Last Update:2006/04/03
週に1回ゲームクリエイターにお話を聞いて、お友達まで紹介してもらっちゃうスペシャル企画だ!
>>第223回

実弥島巧さん

 今回のクリエイターズファイルのゲストには『テイルズ オブ シンフォニア』『テイルズ オブ ジ アビス』といった作品のシナリオを手がけられた実弥島巧さんです。もともとはライターとして活躍されていた実弥島さんですが、あることがきっかけとなり『テイルズ オブ シンフォニア』のシナリオを手がけられることになったとか。それでは、早速お話をお伺いしていきましょう。

(C)藤島康介 (C)2005 NAMCO LTD.

最初に、これまでの職歴、現在携わっているお仕事を教えてください。また、実弥島さんが現在のお仕事に就く決心をしたのはいつ頃、どんなことがきっかけでしたか? その時のエピソードなどと合わせてお聞かせ下さい。

 

実弥島さん:
 元々はフリーライターとして活動し、ゲームのノベライズなど、出版関係に携わっておりましたが、ご縁があって『テイルズ オブ』シリーズのシナリオを書いてみないかと声をかけていただきました。それで『テイルズ オブ シンフォニア』のシナリオからシリーズに参加させていただきました。最近では2005年12月に発売されました『テイルズ オブ ジ アビス』のシナリオも手掛けました。現在は『エミルクロニクルオンライン』のノベライズなどに関わっております。

  実はゲーム関係の仕事をするとは、少しも考えてもいませんでした。ライターをしている頃に、メガCDの『LUNAR ETERNAL BLUE』のテストプレイヤーをやらせていただいたのですが、その時、かなりマニアックな感想を提出したようなんです。それで私のことを覚えてくれたある人が『テイルズ オブ シンフォニア』のシナリオライターを探している時に「あのマニアな奴はどうだろう。確か小説も書いていたはずだ」と、私に声をかけてくれたのが、現在の仕事に就くきっかけでした。

 


前回ご登場いただいた、吉積さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。



実弥島さん:
 『テイルズ オブ シンフォニア』で初めてお会いしたときから、いつも気さくに声をかけて下さって、心遣いも細やかなので、うっかり偉い方だということを忘れてしまいそうになります。特に、お子さんのお話の時は、目尻が下がって優しげなパパの顔になられて、ますます親しみが! 現場では、ここぞというときに決断力を発揮して下さるので頼りになる方です。


これまで、自分の仕事に影響を与えた出来事、大きな転機となった出来事などはありましたでしょうか。また、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか?

  実弥島さん:
 
転機となったのは『テイルズ オブ ジ アビス』に関わると決めたことでしょうか。 実は『テイルズ オブ シンフォニア』終了後、体を壊してしまいまして、当時関わっていた仕事をやむなく全て手放したことがあったのです。周囲にはご迷惑をおかけしましたし、自分も悔しいやら情けないやらで、相当落ち込みました。その時、仕事に対する責任というのは、不意の事故や不可抗力すらも抱え込むことだと痛切に感じたんです。当たり前の話ですし、理解していたつもりでしたが、自分が実際に病気になるまで、その本当の重みがわからなかったんですね。ですから、復帰して次にお引き受けする仕事は、不測の事態が起きても責任を負えるような態勢でと決めていました。

  名作として挙げるとすれば『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ』でしょうか。本当は「ロトシリーズ」と一括りにしたいのですが、あえて1タイトルとなると、やはりこれだと思います。私は文章を書く人間ですので、やはりテキストに注目してしまうのですが、とにかく『ドラクエ』ほど秀逸なテキストのゲームは見たことがありません。ゴテゴテせず、シンプルで、尚かつ一言の中に色々な意味が込められていて、笑ったり泣いたり出来る。あれはセンスがないと書けないテキストですよね。私ごときが言うまでもなく、素晴らしいゲームだと思います。
 


これまで実弥島さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。また、これまでのお仕事の中で、“これは良い”と感じたアイディアが浮かんだ瞬間は、どんなときでしたか?

  実弥島さん:
 関わったタイトルはどれも思い入れが深いですし、大事な作品なので難しいですね。ただ、初めてゲーム開発に携わった『テイルズ オブ シンフォニア』と最新作の『テイルズ オブ ジ アビス』は、それぞれ印象深いです。これは伝聞なのですが、開発末期になるとスタッフも変にテンションが上がっているらしく、仕様変更などの論争が起きるたび、返答に詰まると「理屈じゃねぇんだよ!」という登場キャラクタの台詞を引用して、無理矢理会議を終わらせるという荒技が流行していたようです。

 やはりアイディアが浮かぶのはブレストの場が一番多いです。人と話すことで自分も考えを整理できますし。詳しい経緯は失念してしまいましたが、『テイルズ オブ ジ アビス』のブレストで、私の言いたいことが他のスタッフに上手く伝わらなかったことがあって、自分自身でいらついたことがありました。それが主人公の日記という「あらすじシステム」に繋がりました。「違うんだ、言葉の選び方が下手だっただけで、本当はこういうつもりだったんだ」という心の叫びを見られたら、誤解されやすい主人公の性格もプレイヤーに分かってもらえるのではと。

 


「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。


  実弥島さん:
 個人的にゲームというジャンルは、キャラクタを描くのにもっとも適したジャンルではないかと考えています。リアルな世界で訴えれば滑稽とも取られそうな愛とか友情とか道徳観も、自分が操作することで世界に介入できるゲームなら、まだ受け入れられやすいのではないでしょうか。たとえそれで負の感情を抱いたとしても、それを感じたということは、キャラクタや世界に対して、なにがしかの意見を持ったということですから、成功だと思うんです。何が好きなのか、何が嫌いなのか、それがくだらなくて些細でも、プレイヤーの方が自分の価値観を見つめるきっかけになるゲームを作れたら嬉しいです。
  個人的に今一番興味があるのは、カニです。冬に越前ガニを食べてきたのですが、あまりにも繊細で魅惑的な味だったので、感動しまして、これから毎年食べに行くと決めました。ただカニは食べ過ぎると、花粉症のように、ある日いきなりアレルギーを発症するという噂を聞きまして、非常に心配しています。

 大切なのは好奇心を持つことだと思います。例えば自分の好きな食べ物があったら、何故それが好きなのか、作り方はどうなっているのか、自分以外の人間はそれをどう思っているのか、調理法は、歴史は、と転がしていくと、色々なことがわかりますよね。色々な人の意見も聞くことになるでしょうし。これは嫌いなものに対しても同様です。好きなものの良さは、嫌いなものがあって初めてわかると思うので。物作りには様々な視点が要求されると思うので、一つの物を多面的にとらえる癖がつくといいのかなと思います。

 


好奇心を持つことが大切だとおっしゃる実弥島さん。ただ「好き」「嫌い」で終わらせるのではなく、ひとつのことを好奇心を持って追求することが物作りには欠かせないのですね。まだまだお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。


  実弥島さん:
 ポケットモンスターのピカチュウの生みの親であるにしだあつこさんをご紹介します。私のグルメ仲間です。
 

人気キャラクタを生み出したにしださん。一体どのようなお話をお伺いできるのでしょうか? 次回もお楽しみに。それでは実弥島さん、今回は本当にありがとうございました。