クリエイターズファイル  
「自分らしさが大切」数々の名曲を生み出した岩垂さん
2007.02.19
   
 
 

第260回

岩垂 徳行さん

 

 今回のクリエイターズファイルのゲストは、『グランディア』シリーズ、『ラジアータ ストーリーズ』『逆転裁判3』など、数多くの作品の楽曲を手掛けている岩垂徳行さんです。本当にたくさんのゲームに音楽を提供されている岩垂さんですが、ゲーム以外でもなんと、東京ディズニーリゾートのショーの音楽や、舞浜駅の発着音も手掛けられたとか。それでは、早速お話をお伺いしていきましょう。

(C)2007 Spike All Rights Reserved.

最初に、これまでの職歴、携わっているお仕事を教えてください。


岩垂氏:
 1991年にゲーム音楽の制作を中心とするツーファイブを、社長のドンマッコウさんとともに設立。その後、独立して現在に至り、様々な作品に携わらせてもらってます。ゲームでは『グランディア』シリーズや『LUNAR』シリーズ、『ラングリッサー』シリーズや『グローランサー』、『トゥルー・ラブストーリー』シリーズ、『キミキス』、『逆転裁判3』『ラジアータ ストーリーズ』など、ちょっとここには挙げきれませんが数多くの作品に関わらせてもらいました。
  また、ゲーム以外であれば、東京ディズニーリゾートのショー音楽や、お芝居、ダンス、ミュージカルなど様々な分野で曲を作らせてもらっています。変わり種では舞浜駅の発着音でしょうか。ぜひディズニーリゾートにお立ち寄りの際には聞いてみてください(笑)。
  最近では、韓国のオンラインゲーム『Project Wiki(仮称)』の作曲、2007年2月28日(水)に発売される霜月はるかさんのオリジナルアルバム「ティンダーリアの種」のサウンドプロデュ−ス、4月26日(木)に発売予定の『エルヴァンディアストーリー』のオープニング及びエンディング曲の作曲など、今年もいろいろとみなさんに聞いてもらえる作品がありそうです。

 ゲーム音楽を手掛けるきっかけになったのは、24歳くらいのころでしょうか。大学を卒業する頃に「とにかく音楽に関わりのある仕事をしよう」と決め、しばらくバンドでキーボードを弾いていました。あるとき友人から「ゲームの音楽を作ってみないか?」と誘われたのがきっかけです。



前回ご登場いただいた、杉浦さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。



岩垂氏:
 杉浦さんとは『エルヴァンディアストーリー』でのつながりですが、彼との思い出はやはり、なんといっても「怒濤の中国レコーディング!!」でしょう(笑)。
  中国は北京でオーケストラを使っての録音をしたのですが、まず行きの飛行機が雷雨のため北京空港に降りられず、別の空港でずーっと待機させられたんです。9時間かかりました。あり得ない! その後、ご飯を食べた帰りのタクシーは犬とぶつかり、レコーディング当日も、タクシーがスタジオから離れたところに僕らを降ろし、立ち往生したり…とまぁ、実はもっとあるのですが、とにかく信じられないようなことが次から次へと起きました。生涯忘れることの出来ないであろうこの旅を杉浦さんと共にしたことは強烈な体験でした。



これまで、自分の仕事に影響を与えた出来事、大きな転機となった出来事などはありましたでしょうか。また、これまで岩垂さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。


岩垂氏:
 いろいろな方とお会いするたびに影響され勉強させてもらっていますので、毎日が転機状態です。ディズニーの音楽を始めたおかげで、いろいろと生演奏の録音に携わることが出来、多くのミュージシャンともつながりが持てるようになりました。多分僕にとってもとても大きな転機というか、チャンスになったと思います。

 思い入れが深い作品はいくつかあります。
  『LUNAR エターナルブルー』を作ったときに、世界中の多くのファンの方からファンレターやファンメールを頂きました。このとき初めて髪の毛に白髪が出ました(笑)。
  『グランディア』は、初のオリジナル曲でのフルオケの仕事でその準備のため、社員旅行にも行かず、ずーっとひとり会社で黙々とスコアを書いていたことを思い出します。まぁそのおかげか、音楽も好評で良かったです。
  ボーカリスト川澄かおりさんとのコラボアルバム「Ingmar – for the beginning-」は、アルバムの企画から音の録音、ミックス、マスタリング、販売まですべて自分たちで行った作品としても思い入れが深いです。



それでは、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか? また、これまでのお仕事の中で、“これは良い”と感じたアイディアが浮かんだ瞬間は、どんなときでしたか?


