クリエイターズファイル  
「好きなだけでは作れない」スクウェア・エニックス五井さん
2006.09.11
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第241回
スクウェア・エニックス
五井さん

 今回のクリエイターズファイルのゲストはMMORPG『クロスゲート』、Xbox 360『プロジェクト シルフィード』といった作品に携わられてきたスクウェア・エニックスの五井智久さんです。MMORPGや家庭用ゲーム機で数々の作品を世に送り出してきた五井さんですが、もともとはゲームとは接点はなさそうなお仕事をされていたとか。果たして、当時五井さんがされていたお仕事とは何だったのでしょうか? そして、現在のお仕事に就くことになったきっかけとは? それでは、早速お話を伺っていきましょう。


最初に、これまでの職歴、現在携わっているお仕事を教えてください。また、五井さんが現在のお仕事に就く決心をしたのはいつ頃、どんなことがきっかけでしたか?

 

五井氏:
 ハドソンで開発ディレクターを4年半、プロモーションチームに2年、商品戦略室に2年と在籍した後に退社しました。ハドソン退社後は、半年間のフリー期間を経て、エニックスにネットワークゲームプロデューサーとして入社し、現在に至ります。
  携わったタイトルとしては、国産MMO-FPS『JunkMetal』の原案、制作、運営のプロデュース。MMORPG『クロスゲート』のアジア圏運営プロデュース業務等があります。最新のプロジェクトでは、Xbox 360の『プロジェクト シルフィード』総合プロデュースに携わりました。

 実はゲーム業界に入る以前は、ススキノでバーテンをしてました(苦笑)。その時にかつてハドソン在籍時の上司だった人に出会い、意気投合したのがこの業界に入ったきっかけです。もう15年以上前になりますが…(笑)。
  元々ゲームは大好きでしたが、自分でゲームを作ろうなどと思った事は1度もなく、その方との出会いがなかったら今の私はないだろうなぁ、と思うと数奇な運命を感じます。ちなみに、その時の殺し文句は「ゲーム好きは沢山いるが、普通に人と話せるヤツはあまりいない。だからちゃんと話のできるヤツが欲しいんだ」でしたね。 いやぁ、懐かしい(苦笑)。

 


前回ご登場いただいた、山口さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。



五井氏:
 彼は元々、品質管理部、いわゆるデバックチームのスタッフでした。『プロジェクト シルフィード』のアシスタントを探していた際、別のプロジェクトで山口さんと一緒に仕事したことがあったんです。「あー、若手で元気のあるヤツがいるなー」と思い、引き抜いてこき使ってます(笑)。
  彼はとてもイケメンなんですが、非常に女の子とのコミュニケーションが苦手なんです。毎回この人「ネタかな?」と思うぐらいにトークがいけてないのがとても印象的です。


先ほど今まで携わってきた作品をお伺いしましたが、そういった作品制作に携わってこられて、ご自身が影響を受けることなどあるのでしょうか?


  五井氏:
  そうですねぇ。大きく影響を受けたといえば、やはりネットワークゲームとの出会いでしょうか。それまで、ハドソン在籍中はパッケージタイトルを作っていたんですが、その仕事の中で、たまたまオンラインゲームに触れる機会があったんですよ。その中でも最も衝撃を受けたのが『DIABLO』でした。あまりのハマり具合に会社を1週間な断欠勤してクビになりかけました(苦笑)。その後も『EverQuest』に出会った後は、廃人街道まっしぐらでしたね。そして、どうしても自分でネットワークゲームの仕事がしたくなって会社を辞めました(笑)。
  今にして思えば「イイ大人が何やってるんだろう!?」と思いますが、でも油断するとすぐあの頃に戻れそうで怖いです。

