Last Update:2005/12/05
週に1回ゲームクリエイターにお話を聞いて、お友達まで紹介してもらっちゃうスペシャル企画だ!
>>第207回
ナムコ
奥村大悟さん
 今回のクリエイターズファイルのゲストには、ナムコの名作RPG『テイルズ オブ』シリーズに関わってこられた奥村大悟さんをお招きしています。『テイルズ オブ エターニア』以降、ほとんどのシリーズ作品でキャラクタデザイン、グラフィックなどで携わってこられた奥村さん。ひょんなことからキャラクタのイメージが生まれたお話など、たくさんの話をお聞きしています。それでは、早速お話を伺っていきましょう。

(C)藤島康介 (C)2005 NAMCO LTD.


最初に、これまでの職歴、現在携わっているお仕事を教えてください。また、奥村さんが現在のお仕事に就く決心をしたのはいつ頃、どんなことがきっかけでしたか?

  奥村氏:
 大学卒業後、新卒としてナムコに入りました。入社してからは主にキャラクタに関する仕事をすることが多かったと思います。『テイルズ オブ エターニア』で大晶霊のイラストを描いて以来、『テイルズ オブ』と名の付くタイトルにはほとんど何らかの形で関わらせてもらっています。目立ったところでは『テイルズ オブ シンフォニア』や『テイルズ オブ リバース』のモンスターイラスト作成・デザインなどをやりました。あと、『テイルズ オブ ザ ワールド ~サモナーズ リネージ~』ではキャラクタデザイン、『テイルズ オブ タクティクス』では新規キャラのデザインをやりました。数点スケッチを描いたというものではGBA版『テイルズ オブ ファンタジア』の新キャラのデザインとイラスト作成をやっていたりします。『テイルズ オブ エターニア オンライン』でも「ねこにん」のデザインをやりました。
数少ない『テイルズ オブ』以外の仕事としては『ゆめりあ』のキャラクタデザインがあります。
 最近の仕事では『テイルズ オブ ジ アビス』ですね。自分が携わるタイトルとしてちょうど10本目になります。このタイトルでは、イオンや六神将のイラスト制作などのパブリシティ向け作業、グラフィック全体のディレクション、デザインとその監修作業など絵に関することを全般的にやらせてもらいました。余談ですけど、『テイルズ オブ ジ アビス』ではかなり藤島先生の絵に似せたつもりだったのですが、勘のいい人にはばれてしまったようで残念です。

 今の職業に就くきっかけとなったのは、就職活動時に大学の教授に言われた一言だったと思います。
 学生時代はゲームではなく、シド・ミードのデザインやルイジ・コラーニの工業的作品に憧れて工業デザインを専攻していたのです。ですが適性が無かったようで…。それで工業デザイナーとして就職することをあきらめていたんです。ですが、そのときに趣味で作ったポリゴン人形を教授に見せたら「おまえ、これグラフィックデザインならいけるんじゃないか」みたいなことを言われてその気になりましたね。そして、絵が描けて自分の好きな事をある程度出来そうな職業と言うことで、現在の仕事に就こうと思いました。そのとき、教授に見せたポリゴンをいじるきっかけになったのは雑誌で『風のクロノア』のムービーパートの制作記事を見たことなんです。ナムコ入社後、最初に関わったプロジェクトが『風のクロノア2』というのはなかなか運命的です。

 


前回ご登場いただいた、田澤さんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。


奥村氏:
 田澤君は物作りに対して実直な人です。巌のごとき男ですね。ある時、自分が職場で絵を描いていたら田澤くんが側で「これいいね」みたいなことを言ってくれたのですよ。初めて作品を褒めてもらったんじゃないでしょうか。感激しました。でも、田澤さんの指先を見たら、自分の作品ではなく隣に広げていた資料を指さしてました。


これまで奥村さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。また、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか?

