―― やはり、最初は開発までの経緯からお聞きしたいと思います。もともとはネット上にアップされていた『Every Extend』に世永さんが注目されたという話ですが。
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世永玲生 氏 『Ninty-Nine Nights(N3)』や『バトルスタジアムDON』などの作品に参加しつつ、『Every Extend Extra』では、ゲームデザインとディレクターを担当する |
世永氏:
そうですね。ちょうど弊社で『ルミネス』と『メテオス』が出る前、キューエンターテインメントという新しい会社を起ち上げるときに、なんでもかんでも作るのではなく、会社としてのテーマを持ってゲームを作っていこうという指針があったんですね。それが“ミュージックインタラクティブ”なんです。“ミュージック+何か”というゲームを作っていこう、と。その際に、先日発表した『グンペイ』関連の2作品と『ルミネス』『メテオス』という4作品の企画がありました。それがそろった時点で、僕はXbox 360の『Ninty Nine Nights(N3)』の仕事に取り掛かっていたんです。で、それとは別にとある友人に仕事を頼んでいたんですが、その人が締め切りを全然守ってくれなくて「なにやってんの!?」って電話をかけたんですね。そうしたら「ネットで面白いゲームを見つけて仕事になんなくて~。ゴメン」って言うわけですよ。そんなに面白いならと思って、僕にも送ってもらったんですが、僕自身も忙しいはずなのに、やっぱり面白くてハマっちゃって(笑)。あとは、これは業務的な話になっちゃうんですけど、企画って、形があると通りやすいじゃないですか。
―― 確かにそれはありますね。
世永氏:
松久君の『Every Extend』っていうのはもうひとつの完成形があって、ムービーすら撮影できてしまうわけですよ。そこで、音楽ソフトを使って音を割り当てて社内のプレゼンテーションに挑んだんです。実はそのときのものは完成版とそう大差はないものでした。この『Every Extend Extra』は、自機を動かしたときの方向(上下左右)と、溜めをやっている間の裏の音、この8つの音をユーザーの任意で鳴らすことができるんです。あとは爆発であったり、自爆の音であったりとか、そういうものがすべて16分音符にグリッドされて鳴るので、まるでオートクチュールのBGMのように音楽全体がゲームと密接に関わっているシステムになっています。この……簡易版をプレゼンしたんですね。そこでは「なんだ、もうできてるじゃん」とか言われました(笑)。
―― そりゃそうですね(笑)。たしかに完成版でも上下左右+溜めの8音の組み合わせでBGMができあがりますね。これって音を聞いているだけでどんな動きか想像できますね。
世永氏:
まさにそうですね。しかもプリジェクトって社内プレゼン通らないと起ち上げられないじゃないですか。だから最初松久君には曖昧なことしか言えなくて……。そういう曖昧なのはディレクターやプロデューサーとしてはよくないですよね。でも僕は、できないことを「できる」って言うのが嫌いなんですよ。だから最初に松久君にメールで伝えた言葉は「『Every Extend』の将来についてちょっとお話しませんか?」っていう。そしたらものすごく警戒されましたよ(一同笑)。当時はまだ弊社のホームページもありませんでしたし、ネット上に掲載されていた“水口哲也が新会社、キューエンターテインメントを設立”っていう記事だけが存在証明だったんです。だからそのURLを送って「決して怪しい者ではありません」って(笑)。それでなんとか松久君と会うという話になって、みそカツサンドを食べながら話したんですね。
―― それってずいぶん前の話になりますよね?
世永氏:
ええ、そうです。実は、開発過程で、パッケージソフトとしてリリースするに足るボリュームがあるのかという話になって、ペンディングされていた時期があったんです。その困難を乗り越えて今日に至るわけなんですが(笑)。
―― 足掛け2……3年くらいですか?
世永氏:
下手をすると3年くらいかかってるのかな? 東京ゲームショーの時にTGSバージョンとしていったん発表しましたが、実はあのときから全部作りなおしています。インタラクティブさは増していますし、音との一体感も増しています。「グラフィックを見てもTGSバージョンとは別物じゃん」とよく言われますが、実際その通りなんです。
―― 松久さんは、自分の制作した作品がPSPで製品化されるということになるわけですが、どういう気持ちですか?
