今回のクリエイターズファイルのゲストには『グランディア』『ガングリフォン』など様々な作品を手がけてこられた宮路武さんです。お兄さんの宮路洋一さんと一緒に19歳のときにゲームアーツを立ち上げられたという宮路さん。なんと、中学2年生の頃にはすでにプログラマーとして活動されていたとか。それでは、早速お話をお伺いしていきましょう。
宮路氏: 中学校2年生の頃にゲーム作りのプロとして、兄の宮路洋一と共に、フリーのプログラマー&ゲームデザイナーとして仕事を始めました。その後、アスキー出版にてPC6001、MSX向けのゲーム製作を経験して、19歳のときに兄を中心としたアスキー出版のメンバーと共にゲームアーツを立ち上げました。 そこで私が出した最初の作品がPC88『シルフィード』です。これは3Dポリゴンの草分け的ゲームで、ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』で息抜きをしながら、遊びながら作っていた記憶があります。 その後、メガCD向けのシミュレーションゲーム『天下布武』、セガサターン向けRPG『グランディア』と、リアルロボット3Dシューティングゲーム『ガングリフォン』を作りました。どの作品も魂を込めて過ぎて制作時間がかかったゲームです(笑)。 現在は携帯電話向けのカジュアルゲームメーカーであるGモードの社長をやっているので、実質上ゲーム製作に携わっていませんが、助言を求められたときにはクオリティアップのためのアドバイスを行っています。 携帯電話向けのカジュアルゲームというと、誰でも作れるというようなイメージがありますが、誰でも作れるからこそ、他社の作品より面白いものを作るのが難しいとも言えます。作るだけなら誰でもできますが、面白いものを作るのは難しい。だからGモードのゲームが一番面白いと言われるように、作品毎に魂を込めてもらうべく叱咤激励をしています。 ちなみに、私がGモードのゲームで好きなものは、問題が最高に面白い『数独(SUDOKU)』、超激辛難易度の『テトリスブラック』、ケータイならではの推理もの『いづみ事件ファイル』、インチキ無しのガチンコ麻雀勝負ができる『遊々麻雀』などです。本当はまだまだありますが今回はここまでにしておきます。
実は、プログラムを始めたころマイコンを持っていなかったので、秋葉原のマイコンショップにあった店頭デモ機を触ってプログラムを組んでいたんです。そんなある日、マイコンショップの店長さんに、「ボヨヨヨーン。君たちバイトしな~いぃぃ?」とか声をかけられ、強引に連れて行かれたことがこの仕事に就いたキッカケになりましたね。 マイコンショップではゲームを作ったり、デバッグをしたりと様々なことをやりました。 思い出深かったのは、店長から「バグを1件見つけるごとに1万円を出すからバグだしをしてくれないか」と言われたことですね。確か3人で、徹夜でバグだしを行って100件以上見つけたのですが、翌日3人で1万円に値切られました。「大人は汚い!」と思いつつも、そりゃそうだよな。という感じで皆納得していました。充実した1日でした。
前回ご登場いただいた、河上さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。
思い入れの深いタイトルは3つあります。 まずひとつめは、約3年の開発期間を必要としたPC版『シルフィード』ですね。 これはポリゴンを使ったバードビューの3DCGシューティングゲームなんですが、当時は「3DやCGって何?」という時代でしたので、かなりインパクトの強いゲームが作れたと思います。なんと言っても1986年発売ですから。 今考えると、大変なものを作ったなぁという感じがします。後年、カーナビのバードビュー特許の無効裁判で、大手電気メーカーより裁判の証拠として取り上げさせて欲しいとの連絡があったときはビックリしました。電気メーカー調べにおいて、『シルフィード』はポリゴンを使ったバードビューコンテンツの最初の事例だったらしいです。
ふたつ目は『グランディア』ですかね。 40時間ぐらいのプレイ時間を目処につくっていったら、80時間かかる超大作になってしまいました。本当はもっとたくさんの要素を入れる予定でしたが、プレイ時間の都合上ばっさりとカットしました。 当時の主流RPGは、破局が起こって人がいっぱい死んでも、自分たちの仲間が生き残ったからHAPPYという悲劇的なストーリーのゲームが主流でしたから、『グランディア』では、本当のHAPPY ENDのゲームを作ろうということで、人が死なないストーリーRPGを目指し、皆でシナリオの作りこみをしました。このあたりは、今でも評価できるところではないかなと思います。
3つ目は『ガングリフォン』です。 こちらもストーリーを意識して作りました。人間が戦争という愚かな行為をエスカレートさせていく中で、ギリギリのとこに追い込まれて自分たちの愚かさに気づくというストーリー構成を、ゲームのステージでどう表現するか苦心しました。 世界観やストーリーラインがしっかりしていたので、ゲーム全体に厚みが出せたのではないかと考えています。最近でもたまに自分でプレイをしますが、やるたびに「俺は戦場に戻ってきた!」と思いながら熱心にプレイしています。
(※1消費者のニーズ(需要)の高い商品) (※2ある程度のニーズ(需要)はあるものの、その規模が小さいこと)
私のアイディアの出し方は、課題解決型です。 先に解決したい課題を具体的に整理しておいて、しばらく思考。その後、また何か思いついたらその時点でさらに思考という感じで、漸進(ぜんしん)的に思考をまとめていきます。 課題は常に100個以上あるので、新たな発見をアイディアとして課題に結び付けられる可能性も当人比で100倍ということになります(笑)。なので、アイディアが枯れることはなく、どちらかというとアイディアが出すぎてまとめるのに一苦労という状態ですね。 ただ、思いついたばかりアイディアのレベルでは、大した価値はありません。その後、磨きに磨いて、誰もがわかる形までアイディアを磨き抜いて、ようやくアイディアに価値がでてくるものだと思っています。 今までの私のゲーム作品もそうですし、現在の会社であるGモードも、私にとっては、毎日磨いて、ようやく美しく輝いた宝石のようなものです。そこのところを皆さんに見ていただきたいですね。
「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。
作品作りに大切なのは、全身全霊を傾け、作品に魂を込めることだと思います。 魂の込め具合が、それぞれの作品性の違いになります。最近のゲームは、魂の込もっていないモノだらけなので、これからゲーム業界を目指す人には、魂を持った熱いゲーム職人になってくれることを期待いたします。
魂を込めて作品を作ることが大切とおっしゃる宮路さん。きっと、クリエイターが多くの愛情、情熱を作品に注ぐことによって、名作として長くプレイヤーに愛されるタイトルが生まれていくのでしょう。まだまだたくさんのお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。
宮路氏: ピラミッドの飯淳さんを紹介します。『エメラルドドラゴン』のシナリオを作った“レジェンド”クラスの人です。
『エメラルドドラゴン』『エイナス ファンタジー ストーリーズ』『聖夜物語』といった作品を手がけてこられた飯さん。一体、どのようなお話をお伺いすることができるのでしょうか。次回もお楽しみに。それでは宮路さん、今回は本当にありがとうございました。