岩垂氏:
  あまりゲームをやらないので、名作と聞かれると難しいのですが、『Wiiスポーツ』でしょうか。「翌日筋肉痛になるゲーム」はなかなかありませんからね。今後のWiiのソフトはいろいろと期待しています。

 僕の場合、メロディやモチーフのアイディアは担当者と話をしている最中に浮かんで来ることが多いんです。「担当者の意識に同調させる」と呼んでいますが、しっかりした理念を持っていてくださるとイメージがまとまりやすいです。
  例えば『LUNAR エターナルブルー』のテーマ曲は、ゲームアーツの宮路洋一社長と露天風呂の順番待ちをしているときに、『グランディア』のテーマは1枚の絵から連想して生まれました。『エルヴァンディアストーリー』は、やはり音楽の担当者と最初の打ち合わせをしている時に生まれてきました。仕様書の裏にその場で5線をひいてメロディを書いていましたから(笑)。あとは散歩をしながら考えることが多いですね。これは特に戦闘シーンの曲を考えるときに行うのですが、どうやら2足歩行のビート感がイメージを作るのに良いようです。



「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。


岩垂氏:
 遊んでみたいゲームですか? 万歩計と連動させて歩数でHPを回復できるRPGとか。まぁ、これは置いといて…。
  映画も登場してから100年たって、やっと市民権を得たと映画関係者は言います。それに比べると、ゲームはまだまだこれからのメディア。どんどんと新たなアイディアが出てもいいはずなのに、大作志向になってしまいすぎるのか、開発のための費用がかさむためか、単純でおもしろいゲームを作れなくなってきている現状はどうにかすべきです。開発者自身が楽しんで作っている作品が減ってませんか? 
  特に大手のメーカーさんにしっかりと認識してほしいのですが、僕はゲームは総合芸術だと思っています。おおむね映画と同じ考え方なのです。音楽に関してもゲームの中で使われる、または発売前の宣伝に使われる事などにおいては、当初の制作費の中にそれらの使用も含まれていると、ごく自然に思うことが出来ます。しかし、CDなどのメディア展開、インタラクティブ配信、別機種への移植など、その後の2次使用に関してはしっかりと著作者の権利を認めてほしいです。

  今後チャレンジしたいこととしましては、最近ビックバンド用の教則本を買いましたので、ちょっとJazz系にも挑戦してみようかと、密かに思っております。

 作品作りにおいて大切なのは音楽だけでなく、グラフィックもシナリオもなんでもそうだとおもうのですが「自分らしさ」でしょうか。言い換えると「自分が納得するもの」を作るということ。今自分に出来る最高の物を常に作るよう心がけましょう。
  「ティンダーリアの種」は、そういう意味でも自分の中で現在の最高傑作です。是非聞いてみてください!!


自分らしい作品を作ることが大切とおっしゃる岩垂さん。確かに、作品作りに妥協せず自分の全てを注ぎ込み、自分が納得できる作品だからこそ、多くの人を感動させる作品になっていくのでしょう。まだまだたくさんのお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。



岩垂氏:
 日比野則彦さんを紹介します。『エルヴァンディアストーリー』で、日比野さんが僕の作ったテーマ曲をアレンジしている1曲を聞かせていただいたのですが「まぁ、なんとセンスがいいんだろう」と。今度六本木のお店にも遊びに行かせてくださいませ!


『龍が如く2』や『メタルギア・ソリッド3』の主題歌「Snake Eater」などを手掛けてこられた日比野さん。一体どのようなお話をお伺いできるのでしょうか。次回もお楽しみに。それでは岩垂さん、今回は本当にありがとうございました。

■ゲームクリエイターのとっておきの話が聞ける!
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