  奥村氏:
 思い入れが深いものでまず上げるのは『ゆめりあ』です。ギャルゲーのキャラクタデザインという誰もがうらやむ…かどうかはともかく、今まで指をくわえて眺めるばかりだった仕事をやれ、しかもアニメ化までしたんですから一生の思い出になった作品です。あまりにも良いこと過ぎて、来年には死ぬんじゃないかと思いました。自分を採用してくれた有田ディレクターと松尾女史には足を向けて寝られません。
 あとは、一番最近の仕事である『テイルズ オブ ジ アビス』ですね。『アビス』では光栄にもグラフィック全体に対して意見を言える立場で関わる事が出来ました。吉積プロデューサーにも足を向けて寝られません。『ファンタジア』を学生の頃にやっていた自分としては感慨もひとしおです。重要なポジションでかなり気負っていて「グラフィックが駄目って言われたら全部自分の責任」くらいのつもりで仕事をしていました。このプロジェクトは、喜びも、驚きも、脂汗がでるような苦悩も、かつて無いほどの濃度で体験させてくれたのではないかと思います。なかでも、今までつっこんだやりとりの無かったテイルズスタジオの『シンフォニア』開発スタッフとがっちり仕事が出来たことは強く心に残っています。普通だったら、「出来ない」って断られるほどのリテイク指示を出したんですが、最後の最後まで忍耐強く応えてくれましたことに、深く感謝しています。今回、『アビス』のグラフィックが良かったというなら、それは彼らの忍耐と作品に対する誠実さの賜だと思います。

 名作として挙げるのは『ガンパレードマーチ』です。一時期、口を開くとこの作品の話しかしないくらいにはまってました。
 この作品の何がすごいかというと、キャラクタとシナリオを維持したまま、あらゆる状況を作り出し成立させ、ユーザーの介入に動的に対応できてしまうという点です。ゲームの持つ懐の広さ、そして、プレイヤーの選択に説得力とゲーム性と持たせた発言力という概念は、RPGにおける"経験値"という概念に匹敵する発明ではないかと思います。
 キャラクタとゲームを共存させ、双方の価値を高めているのは、どちらかがどちらかの付加価値にとどまってしまっていがちなゲームにとって、理想的な回答のひとつではないかと思います。

 


これまでのお仕事の中で、"これは良い"と感じたアイディアが浮かんだ瞬間は、どんなときでしたか? また、これまで自分の仕事に影響を与えた映像、文学、音楽作品などはありますでしょうか。

  奥村氏:
 アイディアが思い浮かぶのは、手を動かして試行錯誤しているときや、道を歩いているときが多いでしょうか。常に雑念だらけの状態なのですが、とくにこのシチュエーション時には非常に良いアイディアが浮かびやすくなります。
 『アビス』の制作中、帰る頃には電車がなくなるということがよくありました。そんな時は家まで1時間くらい歩いて帰るのですが、その道すがら「ルークの家にいるメイドさん」のイメージがふっとわいてきてしまって、「ルークの家のメイドさんの衣装、赤黒がよいです。赤黒!」という感じで夜中にスタッフへ電話をかけてしまいました。ただの迷惑電話です。後日謝りに行きました。これでは、アイディアでもなんでもないですね。

 作品ではありませんが、高校時代の友人には強く影響を受けたと思います。彼は高校時代の同級生で、現在は広川犬介というペンネームで絵やマンガを描いています。高校生とは思えない描写力で、メカとか人物を描いていて、今見てもどきどきする絵なんですよ。それにとても憧れて、彼の絵に少しでも近づこうと必死に練習したことが、今の自分の絵やデザインの下敷きになっています。
 もう一人はロベルト・フェラーリさんです。タツノコキャラの達人で、大変カッコイイ絵を描かれる人です。とても誠実な人で、しばらくの間、絵のことを丁寧に教えてもらいました。自分が、やれ腕の形がわからん、脚の形がわからんと泣きつくたびに彼は袖まくりをして、自分の腕で筋肉の流れの説明や、ざら紙の裏にわかりやすい解説図を書いてくれたりしました。今の絵の体つきはこの人に教わった事を応用して作っているものです。自分の恩師とも言うべき人です。
今の自分があるのもこの二人のおかげです。

