クリエイターズファイル  
「大切なのは強い意志と強い気持ち」アニマ・笹原さん
2006.08.28
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第239回
アニマ
笹原和也さん

 今回のクリエイターズファイルのゲストは、『ドラッグ オン ドラグーン』『プロジェクト シルフィード』といった数多くの作品のムービーを手掛けているアニマの笹原和也さんです。大学時代、自分が何をしていいかわからずにいた頃、出会ったのが3DCGだという笹原さん。この出会いが、ゲーム業界を志すきっかけになったそうです。それでは、早速お話を伺っていきましょう。


最初にこれまでの職歴、そして現在携わっているお仕事を教えてください。

 

笹原氏:
 1997年の10月に「笹原組」という会社を設立し、2002年4月に「アニマ」に名称変更しました。会社設立以前では、エムケイ、東映アニメーションにお世話になりました。エムケイは、日本最初のCGプロダクションであるジャパン・コンピュータ・グラフィックス・ラボ(JCGL)の社長、金子満さんが作った会社です。ちなみに、金子さんは僕の大学の先生でした。
これまでにお手伝いさせていただいたゲームとしては、『忍道 戒』、『ヘビーメタルサンダー』、『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章』といった作品のムービーがあります。
最新作としては『プロジェクト シルフィード』のムービー監督を務めました。

 僕が3DCGと初めて出会ったのは、1992年か1993年の時です。その頃の僕は、武蔵野美大の入学試験に合格したけれど、何をしていいのか全くわからずに、毎日サンドバックを蹴っていました。そんな大学2年生の時、金子先生の授業で、3DCGに出会ってしまったのです。
その後、3DCGのソフトに触れるようになって1週間ほどたった頃、「俺は世界一になれる!」と思いました。それが、この業界に入ったキッカケです。まだ世界一にはなれてませんが、我ながらなかなかおもしろい勘をしていると思っています。

 


これまで、自分の仕事に影響を与えた出来事、大きな転機となった出来事などはありましたでしょうか。



笹原氏:
 自分に影響を与えたくれたことは3つあります。まず、1つ目は金子先生の元で3DCGに出会ったこと、2つ目には、映画監督の佐藤嗣麻子さんと出会い一緒にお仕事させていただいたこと、そして3つ目が、アニメ監督の北久保弘之さんに出会って一緒にお仕事させていただいたこと、になるかと思います。
佐藤監督には映像のセオリーというか、下世話な言い方をすると、映画っぽい映像の作り方などを教えていただきました。その頃のCGクリエイターというのは、映像制作者としては素人みたいな人が多く、僕もそのうちの一人でしたから、たいへん勉強になりました。
 北久保監督からは、さらに多くのことを学びました。まず、出会ったその日に10時間に及ぶミーティングを行い、その当時の3DCGがいかにダメかを教えて頂きました。その時は「なんて熱い人なんやあ」と思いましたが、基本的に話が長い方だったようです。北久保監督からは、“いかにキャラクタを立てるか”という主にキャラクタデザインの基礎を学びました。


これまでのお仕事の中で、“これは良い”と感じたアイディアは、どんなものでしたか?


  笹原氏:
 『ヘビーメタルサンダー』製作時には面白いアイディアが浮かびましたね。『ヘビメータルサンダー』はテーマが「ロック」で「クレイジー」でしたので、いかに倫理規制にひっかからないように、アンダーグラウンドな表現をするか? ということに、僕は一生懸命でした。それを表現するのに手っ取り早いのは、まだ誰もやってないアンダーグラウンドをやることだと考えました。そこで『ヘビーメタルサンダー』のムービー中で、「美女ロボットが母親ロボットの股間から産み落とされる」というアイディアを思いつきました。これを思いついた時には「こんなことを思いつくなんて、オレってすげえ!」と思ったのですが、倫理規定のコメントとしては、「倫理規定にはひっかからないが、不快である」という返答を頂きました。ある意味成功でしたが、やりすぎは引かれるみたいです(笑)。
 


これまで笹原さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。また、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか?