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松久貫太 氏 OMEGAのハンドルネームでゲーム制作を行ってきたアマチュアゲーム作家で、『Every Extend Extra』の元となる『Every Extend』の作者。webサイトはコチラ |
松久氏:
いやぁ、なんと言っていいやら……。「すご~い」って感じです(笑)。
―― 非常に素直な感想ですね(笑)。じゃ、最初はどう思われました? メールで連絡があったんですよね。
松久氏:
はい。先ほどの通り「『Every Extend』の将来に~」って感じの文面で、驚きました。 ―― それで何度かメールのやり取りなどもされたんですか?
世永氏:
メールのやり取り自体はほとんどなかったんですよ。すぐに「じゃあ会いましょう」的な展開になったので、すぐに直接会いに行きました。
―― すでにネット上で発表されているゲームを製品化するというのは結構珍しいパターンかなと思います。たしかに環境もよくなってきて、個人で開発する作品というのが増えていますが、例えばキューエンタテインメントでは、こういった流れで製品化をするというのはこれからも増えていくと思いますか?
世永氏:
そうですね……正確に言うと、正しいプラットフォームへの落とし込みというのを考えているんです。たとえば、本来はPCゲームであるべきものがPSPで出ていたり、PCゲームとして制作されたけれど本来の落としどころはPSPなのではないか、そういうゲームもあると思います。実は未発表の企画でもそういうものがあるのですが、本来、その作品が落とし込まれるべき場所に落とし込むという作業は今後もやっていきたいと考えています。ベストなハードへの落とし込み、特化したアレンジを加えていく。そういうことは今後もあると思います。それと、弊社自体が少人数で多数のラインが動いていることもあり、それぞれのチームの方向性が多種多様なんですね。その中でウチのチームの人数というのは、自分たちがやりたいものをやろう、自分たちが欲しいものを作ろう、っていうことがやりやすい人数だったりするんですよ。ネット上のゲーム作家の人たちも、まさにそうですよね。
―― なるほど。ということは『Every Extend Extra』では最初からPSPというハードが決定されていたわけですね。 世永氏:
そうです。PSPのアナログスティックとの相性がいいと思ったんです。PCの『Every Extend』も十字のコントローラやキーボードでプレイするよりアナログコントローラでプレイするほうがいいなと感じましたし。PSP特有の平行移動するアナログスティックというのは精密動作にはピッタリなんですよ。あとはPSPというハードは音がすごくいいハードなので、そこも理由のひとつですね。 ―― ところで、元となった『Every Extend』にどの程度のアレンジを加えてあるのでしょうか。
世永氏:
基本的にはパッケージソフトにするためのボリュームアップ以外はなるべく手を加えないようにしています。『Every Extend』はルール的に三つ巴(自機の自爆による残機減少×自爆から連鎖によるスコア獲得×スコア獲得による残機数アップ)になっている中で高得点を目指すというのが目的になっています。しかし、その目的だと1ステージしかプレイできないんですよね。だからパッケージソフトにするにあたってステージクリアタイプに変更しています。それにともなうバランスは多少いじっています。ただ、元の作品をPSPで遊びたいというのがスタート地点なので、オリジナル版も移植して収録しています。だから、ただ単に「オリジナル版をPSPで遊びたい」という人もご安心ください。PC版との違いは各モードをそれぞれプレイしていただけるとわかってもらえると思います。モードによってゲームの目的やバランスを変えてありますので、4つのまったく違うゲームが遊べると思ってもらっても構わないと思います。でもゲーム+音楽というのが一番の違いと言えば違いかもしれませんね。
―― 元の『Every Extend』のBGMは現在のような仕掛けではなかったんですか?
世永氏:
そうですね。バックトラックとして流れていました。 ―― 『Every Extend』の音楽やグラフィックは松久さんが制作されたんですか?
