプリはユーザーが100%課金しているわけだから、すごく熱心に遊んでくれるし、ファンになってくれる率も高い。だから、もっぴんさんの決断は良いと思います。

★もっぴん氏:
なおかつ、こういった要素は必ず入れてくれ、といった変な縛りもなくて。

★安藤氏:
僕らがパブリッシングするから、好きに作ってくれと言う感じですか?

★もっぴん氏:
まさにそんな感じです。

★安藤氏:
目利き力という話がありましたが、『Downwell』の場合はTwitterで上がっていた動画がきっかけだったわけですよね。
きっかけは何だったんだろう。ジャケ買いみたいなものかな?

★もっぴん氏:
もちろんビルドを送って、テストプレイをしてもらったうえでの契約なんですが、Twitter上で見つけて声をかけるというのは、彼らの中でもレアケースだったようです。

★安藤氏:
英語でつぶやいたんですか?

★もっぴん氏:
日本語でツイートしました。ほんと「ここまで作ったぜー」みたいな軽い感じで。

★安藤氏:
そうしたらDevolverDigitalの人が「お、これいいじゃん!」となった。それってどういうバズり方をしたのかなあ。

★もっぴん氏:
けっこうリツイートされたんですよ。
たぶん、それで目に入ったのかな。

★安藤氏:
それで、実際に遊んでみて手触り感が良いから一緒にやろうと。実際にアクションゲームとして良くできています。
僕も東京インディフェスで、まず初めにそれを感じました。

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▲もっぴん氏

日本人はゲームのコンセプトに投資しない

★安藤氏:
英語は堪能なんですか?

★もっぴん氏:
10歳~15歳までニュージーランドで暮らしていたので、基本的な会話とかなら問題ないです。

★安藤氏:
英語ができた方がコミュニケーションもとりやすいし、いろいろ可能性が広がるのかな。

★もっぴん氏:
絶対にいいですね。
僕は相当ラッキーだと思っています。
海外と契約する上で英語力は必須じゃないですか。彼らが日本語を勉強するわけがないので。そのアドバンテージはすごく大きかったと感じますね。
インディゲームがはやっているのも海外の話だから、インディ向けのニュースサイトやフォーラムなど、情報もすごくたくさんあるんですよ。
ゲームデザインだけじゃなくて、インディ向けのマーケティングとかの記事もあります。
ただ、英語ができないとそうした膨大な情報にもアクセスできませんからね。

★安藤氏:
東京インディフェスでも海外の方で日本のゲームが大好きで、日本でゲーム開発をはじめて、開発者コミュニティまで生まれている感じがしました。
でも、もっぴんさんは反対で、海を越えるというのが前提になっていますよね。
それは今、おっしゃっていたように、日本ではビジネスのサポートも含めてインディゲームの市場が未成熟だから、世界前提でゲームを作らないと、インディのクリエイターとして生活をしていくのは難しいということでしょうか?

★もっぴん氏:
だと思いますね。
いま日本で売れるゲームってわりと決まっている感じがするんですよ。

★安藤氏:
そうですね 5ー6パターンくらいかな スマホだけならもっと少ないかもしれない。

★もっぴん氏:
それにブランドがすごく強いから、シリーズもの以外はヒットが難しいじゃないですか。海外でいうインディゲームの波は日本ではまだまだです。よほどゲームが好きな人出なければ、インディゲームを買わないですしね。

★安藤氏:
日本のユーザーはゲームシステムでゲームを買わないんですよ。
ほとんどが世界観やキャラの魅力で買っているんです。
でも、それは海外でも似たところがあるかなとは感じています。
大ざっぱにいうと海外のメジャーパブリッシャーから出ているゲームって、15年くらい前に出た『ハーフライフ』『アンリアル』の頃からあまり変わってなくて。FPS(一人称視点シューティング)というフォーマットを下敷きにして、今回はインディ・ジョーンズ風にしてみよう、ゾンビっぽくしよう、第二次世界大戦モノにしてみようという感じで。
実はゲームシステム自体はそれほど進化していない。

★もっぴん氏:
AAAゲームの場合はそういうところがありますね。

★安藤氏:
こういうおもしろい遊びを思いついたんだけど、どうでしょう的な提案をしてくる会社って、大手では任天堂さんくらいなんです。
パッケージゲームではショップの棚の問題もあって、先行者がかなり有利な市場になっていますし、スマホゲームでも最近はそれが顕著になっていますよね。
特に日本ではそれが顕著で、数年前までは下克上というか、中小ディベロッパーでも戦える時代があったんですが、今ではほぼ終わってしまっていて。
たまに『ねこあつめ』みたいなミラクルが出てくるくらい。
どっちかというとインディゲームの人たちも、ゲーム内課金というよりは広告メインで収益を上げられていますよね。
スマホゲームにおいても、大手とインディでビジネスモデルも含めて二分化されている気がします。

★もっぴん氏:
海外ではまだしも、日本ではほぼそんな感じですよね。

★安藤氏:
そうそう。特に日本では『Downwell』のような、ゲームのコンセプトや核となる遊びに対して、お金が集まったりビジネスになるという仕組みが大きく欠けているなと思うんです。
ところが海を渡った瞬間に、『シェンムー3』がKickstarterで7億円を調達したり、稲船敬二さんや五十嵐孝司さんがすごくお金を集めたりされるわけじゃないですか。
AAAが強くても、インディゲームが出てこれたり、それを支援するための仕組みがある。
この違いって何だろうなあと思っていて。もっぴんさんは、どう思われますか?