 思い出深いタイトルで言うと、『JunkMetal』と『プロジェクト シルフィード』。この2本ですね。
  『JunkMetal』では、「MOだけどFPSにしたいんだ!」とダダをこねまくり、原案からシステム、横山宏さんのところに飛び込みでお願いに行ったデザイナー選定、開発指揮など、全て自分でやりました。上手く行った事も失敗した事も沢山ありましたが、βテストから運営と本当に熱いファンの人達がゲーム世界そのものを盛り上げてくれて、応援や励まし、厳しいご意見まで、作り手からの一方通行ではない「作り手と遊び手のコミュニケーション」を体感させてもらった、という私にとっての貴重なタイトルです。
  『プロジェクト シルフィード』はその全く逆で、ひさびさのパッケージタイトル。しかもシューティングには一過言あるゲームアーツ、セタのスタッフをはじめ、シナリオ/CGではアニマの笹原さん他、これまたスゴイ魂の人たちを束ね、バランスを取り、ゲームを完成に導くという仕事をさせて頂きました。いやぁ、本当熱かったなぁ。みんなプロでスゴイ仕事してくれるんですが、それ以上に頑固でしたね…(笑)。『プロジェクト シルフィード』の企画が来た時に、「これは是非、着地させたいなぁ」と強く思いました。シューティングを作れるチームがあって、歴史のあるタイトルもある。なのに、今の市場ではシューティングはすでに下火なので、ビジネスとしてはなかなか着地できなさそうだったんですよね。でも、シューティングで育った世代としては「シューティングというジャンルへの恩返し」をして、復権の一助にでもなれれば、と思い引き受けました。そんな気持ちで始めたのですが、本当に多くのこだわりのスタッフと出会うことができ、結果として、自分自身得るものの多いプロジェクトだったと思います。

 


なるほど、作品に携わられながらご自身の仕事、考えに対して影響を受けてこられたのですね。それでは、五井さんが今までプレイされてきたゲームの中で、名作を1タイトル挙げるとしたら何でしょうか?


  五井氏:
  名作を1タイトルですか…。難しいですねぇ…。本当に素晴らしいゲームは沢山あるのでとても迷いますが、「自分の人生を変えた1本」という意味ではやはり『DIABLO』でしょうね。 月の電話代が10万円を越えてまで徹夜で遊んで、挙句会社まで辞めたんですから!(笑)
 


会社まで辞められるほどのめり込まれたとは(笑)。確かに、そこまで夢中にさせてくれるゲームは名作ですね(笑)。それでは今後、どんな作品を手掛けていきたいかを教えてください。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うことをお聞かせ下さい。



  五井氏:
  自分自身、将来ゲームには「オンライン」と「オフライン」の垣根はどんどんなくなって行くんだと思っています。 今のようなヘビーなMMOも残るでしょうが、もっと全体に「気軽にネットワークを使うゲーム」が増えて行くと思います。今のニンテンドーDSタイトルや、Xbox 360がまさにその入り口にいて、どんどんシームレスになって行くんだろうと思います。その時にハードの違いを超えて、ネットワークを意識しない真のコミュニティシミュレーターが作れたらきっと楽しいだろうなぁと思っています。きっともう遠くない未来にそんな環境があるでしょうからね。
  今回『プロジェクト シルフィード』で久々にパッケージゲームをやらせてもらったので、次はまたネットワークゲームに戻りたいですね。ネットワークゲームから少し離れた事で、また一層冷静に見る事ができるんじゃないかと思ってます。『プロジェクト シルフィード』のオンラインヴァージョンとか熱いなぁ。ぶっ飛びたいなぁ(笑)。

 やっぱり作品作りに必要なのは「愛」ですかね。いや本当に。
  ゲームを作るのはとても大変です。「遊ぶモノを作るのになんでこんな大変な思いをしてるんだろう」とヘコむ事もしばしばです(苦笑)。「好きなだけではゲームは作れない」のです。仕事として、プロとして従事する以上、現実はシビアですから。でも最後には「本当にゲームが好きじゃないとこの仕事は務まらない」と思います。結局、どんな仕事もそうですよね?
  初心を忘れず、私も次のタイトルに望みたいと思います。次も何かメカものがやりたいなぁ。

 

 ゲームに限らず、“愛”を注ぎ込むことが大切とおっしゃる五井さん。“愛”と呼べるだけ好きなものだからこそ、熱い情熱が注ぎこまれた名作となるのでしょう。次回作、非常に楽しみにしています! まだまだ、たくさんのお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。



 

五井氏:
 スクウェア・エニックスの浅野智也さんを紹介します。ニンテンドーDS版『ファイナルファンタジーIII』を送り出したばかりの勢い抜群の若手プロデューサーですよ!

 

 ニンテンドーDS『ファイナルファンタジーIII』のプロデューサーを務められた浅野さん。一体どのようなお話をお伺いすることができるのでしょうか? 次回もお楽しみに。それでは五井さん、今回は本当にありがとうございました。

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