Last Update:2005/02/21
週に1回ゲームクリエイターにお話を聞いて、お友達まで紹介してもらっちゃうスペシャル企画だ!
>>第178回

並木学さん
今回のゲストは、『バトルガレッガ』『鋼の錬金術師 ドリームカーニバル』『虫姫さま』などの作品の楽曲を手掛けた並木学さんです。ゲームミュージッククリエイターとして第一線で活躍されている並木さんですが、初めにゲーム業界で携われた仕事は、ゲームミュージックとはかけ離れた仕事だったそうですよ。一体、どんなきっかけでゲームミュージックに携われるようになったのでしょうか?早速、お話をお伺いしていきましょう。

(C)1996,1998 EIGHTING / RAIZING (C)2004 INH CO., LTD.


最初に、これまでの職歴と現在携わっているお仕事などを教えてください。また、並木さんが現在のお仕事に就く決心をしたのはいつ頃、どんなことがきっかけでしたか? その時のエピソードなどと合わせてお聞かせ下さい。

 

並木氏:
 1992年にサウンド職としてNMKへ入社し『サンダードラゴン2』『オペレーションラグナロク』他を担当。1995年にライジング(現エイティング)へ入社し、『バトルガレッガ』『ブラッディロア』『ブラッディロア2』などに携わりました。2000年にフリーランスとなり『怒首領蜂 大往生』『デジタルモンスター ディープロジェクト』などに携わり、2003年からベイシスケイプを拠点に『でじこミュニケーション2』『虫姫さま』などの作品を手掛け、今に至ります。
 ゲームサウンドのお仕事をしていますが、これまでアーケードゲームの担当が多かったので、ご家庭でRPGやシミュレーションを楽しまれる方にはあまり馴染みがないかもしれません。最近はアレンジアルバム制作に参加したり、色々なジャンルに取り組んでいますので、いずれどこかでお耳にかかれたらよいな、と思います。
 新作ではこの春、PSPの『BLEACH~ヒート・ザ・ソウル~』(発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント)や、PS2の『時空冒険記ゼントリックス』(発売元 バンダイ)がリリースになります。『ゼントリックス』では岩田匡治氏と、『BLEACH』では新鋭作曲家の金田充弘氏と一緒に作曲しました。どちらもこれまでの僕のものとは少々違ったカラーが出ていると思いますので、ゲーム共々サウンドもぜひチェックをお願いいたします。

 もともとはゲームセンター通いの、いわゆる「ゲーム小僧」でした。ゲーム業界を目指すきっかけになったのは、高校を卒業してすぐ、ある友人から「一度ゲーム会社へ行ってみない?」と誘われたことですね。そこでは「絵描きの人材が不足している」というお話を聞きましたが「なんでもいいからゲーム開発に関わりたい!」と必死だった僕は、それまで絵を描いた経験など無かったくせに、無謀にも名乗り出たのです。…が、なんと!幸運にもアルバイトができる機会を与えられました。現場でしごかれつつ「ゲームができるまで」を体験できたことは、小僧にとってはまさしく天にも昇る喜びで…。肝心の絵の腕前はサッパリでしたけど(笑)。
音楽については聴くのは大好きでしたが、素養や経験はなく「ヘタの横好き」でした。ところが、アルバイト後も「ゲームの仕事につきたい」という思いが残っていて、パソコンや小さなシンセを使ってシコシコと"ゲームの曲のようなもの"を作っては、友達に聴いてもらっていました。そうするうちに、たまった曲をラジカセで録音して、当時お気に入りのゲームをリリースしていたNMKへ「ダメでもともと」と人材募集もしていないのに持ち込んだところ、またもやラッキーなことに採用されてしまいました。
…はい、ゲーム好きと若気の至りと幸運の重なった結果、今の自分があります(笑)。

 


前回ご登場いただいた、シュウ・ナカザワさんと出会った時の第一印象はどのようなものでしたか?また、シュウ・ナカザワさんとのお付き合いの中で、面白いエピソードなどがありましたらお聞かせ下さい。


  並木氏:
 数年前に近所のショップで『JETでGO!2』を見かけまして、高校生の頃に着陸ゲーム『ミッドナイトランディング』にハマった記憶がよみがえり、購入したんです。帰って早速やってみて、とても驚き、興奮しました。そこにはスタイリッシュで洗練されつつも、気分爽快な「航空ポップス」と呼びたくなるような音楽があって、感動のあまりそのままネット通販で『JETでGO!2』サントラを検索して購入しました。
これがシュウさんと初めての、一方的な出会いです(笑)。

 そして去年、そのシュウさんからなんと「並木さんの参加したアルバムを聴いた」とメッセージをいただき、それを機に双方向な出会いへと成就しました。実際にお会いしたシュウさんは、話していて、こう、自然体でいてやさしさのあるステキなお方でした。
一緒にお酒を呑んで色々な話題でゲラゲラ笑いましたが、気さくであたたかい人柄をお持ちなのだなぁ、と。シュウさんの音楽に、表れていると思いますよ。

 


これまで並木さんが携わってきた作品の中で、特に思い入れが深い作品をいくつか挙げてください。また、これまでに自分の仕事に影響を与えてくれた音楽作品などはありますでしょうか?