 


最後に、「こんなゲームをつくりたい」「こんなゲームで遊んでみたい」など、今後のゲーム・エンタテイメント業界におけるご自身の展望や、業界全体への希望などをお聞かせ下さい。そして、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、作品作りにおいて一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。

  奥村氏:
 今後は、目の前で起こっていることに参加している感覚のあるゲームを作りたいと思います。自分の行動に対し周囲が能動的に変化し、それが明確な状況を持っている。例えば、ムービーが流れて女の子を助けるのと、自分のコントロールで女の子を助けるのではドキドキが全然違うじゃないですか。そんな自分でやった感じのするゲームが作りたいですね。あと、明日を力強く生きるきっかけになるような初期衝動を生み出すようなゲームが作れたらと思います。どんなもの作ればいいか全然わからないので、後者はただの願望ですね。
 また、自分は「魅力的に見えない職業に優秀な人はなかなか集まってくれない」と思っています。ですので、ゲームを作る人々のステータスが諸外国のように高くなるよう、この業界全体を盛り上げていくべきではないかと僭越ながら思ってしまいます。
 個人的に挑戦したいのは、ゲームという趣味を仕事にしてしまったので、やはりゲームがらみです。『アビス』では、一部モデリングをしたりテクスチャを描いたりしていますが、しばらくポリゴンにふれていなかったせいかロートルであることをつくづく思い知らされました。スキルアップのついでにみんなで遊べたら良いと言うことで、アンリアルのMOD(※コンピュータゲームの意)を作って見ようかと思います。趣味丸出しのやつ。

 ゲームを作るにあたって大切なのは、お客さんの視点でものを見ることが出来るようになることだと思います。ほとんどの場合、ゲームは作品である以前に商品です。ですからその視点で見て自分の作ったもの、作ろうとするものを冷静に判断する能力が必要です。ものを作っていると、自分の作ったものしか見えなくなりがちですが、商品なので、常に人と比べて自己評価するのも大事なプロセスだと思います。
 そして、具体性に欠ける回答で恐縮ですが、お客さんに喜んでもらえるようにすることでしょうか。自分の場合すべてのプロセスがこの部分に集約していると思います。やっぱりお客さんに喜んでもらえることが一番うれしいし、自信につながり、次へのモチベーションにもなります。お客さんに喜んでもらえないものを作ってしまうと言うことが、我々にとっては一番価値の見い出しにくい事ではないかと思います。
 ようやく完成した『テイルズ オブ ジ アビス』ですが、スタッフ一同、みなさまに喜んでいただけるよう、思いつく限りのことを盛り込みました。かなり大盛りソフトです。今年を締めくくるにこれ以上はないと自負しております。どうか、お手にとって遊んでいただければ一制作者として無上の喜びです。

 


作り手としてではなく、お客さんの視点で作品を作ることが大切だとおっしゃる奥村さん。そんな気持ちを持って生み出したタイトルこそ、ユーザーに認められ、息の長いシリーズ作品となっていくのでしょう。まだまだお話をお伺いしたいところですが今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。

  奥村氏:
 次は職場の先輩であるマッキーさんこと、篠崎香織さんにお願いしようと思います。
みなさんご存じかもしれませんが、ホリ・ススムの母上です。トビ・マスヨではないですが。最近はアニメ「今日からマ王」でご一緒しました。
 

篠崎さんは『ミスタードリラー』に登場するキャラクタを生み出したクリエイターです。一体どのようなお話をお伺いできるのでしょうか? 次回もお楽しみに。それでは奥村さん、今回は本当にありがとうございました。