アメリカには若くて才能がある人を支援する文化がある

★もっぴん氏:
Kickstarterのコンセプト自体が日本では考えつかないものですよね。
「コンセプトに対して出資する」というと聞こえは良いけど、完成する保証がないものに対してお金をあげるということなので。
それもプロの投資家ではなくて、一般人が対象ですからね。
日本だと保証がないと投資もしにくいと思うんですよ。

★安藤氏:
そうですね。

★もっぴん氏:
僕もアメリカの文化に対して、あまり詳しいわけではありませんが、わりと実力がある奴にチャンスを与えようという考え方があるっぽいですね。
海外のファンなら続編的な作品が出るなら、喜んでお金を出す人が多いんだろうなあと思います。
もちろん日本人にもたくさんいるとは思いますが。

★安藤氏:
稲船敬二さん、鈴木裕さん、五十嵐孝司さんなどは伝説的なクリエイターなので応援しがいがあるし、プロジェクトの着地点もみえやすいと思うんです。
でも、これからデビュー作を作るもっぴんさんのような人に対しても、応援する土壌があるというのが、すごい特徴的だなと思います。
それは文化とか、考え方みたいなものでしょうか? 

★もっぴん氏:
だと思いますね、おそらく。
ただKickstarterも最近では前ほどではなくなってきたかなあと。
前は無名の人でもスクリーンショットなどをアップして、コンセプトを語って、それが魅力的だったら支援も受けられました。
しかし最近では、有名人の目立つプロジェクトが資金調達をする場所に変わってきたような印象はありますね。

★安藤氏:
なるほど。
ただ、変わってきたとはいえ、未知数の若者のいけてるアイディアに普通の一般人が応援する感じって、なんなんでしょうね。
なんでそういう構造が成立するのか、すごく興味があるんですよ。
日本だと制作委員会方式といって、プロジェクトを立ち上げるときに一社だとリスクが高いから、異なる分野の会社が集まって出資しあうんですよ。それでDVDが売れたらレコード会社、玩具が売れたら玩具会社の収益にするといった感じで。でも、それって完全にリスク分散で、未知数の若者にチャンスを与えるのとは正反対なんですよね。
この違いって何だろうということを、この対談を通して少しでもヒントが得られればと思っているんです。

★もっぴん氏:
さっきも言たとおり、文化の違いが大きいと思っていて。もちろん海外のゲーマーでも、AAAゲームが好きな人はたくさんいます。
でもインディゲームが好きな人たちって、純粋におもしろいゲームが遊びたいし、それを応援したいという人たちだと思うんですよ。
僕自身もAAAも遊べばインディゲームも遊びますし。
インディゲーム開発者だからインディゲームだけを遊ぶという感じではないですね。その上で、若い人にチャンスを与えよう的な文化があって、Kickstarterみたいな仕組みが生まれてきたんじゃないでしょうか。

★安藤氏:
文化という言い方しかないのかあ。
つまり生まれた土地・宗教・食べ物・自然環境など、ぜんぶひっくるめて醸成されてきたってことですかね?
だったら日本で根付くのは構造的に難しいのかな。

★もっぴん氏:
難しいんじゃないでしょうか。

★安藤氏:
ああ、やっぱりそうですか。

★もっぴん氏:
あとはインディブームのこれまでの流れも大きいと思っています。
海外では『Braid』『FEZ』『スーパーミートボーイ』のようなヒット作がここ数年で登場して、少人数でもここまでおもしろいゲームが作れるということが、一般に証明されたんですよ。
それも当時Steamなどに加えて、Xbox Liveアーケード(XBLA)でもプッシュされたから、家庭用ゲーム機メインの人でもアクセスしやすかった。
僕も実際、そこからインディゲームに入りましたから。
でも、日本ではそうしたインディゲームのエントリーポイントがありませんよね。
だからインディゲームがAAAと同じくらいおもしろいことが、まだ知られていないんじゃないでしょうか。

★安藤氏:
僕自身もXBLAとPlayStation Network(PSN)で『MOON DIVER』というベルトスクロールタイプのアクションゲームを作ったことがあるんですよ。
あのころ『Castle Crashers』という横スクロールのアクションゲームがありましたよね。
あれは完全に80年代後半から90年代前半の日本のアーケードゲームのオマージュで、『ゴールデンアックス』『天地を喰らう』など、僕らが子どもの頃に遊んでいたゲームが、最新技術で良い感じに復活した感じだった。
それに対して日本人の返答を出せないかなと思って。そこで参考にしたのが『Braid』『FEZ』だったんです。

★もっぴん氏:
そうだったんですか!

(次回に続く)

■もっぴん 関連リンク
▽『Downwell』公式サイト
http://www.downwellgame.com/

もっぴん Twitter


■安藤武博 関連リンク
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