  笹原氏:
 思い入れの強い作品はいくつかあります。
 まず、僕が初めてムービー監督という立場でゲームムービーを作らせていただいた『ドラッグ オン ドラグーン』。この作品が一つの転機になったように思います。今見ると稚拙な点も多いですが、「今年イッパイはドラゴンと心中」と書いた紙を会社の壁に貼ってがんばりました。そして、多くのスタッフに苦労をかけました。
 『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章』では、70分に及ぶムービーを半年かけて作りました。実質的には総監督的な役割でした。いわゆるローポリゴンムービーで、画面の質は低いところもありますが、アニメーションと演出には気を使いました。モーションキャプチャーの時は、まるでベルセルクのお芝居を作っているような感覚で楽しかったです。元々は180分近くのボリュームが想定されていたので、それをクライアントさんと共に削っていく作業が大変でした。この仕事で初めて、外注の会社さんにお仕事をお願いするということをやりました。そして、多くのスタッフに苦労をかけました。
 『ヘビーメタルサンダー』ではムービー監督を務め、絵コンテなどを考えるプリプロダクションの部分から関わらせて頂きました。初めての経験です。セルアニメーションの会社にムービーをお願いするのも、やはり初めての経験でした。映像はセルアニメーションパートも含めて、全60分のムービーとなりました。声優さんを決めるのも楽しかったですね。大塚明夫さんをキャスティングした時は、感無量でした。しかしながら、セルアニメーション制作をコントロールするのは、とても難しかったです。そして、多くのスタッフに苦労をかけました。
 最新作『プロジェクト シルフィード』でもムービー監督を務めましたが、『ヘビーメタルサンダー』の時よりもさらに広い範囲をコントロールすることが出来ました。3DCGパートのみで、55分くらいのムービーを作りました。外注の会社さんのスタッフを含めると、おそらく100人以上のスタッフが参加していると思います。とにかく、55分という長時間のムービーの制作管理がタイヘンでした。しかしながら、とてもやりがいがありましたし、みなさんのおかげで、たいへん素晴らしいものが出来上がったと自負しています。

 ゲームの中で名作といえばBlizzardの『WARCRAFET3』です。
PCゲームなのですが、このゲームのムービーは発売当時、世界最高峰の一つだったように思います。『ドラッグオンドラグーン』のムービーを作っている時は、「目指せ、『WARCRAFET3』」を合言葉に制作していた思い出があります。このゲームはいわゆるリアルタイムストラテジーというジャンルのゲームで、僕が知る中では、最も知性を問われるゲームだと思っています。だから、友人と対戦した際に、勝てばとてもハッピーな気分になれますが、負けるとすべてをぶち壊したくなる気分になります。ところが、僕はぜんぜん勝てないのです。このゲームに勝てないと、人間の能力として劣っているような気さえしてきます。そんなわけで、『ドラッグ オン ドラグーン』開発時からやってますが、いまだに飽きません。

 


「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。



  笹原氏:
  僕は基本的に映像屋なので、一番に何がやりたいかと問われれば、「ファイナルファンタジーⅦ アドベントチルドレン」のようなCG映画をつくることです。60~90分の連続した物語のある映像を作るということは、ゲームムービーの作り方とは根本的に違うので、簡単にできるとは思っていないのですが、その準備は整いつつあります。CGを始めた時からの夢なので、あと2、3年の内に作り上げたいと思っています。
 プライベートでチャレンジしているのは、ペットのハムスターに食べさせるためのミールワームをいかに栄養満点にするか、ですね。次に興味があることは、今年中にアマチュアキックボクシングの試合に出ることです。ただ、最近は仕事がいそがしくて、練習に行けてないので、今年中の出場は危ぶまれてきましたが…。あとは、モーションキャプチャーのアクターさんをよくお願いしている、ACファクトリーという劇団の方に、殺陣や芝居を教えて頂いたりしています。

 ゲーム業界に限らず、自分がなりたいと思う職業につくために、一番大事な才能は「気持ち」です。「私はこの仕事が好きだ」という気持ちが強いということは、絶対的に必要な才能です。好きでないものはいくらがんばっても無理なので、好きでないな、と気付いた時点で諦めましょう(笑)。
 次に大事なのは、「私はこれをやり遂げる!」という強い意志です。ただ、それは思い込みでもいいのです。まずは「自分はこれが出来る」と思い込むこと。これがすべての原点だと思います。自分で「出来る」と思ったことは必ず実現します。根拠はありませんが、僕はそう信じています。
 世に作品を送り出すための一番大事なことは、「計画性を持つこと」です。計画性がないと、いくらセンスや技術に優れていても、それが発揮されないことがたくさんあるんですよ。なんつって、面白みの無い話になってしまったので、もうすこし夢がある話をしましょう。
 表現者として、一番大切に思うことは、「いかにユーザーの感情を揺さぶる表現をするか」だと思っています。好感でも嫌悪感でもいいので、とにかく強い感情を呼び起こさせるよう心がけています。主役級のキャラクタに対して、好きなら大好きになるような、嫌いなら大嫌いになるような、そんな作り方を目指しています。最終的には、見終わったユーザー、プレイし終わったユーザーが、「明日もがんばるぞ!」とか「夢はきっと叶うんだ!」と思えるような作品作りをしていきたいですね。

 

 強い気持ちが一番の才能だとおっしゃる笹原さん。強い愛情、熱い情熱を持って生み出された作品だからこそ、人を感動させるものになるのでしょう。まだまだたくさんのお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。



 

笹原氏:
 『プロジェクト シルフィード』のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの山口海渡さんを紹介します。

 

 スクウェア・エニックスとして初めてのシューティングゲームとなる『プロジェクト シルフィード』を手掛ける山口さん。一体どのようなお話をお伺いできるのでしょうか? 次回もお楽しみに。それでは笹原さん、今回はありがとうございました。

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