クリエイターズファイル  
「コンセプトをしっかり持って」『FFIII』青木和彦さん
2006.10.02
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第243回
スクウェア・エニックス
青木和彦さん

 今回のクリエイターズファイルのゲストは、『ファイナルファンタジーIII』『半熟英雄』シリーズなど、数多くの作品に携わってこられた青木和彦さんです。ゲーム制作は仕事ではなく、充実感を得るためのものだとおっしゃる青木さん。『ファイナルファンタジーIII』制作時のエピソードはもちろん、さまざまなお話をお聞きしています。それでは、早速伺っていきましょう。


最初に、これまでの職歴、現在携わっているお仕事を教えてください。また、青木さんが現在のお仕事に就くと決められたとき、何か決心やきっかけがありましたか?


 

青木氏:
 1984年頃にアルバイトとして旧スクウェアに入社し、現在に至ります。
  今まで携わってきた作品としてはFC『ファイナルファンタジーIII』、SFC『ファイナルファンタジーIV』、PS『ファイナルファンタジーVII』、PS『ファイナルファンタジーIX』、SFC『クロノトリガー』、『半熟英雄』シリーズ、『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズ等があります。
  現在は、NDS版『ファイナルファンタジーIII』も終わり、一息つかせて貰っているところです。

 本人としては、「ゲームを仕事に」という決心は未だにしておりません。
  というのも、「仕事=一定時間労働して賃金をもらうもの」だと思うのですが、そういう感覚には今もなっていないからなんです。ゲームを作るということは単なる生活の一部というか何というか…。
  学生時代、アルバイト情報誌の当時では破格の「時給2,000円」という文字に躍らされて…、気が付いたらまだやってるってところですね。時給はそんなにもらえませんでしたが(笑)、充実感がありました。この充実感を求めて今も続けている次第です。

 


前回ご登場いただいた、浅野さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。



青木氏:
 浅野さんとの出会いは、NDS版『ファイナルファンタジーIII』の最初の打ち合わせの時に「『ファイナルファンタジーIII』はこうあるべきだ!」と彼が熱弁をふるっていたのが初めてです。
  オリジナルの『ファイナルファンタジーIII』を作った者としては、短所については胃がキリキリするほどわかっていたりするのですが、長所といわれると、なかなか冷静な判断が出来ない部分もありまして、浅野さんの言葉によって大きな第一歩を踏み出すことが出来ました。NDS『ファイナルファンタジーIII』では、彼の熱い思いがゲームの節々に反映され、面白いものが出来上がったのではないかと思っています。


これまで、自分の仕事に影響を与えた物事、大きな転機となった出来事などはありましたでしょうか。また、これまで青木さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。


  青木氏:
 過去に自分が関わった1つ1つの作品だけでなく、色々なものから大きなものを得ることができたと思いますが、ひとつ挙げるとするとハワイでゲームを開発した経験ですかね。 早起きしてサーフィンをしてから出社する社員達もいましたし、ハワイでは日本よりもゆっくりと時間が流れている感じでした。
  もっとも、忙しくなるとどこにいても缶詰状態は変わりませんが、世界各国から集まったスタッフと一緒に物作りが出来たのは良い経験になったと思います。
  ハワイは仕事よりも家族を大事にするという感じですから、飲み会や社員旅行も家族といっしょで、こういう生き方も良いんじゃないかと感じました。また、現地で多くの友人と巡り合えたことも大きな財産です。最近、ハワイはご無沙汰ですが…。

 思い入れが深いのはNDS版『ファイナルファンタジーIII』ですね。物忘れが激しいのであまり古い記憶はストックされていません。
  昔作ったものを新しく作り直すというのは微妙に難しい作業でしたが、「ああ、このモンスターにこんな名前を付けたんだっけ」とか「このセンスの無いアイテム名変えたいなあ」とか懐かしさを噛み締めながらの日々でした。
  オリジナル版当時は、タバコを吸いながら作業をし、マスターアップ直前にハードディスクが壊れ、以降「全社禁煙」になったと言うこともありましたが、今回は、無事完成までこぎ着けることができなによりです。

 


それでは、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか? また、ゲームのアイディアを生み出す時に行われていることなどありましたら、教えてください。


  青木氏:
 名作を1タイトルと言われると『ウルティマオンライン』ですね。
  もともと、多人数プレイのゲームが好きでしたが、『ウルティマオンライン』からはMMOの魅力を感じるとともに、作り手側としてカルチャーショックを受けました。「やりたいことを並べて、全部入れてみました」的な作りによく完成までこぎ着けたな、と感心しました。

 アイディアを出すときは、絵や写真をボーっと眺めながらというパターンが多いです。 たとえば、「一本の大樹の下、一人の少女が座って、眼下に広がる大草原を眺めている絵」を見ていて、この娘は、いつから座っているんだろう? いつか立ち上がって家路に着くのであろうが? その前に、たまたまここを通りかかった人がいたら…? その人と交わした会話が彼女の人生を変えるものであったら…? 主人公が、たまたま通りかかったNPCに影響を与えたら…? そのNPCが他のNPC達に影響し波紋のように広がっていったら…? 作り手が用意さえすれば、プレイヤーの行動するタイミングによって、プレイヤー一人一人が違う世界を作り出せるのではないか…? という感じです。こういった妄想が『クロノトリガー』以降、よく使われるイベントになっています。

 


「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。



  青木氏:
 目指すのは「一生遊べるゲーム」の制作ですが、こんなものを作ったらこっちは飯の食い上げです。
  そう遠くない将来、年金をもらいながら悠々自適なゲームライフを送りたいと思っているのですが、そんな老人にも楽しく遊べるものを作ってもらえるだろうか…。などと心配しております。こんな心配をしているのはおそらく世界で一人だけでしょうが
  さし当たって個人的な興味は、このインタビューを見てくださっている皆さんに楽しんでいただける内容になっているのかなあということです。

 ゲーム作りで大切なのは「コンセプト」だと思います。ユーザーの皆さんに何をどう遊んでもらうか。そのコンセプトを中心に全てのゲーム要素が構築されていく…。そして、「根気強い」「粘り強い」「こだわりの強い」「あきらめの悪い」スタッフによって作り上げられる、これが大切だと思います。
  開発者が、「こんなもんかな」と思った瞬間にその作品は、成長を止めてしまいます。完成品と、その3ヶ月前のバージョンでは、全く違うゲームかと思うほど変わっている作品は山ほどあります。
  「根気強い」「粘り強い」「こだわりの強い」「あきらめの悪い」新しい世代の皆さんが私の年金ゲームライフを楽しいものにしていただけるよう、心から願ってやみません。

 

ユーザーにどんなふうに楽しんでもらうのか、ということをしっかり考えなくてはならないとおっしゃる青木さん。自分がやりたいことを独りよがりに提供するのではなく、実際に遊ぶ人のことを考えて制作することにより、名作と呼ばれるタイトルは誕生するのでしょう。まだまだたくさんのお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。



 

青木氏:
 次のプロジェクトで一緒に「夜ふかし」するであろう人物、スクウェア・エニックスの齋藤力さんをご紹介したいと思います。「常に冷静であり、且つ、一つ一つのゲーム要素に熱いこだわりを持っている」開発者の鑑のような人です。って誉めすぎかもしれないですね。

 

 スクウェア・エニックスの新プロジェクトに携わられるという齋藤さん。一体どのようなお話をお伺いできるのでしょうか、次回もお楽しみに。それでは青木さん、今回は本当にありがとうございました。

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