松久氏:
音楽はやはりネット上で活動しているサウンドクリエイターの方に許可をいただいて使わせていただきました。グラフィックは自分でやりました。 世永氏:
オリジナルモードに関しては音楽に関する連動のみ入れていますが、それ以外は完全移植になっています。オリジナル版に音楽との連動を入れたかったんですよね。さっき話をした“パッケージのボリュームにはちょっと足りないかな”と言われたのはこのオリジナルモードだけだった場合の話です。ただ、バランスも含めてこのくらいのシンプルさのほうが社会人にとってはちょうどいいのかなとも思っていました。
―― 松久さんが『Every Extend』を作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか? 松久氏:
この作品を作る前にシューティングゲームを作っていたんですが、その制作に煮詰まっていたんですね。それでいったんそちらの制作をやめて、新しくて単純なゲームを作ってみようかなと思ったんです。
―― 自機が自爆するっていうのは驚きですよね。 松久氏:
自爆するっていうのは最初はもうちょっと不謹慎なネタから始まっているんですが、ま、そのへんはなんとか誤魔化して……。
―― こういう“物体”ならいいか。みたいな? 松久氏:
ええ、そんな感じです。その頃はあまり細かいものを作ることができなかったので、幾何学的な図形にならざるを得なかったんですが、それはそれでカッコイイかなと。
―― アイディアを思い付いてから完成までにどのくらいかかりました?
松久氏:
そうですねぇ……4ヶ月くらいはかかっているんじゃないかなと思います。実際に作業をしていたのは2ヶ月くらいですかね。 世永氏:
(手元で稼働していたPSPを持ち上げて)このゲームオーバーの声なども実は彼の声なんですよ。 松久氏:
自分の声をサンプリングして加工してあります。 ―― なるほど、ひとりで作るとなると素材集めは大変ですよね。ところで、制作中、このゲームをプレイして、どうなったら楽しいだろうと考えながら作っていました? やはり連鎖ですか? 松久氏:
んー、最初は連鎖は考えていなかったんですよ。作っている最中にテスト的に連鎖する仕様を加えたら面白かったので、それを後押しするような方向にシフトしました。 ―― 現在は学生さんですよね。『Every Extend』を作っていたときは……。
松久氏:
ええ、大学生です。制作していたときは休み中にダラダラ作っていた感じですねぇ。 ―― 元々フリーソフトとして発表されていたわけですが、『Every Extend Extra』が発売されるにあたって、元ゲームである『Every Extend』はどうなりますか? 世永氏:
そのまんまですよ。ネットで生まれた作品ですから。松久君と僕らでそれ以上のものを一緒に作りましょうという話で始まったので、過去をなくすというのは違うと思うんです。なんて言うんでしょうね……普段はネット文化側というか、権利とかそういうしがらみに文句を言ってる側ですからね、僕は。「なんで配布中止になるんだよ!」って(笑)。自分がそういうことはやりたくなかった。最初からそれは決まっていましたよ。彼のサイトなどを訪問してくれる人もそこが一番気になるところだと思うんです。実際配布中止になるんじゃないかと危惧する声もあったよね?
松久氏:
そうですね。
世永氏:
ほかのハードに落とし込むときの最低限のマナーとして、ネット発のモノに対する関わりっていうのはそうあるべきなんじゃないかと思いますね。
―― なるほど。元からのファンにとっては嬉しいですね。ところで、『Every Extend』というタイトルの由来は?
松久氏:
もともとシューティングゲームとして作る予定だったんですが……シューティングの用語に自機が1機増えるExtendという用語がありますよね。このゲームでは自機がボロボロと減っていくんですが、そこで点数を稼いでそれ以上に自機を増やしていく……そういう意味で付けました。
―― そしてPSP版で『~Extra』と。
世永氏:
そうです。タイトルに関しても変更したほうがいいんじゃないかという声もあったんです。ですが、元があってのゲームですからね。それにEvery Extendという言葉自体もシューティングゲームの用語として使っている人もいますし、ゲームの本質をあらわすには一番いいかなと思ったのも事実です。 ―― なるほど。本当に、完成された作品にExtraの部分を加えたという感じですね。タイトルも『EEE』と略せてますし(笑)。 世永氏:
この作品のボスの名前だとか、ほかの作品に関してもそうですが、僕は言葉遊びが好きなんですね。Eが3つ並ぶように、というのもそうですし。あ、タイトルは松久君も同じものを考えていたんですよ。 |