  並木氏:
 どのタイトルにもゲームごとの、また、時々の思い入れはあるのですが、中でも強く心に残っているのは『バトルガレッガ』ですね。リリースからもう9年近く経ちますが、驚くことについ昨年(2004年)も「THE MADNESS BATTLE GAREGGA」という攻略DVDが発売されて、サントラCDも新録音になるほど、プレイヤーの方々にかわいがっていただいております。はやり廃りの激しいこの業界で、一つのゲームがこんなに長い間支持され続けるなんて、開発に参加した一人としてこんなにうれしいことはありません。
 個人としては、精神的にも技術的にも当時の僕の曲づくりに対する枠を、大きくひろげることができたという意味で、とても思い出深い作品です。開発が終わったころ、RPGでいうレベルアップの音がたくさん聞こえた気がしましたよ。普段はめったに聞こえないんですが(笑)。

 日ごろ見聞きするものから色々と影響を受けているとは思いますが、あえて言うなら同業の先輩方の音楽からの影響は、計りしれないほど大きいと思っています。
かつてゲームを通じてそういった音楽にふれることで「自分もそういう音楽を作りたい」と共感した結果、今の僕があるわけですから…。

 


それでは、今後のゲーム・エンタテイメント業界全体への希望をお聞かせ下さい。また、自分がプレイしたことのあるゲームの中で、「名作」と呼ぶべきゲーム作品を1タイトル挙げるとすれば何ですか?

  並木氏:
 ありきたりの追体験ではすぐに飽きてしまうので、せっかくのゲームなのだし「ゲームにしかできない未知の面白体験を味わう」ものの登場を望みますね。どちらかというとハードウェアではなくてソフトウェア的な方向で。それから個人的に、最近のゲームには「かけひきの面白さ」が失われつつある気がしてさみしいので、「キテレツさと興味深さをあわせ持ち、よい意味で実験的で、かけひきが面白いゲーム」なんていうのが出たら、琴線ジャラジャラ鳴りまくりですね。

 10代をゲーム漬けで過ごした僕にとって心に残る名作は数えきれませんが、あえて挙げるとすれば、ファミコンの『ギミック!』です。加減速の効いた「心地よい操作感」、丁寧に築かれた「生きたフィールド」、漫然と存在しない「意思のある敵」がすばらしい!
このゲームには「アクション」「かけひき」「謎解き」といったゲーム本来の純粋な面白さが全部詰まっていますが、どれをとっても他のゲームと明らかに一線を画す出来栄えで、当時とても遊びごたえを感じました。また、クリエイターの誇りが感じられる作りに、深い感銘を受けました。大好きな、文句なしの「名作」です。

 


これまでのお仕事の中で、"これは良い"と感じたアイディアが浮かぶ瞬間があったと思いますが、何をしているときに思いつかれることが多いのでしょうか?また、並木さんが今後挑戦したいこと、そして最後に、ゲーム業界を目指している読者へ向けて、メッセージをお聞かせ下さい。

  並木氏:
 よく「アイディアは仕事と関係ない場面で浮かぶ」という逸話を聞くのですが、僕の場合そういうことはあまりなく、机に向かってウンウンと唸りながらの方が良いアイディアが浮かぶことが多いです。それらのアイディアは、その都度手がけている仕事に盛り込むことになりますが、内容についてはナイショで(笑)。

 個人的に今、興味深いことは「いかにして、どのような趣味をもつか」です。映画・本・音楽、好きなものは色々あるのですが、どうも性格なのか真剣さや気合が足りないのか、とにかく、世の人々ほどマニアックになれないというかハマれないんです。これは昔から何とかしたいなぁと思っているんですけど、どうにもできなくて(笑)。初めの一歩として「自分探しの旅」に出かけたいと思っているのですが、なかなか実現できませんね…。

 メッセージとしてうまく言葉にできないのですが、開発の仕事、特にかけ出しの頃はなにかと「技術的に云々」「制約が云々」などといっては問題に直面して色々と悩む、みたいなパターンにハマリがちです。が、後で冷静になってみると「実はそういったことが問題ではなかったんだな…」と振り返る場合が多いです。当たり前のことなのですけど「目先のことにとらわれずに、本来の自分が表現したいものを追求し続ける」ことが、作り手の姿勢として重要だなと痛感します。逆にいえばどんなに困難な状況においても、やりたいことさえ明確にしておけば、おのずと道はひらけるわけですから。普段の生活でも、目的と手段をはき違えないように意識することは大切ですが、これから業界を目指される皆さんには、常に「自分が表現したいこと」を大事にする姿勢を心がけてほしいと思います。そのことを自問自答しつつ、企画・プログラマ・デザイナー・サウンドといったスタッフ間で「ゲームで表現したいこと」を共有しあってお互いに高めていければ、きっといいゲームができるんじゃないかと思いますよ。

 


「目先のことにとらわれず、自分が表現したいことを追及し続ける」という並木さん。妥協せずに自分のやりたいことを明確に表現していったからこそ、作品がいつまでも愛されているのでしょう。まだまだお話をお伺いしたいところですが、今回はここまでです。それでは、次回のお友達を紹介していただきましょう。

  並木氏:
 エムツーの堀井直樹さんを紹介します。某強力ゲーム開発集団をたばねるボスです。古くはメガドライブの『ガントレット』や、最近ではGBA『でじこミュニケーション』シリーズを制作しています。ゲーム開発に熱いこだわりをお持ちの方で、公私ともに仲良くさせていただいてます。
 

堀井さんが手掛けられた『ガントレット』は海外でも人気を博し、海外のファミコンやマスターシステムなどのコンシューママシーンへ移植された作品です。一体どんなお話をお伺いできるのでしょうか?次回もお楽しみに。それでは、並木さん。今回は本当にありがとうございました。